最新刊熱いね。
「殺し屋殺し…か」
少し小汚いラーメン屋にて、黒いジャージを着た逸ノ治はラーメンを啜りながら眼の前に縦で置いているスマホの殺連ニュースを見ていた。
その内容は殺し屋がある者によって殺されているといったニュースだった。
殺された死体の近くにはバツ印があり、その印からスラーといった名称で呼ばれている。
「うへぇ〜、こわ」
逸ノ治は感想を述べながらも自分には関わることはないだろうと思いながら、そのままラーメンを食べ続けた。
PrrrrrPrrrrrPrrrrr
すると急に見ていた画面が移り変わり、そこにはデカデカとバイトリーダーの名前が表示され、赤い受話器と緑の受話器が下に写った。
口に含んだものを咀嚼しながら手に取って緑の方を押し、耳に押し付けた。
「なんすか?」
「逸ノ治、一大事だ。今目的地送るから早くそこに向かって修復してくれ」
「え? 待ってください今昼飯食って」ブツン
逸ノ治が言い切る前に電話は中断され、逸ノ治はスマホを尻ポケットに押し込んで残っているラーメンを味わう暇もなくバキュームのように吸い込む。
「ごっそさんした大将、美味かったっス」
お椀を返却コーナーへと置き、お礼の言葉を述べてすぐに外へと飛び出た。
太陽がジリジリと睨み続けるお昼頃、逸ノ治はスマホを再度尻ポケットから取り出してスライドしていくとリーダーからの連絡が送られていた。
「めっちゃ遠いじゃねぇかよ、クソが」
地図を見るとここからおよそ20キロほど先に赤いピンが刺さっていた、逸ノ治は車やバイクといった足が無いため文字通りに足で20キロという長路を行かなければいけないということを地図は示していた。
「クッソがァァァァァァァァァァ!!!!!!」
逸ノ治は叫び散らかしながら全速力で走っていった。
「ぜぇぜぇぜぇ、オエ、ラーメン出そう…」
逸ノ治は天門と行灯に書かれている門の前にて、膝に手を付き嗚咽と出しながら汗を垂らしていた。
赤い巨大な門と両端に仏像が修羅の顔でこちらを睨んでいるような場所にてバイトの仕事が入ったらしいが今見える範囲では損壊した形跡が見当たらない。
「間違いか? まぁこういう寺とかの修復はいつもの10倍疲れるから丁度良いか」
腹を擦りながら巨大な門をくぐるとそこには屋台がキレイに縦に並んで奥へと突き進んでいる光景が目に入り、更に奥を凝視していると本殿らしき建物が居座っている。
なんで玉ねぎ抜きちゃうねぇんんんん!!! と何処かで聞いたような声が辺り一帯に響いたが逸ノ治は気の所為だろと自己暗示をかけ、何も聞かなかったことにし屋台を軽く眺めながら本殿へと足を運んだ。
本殿の目の前まで行くとそこには遠くではよく見えなかった本殿が色々と損壊していた。
狛犬がただの模様入りの小石になって、賽銭箱は小銭が地面にばら撒かれ木片が飛び散り、殿の中は戸は壊され中で並べられている大仏も壊されたものだったり、無傷のものだったり、頭だけもぎ取られている無惨な姿だったりが眼前にあった。
フローターは一般市民に知られること無く即座に修復するのが仕事。
他のバイト比べて安全、だが苦労に見合う報酬は少ない。
それが他の公共の物ではない、文化遺産だったりすればさらなる労力が必要になる。
しかし、日給は変わらず15000円。
逸ノ治は拳がわなわなと震わせながら握り、手の甲から血管が浮き出る。
髪も少し上へと逆立ってきているような気がする。
「殺す」
そう言って逸ノ治は何処かへと歩いていった。
「ぐはぁぁぁ!!!」
私はあのブスの蹴りで遠くへ飛ばされた。
赤い鳥居が無数に並んでいる場所の石畳の道の上でようやく止まることができ、顔を上げるとブスが黒いトランクを持って私の方へ歩いてくる。
私はただ愛されたかっただけだ。
でも私の愛はいつも一方通行で相手からの愛は来ない。
街中で手を繋いでいるただの人に、愛し愛される普通の人に。
「私はただ、愛されたかっただけなのにッッッ!!!!」
私の体内にある愛の形をした棘を剥き出すと、目の前のブスは変わらない表情で真っ黒な目で私を見る。
「私達、殺し屋だよ? 普通なんてこと、もう無理。あなたも私も」
そう言ってブスはトランクを開け、落下させるとブスの手にはデケェ鋸が君臨している。
明らかに重そうな物を傘を振り回すかのように肩に乗っけると。
「でも、あなたみたいな人がいるから。私、今日も生きる意味があるの」
「ありがとう、大好き」
その時の表情が不気味な真顔じゃなく、少し微笑んで目尻を下げた顔にふと綺麗と感じてしまった。
そして、鋸を回して急に接近してくる気配と音に察知した時には、私の体は真っ二つに…。
「えっ」
私の目はどうかしたのか? 目の前には先程の女と誰か知らねぇ後ろ姿が対峙し合っている。
男っぽい背中のヤツのせいで見えないがお互い見つめ合って止まっている。
今のうちに逃げてやろうと思ったその瞬間にヤツの方が消えていた。
すると同時に私の顎と頭に感触が疾走った。
生暖かい温度、何度も触れたことがあるこの感触は正に人肌。
「さようなら」
そう耳元で呟かされると私の視点は180度裏返った。
天と地がひっくり返って、そのまま私の意識は無くなった。
嗚呼、最後の言葉が天使の囁き声かと思っちまったよ…。
(この人、なに?)
急に私の目の前に現れてきて、あのハリネズミの人を切ろうとした私の丸鋸を腕一本で止めてきた。
本気じゃなかったけど、軽々しく止めるなんて、神々廻さんが来てくれたのかなと思ったけどよく見ても何回見ても目を擦っても神々廻さんじゃなかった。
でも何処かで見たことが有るような気がする…、あったっけ?
そしてあのハリネズミの人の首を折って、倒れる体を支えるように手を回してもう片方の手を膝の裏へと回して持ち上げて何事もなかったかのように私に背中を見せた。
しばらくぼけぇっとしてたら瞬きした一瞬でそこには男と死んだ人の影も形もなかった。
私は辺りをグルグルと見回したり、目を擦ったりするが眼の前の景色は何も変わらずにただ沢山の鳥居がびっしりとそびえ立っていた。
(あぶねぇ〜、あの人あの時のオーダーの人じゃん。 バレる前に逃げれてよかった〜)
怒りに任せた逸ノ治は寺を壊した犯人の処刑を行うが、逸ノ治のトラウマであるオーダーの一人と会ったことにより頭が冷めれた。
逸ノ治にとってオーダーは楽々と自分の命を弄べる者たちだ、その者達にほんの僅かだとしても殺し合ったのだ。こうなるのも無理はないだろう。
殺した女の死体を持ちながら、逸ノ治は尻ポケットにある携帯を取り出し応援を呼んだ。
「すんません、死体回収と寺の修繕の請求お願いしまーす」
「は!? おい!! お前なん」ピッ
携帯越しから聞こえる怒語を無視しながら通話を切る。
心のどこかで仕返しをできて喜んでいる逸ノ治に再び迫る奇怪な影。
「なぁ、お前さん」
逸ノ治は背後からの声を聞いた瞬間、光の速さと思えるような速度で自身の服の襟を掴んで頭まで上げた。
顔を隠し、頭頂部だけが見え、本来見えないはずの腹部の臍が外部へ露出していた。
「ナ ナンデスカ?」
喉仏を上げ、声が明らかな不自然さを醸しながら振り返る。
「ほ〜ん…」
そこには顔に大きな火傷痕を背負い、金髪ロン毛の長身の男。
オーダーの一人、神々廻が不機嫌気味な感嘆を上げ、顔を隠している逸ノ治を見る。
「まぁ、ええわ。お前さんフローターやろ? いつも修理してくれて堪忍な」
(こいつ、以外と常識人か…?)
そんな頭おかしい奴らだけじゃないんだなと認識を改める、と。
「言葉だけじゃ足りへんと思うし、メシ奢ったるわ」
「え゙っ」
神々廻の予想外の提案に逸ノ治は野太い驚きと拒否反応としての声が出た。
「イヤアノソノオコトバダケデモジュウブンデスノデオイソガシイオーダーサンハワタシニハカ」
「ええてええて、そんなガチガチにならんといてや」
すると神々廻は逸ノ治の肩に腕を回して肩を組む状態になる。
逸ノ治は抜け出そうとするも神々廻は力を入れ、力の強さがお前の正体は知っているぞと言っているのはすぐに理解できた。
強引に抜け出して逃げたとしても日本に、いや国外へ逃げたとしても全世界中の殺し屋達からレッドリストに載って殺されるのがオチだろう。
しかし今ここで殺されないのはまだ自分に利用価値があるからだろうと考えた逸ノ治は吐き気を感じながら、神々廻に連れ添って歩く。
(どうしてこうなったんだろう…)
逸ノ治は心の中で殺しの神に懺悔をし、許しを請おうとするが神は足蹴にするように逸ノ治を見放した。
「ほな、なんか注文してええで。金のことは気にせんでもええからな」
「大丈夫、気にしてない」
「お前は気にせぇ、何回奢ったと思ってんねん」
ぬおべいという寿司屋チェーン店にて、テーブル席に座った逸ノ治。
その対面には一緒にここまで連れてこられた神々廻と、途中から来た大佛がタッチパネルの取り合いをしている。
逸ノ治は元の姿に戻り、眼の前にある寿司に手をつけることができなかった。
(胃がキリキリするぅ)
ストレスによる痛み、緊張による痛みが同時に襲ってきて逸ノ治は喉に水すらも通らせることができなくなっていた。
「ねぇ」
急に耳元に当たる生暖かい空気と一緒に妖乱な声が鼓膜を揺らす。
逸ノ治は肩を上に跳ねて、横にバッっと向くとそこには先程取り合いをしていた大佛が手にマグロの寿司を持ってこちらに向けている。
「飽きた、食べて」
「は? いや、その」
「食べて」
「…あの「食べて」
拒否権がないのは勿論、発言権すらない逸ノ治はその圧力に負けて、口を開けてその寿司にかぶりついた。
少しの反抗意欲として大佛の寿司を摘んでいる指をに唾液をつけてやる。
もしかしたらぶん殴られるかもしれないと思ったが表情を見る限り、いつものような無表情な顔だったため特に気になっていないようだ。
寿司を口の中に入れ、食欲はないが無理やり顎を喉を動かして、飲み込む。
たまに食べると美味しい海鮮の旨味が舌に伝わる。
「…犬みたい」
そう呟いた大佛はテーブルにあったイクラの寿司を摘んで、また逸ノ治に食えと差し出す。
「うぐぅ…」
逸ノ治は苦しんで唸りながら、またその食べ物をかぶりつく。
「まぁええわ、寿司食いながら話を聞きい」
お茶を音を立てて飲む神々廻は喋り始める。
「ほんの数分だとしてもアンタはオーダー3人を相手にして五体満足で生き残ったんや」
「それがただの学生がや」
神々廻はタブレットを操作して、たまごを注文する。
「アンタはハッキリ言って、俺らと近しい実力を持っているんやろ」
「せやからなぁ…」
そう言うと逸ノ治の臀部が振動した。
寿司を頬張りながら、震えた物を探すとその正体は自身のスマホだった。
起動して、中身を見るとそこには見知らぬ人が友達になりましたという通知が入っていた。
「それは俺や」
「え? な、なんで…」
疑問を問う前に神々廻は言葉を遮るように言い続ける。
「オーダーに勧誘はせぇへん、アンタも嫌がりそうやしな」
「せやけど、任せたい任務が起こったらアンタに任せたいんや」
あのオーダーから認められるとは他の者ならば歓喜することだろう。
しかし、目立つことや死にそうになることを嫌う彼にとっては…。
「拒否権は…「無いで」
断る、が笑顔で却下させる神々廻。
逸ノ治は今ここから逃げ出してしまおうかと考えている最中に首が急に絞められる。
「グエッ!!」
カエルを潰したような声が出て、自身の首を見るとそこには華奢な細い腕がそこにはあった。
「早く、食べて」
メキメキと人の体から鳴ってはいけない音を出している自分に対して、寿司を口に押し付ける大佛。
「あ、あ〜ん」
苦しみながらも精一杯開ける口に寿司が突っ込んできた。
そしてまた顎を動かし咀嚼する。
(神々廻さん…た、助けて)
目で神々廻に救援を要請するが、
(諦めぇ)
と返してきた。
「はい、あ〜ん」
そしてまた寿司を食わせる大佛に逸ノ治は失神するまで食べさせられた。
この契約のようなものが彼にとって今後最悪な目に合うきっかけになるとは逸ノ治自身でさえもわからなかった。
大佛の指舐めたい。
ヒロインいる?
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