フォーレンの防具屋   作:ゴリ霧中

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遅くなって申し訳ありません。

久方ぶりの投稿です。

そして文字数少ないです。



第十話

「いらっしゃいませー!喫茶・アルケードへようこそー」

 

「いらっしゃいませ。お席までご案内します」

 

喫茶店を開いて三日目。

今日も今日とて防具屋より混んでるこの店だが、日に日に忙しくなっている気がする。

 

「まあこの制服のせいでもあるかな」

 

アルゴに言われてから俺とシリカの制服を作ったのだ。

もちろん作ったのは俺。

オーダーメイド。

 

シリカにはヒラヒラの飾り付きのウェイトレス服を作ってみたのだが、思いのほか気に入ってくれたらしく、店内に活気が溢れている。

俺はというと。

 

「なんで執事服なんかにしたのかな…」

 

「いいんじゃない?シリカはメイドみたいな服装なんだし、あんたはその格好したほうが似合うわよ」

 

「リズ…人ごとだと思って面白がってないか?」

 

「べっつにー?」

 

さいでっか。

 

「にしても今日は一段と混むな」

 

「そりゃあいろいろと噂が広まってるからね。広めたのはあたしだけど」

 

「なぬ」

 

「美少女メイドとイケメン執事が営む絶品喫茶、ってちゃんと宣伝しておいたわよ」

 

「その宣伝は少し間違ってるけどな」

 

メイドが可愛いことと料理が美味しいのはあっていると思うが。

 

「あんたはまだそんなこと言ってんの?ほら、あそこの二人組を見なさいよ」

 

「ん?」

 

言われてその方向を見ると、二人組の女性プレイヤーがいた。

 

「昨日もいたけど、ずっとあんたの方ばっかり見てるわよ」

 

「まさか。俺を見たって何も面白くないぞ?」

 

心の底からそう思うフォーレンに、リズはため息を吐く。

 

「はあ…まあそれはそれであんたらしいか」

 

「何の話だ?」

 

「なんでもないわよ。ほら、またお客さんが来たわよ」

 

リズが入口付近を指差すと、来客を伝えるベルの音が鳴った。

 

「んじゃ行ってくる。ゆっくりしていってよ」

 

「もちろんそのつもりよ」

 

シリカばかりに任せてもおけないので、俺もまた接客へと向かった。

 

 

 

 

「ふう、なんとかピークは過ぎたな」

 

「ですね~。もうヘトヘトですよ」

 

客が引き誰もいなくなったテーブルに突っ伏しながらシリカが言う。

 

「おつかれさん。休憩してていいよ」

 

そんなシリカに紅茶とケーキを差し出す。

するとさっきまでの疲れはどこへやら、すぐさま飛び起きて一心不乱にケーキを食べ始めた。

 

本当に甘いもの好きだよな…

 

カランコロンカラン

 

「おっ、いらっしゃいませー」

 

ピークは過ぎても客は来る。

それは分かっていたので特に焦ることもなく接客へ向かう。

 

「よお、フォーレン。久しぶり」

 

「遊びに来たよ」

 

そこにいたのは全身黒づくめの装備で身を包んだ剣士と、血盟騎士団の副団長。

つまりはキリトとアスナさんだった。

 

「いらっしゃい。もう噂を嗅ぎつけてきたのか」

 

「ああ。アルゴから聞いてな」

 

「それじゃなくてもアインクラッドの中ならいたるところで持ちきりだったよ?うちのギルドの人も結構来てるみたいだし」

 

「まじか。どおりで客足が途絶えないと思ったよ」

 

確かに血盟騎士団の団員もちらほら来てたな。

いかつい装備のおっさんが数人で喫茶店に来るのは違和感があったが。

 

「あれ、そういえばユイはどうしたんだ?あれから両親は見つかった?」

 

一緒に来ていないので聞いてみた。

すると二人の顔はどんどん沈んでいき、空気が重くなった。

 

「えっと、なんかまずいこと言ったかな?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだが。実はな…」

 

それからキリトは何が起きたのか話し始めた。

ユイが実はAIで、プレイヤーではなかったこと。

そしてカーディナルが異分子としてユイを消し去ったこと。

アスナさんは終始口を挟まずに黙って聞いていた。

 

「そっか…そんなことが」

 

「フォーレンやリズたちにもすぐ話そうとしたんだけど、ちょっと整理がつかなくてさ…」

 

「ごめんなさい。すぐに話せなくて…」

 

「いや、謝ることなんてないよ。二人の気持ちを考えたら責めることなんてできない。それはリズやシリカも同じだと思う」

 

あの二人には後で俺から話しておこう。

ちゃんと話せばわかってくれるはずだ。

 

「でもなんとかこれだけは手に入ったんだ」

 

そう言ってキリトはひとつのアイテムを取り出す。

 

「これは…『ユイの心』、か。綺麗じゃないか」

 

「ああ。おそらくだけど、これがあれば現実世界に戻ってからユイの意識を復元できるかもしれない」

 

「ほう…それは興味深いな」

 

「今すぐには無理かもしれない…でもいつか。現実世界に戻ってから技術が発展すれば、不可能じゃないと俺は思うんだ」

 

「そうだな。俺も出来ると思う。そんときは俺にも会わせてくれよ?」

 

「もちろん。約束するよ」

 

そこまで言ってアイテムをストレージにしまった。

そしてメニューを手に取る。

 

「さて、せっかく喫茶店に来たんだし、売り上げに貢献するか」

 

「そうだね。フォーレンくんの料理なら絶対美味しいでしょうし」

 

「もちろんだ。味だけは保証するからじゃんじゃん頼んでくれ」

 

話題が料理に向かったので場の空気が先ほどよりも明るくなった。

俺の料理で少しでも元気を出してもらおう。

 

「じゃあ私は紅茶とチーズケーキをセットで」

 

「あいよ。サービスでスコーンも付けさせてもらうよ」

 

「いいの?」

 

「知らない仲じゃないしね。いつも防具屋を贔屓にしてくれてる分サービスするよ」

 

「ありがとう♪それじゃあいただくわね」

 

「それじゃあ俺は…なあフォーレン、このメニュー以外にお前の作れるやつ頼んじゃダメか?」

 

「お?別にいいけど、何が食べたいんだ?」

 

「料理はなんでもいいんだけど、激辛メニューが食べたいんだ」

 

「激辛か…顔に似合わず辛党なんだな」

 

「おい、それはどう言う意味だ」

 

「それじゃあ激辛麻婆豆腐でも作ろうかな」

 

「おいっ顔に似合わずってどういう…」

 

「それではしばしお待ちを…」

 

キリトが騒いでいるが無視して厨房へ引っ込んだ。

てか案外キリト、童顔なの気にしてるんだな。

 

「よしっ、アスナさんのケーキとスコーンはこれでいいとして…問題は麻婆豆腐だな。作れることは作れるけど…」

 

キリトのリクエストは『激辛』麻婆豆腐。

普通の辛さじゃ満足できないのか。

 

「それじゃあとっておきを使わせてもらおうかな。いくら辛党とは言え、これに耐えられるかな。ふっふっふ…」

 

薄気味悪い笑みを浮かべながら鍋の中に食材を入れ、最後にとっておきの唐辛子を加える。

 

「コイツは味覚エンジンの中でも最も高い数値を出した唐辛子。キリトが泣き叫ぶ姿が目に浮かぶ…」

 

さすがの俺も鬼ではないので、一緒に冷たい水を用意し、料理を運ぶ。

 

「お待たせしました。はい、まずはアスナさん」

 

「わぁ、おいしそう。ん~いい匂いね」

 

「特製スコーンだからね。作り方は企業秘密」

 

「え~、教えてくれてもいいのに…」

 

いくらアスナさんの頼みでも聞けないな。

これは俺の研究の成果のひとつだから。

 

そしてさらなる研究の成果が…

 

「そしてこっちがキリトの麻婆豆腐だ」

 

「ちょ、フォーレンくん?私緑色の麻婆豆腐なんて初めて見るんだけど…?」

 

「まあ秘蔵の唐辛子を使わせてもらったからね。毒ではないから安心しなよ」

 

「ど、毒じゃないって…」

 

「大丈夫、ここは圏内だから辛すぎてダメージを喰らうことはないよ。まあ辛さは実際に体感するけどね」

 

どうだ、怖気ついたか?

と、キリトの方を見ると…

 

「美味しそうじゃないか。いただきまーす」

 

「っておい!?何の警戒もなしかよ!」

 

「キリトくん!?」

 

「(ぱくっ)もぐもぐ。う~ん、やっぱフォーレンの作る料理は美味しいな」

 

「「えっ!?」」

 

ば、ばかな…普通に食べてる、だと?

 

「キ、キリト。本当に大丈夫なのか?」

 

「何がだ?普通に美味しいと思うけど…」

 

「そ、そんなはずは…どれ、俺も一口…」

 

入れる唐辛子を間違えたのかな?

と思い、麻婆豆腐を一口食べる。

その瞬間。

 

「があっ、がはっがはっ!か、かかか、かれえええええええっ!!!」

 

「フォーレンくん!?」

 

「からっからっ!」

 

「どうしたんですかフォーレンさん!?」

 

トリップしていたシリカも目を覚まし、フォーレンの異変に気づく。

 

「み、みずをっ!」

 

「水?水が欲しいのね?」

 

「はいお水ですフォーレンさん!」

 

「ゴクッゴク…はぁはぁ…あーひどい目にあった…」

 

「な、何があったんですか?」

 

「いや、自分の作った料理を試食しただけだよ」

 

その試食した料理が問題なのだが。

 

「? そんなに辛いかな、これ」

 

「キリト、お前の味覚はどうかしてるぞ…」

 

どうしてその料理をそんなに涼しい顔で食べられるんだ。

まだ舌がヒリヒリするし。

 

 

 

 

「ふう、ごちそうさま」

 

「お粗末さま。二人はこれからどこか行くのか?」

 

デートしに来たならそのまま帰るかもしれんが。

 

「いや、今日はこのまま帰るつもり…って誰だろう」

 

不意に手元を動かし、ウインドウを開くキリト。

おそらくメッセージが来たのだろう。

 

「私にも来てるわね」

 

どうやらアスナさんにも届いたようだ。

 

「どれどれ…っ!?」

 

メッセージを読んだ二人の顔が険しくなる。

なんだ?何がきたんだろう…

 

「すまない、ちょっと用事が出来たみたいだ。今日はこのくらいで帰るよ」

 

「それは構わないが…何があったんだ?」

 

二人の様子は明らかにおかしい。

緊急事態でも起きたのか?

 

「ヒースクリフからのメッセージなんだが…」

 

「ヒースクリフ!?」

 

その正体を知っている俺からすればその名前を聞くだけで体が反応してしまう。

 

「今現在攻略中の75層のボス部屋が見つかったらしい」

 

「へえ、じゃあその攻略会議か何かか?」

 

「そうなんだが…休暇中の俺達を呼び出すほどだ。ただ事じゃない」

 

「ただ事じゃない、か。ボスがとんでもなく強いとか?」

 

「ええ。これまでも、25層、50層のボス攻略は難易度が急に高くなる傾向があったわ」

 

「なるほど、『クォーターポイント』か」

 

「ああ。だから今回のボス戦もかなり過酷な戦いになると思う」

 

そういうわけか。

だから二人とも急に表情が険しくなったんだな。

 

「…行くのか?」

 

「俺たちには戦うだけの力がある。それに、早く攻略してユイとまた会うんだ」

 

「うん!そうだね!」

 

二人の顔つきは先ほどユイの話をしたときの悲しげなものではなく、前へ進もうとする『意思』を感じる。

 

「そうか…俺から言えることはひとつ。死ぬなよ?」

 

「ええ!」

 

「もちろんだ!」

 

そう言って二人は店をあとにした。

 

「クォーターポイント、か…」

 

「フォーレンさん…」

 

「ん?どうした、シリカ」

 

「なんだかわからないですけど、嫌な予感がして…」

 

小動物のように震えるシリカ。

そんな彼女の頭に手をのせ、ゆっくりと撫でる。

 

「大丈夫だよ。このゲームはあの黒の剣士様がしっかりクリアしてくれるからさ」

 

これは俺が心から信じていることであり、今のシリカに言うべき言葉だ。

 

(そう、キリトならクリアしてくれるはず…)

 

そう思い、今日のところは店を閉め、俺もシリカも家へ帰ることにした。

 

そして次の日。

 

いつもと変わらず防具屋で店番をしている最中のことだった。

 

このアインクラッド全体を揺るがすほどの巨大な地震が起きたのは。

 

 

 

アインクラッド編 完

 

 




今回の話でアインクラッド編は終了です!
次話からホロウ・フラグメント編に入ろうと思います!

ゲームをやっていない方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな方にもわかりやすいようにできればいいなと思います。

それではまだ次回でお会いしましょう。
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