フォーレンの防具屋   作:ゴリ霧中

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いよいよホロウへんです!
作者はPSP版もPSVita版もクリアしましたが、完全再現とまではいかないかもです。
最低限の流れだけは再現するので、細かいところは我流で通させてもらいます!


ホロウ・フラグメント編
第十一話


このSAO全体を揺るがす大地震が起きてからまもなく。

 

「ふぉ、フォーレンさん…」

 

「よしよし。もう揺れも収まったし、出てきていいよ」

 

俺はいつも通り店番をしていた。

なおシリカは地震にビビってテーブルの下に隠れていた模様。

 

「にしてもこの世界で地震、か」

 

「今までこんなことありませんでしたよね?」

 

「ああ。そもそもVR世界で地震なんて起きるものじゃないだろう」

 

となると考えられるのは…

 

「考えられる可能性としては、何かのイベントが始まる予兆か、システムの不具合によるバグかだけど…」

 

「怖かったです…」

 

シリカをなでてなだめるが、心中は穏やかじゃない。

 

(イベントならそれでいいんだが、これがもしバグだったら…)

 

「なんにしてもこのタイミングで起きたというのが気になるな」

 

「タイミング、ですか?」

 

「今日はキリトたち攻略組が75層のボス攻略をしていたはず。それが順当にクリアできたならそれに伴ったイベントの発生。もしくはそれに関係して予想外のハプニングが起きたのかもしれない」

 

「はぁ~…相変わらずすごいですね。突然のことなのにいつも通り冷静なフォーレンさんです」

 

「そうかな。まあ何か実害があったわけでもないし、慌てることじゃないよ。とりあえずお茶でも飲んでリラックスを…」

 

「そうですね。ってどうしたんですか?ウインドウをそんなに覗き込んで」

 

「ば、ばかな…」

 

開いたスキルウインドウから『料理』スキルを使い、いつも通りシリカにケーキを振舞おうと操作する。

が、そこで違和感に気づく。

 

「な、なにかあったんですか?」

 

常に冷静だったフォーレンの様子が急変し、顔面蒼白になった。

そのことにシリカは驚きを隠せない。

 

「す、スキルが…ない」

 

「へ?スキルがないって…」

 

「だから、ないんだよ。正確には今まで稼いだ熟練度がごっそりと」

 

「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってください…」

 

慌ててシリカもスキルを確認する。

 

「本当です!あ、でも全部じゃなくて短剣スキルと索敵、他にも戦闘関連のスキルが…」

 

「俺もだよ。しかも俺のはよりにもよって『裁縫』スキルが…」

 

「『裁縫』スキルってことは、防具が作れないってことですか!?」

 

「いや、作れないことはないんだが、前と同じものを作るとなると…」

 

『裁縫』スキルはあくまでも防具を作った回数に比例して熟練度が上がっていく。

それを完全習得させるには今まで費やしてきた労力をそのまま繰り返さなくてはならないのだ。

 

「どうやら『料理』スキルは残ってるみたいだからそれが唯一の救いか…」

 

「そ、そうですか…不幸中の幸いというかなんというか…」

 

まあこれで『料理』スキルまで無くなっていたらシリカが卒倒しそうだ。

 

(ん?これは…『名工』スキル?これの熟練度はそのままなのか…)

 

唯一もつユニークスキルが無事だっただけでもよしとしよう。

じゃなきゃ今までの努力の分だけ泣いてしまいそうだ…。

 

「にしてもこれはますますシステム不具合の可能性が濃くなったな」

 

「そうですね。スキルが消滅するなんてイベントじゃあありえませんし」

 

引き金となったのはやはり75層の攻略…

そのボス戦で何かあったのは間違いないようだ。

 

「こりゃ当事者に聞きに行くしかないな」

 

「当事者、ってことはキリトさんたちですね」

 

「ああ。あいつのことだし、ボスを倒したならそのまま76層まで上がっているはずだ」

 

そこまで行けば事情も聞けるだろう。

 

だがこの時、なぜメッセージで確認しなかったのか。

俺も突然の事態で動揺していたのだろう。

 

 

 

 

「やっぱり76層がアクティベートされてるな」

 

「ですね。早速いきましょう!」

 

「ああ。転移・アークソフィア!」

 

キーワードを口にし、俺とシリカの体が青い光に包まれた。

 

 

 

 

転移が終わり、無事に76層に到着した。

よかった、これでまた訳のわからんバグでも起きたら流石に笑えないぞ。

 

「ここが76層か」

 

「フォーレン!?」

 

「シリカちゃんも!」

 

転移を終えると、そこにはキリトとアスナの姿があった。

 

「二人とも無事だったんだな」

 

とりあえずキリトたちがボス戦を生き残ったことを確認できてよかった。

 

「あんたたち!?…はぁ、来ちゃったか」

 

そこにはリズの姿もあった。

俺達を見てため息を吐く。

え?ため息?

 

「リズも来てたのか。ってなんだ?俺たちは来ちゃいけなかったのか?」

 

なんかあんまり歓迎されてないみたいなんだが…

 

「そういうわけじゃないが…ちょっと事情があってな」

 

「事情…俺たちもそれが聞きたくて来たようなもんだしな」

 

75層攻略の段階で何かあったのは明確のはず。

その説明を聞かなきゃな。

 

「どういうことなんだ、キリト?」

 

「ああ、順を追って説明するよ。まず75層の攻略なんだが…ボス戦はクリアした」

 

「そりゃそうだろうな。だからこそ76層が解放されてるんだし」

 

「そのあとが問題だったんだ」

 

そのあと、ね。

やっぱり何かあったのか。

 

「私たち、血盟騎士団の団長は知ってるわよね?」

 

「ヒースクリフのこと?そりゃ有名人だし、知ってるけど」

 

「そのヒースクリフの正体が茅場晶彦、つまり俺達をこのSAOに閉じ込めた張本人だったんだ」

 

「ええっ!?そうだったんですか!?」

 

キリトの明かす真実にシリカが大げさに驚く。

いや、大げさでもないのか。

 

「そっか。ついに正体を明かしたんだな」

 

「ついにって…まさかお前、知っていたのか?あいつの正体を」

 

キリトがこちらを睨みながら問う。

 

「そう怖い顔しないでくれるか?俺だって知ったのは最近だし、加えて口止めもされていたんだ。あいつの正体を見抜いたところまでは良かったんだが、流石にGM(ゲームマスター)相手に喧嘩売る真似はできなかった」

 

「そうか…それでも相談くらいはして欲しかったな」

 

「俺も最初はしようか迷っていたんだが、それを知ってキリトがどうするかなんて考えなくてもわかるからな」

 

コイツのことだ。

真実を知ればGMだろうと関係なく突っ込んでいくに違いない。

 

「それで?キリトがあいつの正体を見破ったのか?」

 

「ああ。以前から違和感は感じていたからな。ボス戦でHPゲージが減っていたあいつを攻撃したら、『破壊不能オブジェクト』の表示が出たんだ」

 

「なるほど。それで?」

 

「あいつは俺に勝負を持ちかけてきたんだ。あいつに勝てばこのSAOに生存している全プレーヤーを開放する、と」

 

ほう。

キリトからすれば断るはずもない内容だな。

 

「そして俺は勝った。あいつを倒し、ゲームはクリアされるはずだった…」

 

「そのあと急に団長の体にノイズが走って…そのまま消えちゃったのよ」

 

「そのあとも俺たちはログアウトされなかった。そこでそのままこの76層まで来たんだ」

 

「なるほどな。それで、今の状況についてはわかっているのか?」

 

「聞ける限りの情報は集めた。どうやらこのSAOのプレイヤー全体にバグがかかっているらしい」

 

「やっぱりか…」

 

きっかけは何らかの不具合。

あの地震はそれによるものだったのか。

 

「そのバグのせいでスキルウインドウに不具合が起きているのか。その他にも一部装備品にバグが出ていたな」

 

俺が作った防具も半数近くがやられていた。

 

「それともう一つ」

 

「ん?まだ何かバグがあるのか?」

 

「ああ、実はな…」

 

「この76層に来たプレイヤーはそれより下の階層に降りられなくなったのよ」

 

「…なぬ?」

 

「だーかーら、あたしたちはもうここより下の、自分たちの店にすら戻れなくなったってことよ」

 

「そんなばかな!」

 

つまりは転移門まで不具合が起きているのか!?

 

「そうです!そんな不具合が…」

 

「事実起きているのよ」

 

なんてこった。

つまり最初のリズの反応はそういうことか。

一度来てしまったからにはもう店に戻れない。

くそっ、これじゃ店が…

 

「ん?って言っても俺、店の在庫くらいしか向こうに置いてきてないし、特に問題もないな」

 

「でもあんたの『裁縫』スキルにも不具合があるんじゃないの?あたしの『鍛冶』スキルの熟練度はほとんど初期のものに戻ちゃったわよ」

 

「俺のも同じだよ。でもそれとは別にスキルがあるからさ」

 

「別のスキル?それって防具屋と関係あるの?」

 

「ああ。ここまで来たら隠す必要もないか」

 

そういってウインドウを可視モードにする。

 

「『名工』スキル。俺だけのユニークスキルだよ。その効果で俺が作る防具に補正がかかるから、今のスキル熟練度でもある程度のものなら作れる」

 

「なによそのスキル!?発動条件は!?」

 

「残念ながらこれは茅場からもらったもの…口止め料として受け取った正真正銘のユニークスキルだよ」

 

「茅場から…そうか、それを見返りとしてもらったのか」

 

「責めてくれて構わない。俺にはキリトみたくあいつに立ち向かう度胸も勇気もなかったよ…」

 

あの時俺があいつを止めておけば…

いや、返り討ちにされて終わりだったかもな。

 

「いや、お前はそれでいいと思う。勇気と無謀は違う。それにそのスキルがあるならこの先心強いだろ?」

 

「うん、そうね。フォーレンくんが頑張って防具を作ってくれるならこの先も攻略が楽になると思う!」

 

「キリト、アスナさん…」

 

二人の言葉に少しうるっときた。

ここで責めても誰も文句なんて言わないだろうに。

 

「ま、あんたみたいなもやしがあのおじさまに勝てるとは思えないし、懸命な判断だったんじゃないかしら?」

 

「もやしは余計だもやしは」

 

これはリズなりの励ましの言葉かな、うん。

 

「わ、わたしはフォーレンさんを信じてますからっ。それにみなさんの無事がなによりです」

 

「ありがとう、シリカ」

 

ああ、やっぱりシリカの笑顔には癒されるな。

一家に一台清涼剤。

うん、絶対買っちゃう。

 

「そんなことよりも今はこれからのことを考えよう」

 

「そうだな。キリトとアスナさんは攻略を続けるんだろ?」

 

団長を失った今、血盟騎士団を率いるのは副団長であるアスナさんしかいないだろう。

キリトだってそんなアスナさんを支えようとするはずだ。

 

「俺たちはそうするつもりだが、三人はどうする?」

 

「そうだな…俺たちが今更攻略組に参加するわけにもいかないし…」

 

と、そのとき、視界の端にあるひとりの人物を捉えた。

 

「エギル!」

 

「ん?おおっ、フォーレンじゃねえか」

 

そこにいたのは俺を喫茶店に誘った店主、エギルだ。

 

「そうだ、エギル。どうせこの76層に来てもまた商売はじめるんだろ?」

 

「もちろんだ。俺はたとえ50層の店がなくても商売を辞めるつもりはないぜ?」

 

やはりか。

こいつは生粋の商売好きだな。

 

「それならまた隣りで喫茶店をやってもいいかな?今回は防具屋も兼ねるけど」

 

「防具屋兼喫茶店か…こりゃまた客が寄ってきそうだな」

 

「ああ。悪い話じゃないだろう?」

 

「オーケー、交渉成立だ。既に物件のめどは付けてあるんだ」

 

「おお、さすがだな」

 

「俺の店はあさってから開店するんだが、お前も一緒に開けるか?」

 

「おう。といってもスキルが復活するまでは喫茶店の方で稼ぐかな」

 

幸い『料理』スキルは無事だったし。

 

「それじゃあさってには店に行くよ」

 

「おう、またよろしくな」

 

そう言って大きく笑いながらエギルは去っていった。

 

「ふう、これで当面の働き先は確保できたな」

 

「すごいな、フォーレン。あのエギルを相手に一方的に取引をするなんて」

 

「そうか?ちゃんとこっちにもあっちにも利益のある内容なんだから成立して当然だろ?」

 

「それは…そうなのか…?」

 

どうにも腑に落ちないといった感じだが、取引なんてそんなもんだ。

 

「あ、あのう、フォーレンさん」

 

「ん?どうした、シリカ?」

 

「わ、私もまた雇っていただけますか…?」

 

上目遣いでお願いされた。

 

「もちろん。というか俺の方はそれ前提で店を開くつもりだったんだけど」

 

そういうとシリカの顔がぱぁと明るくなった。

 

「本当ですか!?よかったぁ~」

 

「シリカはうちの貴重な看板娘だからな。頼りにしてるよ」

 

「はいっ!まっかせてください」

 

正直うちの喫茶店はシリカさんがいないとやっていけませんよ?

 

「はあ、あたしもこっちで武器屋開こうかしら」

 

ため息を吐きながらリズが言う。

 

「でも確か『鍛冶』スキルが初期化されたんじゃなかったっけ?」

 

「完全に消えたわけじゃないわ!全盛期にするまではまだ時間がかかるけど、直ぐに元に戻すわよ!」

 

おお、リズの周りがメラメラと燃えている!

熱い、熱いぞ!

 

「その意気だな。暇があれば俺も手伝うよ」

 

「そうね、鉱石を取りに行く機会もあるだろうし、その時はお願いするわ」

 

「おう。任された」

 

階層は高いが、まあモブ敵くらいなら俺でも充分戦えるだろう。

『裁縫術』スキルも上げないとだし。

 

「よし、とりあえず当面のやることは決まったか…ん?そういえばキリト、アイテムの確認はした?」

 

「もちろんしたけど、どうかしたのか?」

 

「いや、アイテムにもバグが見つかってるみたいだからアレは大丈夫なのかなーと思って」

 

「アレ…?・・・あっ!?」

 

俺の言葉で気がついたのか、キリトはすぐさまストレージを確認した。

 

「あった、これだ!」

 

「えっ?なになに」

 

「なんなんですか?」

 

リズとシリカは気づいていない様子。

というかまだ言っていなかった。

アスナさんは気づいてるみたいで、キリトの手元を注視していた。

 

そしてキリトがあるアイテムをアイテム化した。

それは透き通った青色をしており、雫の形のアイテムだった。

 

キリトがそのアイテムをタッチした瞬間、雫が光り輝き、それがどんどん形になっていく。

 

「ふぁ~あ…おはようございます」

 

「ああ、おはよう。ユイ」

 

「おはよう、ユイちゃん」

 

そこに現れたのはキリトたちの子供であり、SAO内のAIでもあるユイだった。

 

「ユイちゃん!?」

 

「どうして!?」

 

「あー、そういえば二人には言ってなかったな。実はカクカクシカジカなことがありまして…」

 

いやあ、こういう時に説明が早く済むカクカクシカジカは便利ですな。

 

「それでユイちゃんの心がアイテムになったってこと?」

 

「それよりも、ユイちゃんってプログラムだったんですね」

 

だが今大切なのはそこじゃあない。

 

「あっ、みなさん、おはようございます」

 

「おはよう、ユイちゃん」

 

そのアイテムとなったユイがこうして再び俺たちの目の前に現れたのだ。

 

「これもシステムの不具合のせい…いや、おかげなのかな」

 

キリトがそう呟く。

 

「そうですね。私も今カーディナルで起きている出来事を確認しているところですが」

 

そう言ってユイが目をつぶって思案する。

そこからユイが説明するが、今俺たちが得ている情報以上のことはわからなかった。

 

「すみません、私の情報権限だとここまでが限界みたいです」

 

「そうか…まあいい。今はこうしてユイと再開できたことを喜ぼう」

 

「キリトくんの言うとおりだね。おかえり、ユイちゃん」

 

「はいっ、ただいまです。パパ、ママ」

 

うむうむ、微笑ましいねえ。

家族の感動の再会か。

 

俺にもあんな感じの両親がいたのかな。

 

「どうかしましたか、フォーレンさん?」

 

黙っていたのが疑問に思われたのか、シリカに心配された。

 

「いや、なんでもないよ」

 

だが今ここでわざわざ話の腰をおる真似をする意味もない。

ここは黙っているのが一番だ。

 

「さてさて、今日はもう時間も遅いし、みんなでどこかに宿でもとって休もうじゃないか!」

 

「いいわね!さんせーい!」

 

俺の空元気に気づいてくれたのか、リズも同じテンションでノってくれた。

いやただ単に騒ぎたいだけかもしれんが。

 

でも実際リズはそういう細かいところで気遣いができるからな。

そこもまたリズのいいところだ。

 

 

そのあと、転移門から少し離れたレストランで食事をとり、近くの宿屋にみんなで泊まった。

ちなみに漢気ジャンケンの結果お代は全部キリト持ち。

まあ男子は俺とキリトの二人だから確率は二分の一なんだけどね。

 

 




とりあえずホロウ編を知らない人もいるかもしれないので説明も入れてみました。

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