未だに待ってくれている人が果たしているのかどうか…
「フォーレン君!大変なの!」
ホームでゆったりしていると、アスナさんが血相を変えてやってきた。
「おちついてアスナさん。何かあったの?」
荒々しく息を切らしていたので、とにかく落ち着かせた。
「それが、昨日からキリトくんと連絡が取れないの」
「なんだって?フレンドサーチは?」
「もちろんしてみたわよ。でもどこにも反応がなくて…」
「どこかのダンジョンに入り浸っているのか…?」
でもそれにしたってアスナさんに一言もないっていうのはおかしい。
あのキリトに限って何かあったとは考え難いが…
「今までこんなことなんてなかったのに…」
「確かに心配だ。せめて安否だけでも分かればいいんだが…」
下層に降りられれば第一層の石碑を見て安否の確認が取れるが、76層に来てからというもの、今もまだ下層に降りることはできないでいた。
「キリトの身に何かあったのは間違いないようだ」
「や、やっぱりそうなのかな…」
あの戦闘狂のブラッキーくんに限って戦闘面で手こずるなんてのはそれこそヒースクリフくらいしかいないだろう。
ということはダンジョンのトラップか何かか?
高層になってからというもの、結晶無効化エリアも増えてきてるし。
「とにかく、このことをみんなには?」
「まだ言ってないわ…フォーレンくんに意見を聞こうと思って」
「じゃあみんなに聞いて情報を聞いてみて。俺はアルゴに情報を買いに行って調べてみるから」
「わかったわ。本当にありがと…」
「いいって。礼ならこんだけ心配かけたブラッキーくんにたんまりおごってもらおうぜ」
「ふふっ、そうね。人にさんざん心配かけたんだもの。そのくらいしてもらわないと」
そういってアスナさんは部屋を出て行く。
笑顔ではいたが、無理をしているのは明らか。
さすがのアスナさんでもこの状況じゃ仕方ないか。
「さてと、俺も行きますか」
アルゴにメッセージを送り、俺もまた部屋を出る。
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「さて、ここが最後にキリトが目撃された場所か」
アルゴからの情報によると、キリトは第76層にある森のダンジョンで最後に目撃されたらしい。
ちなみにアルゴから情報を得たわけだが、事がことなので代金はいらないと言われた。
あいつもなんだかんだで友人思いだよな。
「それにしてもこんなところでキリトが手こずるか…?」
先程から何度かモンスターと遭遇することはあったが、そいつらはどれも俺ひとりであしらえる程度のmobたちだ。
キリトが苦戦するなどまずないだろう。
「ということはまだ発見されてないダンジョンでも見つけたか、もしくは…」
そこまで考えてあたりの異常に気付く。
先程までは普通の森で、あたり一面には木しか見当たらなかったが、その木がおかしかった。
「なんだこれ。まるでバグのように歪んで…っ!?」
冷静に観察してる俺だったが、突如光に包まれた。
「何が起きている!?これは…強制転移!?くっ…」
システムの力には為す術なく、俺はそのまま森からどこかのエリアに飛ばされたのであった。
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数秒後、俺がいたのは「森」だった。
だが一言に「森」といっても先程までいた場所とは少し違うようだ。
それどころかこれまで探索してきた層の「森」ダンジョンとも違う気がする。
「ここは、どこだ…?」
マップデータを呼び出し、76層と比較してみたが、やはり周辺の地形が異なっていた。
「さっきの光はやはり転移の光…しかもその前の状況から考えるならこれも、システムのバグか?」
だとすればこのままここにいるのはあまり得策ではない。
キリトのことも心配ではあるが、まずはここからの脱出を試みるべきだろう。
そう思った俺はアイテムストレージから転移結晶を取り出した。
「転移・アークソフィア!」
だがいつものような光は出ず、転移されることもなかった。
「予想はしてたけど、やっぱりか…」
結晶無効化エリア。
もしくはシステム上のバグとして転移ができなかった。
「メッセージも飛ばせないし、こりゃまいったな。八方塞がりだ」
せめて自分の置かれた情報を誰かに伝えようと考えたが、それも叶わなかった。
「でもこれで一つ可能性が出てきたな…」
この状況から導き出される可能性。
つまりはキリトのことだ。
俺の置かれたこの状況、まさに今のキリトと同じだろう。
「このエリアを探索すればキリトと合流できるかもしれない。てかそもそもここを探索しなきゃどうしようもないだろうな」
アークソフィアに戻るためにも、本来のキリトを探すという目的を果たすためにもこの森を探索するべきだろう。
これからどうするか。
そう考えていた俺だったが、ふと俺の索敵スキルが反応した。
「これは…プレイヤー反応か?」
反応があった先を見ると、こちらに歩いてくる二人の人影を見つける。
「いったい誰が…ってキリト!?」
「フォーレン!?どうしてこんなところに!?」
そのプレイヤーとは俺が今まさに捜索中のブラッキー君だった。
「どうしてって、そりゃ俺が聞きたいよ…」
身に覚えがない転移で今現在途方に暮れていた俺。
そんな俺にここにいる理由を聞かれてもわからないって。
「そういうキリトこそ何やってたんだよ。とりあえず生きているみたいで安心したが、アスナさんがどれだけ心配してるか…」
「生きてるみたいって、そんな大げさだな」
「連絡も取れず、フレンドサーチもできない状況だぞ?こんな世界なんだ、最悪の状況も考えるさ」
「そういえばメッセージは飛ばせなかったな…フレンドサーチまでできなかったのか」
「そういうこと。それはそうとその隣にいる女の子は?初めて見る顔だけど」
そう、キリトと一緒に俺の前にはもう一人のプレイヤーがいた。
綺麗な顔立ちで、髪型は金髪のショートカット。
歳は俺たちと同じくらいか?
「ああ、彼女の名前はフィリア。俺がこのフィールドに来た時に知り合ったんだ」
「フィリア、ね。やっぱり聞いたことがないな」
「なによ、あんたに名前を知られてなきゃいけないっていうルールでもあるの?」
会ってからずっと無言だった彼女だが、ようやく話をしてくれた。
とはいえその内容はあまり友好的なものではなかったが。
「ああいや、そういうわけじゃないんだ。気を悪くしたなら謝るよ。俺の名前はフォーレン、76層で防具屋兼喫茶店をしている」
「防具屋?喫茶店?随分と物好きなのね…」
「はは、これは随分と辛辣だな」
いくらなんでも初対面でこの毒舌は厳しいな。
先に失礼なことを言ったのは俺の方だから仕方ないけど。
「せっかく知り合ったんだし、これも何かの縁だ。そうだ、これつまらないものだけど…」
そう言ってお詫びというのもなんだが、アイテムストレージからあるものを取り出す。
「…?これは?」
「これは俺が喫茶店で出してるケーキだ。さっき作ったばかりのチーズケーキがあったから、お近づきの印として受け取ってくれないか?」
店の仕込みなんてものはないが、今日の朝に試作品として毎日作っているものだ。
特に誰かに渡すわけでもなく、大抵は俺のおやつとしていつも食べている。
「ケーキね、そんなの食べるなんていつぶりかな…」
フィリアが少し遠い目をする。
この世界ではNPCの作る料理すらあまり美味しくないのだ。
嗜好品である甘味なんてそんなに食べる機会は多くはない。
まあだからこそ喫茶店は人気が出るのかもしれないが。
「試しに食べてみなって。味の方はうちのバイトが保証してくれてるし、不味くはないはずだ」
「むしろ現実世界で食べるより美味しいぞ?フォーレンのケーキは」
「そ、そこまで美味しいの?」
キリトがハードルを上げてくる。
だがプレッシャーはない、そのハードルをさらに超えてみせる!
それにフィリアも興味を持ってるみたいだ。
やはり女の子として甘いものは食べたいのだろうか。
「それじゃあ一口だけ…」
警戒はしているみたいだが、それでもケーキというのは魅力的だったのか。
おずおずとケーキを口に含む。
「…っ!?お…」
「お?」
「…おいしい」
「よっし!喜んでもらえてなによりだ!」
一口食べただけだが、フィリアの顔が幸せそうなのがわかる。
本人は恥ずかしいのか、隠そうと必死だが。
実際二口目三口目と進んでいるので、全く隠せてはいない。
「(にやにや)」
「…何よその顔は」
おっと、ポーカーフェイスを忘れてた。
「いや、なんでもないよ。ただ、美味しそうに食べてくれてよかったなあと思って」
「そ、そんなこと言ってないでしょ!ま、まあこの世界の食べ物にしてはなかなかの味だけど」
そんなことを言いつつもケーキは残さずに食べきるフィリア。
こりゃ相当気に入ってもらえたかな。
ツンデレおつ。
「とまあ自己紹介はこんなところにして、キリトに現状についていくつか確認したいんだが」
「っと、そうだったな。とは言っても俺もそんなに知らないんだけどさ」
ケーキの件でフィリアとは仲良くなれたような気がしなくもないが、それ以上に今置かれた状況について情報が欲しい。
「とりあえず俺の状況から話すか。今朝急にアスナさんからキリトの行方がわからないと聞かされて、お前を捜索していたんだ。そして目撃情報のあった76層の森で急に転移させられて、気がついたらこの森にいた。こんなところかな」
正直この状況では何もわからない。
完全に迷子状態だ。
「そうか、それは迷惑をかけちゃったな…」
「過ぎたことはもういい。それよりそっちの状況を教えてくれないか?」
「ああ。俺もここに来た時の状況はフォーレンと同じような感じかな?76層の森を探索していたら、急に空間が歪んだ感じになって、気づいたらこの森に転移していた」
「ふむ、それから?」
「そうしたら突然短剣で襲撃を受けてさ。それがフィリアだったんだけど」
「襲撃!?おいおい、物騒な話だな」
「ああまあ、それはいいんだ。それよりそこには75層のフロアボスであるはずの、スカルリーパーっていうモンスターがいたんだ」
「襲撃については気にしない方向なんだな…ってフロアボス!?75層の!?」
「あ、ああ。でも本物のスカルリーパーよりはステータスが弱くてさ、俺とフィリアの二人でなんとか倒したんだ」
「へ、へえ~。フロアボスを相手に二人で、ね…」
なんてトンデモ展開。
いや待てよ?
そういえばキリトは74層のフロアボスを単身で倒したとか言ってた気が…。
マジでこの子何者なんでしょうねえ。
「そしてそのあと、フィリアにこのエリアのことを聞きながら森を歩いている時に、フォーレンを見つけたってわけだ」
「ふむ、なるほどな」
キリトもこの森についてはあまり知らないのか。
だが今の話を聞くと、フィリアは何か情報を持っている、と。
今の状況では聞いてみるしかないか。
「フィリア、君はこの森について何か知っているのか?」
「…うん。少なくともキリトはフォーレンよりは長くいるからね」
そう言う彼女の表情はあまり優れない。
何か言いたくないことでもあるのかな。
「その前に、あなた達は聞かないの?」
「何をだ?」
そう返すと、フィリアが自分の頭の上を指差す。
「あたしのプレイヤーカーソル。オレンジなんだよ?」
「ん?ああ、そうだな」
オレンジカーソル、つまりは人を、他のプレイヤーを傷つけた、もしくはキル(殺害)したという証だ。
「なんとも思わないの?あたしね、人殺しなんだよ…?」
うつむきながらか細い声で話すフィリア。
だが俺とキリトの反応は予想していたものとは違うようだ。
「人殺し、ね。この世界でのことを言うのならそれが仕方のない状況というのもある。例えば正当防衛なんて状況もあるだろう。まあ人殺しを肯定するわけじゃないけど。それでもなんの事情も知らずに『オレンジだから』という理由だけで人を避けるようなことはしたくないかな」
さらに言うのならフィリアの人柄が良さそうというのも理由の一つ。
それが演技だというのなら騙されたこっちが悪いのかな。
でも会う人全部を疑ってたらこのsaoの世界じゃ完全に孤立してしまうし、そんな生き方をしようとも思わない。
「俺もフォーレンと同じかな。俺だってやむを得ない状況で人を殺したことがある。それを正当化するつもりは俺にはないし、この先の人生で背負わなくちゃ行けないものなんだって思ってる。フィリアもそうなんじゃないか?君の様子を見てると、殺したことを悔やんでいるようにも見える。そんな女の子を放っておくほど、俺たちは薄情じゃないぜ?」
「二人とも…ふふっ、お人好しなのね、それもとびっきりの」
「ははっ、人を疑って生きるよりは良い生き方だと思うよ?」
「そうね…。ごめんね、なんか湿っぽいこと話しちゃった」
先程までの表情から一転、彼女の表情は少し明るくなったような気がした。
それが例え強がりだとしても、少しは気が晴れたのかもしれない。
「それじゃあ気を取り直して、このエリアについて話すわね」
「おう、よろしく頼む」
そう言って彼女は歩き始めた。
俺とキリトも黙ってあとに続く。
「この先…あっ、そろそろね。とりあえず森を出れば話しやすいから、そこまで歩くわ」
「森を出るのか」
なぜ話をするだけでそこまで?と思ったが、疑問はすぐに晴れた。
「あれは…なんだ?」
俺たちが目にしたのは宙に浮かぶ城…。
それだけを聞くとまさにアイン・クラッドのようだが、それとは違う。
本家のアイン・クラッドよりは大分小さいようだ。
「あれがこのエリアの中央…『管理区』よ」
「管理区?」
「ええ。ここはアイン・クラッドとは違って、階層構造ではなく、エリア構造なの。あの管理区は謂わば他のエリアへの入口。他のエリアへ行くためにはあの管理区から転移して入るのよ」
「へえ、要するに各階層にある転移ゲートみたいなものか」
「そうね、そう考えてくれていいわ」
「じゃあそこに行けば俺たちはアイン・クラッドに帰れるってことか?」
「そうか、管理区がゲートと同じ役割なら、帰ることも…」
俺とキリトがそう考えたが、そこでふと気づく。
(待てよ?だとしたら向こうでこのエリアについての情報がないのはおかしくはないか?それに向こうからこちらへ来るための手段もなく、俺とキリトは自分の意思と関係なくここに飛ばされた…つまり)
「残念ながら、向こうの世界に帰るのは無理だと思うわ」
「えっ!?どうしてだよ!」
キリトが叫ぶ。
ここまで感情的になるのはらしくないが、気持ちはわかる。
「管理区とアイン・クラッドを行き来するには、特別な権限が必要なの」
「権限だって?」
「そう。このエリアはアイン・クラッドとは別の空間で、ここに来るためには本来その権限が必要なのよ」
「権限か…でもだとしたら俺とフォーレンはどうしてここに来たんだ?権限なんて二人とも持っていないはずだけど…」
「確かにそうだが、それについては簡単だ」
「へっ?」
「俺とキリトが置かれた状況は同じ、つまりはこの世界のシステムバグだろう」
「システムバグ…何か最近起きることってほとんどその一言で片付いてるんだよなぁ」
スキル不具合に始まり、リーファのこと、シノンのこと…確かに多いな。
「でも納得だろ?」
「そうだな…だからといって解決するわけじゃないけど」
「そうね。あたしもおそらくだけど、システムバグでここに飛んできたの。ごめんなさい、あまり役にたてなくて」
フィリアが申し訳なさそうにそう言ってきた。
「いやいやそんなことないって。情報がもらえただけでも充分助かったから!それに元はといえばキリトが全部悪い!うん、多分」
「なんで俺!?責任全部押し付けるのかよ!」
「まあまあ、そんなまじで怒るなって」
「いや、ツッコミ入れただけでそんなに怒ってはいないけど」
「え?だってあまりの怒りで手が光って…え…?」
「え…?」
キリトは気づいていなかったようだが、キリトの手の甲が光りだしていた。
突然のことに俺たち三人は動揺してしまったが、次第に光は収まり、代わりにキリトの手の甲に紋様が浮かんでいた。
「な、なんだこれ…?」
「これはまさか…管理者の刻印…?」
「刻印?なんだそりゃ」
「さっき言っていた権限よ。その証として刻印が浮かぶの」
へえ、つまりはキリトが管理区の権限を得て…ってまじかよ。
「キリト、お前が管理者だったのか…」
「違えよっ!俺だって何が何だか…」
キリトにも身に覚えがないのか。
となると完全に八方塞がりだな。
「でも刻印があるってことは」
「そうか!管理区からアイン・クラッドに戻れる!」
「そういうこったな。何はともあれこれで一件落着かな」
権限云々についてはよく分からないが、せっかくあるのなら使わない手はないな。
「じゃあ早速戻ろうぜ。アスナさんたちも心配してるだろうし」
「そうだな。フィリアもな!」
そういえばフィリアはここに来てから戻れずにいたんだっけ。
でもキリトが権限を得たんだし、一緒に帰れるな。
「…ごめん、あたしは一緒には行けない」
「えっ?なんでだよ」
「ごめん…理由は、よくわからないんだけど、あたしは刻印があっても向こうには帰れないの。そう、決まっているから…」
理由がわからない?
この世界に来てしまった以上は、向こうへ帰ることもできるはずだが。
「本当にごめんなさい。でも、管理区で試してみればわかるけど、あたしは行けないのよ」
「そんな…そんなことって!」
「落ち着けよキリト。とりあえずその管理区に行ってみよう。話はそれからだ」
フィリアの言うことが本当なのかどうかは行ってみればわかるし、そのあとのことはその時考えよう。
「くっ…そ、そうだな。わりい、ちょっと感情的になった。フィリアに怒鳴っても仕方ないことだし」
「そうそう。とにかく管理区へ向かうぞ」
・
・
・
―管理区―
「ここが管理区か」
「ああ、それらしい雰囲気もしてるな」
そこにあったのは大きなマップのモニター(おそらくこのエリアのマップかな?)と、大きなシステムコンソールだった。
管理区というだけのことはあるな。
「そこのコンソールを操作すれば、アイン・クラッドに帰れるはずよ」
「これか…」
そう言ってキリトがコンソールを操作する。
「よし、確かにこれならアークソフィアに転移することができそうだな」
「そうか。じゃあまずはフィリアが転移出来るかどうかやってみてくれ」
「フォーレン…」
「フィリアも言ったろ?試してみるだけ試してみるさ」
「うん、ありがと…」
感謝されるようなことはしていない。
が、あえて否定はしないでおこうか。
「それで、どうだ?キリト」
「今やってるんだが、何回やってもエラーが表示されるんだ。どういう事なんだ?」
「やっぱり…あたしは行けないのよ」
「フィリアの言ったとおりだったか。システムで拒否されてるんならこれ以上は手が出せない、か」
「フォーレンっ、まさか…」
「勘違いするなよ。ここでフィリアを見捨てるわけないだろ」
「えっ?どういうこと?」
「俺とキリトはどうしようもなくお人好しなんでね。今すぐ助けられないなら助かる道を見つけるまで探すってことで」
「だな。まあとは言え今日のところは一旦戻っておかないと、アスナ達にも心配をかけてるし…」
「お前は特にな。キリトの刻印の権限で、アークソフィアとここはつなげたんだよな?」
「ああ。でもここに来れるのは刻印を持つ俺と、もう一人が限界みたいだ」
ふむ、ここに来れるのはキリトと誰か一人か。
パーティを組んで数人で来るのは無理みたいだな。
「それでも十分だ。俺とキリトで来ることができるしな」
暇な時間があるならキリトとアスナさんとかで来てもいいと思うけど。
「え、えっと、つまり?」
「んーと、要約するとだな。明日から俺たちが来て、このエリアの探索を手伝う。そして、フィリアがアイン・クラッドに帰れる方法を探すってことだ」
探して見つかるようなものなのかどうかはわからないが、それは探してみなけりゃわからないことだ。
「といっても俺はそんなに探索慣れしてるわけでもないし、探索はキリトに任せるけど」
「おう!俺も攻略の合間を見てくるからさ!一緒に帰る方法をさがそうぜ」
「フォーレン、キリト…うん、ありがとう二人とも」
「どういたしまして、と言いたいところだけど、お礼は無事帰る手段を見つけてから言ってもらいたいかな」
「ふふっ、そうね。頼りにさせてもらうわ」
うんうん、いい笑顔だね。
女の子はやっぱり笑ってる顔が一番いい。
「それじゃあまた明日。明日も何か甘いもの作って持ってくるから、楽しみにしててよ」
「ほんとっ!?あ、あたしイチゴのケーキが食べたい!あっあっでもでも、ガトーショコラとかチョコのケーキも食べたいし…さっき食べたチーズケーキもまた食べたいし…」
「そんなに欲張らなくてもたくさん作ってくるから…」
「ははは、さすがフォーレンのドラッグスイーツ、また常連さんができたな」
「ドラッグケーキ!?」
「ああいや、本当に薬が入ってるわけじゃあないよ?」
「巷ではドラッグを飲んだかのように幸せな気分になれるスイーツ、と有名なんだよ。コイツの喫茶店のデザートは」
まったくもって訳のわからん評価だが、褒め言葉なんだと受け入れている。
てかそんな噂になったのもアルゴのせいだが。
「へ、へえ…そうなんだ。でも納得かも」
フィリアも一瞬引いていたが、勝手に納得された。
解せぬ。
「じゃあ明日はショートケーキでも作るか。それはそうとそろそろ戻らないと、喫茶店が機能しなくなるんだよね」
「唯一のシェフがいなくなればそうなるよな」
「フォーレンの喫茶店か…うん、アイン・クラッドに戻れたら絶対行くわ」
「楽しみにしていてくれ。それじゃあまた」
「うんっ!楽しみに待ってる!」
あれ、フィリアがどことなく餌を待ってる犬に見えて…。
気のせいか。
今にもよだれを垂らしそうなフィリアに別れを告げ、俺とキリトはアークソフィアへと転移した。
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「ふふっ、面白い二人だったなぁ。特にフォーレン…」
少女は先程までいた少年たちを思い浮かべる。
「ケーキのことも楽しみだけど、それ以上に何か、温かい感じがして」
今まではずっと独りだった。
このデス・ゲームに来てから、そしてこの世界、『ホロウ・エリア』に来てから。
ずっと独りだった。
(だけどフォーレンたちと話すのは、楽しかったな)
胸に残る温もりを感じつつ、少女は明日はどんな一日になるか、密かに楽しみにしていた。
「明日が楽しみ。こんな気持ち、しばらく感じてなかったよ…」
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そしてアークソフィアにて。
「「すみませんでしたあああぁぁ!!」」
「まったく、私がどれだけキリトくんのこと心配したかわかる!?それにフォーレンくんも、キリトくんを探しに行ったまま行方不明になるなんて…」
「まったくよ。キリトもフォーレンもバカよバカ!」
「で、でもでもっお二人共無事で良かったです!」
「う、うんそうだよねっ!お兄ちゃんもフォーレン君もこうして帰ってきたわけだし…」
「いえ、そう簡単に許してはダメよ、シリカ、リーファ。フォーレンがいなかったおかげでお店は営業できないし、お昼もケーキも食べ損ねた。この罪の重さがわからないあなたたちじゃないでしょう?」
「えっと、し、シノン?俺とシノンの関係はそんなドライな関係でしたでしょうか…?」
「は?何か言ったかしら?」
「…いえ、なんでもございません」
「あははー、リズもシノンもすごい剣幕だねー。…二人が帰ってくるまで今にも泣き出しそうなくらい心配してたのに」
「「ちょっ!?ストレアさん!?」」
慌ててストレアの口を(物理的に)塞ぐ二人。
「むぐぐっ!?く、くるしい…」
「ん?ストレアはなんて言ったんだ?」
「なんでもないわよっ!」
「あんたは黙ってキリトと正座してなさい」
「あ、はい…」
今日も今日とて女性陣には頭の上がらない、キリトとフォーレンだった。
手元に既にホロウフラグメントがなく、ストーリーや設定など、あやふやで間違っているところもあるかと思います。
本当に申し訳ない…。