今回はみなさんお待ちかね、あのキャラとの絡みを!
「フォーレン、これ見た!?」
時刻は朝9時。
店をあけた途端にリズが突入してきた。
「朝っぱらから騒々しい。どうしたのさ」
リズと知り合ったのは数ヶ月前だが、こんな朝早くに訪ねてきたのは初めてのことだ。
「どうしたもこうしたもないわ。これ、今朝の新聞なんだけど…」
そう言って手に持っていた新聞を見せてきた。
「なになに…第40層で新イベント発生。受諾権利は生産職のみ!だって?」
一面に大きく載せられた記事にはそう書かれていた。
なお俺は新聞をとっていないのでそう言った情報は全て情報屋から仕入れている。
「アルゴからは何も聞いていないし…発覚して間もないのかな」
ちなみにアルゴとは、「鼠のアルゴ」という二つ名を持つ情報屋のことだ。
その腕はこの世界でも随一で、よくお世話になっている。
「今朝になって急に見つかったのよ。なんでも期間限定らしくて、今週いっぱいしかやってないみたいなの」
「今週いっぱいって、明日までじゃないか!ったく、なんでもっと早く見つからないかな…」
新聞を詳しく読むと、40層をホームにしているプレイヤーがそこの武具屋の主人からこのクエストを見つけたらしい。
だがそのクエストは生産系のスキルを持つものでなくては反応しないらしく、今回見つかったのもの偶然の極みだろう。
「クリアしたら絶対レアアイテムが手に入ると思うの!で、あたし一人じゃクリアできるかわかんないからあんたにも手伝わせてあげるわ!」
「なんで上から目線…まあいいや。俺もそのクエストには興味あるし」
生産職限定のクエストということはクエスト報酬はおそらくレア素材…
先日ドラゴンの素材を扱って思ったが、どうやら俺は本格的に職人気質らしい。
(まだクリアできたわけでもないのに気が高ぶってくるぜっ)
それを使って何を作ろうか、攻略組の誰かに渡して戦力増強するのもいい、なんてことを考え、リズの提案を受けることにした。
「そうと決まったら早速行こう。時間もないことだし」
「ええ!腕がなるわ~」
鍛冶屋とはいえ同じ職人。
俺と同じくリズもこれから作る武器に対しての期待が大きいのだろう。
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「ここが40層か。なんだかんだでちゃんと見るのは初めてだな」
「そうね。特に街中で有名なものがあるわけでもないし、あたしも滅多に来ないわ」
ここが最前線だった当初こそ攻略組の連中で賑わっていたのかもしれないが、今となってはここの層にいるプレイヤーはほとんどいない。
理由としては、目立った観光名所がない、おいしいクエストがない、レストランの味がまずい、などある。
俺も一度ここで飯を食べた時は二度と来ないと決めていたが、レストランと無関係なクエストなら問題はないだろう。
「にっしても全然人がいないわねー。新しいクエストが発見されたんだからもっと賑わっていてもおかしくないんじゃない?」
「それだけ生産職が希少種ってことかな。それもまだ未踏破の新クエストに前情報なく挑もうなんて奇特な生産職は、俺たちくらいでしょ」
「それは言えてるわね…」
生産職プレイヤーの大半は、レベリングのやり方も知らず、プレイングの全てを他プレイヤーのバックアップに回している者達だ。
まあ中には貴重な素材を自分で手に入れたがる俺やリズのような人もいるが、その気になれば素材は取引で手に入るし、オーダーメイドの場合は注文者から直接素材を受け取る。
よって生産職プレイヤーはダンジョンに入らなくても生活ができるのである。
そんな生活を長く続けていれば、戦闘技術は衰えるし、モンスターと戦う上で最も重要な「度胸」がつかない。
そんな人たちがいくらレアアイテムのためとはいえ情報のないクエストにぶっつけ本番で挑むなんてことがあるだろうか。
「情報がはっきりしてれば受ける人も多くなるだろうけど…そもそもまだ受けた人いないんじゃないか?」
「んー、それは否定できないわね。クリアした人がいるなんてのは当然聞いてないし、情報屋も何も掴んでないみたいだから…」
情報屋だって普通のプレイヤー。
当然生産系のスキルなんて持ってないだろうから、今回のクエストに自分からは参加できない。
それでも一流の情報屋ならば、あの手この手を駆使して他プレイヤーから情報を得ようとするのだが、それすらない。
つまりそれはこのクエストがまだ誰にも受けられてないか、受けた人間が全て死んだか。
その二つの可能性しかないのだ。
「俺たち以外は様子見だろうな。期間内に情報が得られれば動き、無理なら諦める。それが普通でしょ」
暗に自分たちが普通じゃないと強調したが、リズもそこは分かっていたのか特に口は挟まなかった。
「話しててもしょーがないわ!さっさと受けて、レアアイテムをゲットするわよ!」
「はいはい。もとよりそのつもりだって」
浮き足立つリズとは少々温度差があるものの、フォーレン自身も期待が高まっていた。
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「ここね」
「だな」
二人がたどり着いたのは一件の武具屋。
見た目はどこの階層にもある普通のお店だ。
店主にも特に変わったところはない。
「こりゃ気づかんわけだ。どっからどう見てもただの武具屋じゃないか」
「そうね。情報屋の予想では条件が『生産系スキル熟練度:500以上』って話だし」
そんなプレイヤーはここに居る二人も含めて十数人ほどしかいないのではないだろうか。
だからこそ高位の鍛冶プレイヤーは貴重な存在だ。
え?防具屋はどうなんだって?
店の雰囲気見たらわかるだろ、人気ないんだよ。
まっ、俺の店はまだまだこれからだけどね!
「なあにブツブツ言ってんのよ、行くわよ!」
どうやら声に出ていたらしい。
「あいよ。すみませーん」
リズに急かされ店主に話かける。
『らっしゃい…こんな寂れた武具屋へようこそ…ははっ客なんていつぶりかな…まあゆっくりしてってくれや…』
「「・・・」」
どうしたもんだろう。
まず一つ、元気なさすぎだろっ!
えっ、何このおっちゃん?なんでこんなにどす黒い不幸せオーラ出してんの?
病気なの?死ぬの?
「な、何よこれ…これもクエストに関係してるの?」
「だろうよ。じゃなきゃたかがNPCの店主がここまで感情むき出しなわけがない」
「そ、そうね…」
通常NPCとは、そのゲームのシステムが動かす意志のない存在だ。
とあるRPGでは「ようこそ、ここは○○の村だよ」の一言しか発しない村人がいるが、とにかく決まった動作・発言しかできない存在のはずだ。
それがどうしたことだろう。
今目の前にいる店主はNPCのはずなのに他階層の武具屋とはわけが違う。
不幸街道まっしぐらのネガティブ店主だった。
「とりあえず話を聞いてみるか。どうしたんですか?」
これがクエストである以上話を聞かなくては事態が進まない。
てか最初に『これ』見つけたプレイヤーはどう思ったんだ?
どう考えても普通じゃないだろ。
『どうもこうもねえよ…日に日に客足は遠のくし、固定客もほかの店に取られるし…店の売り上げは常に赤字だらけさ…』
どうやら店の経営について悩んでいるらしい。
いやこれは悩んでるどころじゃないな。
今にも外層から飛び降りて自殺しそうな勢いだ。
『せめてうちの店にも、もっと性能のいい装備があればなあ…防具や装飾品も入荷したのに性能がなあ…』
「はあ…。まあたしかに質のいい商品があれば経営は良くなるでしょうね」
「そりゃそうよね」
同じく店を持つリズとフォーレンだが、そのくらいは鍛冶職でなくともわかる。
『ん?あんたたち…もしかして鍛冶屋か?』
「ええ、そうよ」
「俺は防具屋だけどね」
『おおっ!こいつはいいっ!見たところお前たちは俺なんかよりもずっと腕が良さそうだ…どうだ?俺の代わりにうちの商品を作ってくれねえか!?』
ピコンと、黄色い『!』が店主の頭上に現れた。
「クエストフラグが立ったな」
「そうみたいね。いいわよ、作ってあげる」
『おおっ、本当か!?ありがてえありがてえっ!早速こっちに来てくれ!』
さっきまでのテンションとはうって変わり、店主はご機嫌な様子で裏の工房まで案内してくれた。
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『こいつがうちにある商品だ…』
「うっ…これは」
「・・・ふつー…」
部屋に入り見せられた武器・防具の数々はどれもこれもそこらの街で売られているものばかりだった。
「当然っちゃあ当然か。それで、俺たちは何を作ればいいんだ?」
『ああ、うちの商品の中で一番性能の高い武器と防具がこれなんだが…』
手に持っているのは片手剣の『シルバーソード』と体防具『シルバーアーマー』だった。
この『シルバー』系の装備は、31層~40層までの階層のNPCショップで売られているごくありふれた装備だ。
だが31層から売られているアイテムのため、40層まで来ると購入に来るプレイヤーなんてほとんどいないだろう。
「まあ予想通りだな」
「そうね。まあこんなもんでしょ」
性能を見ても特に変わったところはない。
『あんたらにはこれを超える性能を持つ装備を作って欲しいんだ』
要するにリズには『シルバーソード』を超える片手剣を、俺には『シルバーアーマー』を超える装備を作る、これが今回のクエスト内容だろう。
「なんか思ったより簡単だな」
「そうね。武器のレベルも低いし、このくらいなららっくしょーよ!」
俺たち二人のスキル熟練度なら『シルバー』クラスを超える装備は容易に作れる。
そう思っていた矢先に、店主が予想外の発言を加えた。
『いやあ助かるぜ!材料はこっちで用意するからな。ほら、「銀晶鉱石」だ』
「「へっ?」」
『じゃあこれで明日までに俺の作ったものを超える装備を作ってきてくれ!頼んだぜ!』
にかっと笑う店主に促され、俺たちは店の外に追い出された。
「なあリズ、これってもしかして…」
「さらなる制限、かしら…?」
「みたい、だね」
俺とリズはそろってアイテムウインドウに表示された『銀晶鉱石』を見る。
「要はさっきみたあの装備を作って、なおかつ通常より性能のいいものにしろ、と…むちゃくちゃだな」
「ってか無理でしょ!」
リズが激怒するが、起こっても状況は変わらない。
「確かにな…『シルバーアーマー』を作るのは問題ないけど、性能を高く、か…」
そう、既存の購入可能装備というのは、プレイヤーメイドでも作りやすい部類なのだが、そのメリットは買うより安く済む、というものだけである。
何が言いたいかというと、装備そのものの質が上がることはまずない。
なぜならプレイヤーメイドとは違い、システムによってその値が決まっているからだ。
「こりゃ無理だわ。そんな武器が作れるなんて聞いたこともないもの。残念だけど、あきらめましょうか」
「…それはちょっと早いじゃないかな?」
「えっ?」
口元に手を当てながら思考を巡らせる。
「確かにこの内容自体は不可能に近い。でも実際にクエストとして存在している以上、抜け道があるはずだ」
「抜け道?」
「ああ。生成した装備の質を底上げする方法…それがもしあるとしたらこれからの生成もかなり助かる」
「確かにそれはそうね。そんな方法があるなら売上だってがっぽがっぽよ」
がっぽがっぽて、まあいいか。
「それにせっかくの限定クエストなんだ。そう簡単にクリアできたんじゃ面白くない」
にやりと笑い、さらに思考を巡らせる。
「とはいえ現状ではあまりにヒントが少なすぎる。何か情報が欲しいな…」
そう言いながらフレンドウインドウを開く。
「何してるのよ?」
「ちょっと情報屋にな。少しでもとっかかりが欲しいんだ」
ウインドウを操作し、信頼の置ける情報屋「鼠のアルゴ」にコンタクトをとる。
「どう、何かわかった?」
「ん~アルゴも正確な情報は掴んでないみたいだ」
「そっか…」
「でも今回のクエストの情報と引き換えに、都市伝説だったら教えるってさ」
「都市伝説って…ちなみにどんな?」
話だけでも聞いてみようと思ったのか、聞く耳を持つリズ。
「ひとつは…装備を一万回作ったら新しくエキストラスキルが出る、だと」
「一万回!?そんなに作ってる時間ないわよ!」
俺とリズが今までに作ってきた装備は、熟練度揚げの時を含めてせいぜい千を超えてるかどうかくらいだ。
「そもそも俺たちでさえ一万回なんて遥か遠い回数なのに、他に達成できたプレイヤーがいるとは思えないな。まあこれは完全に憶測から出た噂話だろう」
「もっとまともなのはないわけ?」
あまりに信ぴょう性のない話にリズが苛立っているが、メッセージに書いてあるのだから許して欲しい。
「もうひとつあるぞ。えっと、47層の思い出の丘のさらに奥地、そこの洞窟で鍛冶プレイヤーのパワーアップアイテムがあるとか」
「う~ん、ちょっと漠然としてるけど、何も無いよりましね」
「ああ。場所がわかってるだけでもそこに行ってみる価値はありそうだ」
もし何もないならまた考え直せばいい。
期限の明日まで。
それまでにできることはやってみよう。
「決まりねっ!じゃあぱっぱと47層までいきましょ!」
「リズに言われるまでもない。せいぜい足引っ張らないようにね」
「あたしのセリフよ!」
ゴツンとげんこつを喰らうが圏内なのでダメージはない。
とはいえ彼女はマスターメイサー、まあ足でまといにはならんだろ。
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あれから一時間ほどで47層、思い出の丘までやってきた。
「やっと丘についたわね…もうへとへとだわ」
「あれだけヌルヌルやられてちゃ無理もないな。リズはもっと避けることも考えないと」
ここまで来る途中に頭が花、足が根のようになっている、食虫植物のような外見のモンスターと度々遭遇した。
その度に戦闘になり、AGIが低いリズは何回もその溶解液をくらっていた。
そしてその都度俺が防具を直し、リズが素っ裸になることはなかったが、リズは体力的にも精神的にも疲れていた。
「あとはここから奥に進むだけだよ。帰りは転移結晶がつかえるんだし、もうちょっとの辛抱だ」
「はあ…これで何もなかったら最悪だわ…」
この先にクエストの鍵になるものがあると信じて、先に進む二人だった。
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そしてたどり着いた洞窟。
ダンジョン名は『職人達の工房跡』。
「ダンジョンの名前からして明らかに何かありそうだな…」
「そうね。ていうか何もなかったら許さないわ。フォーレンを」
「なんで俺!?」
「あんたの情報でここまで来たんでしょ!おかげで恥ずかしい姿いっぱい見られたし…うぅ」
先ほどの溶解液のことを思いだし赤面するリズ。
「ま、まあ俺は何も見てないから気にしない気にしない…」
「あたしの服縫ってたんだから見てないわけ無いでしょ!」
ばれてーら。
「今回は緊急事態だったから仕方ないけど、次はないと思いなさい!」
「い、いえっさー…」
次があったら何されるかわからんな。
以後気をつけることにしよう。
「それにしてもここは全然モンスターがいないな。こっちとしては助かるけど」
「そうね。あたしとしては拍子抜けだけど」
さっきまでへとへとだったやつがよくゆう、と思ったが口には出さない。
進んで阿修羅を召喚する気はないのですたい。
「ねえフォーレン、あそこ」
「ん?あれは…扉か?」
一本道を進んできてみると、大きな扉に到達した。
その扉は開閉された形跡がなく、扉全体には模様が描かれていた。
「これは…剣と、盾か?」
「どうみてもそうよね。工房っていうくらいだしそれにちなんでいるんじゃない?」
「みたいだね。どうやって開けるのか…」
そう思っていると、不意に声が響く。
『ここを訪れた職人プレイヤーよ、よくぞ参られた』
「これは…クエストか?」
『ここを訪れた諸君らに試練を与える』
「試練って…まさか」
「十中八九バトルだろうね。クエストボスか」
「う~そんなの久々にやるわよ…」
「泣き事言わない。リズは結晶を用意して、緊急時にはすぐに脱出できるようにしておいて」
「なにキリトみたいなこと言ってんのよ。あたしだって伊達にマスターメイサーやってないわ。足は引っ張らないから」
前にキリトと何があったかは知らないが、逃げる気はさらさらないようだ。
「オーケー。じゃあ全力でかかろうか」
「もちろんよっ!」
『これより諸君らが我の宝を持つにふさわしいかどうか…試されてもらう』
「宝ね…いいだろう。もらっていってやるよ」
例のごとく針を構え、臨戦態勢をとる。
「どうして男ってこう、バトルになると性格変わるかな…まあいいわ。あたしも負ける気はないし」
隣のフォーレンの笑みに呆れ果てるリズだったが、棍を冗談に構え、こちらも臨戦態勢をとる。
すると扉から俺たちの倒すべき敵が現れた。
「『プラチニウム・ゴーレム』か。硬そうだね…」
「あたしは武器の属性的に有利だけどね」
リズの持つ『片手棍』は、その攻撃、及びソードスキルが打属性に分類される。
他にも『斬』『突』と種類があり、打属性はゴーレムのような岩石系のモンスターに強い。
「俺はちょっと苦手かなー」
「刃こぼれしたら二割引で整備してあげるわ」
「…その時はよろしく」
愛用している短剣を見ながらそう答える。
「さて行きますか」
「ええっ!」
『ゴォォォ』
俺たちのタイミングを見計らっていたかのように、ゴーレムが襲いかかってきた。
「リズ!さっきみたいにやたら攻撃喰らうなよ!コイツはさっきの雑魚とはダメージの桁が違う!」
「わかってるわ!動きもノロいし、当たんないわよ!」
迫り来る岩の腕を躱しつつ、的確にゴーレムに攻撃をあてていく。
「はっはあっ!」
片手棍・下位スキル『パワー・ストライク』を放ち、若干のスタンを喰らうゴーレム。
「もらった!はああっ!」
それに続き短剣・重攻撃スキル『インフィニット』を放つ俺。
「どうだっ!」
見るとゴーレムのHPが一割ほど削られていた。
「よし、思いのほか効いてるわっ!」
レベル差が物を言うのがこのMMOの世界だが、俺とリズは中層プレイヤーの中ではトップクラスのレベル。
鍛冶職向けに作られたクエストのボスよりもレベルが高いのは必然だったのかもしれない。
「いくわよっ、スイッチ!」
「了解!はあっ!」
リズがゴーレムの腕をソードスキルで弾き上げ、その硬直時間に俺が懐に潜り込んだ。
「くらえっ!」
片手剣・上位スキル『アクセル・レイド』を放つ。
その怒涛の九連撃に、ゴーレムのHPはみるみる減っていく。
「まだまだぁ!」
そこから一息すらつかせず、硬直時間が切れるのと同時に次のスキルを放つ。
だがゴーレムも負けていられないと思ったのか、ぎりぎりのタイミングでカウンターをくらってしまった。
「ぐうっ!?くそっ…」
「っ!?フォーレン、前!」
「えっ?うわあっ!?」
一撃だけじゃ許してくれないのか、ゴーレムが追撃を仕掛けてきた。
「くっ、HPが…」
連続で叩き込まれた攻撃に、俺のHPはレッドゾーンギリギリまで追い込まれていた。
(こんなことならVITをもっとつけとくんだったな…)
なおも攻撃を加えようとするゴーレムを見つめながら、交わすルートを探す。
(くっ、どこに躱す!?)
壁際に追い込まれたこともあり、逃げ場は見つからない。
「なに、やってんの、よっ!」
「リズっ!」
「ぼさっとしてないでさっさと体力回復させなさい!じゃなきゃあたしが倒しちゃうわよ!」
「悪い、すぐに回復を…」
アイテムウインドウを開こうとしたその時。
目線の先でゴーレムに異変が起きていた。
(あの色は…スキルかっ!?)
ゴーレムの腕の色が紫色に光ったのだ。
リズが俺を助けたこともあり、敵のヘイトは完全にリズに溜まり、それに伴いターゲットもリズに合わされてる。
(やばい!リズはあれに気づいていない!?)
ゴーレムのスキルに気づいていないリズは、そのままゴーレムに攻撃を加えようと構えに入っていた。
「くそっ、間に合えっ!」
自分のHPのことなど頭から消え去っており、何ふり構わずリズのもとへ走り出す。
そのとき、ゴーレムが腕を振り上げ、リズめがけて振り下ろした。
「えっ!?う、うそっ!?」
「リズーっ!」
ドゴッ!
「え…ふぉ、フォーレン!」
「ぐ、あ…」
目の前の光景が信じられないのか、リズが目を見開く。
フォーレンのHPがレッドゾーンを優に超え、その赤色さえも消え失せた。
「う、うそ…うそよっ!」
思わず目から涙があふれ、視界がぼやけた。
その歪んだ視界で青いポリゴン片を確認したとき、リズは膝から崩れ落ち、うつむいてしまう。
「な、なんで、あたしなんかかばって…死ぬなんて…」
「勝手に人を殺さないでもらえるか?」
「へっ…?」
聞こえてくるのは先ほどポリゴン片となってしまった『彼』の声。
「フォー、レン…?」
「ぼさっとすんな。まだ終わってないぞ。とはいってもお前は腰が抜けて動けないか」
膝から崩れたリズは、立ち上がることもできないようだった。
「ま、もう終わったけど」
『ゴォ、ォォォ…』
フォーレンが腕を振り下ろした瞬間、ゴーレムの両手・両足が一瞬でバラバラに解体された。
そしてゴーレムのHPはゼロとなり、ポリゴン片となって霧散した。
「ふう、今回はかなり危なかったな…さすがの俺も無理かと思ったよ」
「あ、あんた…ホントにフォーレン…?い、生きてるの…?」
「なーに泣いてんだ。俺はちゃんと生きてるだろ?」
「で、でもあの時、確かにHPが。それにポリゴン片になったのは…?」
「ああ、確かにHPは一回ゼロになったよ。でもポリゴン片になったのは俺じゃなくてブローチの方さ」
「ブローチ…?」
「『装備者のHPがゼロになったとき、50%の確率で蘇生する』。前に偶然と偶然が重なって奇跡的に作り出した、この世界でたった一つの装飾品だ」
そう、俺の身代わりになって消えたのは装飾品だった。
いやあ、保険としていつも付けてて良かったー…
今回はマジで死ぬかと思った…
「それで生き返ってすぐに『裁縫術』のスキルで奴を解体したんだ。まああいつ硬すぎたから関節に絡ませるのに時間がかかったんだけどさ」
実は最初から『裁縫術』を使っていたのだが、なかなか奴の関節を捉えられなく、仕方なく短剣で応戦していた。
さすがにそう簡単にはゴーレム系モンスターは切断できないし。
「そう。はああ~…」
リズは盛大なため息をついた。
「心配させちゃったね。ごめん…」
「ホントに心臓に悪いったらありゃしないわよ!後でケーキの一つや二つおごってもらわないと、割に合わないわね」
「はいはい。帰ったらいくらでも」
むしろ俺が作ったほうがうまいし、後でご馳走しよう。
「それより今はこのクエストだな」
「そうね。扉は開いてるようだし」
俺のHPを結晶アイテムで回復させたあとゴーレムがやってきた扉の向こうに向かった。
『よくぞ我の試練を達成した。諸君らには我の宝をやろう』
扉の向こうには宝箱が二つあり、それを前にしてまた声が聞こえる。
『最強の「矛」を求めるものは左、最強の「盾」を求めるものは右の箱を開けよ』
「最強の『矛』と『盾』か…」
「じゃああたしは当然左ね」
「俺は右だな」
お互いに頷き、二つの宝箱をあける。
「これは…『縫合達人の針』か。効果は『裁縫』スキル及び『裁縫術』スキルの強化。こりゃすごいな」
俺にぴったりの最高なアイテムだ。
「リズ、そっちはどうだ?」
「こっちには鍛冶用のハンマーが入ってたわ。これなら例のクエストはクリアできそうね」
「こっちも同じく防具制作用の補助アイテムだ」
これで二人共クエストに集中できる。
このアイテムの効果が確かなら、クエスト攻略は楽勝だ。
「じゃあとりあえず戻りましょうか」
「ああ。『転移』」
結晶アイテムを使い、すぐに例の武具店に向かった。
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・
『いやあ、あんたらすごいね!さすが俺の見込んだ人たちだ!』
「あったりまえでしょ!あたしの手にかかればこんなもんよ!」
「偉そうに…」
「なにかいったかしら~?」
「いえ何も…」
約束通り装備品を作り、店主に渡した。
そのあと報酬として、店主が家宝としている宝玉をもらった。
「あたしのは紅輪の宝玉で、あんたのは蒼輪の宝玉か…やっぱそれぞれ武器や防具に使えそうね?」
「だな。明日からいろいろ考えてみよう。今日はもう、疲れたよ…」
「あたしももうしんどいわ。武器作りはまたあしたね」
ホームの階層が違う以上、俺とリズはその場で別れ、後に自分たちの作る装備を見せ合うという約束をした。
いやあ、感想を見る限りリズって人気あるんですね。
この作品が生産職に関係してるからかな?