フォーレンの防具屋   作:ゴリ霧中

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通算UA10000突破。
さらに日間ランキングのしたの方にひょっこり顔を出すという嬉しい自体も重なりました。
みなさんこんな駄文に付き合っていただいてありがとうございます。
というわけで今回はHF編に入る前に、ほかの原作キャラに少し触れようかと思います。


第九話

ここは50層の市街区にある一つの店。

日中はアイテムの売買を行う店だが、ここの店主のプレイヤーの趣味なのか、夜には酒や摘みを出す飲み屋に変わる。

 

なぜ俺がここにいるのかというと…

 

「ったくよう、エギルは現実世界に嫁さんがいるし、キリトの野郎はよりにもよってアスナさんと結婚だあ?やってられねえぜっ」

 

「クライン、流石に飲み過ぎだと思うけど…」

 

「これが飲まずにやってられるか!ほれ、おめえも飲め飲め」

 

「いや、俺一応未成年なんだけど…」

 

「細けえこたぁ気にすんな。俺なんて高1の時から飲んでるぞ!」

 

まあ確かにこのSAOにある酒は、実際に飲んだような気になるだけの飲み物だし、そもそも法律がないのだから飲んではいけないわけではないけど。

 

俺がこの「エギルの店」にいる理由、それはクラインの愚痴に付き合うためである。

クラインのおごりということもあり、シリカとリズも来たそうだったが、展開を予想して遠慮してもらった。

 

ちなみにエギルとはこの店の店主の名前で、本人は攻略組にも参加するほどの腕利きだ。

さらに言うなら今日が初対面だったりする。

 

「すみませんね、エギルさん。騒ぐつもりじゃなかったんですけど」

 

「ん?ああ気にすんな、コイツはそう言う奴だってのは知ってるし、そもそも今はほかの客もいないしな。それと俺のことはエギルでいい。敬語もなしだ」

 

スキンの頭で黒人の血が入ってる彼は、一見強面で最初は随分とビビっていたものだが、話してみるとなかなかの人格者だ。

クライン曰く、「アイテムの売買にはかなりせこいから気をつけろ」とのことだったが、何かの間違いだろう。

 

「俺としてはクラインの相手をしてくれるだけでも助かってるんだ。いつもは俺だけで相手をする分疲れるからな」

 

「はあ、まあただ話を聞く分にはいいです…いいよ。そのうち疲れて寝るでしょ」

 

つい敬語が出てしまいそうになったがそれも仕方ないこと。

クラインは一応二十代とのことだが、それでもまだ若い方なので普通通り話せる。

だがエギルは少なく見積もっても三十代は超えているはずなので、つい敬語が出てしまう。

 

「聞いてんのかよフォーレンっ」

 

「はいはい聞いてるよクライン。独り身同士飲み明かそうじゃないか」

 

「独り身同士だぁ?おめえには周りに可愛い子が二人もいるじゃねえか!」

 

「二人…ってシリカとリズのこと?まあいつも一緒につるんではいるけど」

 

「そうなのか?お前も隅に置けないな」

 

にやにやしながらエギルが絡む。

 

「シリカっていう子はあの竜使いの子だろ?それにリズベッドって言えばあの武器職人の子か」

 

「そうですけど、別に何もないよ?本当にいつも一緒にいるだけだし」

 

「おめえはそう思っていても、向こうはどうなるかわかんねえだろ!もしかしたら二人ともおめえのことを…」

 

「んー、そんなこともないと思うけどなー。二人とも俺のことはよくお菓子作ってくれるひと、みたいにしか思ってないと思うけど」

 

「お菓子?フォーレンは料理スキルもとっているのか?ただでさえ防具屋のための裁縫スキルもとっているっていうのに」

 

「裁縫スキルは商売のためだけど、料理スキルは生活のためだからね。この世界で一番の娯楽といってもいい『食べ物』に気を使うのはおかしくないでしょ?」

 

エギルはそれとは別にこの店で料理を出しているみたいだが、俺はあくまでも娯楽。

美味しいものが食べたい、という純粋な欲求のために覚えたものだ。

 

「確かにそれもそれで一つの考えだな」

 

「そうかっ!料理スキルだよ!」

 

「ん?料理スキルがどうかしたの?」

 

急にクラインが大声を出して席を立った。

 

「料理スキルを覚えて甘いお菓子を作れるようになれば、俺もかわいこちゃんたちにモテモテ…なんで今まで思いつかなかったんだ!?」

 

なんて安直な…

俺とエギルは揃って呆れる。

 

「そうと決まれば早速修行だ!エギル、フォーレン、俺は用ができたから帰るぜ!」

 

会計をエギルに払い、一目散に店を出るクライン。

 

「馬鹿なやつだなー」

 

「料理スキルを上げるなんてそう簡単なことじゃないってのに…店で出してる俺でさえまだマスターしてないくらいだぞ?」

 

「あ、そうなんだ。てっきりもうマスターしてるものだと思ってたよ」

 

エギルは店で料理を出す分、料理スキルの使用回数も多くなる。

つまりそれだけ熟練度が上がりやすいと思ったが。

 

「フォーレンは今どのくらいなんだ?」

 

それは熟練度の話だろうと流れから察する。

 

「もうマスターしたよ。料理に関してならこのSAOの中じゃ誰にも負ける気がしないね」

 

「なにっ!?それは本当か!?」

 

「うん。なんならアスナさんよりもね」

 

「そうか…ふむ」

 

エギルが口元に手を当てて思案する。

なんだろう、何かに巻き込まれそうな雰囲気だけど…

 

そして不意にエギルの口元が歪んだ。

 

「えっと、じゃあ俺はこの辺で…」

 

「まあ待てフォーレン。もう一杯どうだ、おごるぜ?」

 

そう言って帰ろうとする俺を引き止めてきた。

 

「何か話でも…?」

 

「ああ。なに、お前にとっても悪い話じゃないはずだ」

 

「なんかあんまりいい予感がしないんだけど」

 

気のせいかな?うん気のせいだろ。

 

「お前の料理の腕を見込んで提案なんだが、この店で一緒に喫茶店を開かないか?」

 

「喫茶店?」

 

「ああ。この店は夜こそそれなりに客が来るが、日中はスペースが余ってるんだ。そこでそのスペースを使って喫茶店をやらないか、という提案だ」

 

「なんかそっちに全然メリットがない気がするんだけど、売上渡せ、とか言わないよね?」

 

「まさかっ。それにこちらにだってメリットはあるさ」

 

「ふーん、例えば?」

 

「その喫茶店で使う料理の材料をうちの店から仕入れる、ってのはどうだ?もちろんサービスはする」

 

「なるほど。それならそっちは定期収入が得られて、こっちは安く材料を仕入れることができる、ってことか」

 

「That’s right!そういうことだ」

 

ふむ。実際喫茶店はやってみたいとも思っていたし、これはいい機会かな?

開店するのに必要な『場所』と『仕入先』が確保できるのはありがたいし。

 

「そうだな…俺ひとりじゃ大変だろうから、ほかに手伝いを呼んでもいいかな?」

 

「その辺のことはお前に任せよう。というわけで承諾ってことでいいな?」

 

「ああ。じゃあ早速明日から準備を始めるよ。特に準備することも多くないし、そのまま開店できるかも」

 

「俺としては早く始めてくれるのは大助かりだ。それじゃあ任せたぞ」

 

「りょーかい。まあそれなりに頑張るよ」

 

ちょうどおごってもらった一杯も飲み終わったので、帰ることにした。

帰宅してからシリカに喫茶店の旨をメッセージで伝えると、「やりますっ!絶対やりますっ!」と快諾してくれた。

 

 

 

 

「それではこれより第一回・喫茶店で何出そう、メニュー考察会議を始めます」

 

「はーい」

 

「なんであたしまでいるのかしら…」

 

「そこはほら、流れで。どうせ暇だったでしょ?」

 

「そりゃそうだ…って暇じゃないわよ!あんたの店と一緒にしないでくれる?」

 

翌日の朝、シリカとリズを呼び出して話し合いの場を設けていた。

とは言っても喫茶店で何を作ろうか、というだけのものだが。

シリカはうちのスタッフとしてもちろん、リズにも協力を要請したというわけだ。

ちなみに報酬はうちの喫茶店で使える割引券。

 

「それじゃあ二人には俺が今まで作った料理の中で美味しかったものを聞こうと思う」

 

「うーん、どれも美味しかったですけど…」

 

「そうね。それこそ人それぞれの好み次第でしか優劣はつかないと思うわ」

 

俺の料理はそこまでの域に達していたか…。

 

「まあドリンクは定番の緑茶や紅茶、コーヒーを出すとして。ジュース類も一応出してみるか」

 

アルコールのたぐいは日中に売っても意味ないだろうし、夜になればエギルの店で出す。

うちの店は普通の喫茶店なのだからそれで問題ないだろう。

 

「フォーレンさんの出す紅茶は美味しいですし、人気出ると思いますっ」

 

「確かに、あの紅茶は女性プレイヤーには絶対ウけるわね」

 

「そうなるとそれとセット料金でケーキも出したほうがいいだろうな。どんなケーキがいいと思う?」

 

紅茶とケーキがセットだと思うのは決して俺だけではないと思う。

 

「チーズケーキだけは絶対必要です!」

 

「あんたホントに好きねえ、あのチーズケーキ」

 

うんうん、未だに一口でトリップしてるからな、アレ。

 

「だってあんなにおいしいんですよ!?あれだけは絶対に出すべきです!」

 

「わ、わかった。じゃあチーズケーキは決定っと。あとはそれこそ定番の苺ショートに、チョコレートケーキ。あとはモンブランとかも出してみるか」

 

「このままだとただのケーキ屋さんね。あんたパティシエにでも転職すれば?」

 

「それは困るな。じゃあ他の料理を考えようか」

 

「料理って言うと、オムライスとかでしょうか」

 

「そうね、ケーキが多いから洋風の喫茶店になりそうだし、メイン料理も洋食の物を出していけばいいんじゃないかしら?」

 

「洋食か…オムライスにハンバーグに、パスタ」

 

「あたしのオススメはビーフシチューね」

 

「あれも確かに美味しかったな。よし、採用。いやあ、やっぱり二人に来てもらってよかったな。俺ひとりだとどうにも決められなくて」

 

「いっそのこと作れるもの全部載せればいいんじゃない?」

 

俺が今作れるものか…

 

「そんなことしたらメニュー表がちょっとした辞書になるけどいいかな?」

 

「…あんたいつの間にそこまでレパートリー増やしたのよ…」

 

そりゃ日々研究を重ねていますから。

 

「喫茶店って言うからにはメニュー表は一枚の紙にまとめたほうがお客さんとしてもわかりやすいですよね」

 

「さすがに辞書みたいなメニュー表だと注文に困るわ」

 

「そういうことだな。じゃあメニューは今出た案を採用しよう」

 

メモを取り出し、エギルに注文すべき材料を考える。

価格設定は…原価からそこまで増やさなくてもいいかな?

最低でもシリカのバイト代くらいは稼げるようにしよう。

喫茶店の料理だしそこまで高額にしても売れないだろう。

 

「よし、じゃあこれを注文するとして、シリカ」

 

「はい?」

 

「接客マニュアルとか教えたほうがいいかな?」

 

シリカは多く見積もっても中学生くらいの年齢だろうからバイトの経験なんてないだろう。

その点俺は、店長の経験こそないが、現実世界で喫茶店のバイトをしていたことがある。

 

「えっと、お願いします」

 

「オーケー。まず何より重要なのが『笑顔』だ」

 

にこっ、と笑って見せる。

 

「笑顔、ですか」

 

それに続いてシリカも笑う。

が、その表情はどこかぎこちない。

 

「んー、もうちょっと柔らかくした方が…いつも俺やリズと話してる時みたいな可愛らしい笑顔で頼む」

 

「か、かわっ!?」

 

「ん?どうした動揺して」

 

横ではリズが何やらため息を吐いている。

はて?

 

「こ、こんな感じでしょうか…?」

 

落ち着きを取り戻したシリカがもう一度笑顔を作る。

 

「うんまあ及第点かな?まだ少しぎこちないけど、そのうち慣れると思うよ」

 

「わかりました、頑張ります」

 

手をグーにしてファイティングポーズをとるシリカ。

それだけやる気が出てれば大丈夫だな。

 

「それじゃあ俺とシリカはこれからエギルの店に行くけど、リズはどうする?」

 

「そうねえ、今日は予約も入ってないし、あんたらの店の最初のお客さんにでもなろうかしら?割引券もあることだし」

 

「それはありがたいな。思う存分食べて行ってくれ」

 

「あんたの料理なら言うまでもなくそうなるわよ…」

 

少し照れ気味にそっぽを向いてしまったが、来てくれるというのなら全力で料理しようじゃないか。

 

 

 

あれ?俺って防具屋だよな?

 

 

 

 

「フォーレンさーん、内装ってこんな感じでいいですかー?」

 

店の内装を任せたシリカが戻ってきた。

うんうん、落ち着いた店内って感じだな。

俺が思ってたとおりだ。

 

「うん、いい感じ。こっちも看板作り終わったところだよ」

 

「わあ、いいですねそれ」

 

俺の手元には少し大きめの四角い板が。

そこには『喫茶店・アルゲード』と書かれていた。

 

店の名前は悩んだが、結局50層の市街区の名前をそのまま頂戴した。

 

「時間は…ちょうど昼前か。よし、準備は出来てるし、このまま開店しちゃおうか?」

 

「ふぇっ!?も、もうですか。まだ心の準備が…」

 

「いいからいいから。シリカならできるよ」

 

シリカの頭を撫でながら落ち着かせる。

なんか余計に騒ぎ出しそうになったけど、開店に対しての緊張は少しほぐれたようだった。

 

「よし、喫茶店・アルゲード、開店だ」

 

「はいっ!」

 

店先に看板を立て、OPENの表示をかける。

 

「やっと開いたわね。待ちくたびれたわよ」

 

「いらっしゃいリズ。ほらシリカ、ちょうどいい。練習だと思ってリズに接客してみなよ」

 

「はいっ。いらっしゃいませー。お席までご案内します」

 

「はいはい。お願いねー」

 

シリカがリズを席まで案内し、こちらに戻ってきた。

 

「フォーレンさん、ビーフシチューを1つと、食後に紅茶とチーズケーキだそうです」

 

「了解。さあ作るか」

 

いつもより気合いを入れてウインドウを操作する。

実はこれが実際の喫茶店より優れていた。

料理が簡略化されており、注文から料理を出すまでの間が極端に短いのだ。

 

「ほいあがり。シリカ、頼んだ」

 

「はい。任されましたっ」

 

こちらも気合いを入れて料理を運ぶ。

傍から見れば体に力が入りすぎているようにも見えるが…

 

「お待たせしましたー。こちらビーフシチューです」

 

特にトラブルもなく料理を届け終わった。

ふう、注文一つでヒヤヒヤするな、シリカは。

 

カランコロンカラン

 

「お、早速次の客だ」

 

「いってきます!」

 

最初の客がリズだったからか、二度目はだいぶリラックスして接客に向かうシリカ。

 

「いらっしゃいませ。お二人様ですね、こちらの席にご案内します」

 

「お、かわいい」

「初めて見る喫茶店だけど、なかなかいい店だなー」

 

入ってきたのは(武装から見て)中層プレイヤーが二人。

さすがは50層、開店したてでも客は来るもんだな。

 

「オムライス1にミートパスタ1です」

 

「はいよ」

 

注文を受けてからまた料理を開始。

てか料理を作る俺よりもシリカにかかる負担が大きいな、これは。

 

「ほいあがりっと、シリカー」

 

「はーい」

 

ぱたぱたと歩いてくるシリカに皿を渡し、俺も仕事をしようと接客に向かう。

 

カランコロンカラン

 

おっ、早速客が来たな。

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

 

「あ、えっと、二人なんですけど」

 

「お二人様ですね。お席にご案内します」

 

入ってきたのは女性が二人。

俺が出て行くなり少し緊張しているようにもみえたが、どうしたんだろう?

 

「こちらがメニューになります」

 

「あ、ありがとう」

「(じーっ)」

 

「えっと、お客様?どうかなさいましたか?」

 

ひとりの方はともかく、もう片方はこちらをじっと見つめていた。

 

「あっなっなんでもありません!えっと、何にしようかなー」

 

「?」

 

腑に落ちないがなんでもないというのならそれでいいだろう。

 

「私はこのカルボナーラパスタをおねがい。あと食後に紅茶とチョコレートケーキを」

 

「かしこまりました」

 

「わ、私はビーフシチューと、食後に紅茶とチーズケーキ」

 

「かしこまりました」

 

「それとっ!スマイルをひとつ!」

 

「…はい?」

 

「あ、すみませんっ。なんでもないです…」

 

スマイル、笑顔か。

まあそのくらいならサービスしてもいいかな?

 

「・・・(にこっ)」

 

「はうっ!(ぱたり)」

 

え。

テーブルに突っ伏しちゃった。

 

「えっと…」

 

「だ、大丈夫ですから!気にしないでください!」

 

もうひとりの女性が顔を真っ赤にさせながら大丈夫だと叫ぶ。

まあ平気ならいいかな?

 

「それでは少々お待ちください」

 

注文を受け取り、厨房の方へ向かった。

シリカも注文を受け取ってきたようなので、早速料理を開始する。

 

「ほいシリカ。こっちお願いね」

 

「(むすーっ)」

 

「シリカ…?」

 

「…いってきます」

 

頬をふくらませてすねた様子のまま料理を運んでいってしまった。

なんだったんだ?

 

「お待たせしました。こちらカルボナーラとビーフシチューです」

 

料理を届けた時には既に目を覚ましていたので、先ほどのことは忘れることにした。

まあそのあとケーキを食べた時にシリカ同様トリップしてしまったのだが。

 

 

 

 

「ふう、そろそろ昼時も終わるし、落ち着いてきたかな?」

 

時刻は二時。

正午から喫茶店を開店したが、想像の5倍ほど忙しかった。

売上なんて防具屋をやってる時のひと月分にまでなっている。

 

「つかれましたー…」

 

「おつかれさん。はいこれ」

 

「これは…チーズケーキ!」

 

俺が手渡した皿を一瞬で奪い取り、自分の手元に持っていった。

そこまで好きなんか、このケーキ。

 

「客も落ち着いてきたし、ちょっと休憩してなよ。今席に紅茶持って行ってあげるからさ」

 

「ありがとうございます~」

 

目をうるうるさせながら感謝の意を伝えるシリカ。

そこまで嬉しいか…

 

シリカの元に紅茶を届けると、ちょうど客も引けたので俺も休憩に移ろうかと考えた。

 

カランコロンカラン

 

その思いとは裏腹にまたしても来客。

ため息が出そうにもなったが、入ってきた客に驚いて引っ込んだ。

 

「ようフー坊。繁盛してるカ?」

 

「アルゴ…なんか会うのは久しぶりだな」

 

入ってきたのは情報屋を営む『鼠のアルゴ』だった。

 

「だナ。最近メッセージばかりでやり取りしていたから久しぶりに会いに来てやったゾ」

 

「さすがに情報が早いな。喫茶店を開いたのは今日なんだが」

 

「オレっちの情報網の広さは知ってるダロ?このくらい朝飯前だヨ」

 

「そりゃそうか。それで、注文はどうする?」

 

「そうだナー…じゃあそこのお嬢さんと同じチーズケーキを頼むヨ」

 

「了解だ。俺とお前の仲だし、サービスで紅茶も付けるよ」

 

厨房に行き、注文されたケーキと紅茶を入れ、自分の紅茶も用意した。

 

「俺も休憩したいんでね。一緒にいいか?」

 

「もちろんダ。昼間は忙しかったんダロ?」

 

「忙しいなんてもんじゃないって。嬉しい悲鳴をあげてるよ」

 

「この店の噂はすごく広がってるゾ?料理は美味しくてウェイトレスは美少女。おまけに店主はイケメンだから女性客にも人気が高いナ」

 

「はっはっは、しばらく合わないうちにお世辞がうまくなったな。最初の二つは全面的に同意するけど」

 

料理の腕を褒められるのは嬉しいな。

本職が防具屋だってのを忘れちゃいかんが。

 

「そういえばフー坊、その服装はどうにかしないのカ?」

 

「服装?」

 

「普通の喫茶店だったら制服のひとつでも作るんじゃないのカ?」

「制服かあ…確かにそれは忘れてたなあ」

 

「あの竜使いのお嬢さんならヒラヒラの制服を着せたらどうダ?男どもがうじゃうじゃ寄ってくるゾ?」

 

「シリカはうちの看板娘だからな。今のままでも男性客は呼び込めると思うけど…でも制服ってのはいいな」

 

「おやおや?フー坊に制服好きの趣味があったとはナ。これはいい情報だナ」

 

「おいおい、そんな情報どこで役に立つんだよ」

 

このアルゴという情報屋は金さえ払えばプレイヤーの情報まで売ろうとするからな。

まあ本当にヤバイ情報は売らないからそのあたりの常識はあるんだろうけど。

 

「情報ってのはどこで役に立つかわからないからナ。だからオレっちたち情報屋は幅広く情報を集めるんだヨ」

 

「ぐっ、なんか正論に聞こえてきた」

 

このままでは俺が制服フェチだという情報がっ!

ってそれは別に真実だからいいんだけども。

 

「制服についてはシリカと話し合って決めるよ。いい情報をありがとな」

 

「じゃあ今のは店の開店祝いとしてタダにしておいてやるヨ」

 

「って、今のも普通なら有料なのか!?」

 

「当たり前ダロ?情報ってのはそれだけ価値があるってもんダヨ」

 

アルゴのプロ根性に少し戦慄しながらも、コイツと話すときは細心の注意を払おうことに決めた。

 

「それじゃオレっちはこの辺で失礼するヨ」

 

「もう行くのか?もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

アルゴの皿を見ると、既にケーキは完食済みだった。

 

「オレっちだって暇じゃないんダ。情報ってのは鮮度が命だからナ。常日頃からアンテナを張って集めなきゃいけないのサ」

 

「そっか。情報屋ってのも大変だな」

 

「ま、気が向いたらまた来てやるサ。これからもオレっちの情報を買ってくれるならナ」

 

「了解だ。またのご来店お待ちしてますっと」

 

「ふふっ、お前とキー坊に付き合ってると面白いことが見れるからナ」

 

そう言って店をあとにした。

あ、代金はテーブルの上に置いてました。

やっぱそういうところはしっかりしてるんだよね、アルゴって。

 

 




フォーレンの(ドラッグ)喫茶開店ww
女性客増えそうだなー

そしてエギルとの出会いとアルゴを登場させました。
これでいつでもHF編に入れそうかな?
ともあれもうじきネタも付きそうなんでHF編に入ろうかと思います。

それではまた次回で。
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