不良少女と化した喜多ちゃん概念   作:ボルケーノHS

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この日に投稿することになったのは全くの偶然ですが、喜多ちゃん誕生日おめでとうございます。


第2話 全身ピンクのアイツ

ぱっと見、不良同士が揉めているように見えた。

 

 片方は私の子分だ。髪型をモヒカンにして適当に制服を着崩し、校則違反のアクセサリーまみれ。不良のお手本のような見た目だ。

もう片方も相当だった。髪の毛は真っピンクに染められ、更に上下にどう見ても学校のものではないピンクのジャージを着ている。制服は着てすらなく、真っ赤な牛の頭が載ったダサいシャツが、開いたジャージの中から見えていた。腕にはジャラジャラした目に悪い色の腕輪を大量に付けている。不良の中でも相当性質が悪い方に違いない。

不良にとって、売られた喧嘩ならむしろある程度は買ってやらないと後が面倒だ。しかし、無駄な揉め事ならやめて欲しい。

 

「お前、喧嘩でも売られたのか?」

「違うんすよ、こいつが俺の知ってるバンドの…」

そこまで聞こえたところで、子分との会話は耳をつんざく悲鳴に遮られた。

 

―――――――――――――――――

 

私の名前は後藤ひとり。高校1年生になったばかりです。友達はいません。

 

 恥の多い中学生生活を送ってきました。黒歴史を逃れ、私を知ってる人が誰もいない高校に行こうと思って必死に勉強してきたのですが、いかんせん頭もあまり良くなくて、ロクな高校には行けませんでした。

 

 ようやく引っかかったのは秀華高校というところでした。合格通知をもらったときは自分でもいける高校があったと感動して泣き出してしまいましたが…今じゃやっぱり中卒で引きこもった方が良かったと後悔しています。

 

 ハァ…過去の間違いを考えるのはやめよう。どう高校に馴染むか考えるんだ。

この高校の一つ目の問題は家から遠いことだ。なるべく遠くの学校を選んだのは自分だけど、片道2時間もかかってしまう。でもこれは大した問題じゃない。

 

二つ目の問題、そして私が入学早々入学後悔した理由。

明らかに学校に怖い人が多すぎる…‼

 

 自分でも入れたくらいだからあんまり頭が良い高校じゃないのはわかってたけど、なんか変な髪色でちゃんと制服も着てないような人がたくさんいる。知らない人はみんな怖いし陽キャだって怖いけど、正直見た目が怖そうなのが一番無理…ちょっと機嫌を損ねたら殺されるかも…

 

 そう思って学校に来ても他の人と関わらないように寝たふりをするばかりで、全くクライスメイトと喋らずに1ヶ月が経ってしまった。きっともう友達グループとかもできてるんだろうな。クラスラインとかにももちろん入ってないから分かんないけど。でも高校でも友達がいないのは流石に嫌だ。退学もちょっと考えたけど、流石にもうちょっと何とかならないかやってみたい。そうじゃないとこのまま押し入れでネットを相手に生きる道しか無くなる。

 

 そういえば不良の皆さんってロックとか好きそうだよね…中学でデスメタル流したときは空気が死んじゃったけど、不良の人だったら案外気に入ってくれるかも…怖いけど、友達作ってバンド組めるならこの際不良の人でも誰でも良い。そうだ、見た目で人を判断しすぎるのも多分良くない。話してみたら案外普通の人かもしれないし、ネットでも不良が意外といい人だったみたいな小説がたくさんあったし。よし後藤ひとり、中学ではうまくいかなかったけど、もっとたくさんバンドグッズ身につけてバンドTシャツつけてバンド少女っぽさを出せばきっといける。頑張るんだ後藤ひとり!

 

 と期待して登校したはいいものの、クラスでは誰も声をかけてはくれなかった。

やっぱり他力本願すぎるのがダメだったのかな…と脳内反省会をしつつ諦めきれず、やっぱりクラスだけじゃなくて色んな人にバンド少女っぽさを見せないと…と思い、用もないのに後藤ひとりは廊下をうろうろしてみることにした。休み時間のたびにうろうろうろうろ。声をかけてくれるものは現れず心は折れかけていたがその時、声をかけて欲しいと言う彼女の願いは、ついに叶うこととなる。

 

「お前そのシャツ選ぶとかなかなかのセンスじゃん?洋楽とか聞く?聞かないだぁ?舐めてんのか!」

「アア…ソノ…アア…」

とびきり怖い人の機嫌を損ねてしまいました。ごめんなさい、お母さん、お父さん、ふたり、あとジミヘン。先立つ不幸をお許しください。後藤ひとりは怖い人の機嫌を損ねて東京湾に捨てられます。

「お前、喧嘩でも売られたのか?」

 ああ更にもう一人増えた…喧嘩売られたって思われてる⁉でも確かにインキャがバンドグッズ着ていくとかファンに喧嘩売ってるのかも。東京湾に捨てられるだけじゃなくて指とか切られるのかもしれない。あ、ギターがもう弾けなくなることを想像したら…ギターもできなくなったらネットにも居場所が…

 

ピィヤァァァァァァァァァァァァァァァ‼

 

―――――――――――――――――――

 

 ピンク色のそいつは金切り声を上げたと思ったら、そのまま泡を吹いて倒れた。

思わず耳を塞いだ手を外して、子分の方に向き直る。

「おい、泡が吹くまでぶん殴りでもしたのか?校内では喧嘩売られてもほどほどにしとけっつったよな?」

「違うんすよ喜多親分!そいつが俺の好きなバンドのTシャツ着てたんで、声かけてちょっと揶揄ってみただけなんすよ!そしたらなんかキモい声出して震え出したと思ったらこうなっただけです!」

このダサいTシャツ、何かのバンドのものだったらしい。確かにぶっ倒れたピンクの奴を見てみても、特に殴られた跡はない。確かこいつは…

「2組の後藤、と言ったか?」

「親分よくこんなのの名前まで知ってますね」

つまりこいつは単にビビりすぎて気絶しただけ、ということだ。いくらなんでもあまりのビビりに呆れそうになるが、いずれにしてもここに倒れたままにしておくのは面倒ごとを招く。保健室に連れていくしかないか。

「一応こいつ、保健室まで運んでくわ。もうすぐ授業始まるしお前は行っとけ」

「今日学校には遊びにきただけなんで俺はこれから帰りますよ。親分って不良なのに割と真面目っすよね」

「………」

 

とりあえず何となく子分を蹴り上げたくなったので蹴り上げてそのまま帰した後、ピンクジャージ女を背負おうとしたら、触れただけでうめき声をあげて目を開いた。泡吹いてたくせに本当に軽く気絶しただけらしい。

「おう、気が付いたか」

「ヒェ…!」

顔見られた途端に悲鳴を上げられた。そんなに怖い顔ではないはずなんだがな。

「インキャがバンドグッズなんか身につけてすみませんすぐに全部捨てますギター弾かなきゃ行けないので手の指だけは勘弁してほしいです足の指ならいくらでもあげるので」

「何言ってるんだ、お前…?」

 

何やらこのまま帰らせても面倒になりそうというか、明らかに被害妄想みたいなのをしていたので、とりあえず起き上がらせて落ち着かせることにした。

「さっきのやつは別にお前をどうこうしたかったわけじゃない、お前のその服のバンドが気になって声をかけてみただけなんだ。もう帰ったし、別に怖がることなんかない」

「あっそうなんだ…バンドグッズ作戦成功してたんだな…うへへ」

小声でよく聞こえないがまだ意味のわからないことを言ってやがる。倒れた時に頭のどっかを打ったのかもしれん。

「それでなぜかお前は気絶したみたいだが、一応保健室行くか?」

「あっいえこれくらいならよくあることなので大丈夫です…」

よく気絶するらしい。すごいな。喧嘩好きかなんかだろうか。

しかしこのピンクジャージはなぜか全くこっちを見て話そうとしない。声を小さいからやたらと聞き取りにくい。

「お前、もっとこっち向いて話せよ。聞こえにくい」

「あっごめんなさい人と目を合わせるのが恐くて、お気に召しませんでしたよね今すぐ腹を切ってお詫びします」

突然どこからともなくギターを取り出して切腹の態勢を取った。そういえばそばにギターを入れる箱みたいなものが転がっている。

「だから別にお前をどうこうするつもりはねえっての!いいから話を聞け。保健室行かないなら一人でクラスまで戻れるか?」

「あっ腰が抜けて立てないです…」

「仕方ないな…ほら、肩に掴まれ」

ピンクジャージの腕を担ぎ上げる。なんか変な匂いするな。これは..防虫剤?

「あっ申し訳ないです..臭いですよねすぐ洗剤飲んで死にます」

「だからそういうのいいって..あたしは3組の喜多だ。お前は?」

「あっ2組の後藤ひとりと申します..」

「ギター弾いてんの?あたしも音楽は嫌いじゃない。今度なんか弾けるか?」

「詫びに弾けということですね分かりました精一杯面白いものを披露させていただきます..」

「そういうのじゃないよ?単に聞いてみたいと思っただけだ。お前上手いのか?」

「あっそこそこかと…いややっぱりミジンコです…」

どうも不良というわけでもなさそうだが、よくわからないことばかり言って随分コミュニケーションが取りづらいやつだ。だが、今まで会ったことが無いタイプで新鮮だ。チラチラこっちに目をやっていたので顔を向けてみると一瞬目が合ったが、すぐに逸らされた。一瞬だけはっきり見えたが、意外と面が良いな…

「あっそろそろ立てそうです..」

「大丈夫か?それじゃこの辺で。またなんかうちの奴に困らされたら言ってくれ」

 

 クラスの前で後藤を降ろし、私も自分の教室に戻った。すっかり不良になってしまったが、だからといって勉強しないわけじゃないんだ。

この日は、単に変な奴にあったというくらいの印象しか残らなかった。しかしこの後、喜多は何度も彼女に対する印象を更新させられる羽目になる。

 

教室に戻った後藤ひとりは、机に突っ伏して自分の世界に入っていた。

(くぁっこい~~~~~!!)

 不良と共に現れ、さっき自分を教室まで運んできてくれた少女の見た目は、まさに後藤ひとりの好みドストライクだった。

黒い革ジャンに虎をあしらったシャツ、ダメージジーンズを着てシルバーやゴールドのアクセを張り巡らせ、耳には十字架やボールのピアス。意外とかわいい系統の秀華高校の制服なんて影も形もない。

長そうな赤い髪の毛は結い上げられ、ボーイッシュに仕上げてあるのが、キツめの目つきと顔にとても似合っていた。

 いかつくて不良っぽいし実際不良だったんだろうけど、とってもロックでパンクで格好よく見える。男子中学生のようなファッションセンスを持つ後藤ひとりにとって、喜多の服装は理想的に見えた。客観的に言っても、ダサくなりかねないファッションを喜多は生来のセンスで上手く組み合わせスタイリッシュに仕立てていると言えた。後藤の心を奪ったのも自然な事と言えるかもしれない。

(それに怖いけどめっちゃいい人だった…!クラスまで運んでくれたし初めて自己紹介までしてもらったし、しかも私のギター聞きたいって!音楽好きみたいなこと言ってたしもしかしたらギターで感動させたら友達になってくれるかな!?しっかり感動させるためにオリジナルソングとか作った方がいいかな。目指せ初めての友達~!!)

 

 机に突っ伏しながら、うへへと笑う後藤ひとり。その不気味な姿に、教師も引いた目で見るばかりで注意をすることもできない。高校で初めてできた知り合いとの距離を縮めようと彼女が暴走するのはすぐ後のことである。喜多が怖い不良たちの親分であることなど、未だ後藤ひとりには知る由もない。

 




後藤ひとりのファッションセンスだと絶対イカつい不良スタイル好みだと思うんですよね。めっちゃ小学校のエプロンでドラゴン選びそうじゃないですか?そういうセンスを洗練させるとこういうロッカーみたいなファッションになるんじゃないかと思います。

次回、「路上ファイトと路上ライブ」
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