あと、本作の横島はYOKOSHIMAとなります。
2015/09/21 ちょこちょこ修正
「タダオ様」
突如背後から声をかけられた男が振り返ると、そこにはメイド服に身を包んだ女性が。顔見知りだったのか、男は朗らかに女性に話しかける。
「お、グレイフィア。どうした? 次にこっちに来るのは、来週じゃなかったか? あ、とうとうサーゼクスの野郎に愛想を尽かした? じゃ、ミリキャスと一緒にウチに……」
「まさか」
「そんなすぐ否定せんでも……。で、用件は? オレに会いたかったとか?」
男がメイド服の美女――グレイフィア――に用件を尋ねると、彼女は深々と一礼してから用件を口にするのであった。
「サーゼクス・ルシファー様が、タダオ様を屋敷にお招きしたいとのことです」
「へ~、アイツの屋敷に招待なんて珍しい。いつもは用があればアイツの方が来るってのに。用件とか聞いてる?」
「いいえ。ですが、他の魔王様方もお集まりになるようですから、何かの会議ではないでしょうか」
「会議かー。それ、オレが行く意味ある? ほら、サーゼクスたちはアレでも魔王だけど、オレは違うし。そもそも、アイツ等と違ってオレは先祖代々悪魔って訳でもないし」
何とか回避しようと言葉を並べる男だったが、グレイフィアの冷たい視線に次第と口数が減っていく。その後、完全に沈黙するとグレイフィアから視線をそらすのであった。
「では、参りましょうか」
「……はい」
結局、男はグレイフィアに連れられサーゼクスたちが待つ屋敷へと向かうのであった。
「やー、よく来たね。我が友、忠夫」
「おー、来てやったぞ。ったく、何が悲しゅうてヤローに会いに来なければならんのだ。どうせお呼ばれするなら、美女からの方がいい」
「ハハハ、相変わらずだね。っと、このまま友人として君と語らいたいところだが、その前に用事を済ませてしまうとしよう」
「あ~、皆揃ってんだろ? 会議でもすんのか?」
「いや、会議はさっき終わったよ。皆も君に会いたがっていたが、私を含め彼らも忙しい身。忠夫に用件を伝える役を賭けた激しいじゃんけん大会に勝利した私に、呪詛の言葉を吐きながら、泣く泣く帰っていったよ」
朗らかに笑いながら語る紅髪の美青年。名をサーゼクス・ルシファー。冥界に君臨する四人の魔王の一人である。
そして、彼が言う皆とは同じく冥界に君臨する他の三人の魔王たちのことである。
「お前らって、本当はオレよりバカなんじゃね?」
「ハハハ、真面目な場できちんとやれればいいのさ。で、早速だが本題に移ろうか。あ、今日はウチに泊まってくれ。ミリキャスも喜ぶだろう」
「おう、そうだと思ってウチのヤツ等には泊まるって言ってきた。アイツ等、お前んとこだとすんなり許可すんだよな。何でだろ?」
(そりゃ、ウチに泊まる時はミリキャスの遊び相手ばかりで、誰かを口説いたり、夜遊びに出かけることがないからね~。それにこっちにはグレイフィアもいるしね)
首をかしげながら呟く男に、内心で答えながらサーゼクスは彼を部屋へと通すのであった。
「で、何の用なんだ? 会議の内容なんて、オレが知らなくても問題ないだろ?」
「大部分はそうかな。だから、今から君に伝えるのは君に関係することだけさ」
そう言うと、サーゼクスは男に箱を差し出す。受け取った男は、それを眺めると目線でサーゼクスに中身を尋ねる。
「“
「お前が言うなっ!! で、“悪魔の駒”を渡す為だけに呼んだのか?」
「まさか。それだけだったら、アジュカが直接持っていくさ。で、本題なんだが……そろそろ君にも表舞台に上がってもらおうと思ってね」
「はぁ?」
意味が分からないと首を傾げる男に、サーゼクスは真剣な眼で語る。
「知っての通り、今の魔王たちは血筋ではなくその実力によって襲名している。ルシファー、ベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウスの四つの名がそうだ」
「それくらい知ってるって。だから、お前の子供のミリキャスが継ぐのは実家であるグレモリーなんだろ? あ、その前にリアスちゃんが継ぐのか?」
「そこはグレモリーの現当主である父上次第だろう。個人的には、リーアたんにはグレモリーに縛られずに……とは思うけどね。っと、話しを戻すが魔王の名は現在四つ。そして、その全員が“元72柱”の出身だ」
「そうだっけ」
首を傾げる男。興味がなくなってきたのか、先程受け取った“悪魔の駒”が入ったケースをイジっている。
「まぁ、そう言う訳で我々は思った訳だ。このままでは、血統主義の年寄りたちのような悪魔が増えるのではないかと。これからの冥界は、ますます転生悪魔たちが増えてくる。そんな時に、血統主義は邪魔でしかない」
「あ~、それがオレとどう関係があるんだ? オレも分類的には転生悪魔だから気をつけろってことか?」
「そうじゃないさ。確かに、君は元人間なのかもしれないが、元人間の悪魔というよりは、君の力を核とした新種の悪魔って感じだね。うん、流石は忠夫だね」
うんうんと頷くサーゼクスに、男は呆れ顔で続きを促す。
「で?」
「ああ、つまり君には古くからの血統なんてないわけだ。君が始祖になるんだから当然だね。そんな君が、魔王と肩を並べる存在になったら……血統主義なんてのは廃れるとは思わないかい?」
「あ~、表舞台云々ってのは、つまり、そういう事?」
「そう。そのための“悪魔の駒”さ。君の力を示す為に、レーティングゲームに参加して欲しいんだ。そこで君が活躍すれば、名門出身以外の悪魔たちの希望になるからね。名門なんて関係ないんだって。そして、魔王並だと冥界全体から認められれば、血統主義者たちも廃れる筈さ」
「そう簡単に行くか? 仮にオレが活躍したって、何も変わらないんじゃないか?」
「かもしれない。でも、今のまま名門ばかりが活躍するよりマシだとは思う。それに、最近のレーティングゲームは上位が固定されてきて、面白くないからね。君がかき回してくれると助かる」
「かき回すって……。そもそも、オレが活躍とか出来る訳ないっての。まぁ、レーティングゲームは一対一って訳じゃないから、眷属次第じゃいけるのか?」
男が脳裏に何人かの眷属候補の姿を思い起こしていると、サーゼクスが口を挟む。
「そうそう。眷属を集める為に、人間界にいってみるのもいいんじゃないかな。悪魔は神器を持たないしね。ついでに、リーアたんやソーナちゃんたちの様子も見てきて欲しい。大丈夫、拠点はこっちで用意するさ。リーアたんの隣りがいいかい? それとも、ソーナちゃん?」
「リアスちゃんの方が会った回数は多いから、そっちがいいかな? まぁ、向こうが覚えてるかは分からんが」
「ハハハ、大丈夫。二人とも覚えているよ。君みたいな常識外の生き物のことを忘れる方が難しいからね」
高笑いを続けるサーゼクスに、殺意が湧いてくるが藁人形による呪いが効かないことを知っている男は、あとでグレイフィアにサーゼクスのお宝の在り処を告げ口し、処分してもらうことに決めるのであった。
ようやく高笑いをやめたサーゼクスは、男に向き直ると改めて頼み込むのであった。
「頼んだよ。我が親友、横島忠夫。古のアシュタロスの魂を継ぐ者よ」
「我々の娯楽……もとい、我々悪魔の未来の為に!!」
「おい! 今、娯楽って言ったろ!」
「ハハハ、何のことかな~。それより、ミリキャスと遊ぶ時間だ! 忠夫行くぞ!」
あとがき
続きは未定。横島くん「王」ルートです。
取り敢えず、横島はYOKOSHIMA化しています。つまり、そういう事です。
拙作内では、アスタロト家とアシュタロスは起源を同じくするが別物になっています。
タイトルの(仮)がとれるのか、次回が投稿されるのかは未定。いいネタが出ればって感じですね。