横島inハイスクールD×D   作:雪夏

12 / 18
ちょっと更新間隔が空きました。


横島inハイスクールD×D その12

 

 

 

 

 サーゼクスの依頼から一夜明け。一誠は祐斗と一緒に放課後の旧校舎を訪れていた。

 

「ったく、また横島は早退しやがって……。きっと、部室でサボってんだぜ」

 

「それはないよ。忠夫さんは学校生活が楽しいって言ってたし、ここには任務で来ている筈だからね。サボるとしても何か理由があるんだよ」

 

「そうかぁ?」

 

 一誠の疑問を否定する祐斗であったが、一誠はそれを取り合わない。転校してきてからの短い付合いだが、横島が真面目に任務を果たすような人間とは思えなかった。

 

(いや、人間じゃなくて悪魔だったか。ていうか、オレも悪魔になったんだよな。あんま実感ねぇや)

 

 昨日自身の背に羽が生えた辺りを眺める一誠。帰宅して両親とのいつものやり取りや、学校での悪友たちとのやり取りは、彼が人間ではなくなったことに対する忌避感を与えなかった。しかし、同時に一誠は昨日までのことが現実だったのかと疑念を抱いていた。

 そんな一誠の様子に何を思ったのか、祐斗は明るく話しかける。

 

「一誠君。大丈夫だよ」

 

「何がだよ」

 

「ボクがいるから。女性ばかりの眷属だから、最初は肩身が狭いとは思うけど皆いい人たちだよ。それに何かあったらボクを頼ってくれよ。同じ男として、助けになるからさ。うん、同じ男として」

 

「お、おう」

 

 微笑みながら告げる祐斗に、少々引き気味に答える一誠。やたらと祐斗からの好感度が高いのを不思議に思うが、男の同属が出来たことが嬉しいのだろうと納得する一誠であった。

 

 

 

「討伐依頼……ですか?」

 

「そうよ。昨夜、大公から直々の命令があってね。大方の居場所の見当はつけたから、今夜討伐に行くわ。ということで、夜に部室に集合。あと、これを渡しておくわね」

 

「これは……?」

 

「それは召喚の魔法陣が仕込まれたチラシよ。今時、悪魔を召喚するのに自分で魔法陣をなんて人間はいないわ。そこで、それの出番よ。それを使って人間は悪魔を召喚し、願いを告げ代価を払う契約を結ぶの」

 

 一誠は手元にはチラシの束が。その内の一枚を手に取ると、リアスは説明を続ける。

 

「そして、この紋章が”グレモリー”の紋章よ。グレモリー家に連なる悪魔の証ね。これでどこの悪魔を召喚するかが決まるわ。因みに、忠夫の紋章はこれ。似ているけど、違うものだから間違えないようにね」

 

 そういうと一枚の紙を見せるリアス。そこには、グレモリーの紋章に似ている紋章が刻まれていた。

 

「何で部長が横島の紋章を持っているんですか?」

 

「まぁ、事情があってね。持っていないと不便なのよ。ま、それはどうでもいいでしょ。今夜は討伐依頼で出かけるけど、明日からは毎晩そのチラシを配ってもらうわ。これは祐斗や白音、朱乃もやったことなの。悪魔の仕事を知る為の最初の一歩ってところね」

 

 リアスに誤魔化された一誠であったが、次に告げられた言葉に衝撃を受ける一誠。悪魔の第一歩がチラシ配りとは、想像もしていなかったのだから仕方がない。そんな一誠の肩に優しく手を置くと祐斗は、明るく告げる。

 

「分からないことがあったら、ボクに聞いてくれ。それに依頼がないときはボクも付き合うからさ」

 

「なら、祐斗に詳しい説明は任せましょうか。眷族同士の親睦を深めるのにもいいだろうし」

 

 リアスの言葉に任せてくださいと答える祐斗。その横で、一誠はどうせなら女性陣の方がと言い掛けて口を閉じる。祐斗が凄い勢いで迫ってきたのも理由の一つだが、横島が肩に黒猫を乗せて、銀髪のメイドと部室に入ってきたからである。

 

「忠夫! どうしたの? 今日は調査で来れないんじゃ? それに黒歌だけならともかくグレイフィアまで連れて」

 

 リアスの疑問は全員の疑問でもあったようで、全員の視線が横島たちに集中している。それに狼狽えた横島であったが、それに気づいたグレイフィアに背中を抓られたことで、すぐに気を取り直す。未だ背中に当てられたままのグレイフィアの手を気にしながら、横島はここに来た理由を話し始める。

 

「グレイフィアと黒歌を一誠に紹介しようと思ってな。これから顔を合わせることも多いだろうしな」

 

 その言葉に納得したのか、リアスたちは三人をソファーに案内する。グレイフィアはソファーに腰掛けず、横島の背後に控えているのは彼女がメイドであるからであろう。

 

「まずは、改めて自己紹介だな。アシュタロス家当主の横島忠夫だ。といっても、爵位や領地を持っている訳ではないから、一誠と同じ駆け出しの悪魔って扱いになるのか?」

 

「タダオ様。一応、爵位は公爵ということになっております。悪魔の駒(イービル・ピース)を特例で持つのですから、それくらいは当然だとサーゼクス様が用意されました」

 

「そうなの?」

 

 自身のことなのに把握していない横島に、メイドを侍らせてることと一緒に突っ込みたくなった一誠であったが、話を遮らないようにと自重する。そんな中、リアスは横島の爵位について考えていた。

 

(グレモリーと同格の公爵……お兄様たちのお気に入りだからという理由だけでは、説明がつかないわね。でも、爵位のない悪魔の眷属になるのは体裁からして許されないと思っていたけど、同格なら……)

 

 そんなリアスの思案を遮るように、グレイフィアが前に進みでる。

 

「初めまして、一誠様。私はグレイフィアと申します。タダオ様のメイドであり、アシュタロス家の侍従長も務めております」

 

「あ、どうも。……って、横島のメイド!?」

 

「そうよ。忠夫は一誠の目指す道の先輩ってことになるわね。新たに爵位を得て、自分の眷属を作るのだから」

 

「そ、そうか……爵位があればメイドも雇えるのか。兄貴、是非とも私に爵位を得る方法を……」

 

 横島は頼み込んでくる一誠の姿に、かつての自分の姿を思い出し何かアドバイスは出来ないかと考える。特別何かをした覚えはない横島が、どうにかひねり出したのアドバイスは次のようなものであった。

 

「まぁ、簡単なのはアレだな。上層部に恩を売るってのと、弱みを……」

 

「タダオ様、紹介がまだ途中です。黒歌?」

 

「あ、はい」

 

 グレイフィアの冷たい視線に、横島だけではなく一誠たちも背筋が伸びる。そんな中、自己紹介をしなくてはならなくなった黒歌は、横島を一度恨めしげに見た後、口を開く。

 

「黒歌にゃ。白音の姉で、忠夫の眷属。たまにこの辺をぶらぶらしてるけど、見かけても話かけないで欲しいにゃ。まぁ、話しかけてきても猫に話しかける痛い人と周りに思われるだけ……やっぱり、積極的に話しかけるにゃ」

 

「それを聞いて話しかけるかっ!? って、小猫ちゃんの姉?」

 

「そうにゃ。ほら」

 

 黒歌が人の姿を取ると、一誠は白音と黒歌の間で視線を行ったり来たりさせる。はじめはその視線の意味が分からず首を傾げていた白音であったが、一誠の視線が何処に向けられているのかを理解した瞬間、小さく低い声で呟く。

 

「最低」

 

 その声を聞いた黒歌は一誠を睨みつけ、威嚇するように告げる。

 

「白音を泣かせたら……」

 

「は、はい! 申し訳ありませんでした! つい見比べてしまっただけで他意はないのであります! 以後、気をつけますので許してください!」

 

 黒歌の声音から本気だと悟った一誠は、続きを言われる前に頭を下げる。同時に白音に対しても謝罪をするが、機嫌を損ねた白音はそっぽを向いて取り合わない。困った一誠が、黒歌の視線を背に周囲を見渡すと、かつての自分を見たようで見かねた横島が助け舟を出す。

 

「ほら、一誠も謝ってるんだし許してやれって。白音ちゃんも、気にするなとは言わないけどさ。今回は許してやろうよ。ほら、一誠は女性を胸で判断する可哀想な奴……」

 

「忠夫さんは小さいのは嫌いですか?」

 

「いや、そんなことはないぞ? 若い頃は大きい方がと思っていたが、今は真理を悟ったからな。乳は乳というだけで、素晴らしいものだとな」

 

 若い頃って何時だよとか、それは悟るものなのかと突っ込みたかった一誠であったが、白音の機嫌が多少回復してきた現状をわざわざこわすつもりはなかった。

 一段落ついたと思ったのか、リアスが横島たちに話しかける。

 

「それで、黒歌は何の駒を貰ったの?」

 

「白音と同じ戦車にゃ。本当は女王が良かったんだけど、それはグレイフィアに譲ったにゃ」

 

「あれは譲ったというのでしょうか?」

 

 昨夜、横島がグレイフィアに女王の駒を差し出した瞬間、飛び掛ってきた黒歌のことを思い出すグレイフィア。グレイフィアの強さを知ると、すぐに戦闘を止めたが。グレイフィアの実力を知らない黒歌が、女王の駒に相応しいのかを見極めようとしたのだろうとグレイフィアと横島は思っている。

 因みに、黒歌がすぐに止めなければ、序列を叩き込むいい機会として利用する気満々だったのは、グレイフィアだけの秘密である。

 

「グレイフィアが女王なの?」

 

「はい。断ろうかとも思いましたが、タダオ様のご要望でしたから。未熟な身ではありますが、タダオ様の女王を勤めさせて頂くことになりました」

 

「何が未熟にゃ」

 

「何か?」

 

「なんでもないにゃ」

 

 短い時間とは言え、直接戦った黒歌には分かっていた。あの時、グレイフィアには欠片も辞退する気がなかったことを。他の悪魔が女王になろうと手を挙げようものなら、即座に叩き潰していただろうことも。

 

(旧魔王派では大して目立ってなかったと聞いたのに、あの実力……。あの時代の悪魔は現魔王たちといい化け物ばかりなのかにゃ)

 

 黒歌たちは知らない。グレイフィアが目立った戦績を残さなかったのは、横島と戦っていたからであると。それがなければ、最強の女悪魔の座を巡って戦っていただろうと噂されていることも。

 

 

 

 その後、横島たちが退出し、祐斗が一誠に神器の発現方法をレクチャーして、見事初めての神器発動を果たしたりしたのだが、リアスたちの記憶にはグレイフィアと黒歌の横島眷属入りが大きく刻まれるのであった。

 

 

 

 

 




 ここだけの話、木場君が気がついたら病んでます。その度に修正しますが、何故なんでしょう。
 作中で横島がアシュタロス家を名乗っていますが、横島が初代となります。アスタロト家とは関わりがない、新興の家という形です。

 少々更新間隔が空いていますが、一時的なものです。某動画サイトで色々な一挙放送を見ていて筆が止まっていました。
 
 横島がアシュタロス家当主。
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【HY】と記載します。
 ご意見、ご感想お待ちしております。感想いただけるとモチベーションあがります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。