横島inハイスクールD×D   作:雪夏

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原作一巻もあと少し(三度目)


横島inハイスクールD×D その14

 

 

 アーシアが横島たちの元に逆召喚された頃、昼に横島がアーシアを案内した教会では一人の堕天使の女性――レイナーレ――の命が奪われようとしていた。教会の床に倒れ伏す彼女は、両手両足の腱を切られ起き上がることも出来ず、今の今まで仲間だと信じていた部下――ドーナシークとカワラーナ――を睨みつけることしか出来ない。

 そんな彼女に睨まれている二人はと言えば、ゆったりと椅子に腰掛けて話をしていた。

 

「全く、貴様が遊んでいるからあの女に逃げられたではないか」

 

「仕方ないだろう。『追放されてしまいましたが、私は今までと変わらず神の僕です』と言い切ったシスターだぞ? そんなヤツが悪魔の召喚術式で転移するなんて予想出来るか?」

 

「確かにオレも思わなかったな。しかし、あのシスターの神器が手に入らないのは痛いな。あれを手土産に合流すると決めたからこそ、仕方なくレイナーレを切り捨てたと言うのに」

 

「よく言う。最初から利用する計画だっただろうが。大体そうでもなければ、アザゼル様~とか言ってる女の部下なんて我慢出来る訳がないだろうが」

 

 その言葉にレイナーレが反応し無理やり体を動かそう力を入れるが、手足は勿論翼を動かすことも出来ない。幾らレイナーレが堕天使であるとはいっても、人間なら即座に死亡してもおかしくない怪我を負っている状態では意識を失わないようにするのが精一杯なようである。

 それが分かっているからこそ、ドーナシークとカラワーナの二人は止めを刺すこともせず悠長に会話をしているのである。

 

「しかし、あの紋章はどこの悪魔のだ? この地に居座るグレモリーのものかとも思ったが……」

 

「さぁ。どちらにせよ、悪魔に神器を奪われたことに変わりはない。それに何処の悪魔だとしてもだ。あのシスターのことだ。召喚先の悪魔にソイツを助けてと契約するかも知れない。堕天使と知りながら助ける悪魔がいるかは分からんが、万が一契約が成立すればここに乗り込んでくる可能性もある」

 

「その可能性はあるな。何せ、悪魔を癒したことで追放された“堕ちた聖女”様だからな。ふむ、ここはあのイカレタ神父を連れて行くことを手土産とするか。堕ちた聖女抹殺の為とかで集まった雑魚はどうする?」

 

 椅子から立ち上がりドーナシークは、カラワーナに尋ねる。ドーナシークが言う雑魚とは、正規のエクソシストの中でも過激派に分類される者たちのことで、現在この教会に十数人集まってきていた。それとは別にイカレタと評されるはぐれエクソシストもいるが、そちらは連れて行くつもりのようである。

 

「あの男以外は使えん。ミッテルト共々ここに残していく。そうだな、レイナーレは地下で儀式に集中していると伝えればいい。アイツはレイナーレを慕っているからな。シスターと契約した悪魔共がやってくれば、レイナーレのために悪魔共と争ってくれるだろう。まぁ、計画を多少前倒しする結果になるが、あの方もお許し下さるだろう。何せ、この地に火種を灯すことが出来るのだから」

 

「悪魔が来ない場合は?」

 

「レイナーレが出てこないことを不審に思ったやつが、地下でレイナーレを発見する。それだけだ。その頃には、私たちはこの場にいない。それに、その時レイナーレが生きていようが死んでいようが、私たちにとって気にすることではない。その程度であの方の計画に支障が出よう筈もないからな」

 

「そうだな。レイナーレが生きて上層部に私たちのことを伝えたとしても、所詮は過激派内のいざこざと取られるだけか。もし、上層部がオレたちを探したとしても……」

 

「計画実行の日まで身を隠しておけばいいだけのこと。表立って動かない限り、私たちが見つかることは絶対に有り得ないからな」

 

 そのカラワーナの言葉に頷いたドーナシークは、意識を保てなくなったのかドーナシークたちを睨みつけることさえ出来ず、顔を床に伏せているレイナーレに近づくと彼女の首を掴んで無造作に持ち上げる。その際、小さく呻くような声がレイナーレからあがる。

 

「それをどうするのだ?」

 

「悪魔とミッテルトのどちらが先に見つけるかは分からんが、折角の景品だ。景品らしく飾ってやろうと思ってな。景品を飾るのにおあつらえ向きなものもあるしな」

 

 そう告げるとドーナシークは大きな十字架の形をしたオブジェに、レイナーレを磔にしていく。本来、アーシアの神器を取り出す為の儀式に使うものであったが、今はドーナシークの手によって景品(レイナーレ)を飾るオブジェと化していた。

 

「どうだ?」

 

「いいんじゃないか? 悲劇のヒロインみたいで……ああ、そういえばお前が殺した男」

 

「ああ、レイナーレが人間に化けて接触していたヤツか。戯れで殺したら、大層怒っていたな。まぁ、アザゼルからの命令だと伝えたら大人しくなったが。そいつがどうかしたか?」

 

「その男をかなり気に入っていたみたいでな。ふふっ、思い出したら笑えてくる! たった数時間過ごしただけだと言うのに、その男のことをシスターに懺悔してやがった! 堕天使の癖に! 堕天使の私が接触したせいでっ……てな。あの時のレイナーレは、まるで私こそが悲劇のヒロインと言わんばかりだったぞ」

 

 そう言うと大きく笑い声をあげるカラワーナ。更に彼女は続ける。

 

「そして今だ! 絆されたのかシスターから神器を抜くことを戸惑い、儀式を中断しようとした! 結果、仲間と思っていたヤツに攻撃され、磔にされている。どうだ! まるで神話や伝承……漫画やアニメの一場面ではないか!」

 

「そうだな。敵方女幹部系ヒロインの典型と言ってもいいな。これで、その男がレイナーレを助けに来れば完璧だ」

 

 相槌を打つドーナシークに気を良くしたのか、笑いながらカラワーナはレイナーレの傍まで歩み寄り耳元に口を寄せる。

 

「物語と違う所は、お前のヒーローが助けに来ることがないという点だな。何せ、お前のヒーローは既に死んでいるのだからな。なぁ、レイナーレ。お前のせいで死んだヒーローはなんて言ったっけな」

 

「……ッセー……く……」

 

 カラワーナの言葉に反応したのか、朦朧とした意識の中で無意識に彼を呼んだのか。そのレイナーレのかすかな声を、カラワーナは聞いていた。

 

「そうだ、イッセーだったな。お前のヒーローは。レイナーレ、精々イッセーが助けにくるのを夢見ているんだな。尤も、永遠にそんなことは起こり得ないがな」

 

 最後にそう告げると満足したのか、カラワーナはドーナシークと共にその場を後にする。残されたのは、磔にされたレイナーレと彼女が時折あげる呻き声。そして――

 

「イッセー……くん」

 

 

 ――彼女のヒーローの名を呼ぶ声だけであった。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき
 久方ぶりの更新なのに、横島たちの出番がないです。横島たちの殴りこみを期待していた方には申し訳ありません。
 完全レイナーレ、ドーナシーク、カラワーナの三人が別人に。ミッテルトも別人になる可能性が。ほら、出番少ないから……。ドーナシークとカラワーナの口調や性格とか覚えてないです。……すみません、レイナーレも怪しいです。ミッテルトは「~ッス」とか乱暴な口調だったのを辛うじて覚えてますが。まぁ、原作で見た記憶はないのですが。アニメだけでしったけ。
 また、一巻とは大分乖離していますが、ほぼイッセーの為です。イッセー関連のイベントが潰れるので、そのフォローといいますか。

 
 堕天使たちの関係。イッセーが刺された理由。
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【HY】と記載します。
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