横島が編入して数日。順調に学生生活を送っていた横島だったが、中でも一番仲が良くなったのが変態三人組みだった。席も近く、彼らの変態性に理解があり、悪ノリが通じるとなればそれは当然の帰結ともいえた。
その代償として、数名の女生徒からは距離を置かれることとなったが、桐生藍華を含む大半の女生徒はノリが良い横島を好意的に受け入れていた。時折、変態共と話しては大盛り上がりしている姿も、関西人のノリ故と見なされているらしい。
そんな横島たちが放課後の剣道場で何をしているのかと言えば、松田が見つけた剣道場の小さな穴から覗きを敢行しようとしているところであった。
「兄貴、こっちですぜ」
「いいのか?」
「同じ男じゃないですか。編入祝いと言うことで受け取ってください」
「いや、何か間違ってないか? って、オレにも見せろ!」
兵藤一誠。編入祝いが覗きということに、疑問を抱いた少年はこれから先、自身に波乱の人生が待っているとは思いもせず、ただ欲望の赴くままに叫ぶのであった。
「あー、酷い目にあった。っていうか、横島は逃げ足速すぎだろ」
「はっはっは、あの程度の連中から逃げるなど楽勝、楽勝。この横島忠夫が覗きで培った逃走術を舐めるなよ?」
「流石は兄貴!」
「褒めるとこか……? いや、逃走術は教えて欲しいけどさ」
横島の言葉に何やら感動している松田たちに、少々呆れた目を向ける一誠。一誠の声で覗きがバレた彼らは、旧校舎付近の草陰に隠れていた。逃走の際は横島が先導した為、誰もつかまることなく逃走することに成功したのである。
そんな中、一誠がふと旧校舎を見上げると、開いた窓からリアスがこちらを見ていることに気づく。彼女は、一誠たちに微笑むと部屋の中へと姿を消すのであった。
「今、オレに微笑んだぞ! 脈アリか?」
「ないない」
「いいよなー、あの赤い髪」
「リアス・グレモリー。三年生、スリーサイズは99-58-90。北欧出身って噂だな」
「へー」
元浜の言葉に感心する横島。一誠たちはリアスのスタイルについて、感嘆の声をあげたのだと判断していたが、実際は元浜の観察力に感心していたのである。
(中々良い目を持っているな。少しの誤差もなくリアスちゃんのスリーサイズを当てるとは……くぅー、いい体になったよな、本当)
横島たちが盛り上がっている中、リアスは部室の中で朱乃と散歩していた黒歌と紅茶を飲んでいた。
「忠夫ったら、覗きをしていたみたいよ?」
「あらあら、これはお仕置きですかね?」
「実際に手を出したわけじゃないんだから、放っておいていいんじゃないかしら」
「それもそうですね」
一般の人間とは倫理観が違う悪魔だからなのか、横島の行為をスルーするリアスたち。
「ところで、忠夫と一緒にいた坊主……」
「ええ。忠夫が言うとおりでしょうね。まだ目覚めてはいないようだけど、神器を持っているわね」
横島と一緒にいた男子生徒を思い浮かべながら答えるリアス。リアスには神器を持っている可能性しか分からなかったが、横島が言うのだから間違いはないだろう。リアスの言葉に同意した朱乃が、リアスに問いかける。
「では、勧誘しますか?」
「そうね。取りあえず、仕込みくらいはしましょうか。全ては彼の気持ち次第。ただ、本音を言えば兵士になってくれると助かるわね」
「ま、あの坊主は欲深そうだから、勧誘は簡単そうにゃ」
その言葉に同意するリアスと朱乃。彼らと面識はないが、噂はよく耳にしていたからである。
「男って、何でああなのかしら?」
「忠夫さんもスケベですしね」
「あれでも落ち着いた方らしいわよ? 昔は命懸けで覗きしていたそうだし」
グレイフィアを覗いたときは大変だったと、サーゼクスから聞いた話を思い浮かべるリアス。その頃に比べれば、今日の覗きなど横島にとっては、子供の遊戯に付き合った程度の気分なのかもしれない。そう考えると、覗かれた女子には悪いが目くじらを立てることでもないような気がするリアスであった。
横島たちが覗きを敢行した翌日。2-Bの教室は騒然となる。
「イッセーに彼女が出来た!?」
「この裏切り者め! 写真見せろ!」
「同じ年らしいわよ? 脅迫かしら……?」
そう、変態三人組みの一人、兵藤一誠に彼女が出来たのである。一誠と仲の良い男子は真実かどうか罪を犯していないかを尋問し、遠巻きに眺める女子は物好きがいたものだと囁いたり、警察に通報するかを検討していた。
そんな中、横島が教室へと入ってくる。
「おはよーって、何じゃこの騒ぎは!?」
「ああ、兵藤に彼女が出来たらしいわ」
「へー。そりゃ良かったな」
戸惑う横島に藍華が一誠の件を伝えると、藍華の予想とは違い冷静に受け止める横島。昔の横島ならともかく、現在進行形で複数の美女、美少女に囲まれた生活を送っている横島にとって、友達に彼女が一人出来たくらいでは嫉妬の対象にはならないのである。
それを余裕と受け取った藍華は、横島の耳元でこっそり囁く。
「グレモリー先輩、屋上」
その言葉にびくっと反応する横島。その反応を見た藍華は、次々と名前を挙げて行く。
「姫島先輩」
「支取先輩」
「一年の塔城ちゃん」
だらだらと汗を流す横島に、藍華は更にキーワードを告げる。
「お弁当」
「膝」
「食べさせあい」
誰にも見られていない筈の光景を想起させる言葉に、横島の鼓動はどんどんと早くなる。一誠とは違い付き合っているわけではないのだが、バラされると同等かそれ以上に吊るし上げられるのは間違いない。どうにかして口止めをと横島が必死になって考えていると、横島の正面に回った藍華が悪戯っぽく微笑む。
「大丈夫、バラしはしないわ。ちょっと、からかっただけ。それより、兵藤の彼女について何かしらない?」
「あー、今初めて知ったからな。何も知らない」
「あ、そう。ま、恐らく他校の生徒でしょうね。学園の生徒で、噂を知ってて付き合おうって娘はいないだろうし」
藍華はそういうと、横島に手を振って追求組に加わっていく。そんな彼女を見送った横島は、自分も一誠の彼女の話を聞く為に輪に加わるのであった。
それから数時間後。噴水のある公園で、背中から槍で串刺しにされる一誠の姿があった。
原作とは少々違う点がありますが、おおむね流れは一緒でしたね。
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