――あなた、悪魔にならない?
この言葉を聞いた一誠の反応は、ただただ呆然とするだけであった。その反応にそりゃそうだよなと頷く横島。そんな彼らの反応を他所に、リアスは話を続ける。
「兵藤一誠君。あなたも悪魔は知っているわよね?」
「そりゃ、知ってますけど……あれはゲームとか神話の、架空の話でしょ?」
「それが違うのよ。悪魔は実在しているわ」
「冗談きついっすよ、先輩。幾らここがオカルト研究部だからって……」
一向に信じる気配がない一誠に、どうすればいいのか思案するリアス。横で朱乃が横島に羊羹を食べさせていることも気になって仕方がない。後で自分もしようと、リアスは決心する。
「天野夕麻…・…彼女もあなたの言う架空の存在だわ」
「ち、違う! 夕麻ちゃんは確かに存在してた! アンタたちの妄想なんかと違う! 横島も何とか言ってくれ!」
からかわれ続けていた話題だけに、敏感に反応する一誠。横島にも話を向けるが、横島は白音に羊羹を食べさせるのに忙しいとばかりに、ただ一言を一誠に告げる。
「最後まで話を聞け、一誠」
「最後って……」
「いいから」
横島に言われしぶしぶ言葉を聞く体勢になる一誠。それを確認したリアスは、言い方が悪かったわと謝ると続きを告げる。
「確かに彼女は存在していた。でも、人間としてじゃない。彼女はあなたが架空と言った悪魔と同じ存在――堕天使よ」
「だ、堕天使……?」
一誠の脳裏に中二病という言葉が浮かぶ。己の設定に酔っているのではないだろうかと疑う一誠に、リアスは一枚の写真を見せる。
「この娘が天野夕麻……でしょ? 彼女は、昨日あなたが
自分が死にかけた。本来なら怒ってもいい筈の言葉に、心の何処かで納得をする一誠。今朝夢で見たことは現実だったのだと。
「あなたは天野夕麻の仲間の堕天使に、背後から槍で刺された。そして、あなたが死んだと思った堕天使たちは、自らの形跡を消してその場を後にしたわ。その後、死の寸前だったあなたを私たちが助け、部屋へと送り届けた。これが昨日あなたの身に起きたことよ」
「助けた……?」
「そうよ。
その言葉に身を乗り出す一誠。死にかけたのも、生かされたのも同じ理由だと聞いて、気にならない訳がなかった。
「
「神器……。それが、オレの中に……?」
一誠にとっては何処かで聞き覚えがある言葉であった。薄れいく意識の中、天野夕麻が男と言い争っているのを聞いたときに、耳にしたのだと一誠は思った。同時に、何故意識が薄れていったのかを思い出そうとする。
「オレは……腹から槍がっ!」
慌てて立ち上がり、腹を確認する一誠。そこには、普段通りのそこそこ腹筋のついたお腹があった。
「確かに貫通してたのに……」
「だから助けたと言っただろうが。あと、汚い腹を隠せ。白音ちゃんの教育に悪い」
「あ、悪い。って、汚くないわ!」
そこそこ腹筋もあると呟きながら、服を着なおす一誠。それを確認した横島は、白音の目を塞いでいた手を離すとリアスに続きを促す。
「ようやく自分の身に起こったことを信じる気になったようね」
「あ、はい」
「じゃあ、続けるわ。私たち悪魔は自分たちの力を得る為に、人間と契約を結ぶ。それとは別に、仲間として力を持つ人間を迎えいれることがある。私たちがあなたに持ちかけているのは後者」
「じゃ、何で堕天使はオレを殺そうと……」
ようやく理解が追いついてきた一誠が、質問をする。その言葉にリアスは少し考え込んだあと、口を開く。
「運が悪かったのかもしれないわ。堕天使と悪魔は敵対関係にある。だから、神器所持者を悪魔に渡さない為に、殺害という強引な手を使った……だと思うわ。でも、普通なら神器所持者は堕天使にとっても貴重な戦力となるから、勧誘を先にする筈なの」
「オレ、勧誘された覚えないっす」
「だから、運が悪かったのかもしれないわ。恐らく、天野夕麻は勧誘前にあなたが本当に神器所持者なのかを確かめる為に、接近したと思うの。でも、仲間が過激派だった為に先走って殺してしまった。天野夕麻はあなたを殺した堕天使と言い争っていたと報告がきているし」
天野夕麻が殺害目的で接触してきたのではないとのリアスの予想に、安心する一誠。最初から殺害目的だったら、重度の女性不信に陥っていたところだと一誠は思う。やがて、一誠はリアスの言葉に不審な点があることに気がつく。
「報告って、誰かがオレたちのこと見てたんすか?」
「勧誘する為にあなたにつけていた使い魔がね。戦闘する力がないから、あなたを助けることは出来なかったけど、おかげで治療が間に合ったわ」
使い魔をつけたのは昨日からと聞いて、たまたま生きているのだとの思いを強くする一誠であった。
「さて、いろいろ納得して貰えたようだけど、どうするの?」
「どうするって?」
「悪魔になるのかって聞いてるの。いいわよ、悪魔」
リアスの勧誘の仕方に軽いなぁと感想を抱く一誠であったが、悪魔になって何のメリットがあるのだろうと考える。
「あの、メリットとかあるんですか?」
「そうね、取りあえず堕天使たちから身を守れるように鍛えてあげるわ。あなたが生きていると知ったら、殺しにくると思うし。私の眷属悪魔ってことなら、不用意に襲ってくることも少ないでしょうね。それに、私たちがあなたの危機に駆けつけるってことも出来るし。大丈夫、これでも力のある悪魔なのよ、私」
「他には?」
「寿命が長くなるでしょ? あとは、視力とかの身体能力も人間の時よりあがるわね。病気もしにくくなるし……大抵の怪我は治るわね。あと、私の眷属ってことで領地もあげるわ」
命の危機が遠ざかるのはいいが、悪魔になるには決め手にかけるなと一誠が思っていると、リアスがそれとと言葉を続ける。
「悪魔の力比べをするゲームがあるんだけど、それで活躍すれば人気者になれるわ。それに悪魔は一夫一婦制って訳じゃないから、複数の妻を持つことも可能ね」
「なります! オレ、悪魔になってハーレム作ります!」
原作とは違う点いっぱいでしたね。
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一誠周辺の出来事。
これらは作中設定です。
関連活動報告は【HY】と記載します。
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