アドマイヤベガIF ~もしも妹さんが生きていたら~   作:トマリ

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アドマイヤリラのヒミツ④
・実は、今つけている耳カバーは元は姉からもらったもので非常に大切にしており、一度も失くしたことがない。





姉妹の耳カバー【前編】

 

 ───これはまだ、アドマイヤベガとアドマイヤリラが幼かった頃の話

 

 

 

 

 

 とある一般的な家庭にて。

 電気が消されたリビングに、家族の手拍子と誰かの歌声が響いていた。

 

 

「ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデートゥーユー♪」

 

 

 歌っているのは父親だった。

 お世辞にも上手いとは言えない歌声だったが、歌を向けられている当の本人たちはきゃっきゃと笑っているので、些末な問題だろう。

 家族が集まっている机の上には、七本のロウソクが刺さった大きなチョコレートケーキがある。

 

 そう。今日は三月十二日。

 この日は家族の大事な娘たちであるアドマイヤベガとアドマイヤリラの、年に一度の誕生日パーティーなのだ。

 

「ハッピバースデートゥーユー♪ハッピバースデーディア……ディア……えっと、アドマイヤベガアンドアドマイヤリラ~!」

 

「あははっ、パパ急にはやくち~!じゅもんみたい!」

 

 妹の方である、アドマイヤリラことアヤリが歳相応の表情で笑う。

 

「しっ、仕方ないだろ!ここで略称にするわけにもいかないし……。はい、ハッピバースデートゥーユー♪」

 

「とぅーゆー♪」

 

「……リラ、あんまり騒がないの。机がガタガタ揺れたら、ケーキが倒れちゃうかもだから……」

 

 反対に、姉の方であるアドマイヤベガことアヤベは、歳に反してしっかりした声で諌めた。

 

「ほらほら、二人でロウソク消してっ」

 

 スマホを構えながらの母親の言葉が聞こえると、大人しい姉と快活な妹は小さな体を同時にテーブルに乗り出させる。

 そのまま「せーの」と軽く頷き合ってから、同時に息を吹き掛けた。

 まだ幼いとはいえ、ウマ娘の肺活量で吹いたからか、ロウソクの火は一回で全て消える。それと同時にリビングに明かりが点き、父と母から拍手が起きた。

 

 

「はい、アヤベにアヤリもおめでと~!」

 

「うわーい!ありがとー!」

 

「……ありがとう」

 

 

 妹の方は無邪気に喜んでいたが、姉の方はあくまでもクールである。だが、その頬は仄かに朱色に染まっていた。……本当はただ恥ずかしいだけなのかもしれない。

 

「ようしっ、じゃあケーキを食べるとするか!」

 

 母親が何枚か写真を撮ったのを確認してから包丁を持つ父親。

『ケーキ』という言葉にアヤリは待ってましたとばかりに耳を動かし、待ちきれないとばかりに皿を差し出した。

「少し待ちなさい」と苦笑してから、父親はケーキを見下ろすような態勢を取って、なるべく正確にケーキを切り分けようとする。

 横軸は中心を通るように切り、それから縦軸を……中心よりやや左寄りの位置を通るように切る。そうすると、ケーキは右側の二つが左側の二つよりも大きい、やや歪な四等分となった。

 

「はい。じゃあこっちがアヤベとアヤリの分ね」

 

 父親は包丁の側面に右側のケーキを丁寧に乗せると、姉妹の皿へそれぞれ渡した。

 あの歪な切り方は、二人がウマ娘だからたくさん食べるだろうということへの、ちょっとした配慮である。……あとは、両親側が歳の都合から甘いものを食べると胃もたれしてしまうというのもあった。

 

 だがそんな大人の都合は知る由もなく、姉の隣に座る妹はきゃっきゃとはしゃいだ。

 

 

「お姉ちゃんチョコプレートっ、プレートはんぶんこしよっ!」

 

「……べつにいいわよ。それはリラが食一人でべなさい」

 

「ええっ!?いいの!?」

 

「……私はそのプレート、あんまり好きじゃないから。むしろあなたに食べてもらわないと困る」

 

「やったー!!まったくぅ、お姉ちゃんは私がいないとダメだね♪」

 

「……そうね」

 

 

 ただ貰うだけなら渋ったかもしれないが、『姉を助けられる』という要素も加わったことでウキウキでアヤリはチョコプレートを自分の皿に乗せた。

 

「……良いお姉ちゃんねぇ」

 

 母親はアヤベの行動の意図に気づいていたが、あえて何も言わないことにしたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も、パーティーは滞りなく進んでいった。

 女性は基本的に甘いものが好きである。それはウマ娘も変わらない。そして幼い少女なら尚更だ。

 一口食べるほどにアヤリは顔をとろけさせ、アヤベの方も表情こそあまり変えないがフォークを動かす手は明らかに普段より早くなっている。

 チョコレートケーキはいつの世も正義のようだった。

 

 

「ね、ね、お姉ちゃん」

 

「……なに?」

 

「はい、あーん♪」

 

「……なにをしてるの?」

 

「なにって、『あーん』じゃん!」

 

「……違うケーキを食べてるならともかく、私とリラは同じ物を食べてるんだけど?」

 

「べつにいいじゃん~!ほら、あーん♪」

 

「もう……んむっ」

 

「おいしい?」

 

「……美味しいわよ」

 

「よかったぁ!じゃ次私の番ね!あー♪」

 

「……なんで今度はあなたが口を開けてるの?」

 

「だって私が『あーん』したんだから、次はお姉ちゃんがする番だよ?ほら、あー♪」

 

「……だから、同じものを食べてるのだけど?」

 

「あー!」

 

「……もう。……はい」

 

「あー……あむっ。んー!おいしい!お姉ちゃんに食べさせてもらうともっとおいしい♪」

 

「……それは良かったわね」

 

 

 そんな一幕を横から母親が無言でビデオに撮りつつ……五分も経つ頃には二人はケーキをペロリと平らげていた。……ちなみに父親は三分の二まで食べたあたりで胸を押さえ出し、残りをアヤリに譲ることになった。

 そうして、姉はにんじんジュース、妹はオレンジジュースで口直しをしたあたりの時。

 

 

「……ねぇ、リラ」

 

 

 不意にアヤベがアヤリへと声をかけた。

 

 

「ん?ふぁぁにお姉ひゃん」

 

 

 口の周りをティッシュで拭きながら答える妹。

 ムードの欠片もないアヤリの姿にアヤベは呆れ、妹と口を拭き終わるのを待ってから言葉を紡ぎだしきた。

 

 

「……リラに、渡したいものがあるの」

 

 

 言いながらアヤベは母親に視線を寄越す。視線と言葉で母親は察したのか、いつも彼女が愛用しているカバンから、預かっていたプレゼント箱を取り出した。

 プレゼント箱を大事そうに受け取ったアドマイヤベガは……その箱をそのまま、アドマイヤリラへと差し出す。

 

 

「……はい。私からあなたへの、誕生日プレゼント」

 

「え……えっ?」

 

 

 信じられないようにアヤリは目を見開いた。

 ……今までこの一家での誕生日は、家族が集まってケーキを食べ、食べ終わった後に母親が子供たちに欲しいものがないかを聞き、後日それを母が買いに行く、というような流れが決まっていた。

 なので、当日中にサプライズプレゼントを貰えるなど初めてのことだったのだ。

 しかも親ではなく、大好きな姉から。

 

 

「えっ……こっ、これっ!今あけていいっ!?」

 

 

 興奮で取り落としそうになりながら尋ねる。

 

「……うん」

 

 アヤベが頷くやいなや、アヤリはすぐにプレゼント箱に手を掛けた。まだ『丁寧に開ける』ということを知らないからか、一刻も早く中身を知りたいからか、ビリビリと音を立てながら雑に包装紙を破いていく。

 ……現代のアドマイヤベガなら眉をひそめそうだが、この時の彼女は緊張でそこまで気が回らなかった。

 包装紙を除けると、やがて中の物が露になった。

 

 

 中にあったのは……星のような模様がついた、青い耳カバーのセットだった。

 

 

「うわぁ~……!」

 

 

 まるで金銀財宝の山でも見つけたように、アヤリは目を輝かせていた。

 

 

「これっ……!お姉ちゃっ、これ、これこれ!」

 

 

 嬉しさのあまりか舌が上手く回っていない。そんな妹から、アヤベは照れたように視線を逸らした。

 

 

「……この間、お母さんとデパートに行ったときに、たまたま見つけたの。星の模様が、綺麗だなって思った。だから……お年玉を前借りして買ってもらったの。あなたへの、誕生日プレゼントとして」

 

「お姉ちゃんから……!お姉ちゃんが買ってくれた、プレゼント……!」

 

「……正確には、買ったのは母さんだけど」

 

「あらあら、選んだのはアヤベよ。お金もアヤベのお年玉から出したんだし」

 

 

 姉に頼まれてサプライズ計画の一端を担っていた母親が、口許に手を当てて笑う。

 

「その後アヤベにも、ちゃんと同じものを買ったし。こっちは私からの誕生日プレゼントね」

 

 母親は再びカバンを漁ると、アヤリが持っている耳カバーと全く同じものを取り出した。

 こちらはアヤベ自身の『誕生日プレゼントなのだから、誕生日の日までは受け取らない』というポリシーに従って預かっていたものである。

 その縛りが解けて母親から自分の分の耳カバーを受け取ったアヤリを見て、アヤリは耳と尻尾を千切れんばかりに振った。

 

 

「えっ……。て、てことは……これっ、お姉ちゃんとの『お揃い』ってこと……!?」

 

「……そうなるわね」

 

 

 アヤベがそう頷くと、アヤリは……心から嬉しそうな表情を作った。

 

 

「……えへっ。ふふふっ。えへへへへへっ……!」

 

 

 にへらと笑いながら、耳カバーを大事そうに抱き締める。

 見てるこちらまで幸せになるほどの喜びようだった。

 ……とりあえず妹が喜んでくれたようでアヤベはホッと一安心し、それを影からスマホで撮影していた両親は共にガッツポーズを取った。

 

 

 すると、喜びを噛み締めているようだったアヤリが、耳カバーを見て言う。

 

 

「これっ、今着けていい?」

 

「……良いわよ」

 

 

 姉からの了承をもらった瞬間、妹は嬉々として両耳に装着していった。

 

 ウマ娘における耳カバーは、基本的には耳が敏感なウマ娘がつけるというパターンが多いが、単なるオシャレとして着けているウマ娘もいる。

 この姉妹に関しては後者である。

 大好きな青色と星模様の付いた耳カバーですっぽりと耳を覆って、これで彼女の気分もハッピーに───

 

 

「……あれ?」

 

 

 ───のはずだったのだが……耳の根本のあたりを押さえながらアヤリが急に声を上げた。

 

 

「? どうしたの?」

 

「……これ、ぶかぶか」

 

「えっ」

 

 

 ボソリと発せられたアヤリの呟きに、アヤベが目を見開いた。

 アヤリが耳の根本から手を離すと……確かにウマ耳はすっぽりと覆えていたのだが……カバーの先端の部分が力なく倒れてしまっており、まるでピエロの帽子のようになってしまっていた。

 確かにこれは少し……いや、かなりぶかぶかだ。

 

「そ、そんなはずは……」

 

 珍しく焦ったような声を出しながら、アヤベも自分の耳カバーを着けてみる。だがやはりそちらも……生地が余ってしまっていた。

 歳の割には大きな耳を最大限立たせているのだが……カバーは倒れてしまう。

 

「な、なんで……?」

 

「……それ、もしかして子供用じゃないんじゃないのか?」

 

 失礼、と言って父親は横からアヤベの耳カバーを取り、商品タグを見てみる。

 

「んー……やっぱりだ。これ、学生あたりのウマ娘用のサイズだな。子供用じゃない」

 

「あ、あら?そうだったの?」

 

「おいおい母さん、買う前にちゃんと確認しないと」

 

「ご、ごめんなさい……アヤベが我欲を出すのなんて珍しいから、つい……私の方が舞い上がっちゃってたみたい……」

 

 まったくもー、と困ったような顔をする父と申し訳なさそうな顔をする母。

 姉妹には二人の会話の意味はよくわからず、首をかしげるしかなかった。

 

「どうしよう、これ……」

 

「大丈夫よアヤベ。大きいならお母さんが合わせてあげるから……」

 

 父親から受け取った耳カバーを伸ばすと、アヤベの耳と並べて「……これぐらいかしら」と大体のアタリをつける。

 

「うん、これぐらいなら大丈夫だわ。あとでミシンで調節しましょう」

 

「……できるの?」

 

「大丈夫よ。これでも母さん得意だから!ほら、アヤリも一旦耳カバーを貸して」

 

 ミスを取り戻せる目処が立ったことで、不安そうだったアヤベはようやく安心したような表情になった。

 だが───

 

 

「……え?」

 

 

 何故か今度はアヤリが驚いたような顔をした。

 

 

「……おかーさん、『合わせる』ってなに?」

 

「?そのまんまの意味よ?ほら、こないだアヤリのズボンの裾を合わせたことがあったじゃない?あれと同じように、この耳カバーをミシンで───」

 

「っ!!」

 

 

『ミシン』という言葉が聞こえた瞬間。

 アヤリは母親の台詞が終わる前に、危機を察知した動物のように俊敏な動きで自分の耳からカバーを取って手の中に抱き止めた。

 

 

「やっ!!」

 

「え?」

 

「や!!ミシンでいじられるのいや!!」

 

「嫌……?」

 

 

 あまりに突然すぎたためか、母親はなんとか台詞だけを理解できたように返した。

 

 

「合わせなくていい!やだ!!」

 

「やだって……でも、そのままだとぶかぶかよ?不格好だし、どこかで外れちゃうかもしれないし……」

 

「いいの!!私はこのままがいい!!」

 

「え、えぇ……?」

 

 

 どういうわけか、アヤリは耳カバーを母に渡すことを拒否し続けた。

 ……子供は時々、大人の理解できない妙なところにワガママを発揮することがある。……どうやら今回もそのケースのようだった。

 

「困ったわねぇ……」

 

「ま、まぁまぁ、いいじゃないか」

 

 母親は困ったように頬を掻いたが、父親が仲裁するように入ってきた。威嚇する猫のような状態になっているアヤリと、そんな妹の姿に少し驚いているようなアヤベを交互に見る。

 

 

「アヤリはそのまんまでいいんだよね?耳カバー」

 

「うん!このままがいい!!これでいい!!」

 

「わかった。アヤベも、アヤリのがこのまんまでも別にいいよね?」

 

「……うん。もう、リラにあげたものだから、リラが好きにすればいいけど……」

 

「そっかそっか。じゃあ双方納得してるし、この話はこれでおしまいだな」

 

 

 最後の方の台詞は母親に向けて言っていた。

 母はまだ頬を掻いていたが……これ以上波風を立てるのも良くはないと思ったのだろう、心配しながらも頷いた。

 

「……わかったわ。じゃあ、アヤベの方は後で合わせましょうか。アヤリの方はそのままで……」

 

「まぁ大丈夫だろ。高校生ぐらいになる頃には、ちょうどぴったり合うサイズになってるさ」

 

「だといいけど……」

 

 そんな会話をする両親を尻目に、アヤリはミシンの魔の手から間一髪耳カバーを守ったことにほっと息を吐く。

 

「~~~っ♪」

 

 もう一度見つめると、彼女は耳カバーをぎゅっと抱き締めた。自分の所持品に匂いをつける猫のように何度も頬擦りをする。

 そして一通りやって満足すると、また自分の耳に装着した。

 

「…………」

 

 いつになく独特なワガママを発揮した妹に、アドマイヤベガは少し驚いたようだった。

 

「♪」

 

 ……とはいえ、自分の贈り物をここまで喜んでもらえれば、悪い気はしない。

 妹の無邪気な笑顔に、アヤベの心が温かくなったのは事実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその翌日。土曜日。

 予想通りというか、アヤリは上機嫌の極みだった。

 昨日は疲れて寝落ちしてしまった分、彼女は朝七時にきっちりと目を覚ます。そして起きるなり、姉からの耳カバーをさっそく装着すると、平日のトレーナー業で疲れて爆睡している父親にのし掛かって叩き起こした。

 

「とーさんとーさん!!起きて起きてー!!」

 

「ん゛ん゛……なんだよぉ……今日は土曜日だろ……っ、た、太陽が眩しい……!」

 

「見てほらっ!お姉ちゃんからもらった耳カバー着けてみたの!ニューアヤリだよ!!どう!?」

 

 新しいオモチャを自慢するように、アヤリは父の上でにぱっと笑ってみせた。

 

「おぉ……す、すごいな……」

 

「似合ってる?似合ってる?」

 

「うんん……似合ってるぅ……」

 

「やったー!!」

 

 一通り欲しい言葉をかけられて満足すると、次はお母さんだとばかりに(母は早起きしていた)アヤリはリビングへと飛んでいった。

 ……父親はアヤリがベッドから降りる際に足を蹴られて「おうっ」と声を上げたが、数秒ほど経つと再び眠りについた。

 

 

 

 

「おかーさんおかーさん!」

 

「あらアヤリおはよう。今日は早起きね」

 

「うんっ!見てっ、耳カバー!着けてみたの!」

 

「あらあら本当。よく似合ってるわね~!」

 

「えっへへ~♪」

 

 母親の方は言葉と共に頭を撫でてくれたので、アヤリはすっかりご満悦だった。

 耳カバーは相変わらずぶかぶかで先っぽが垂れ下がっているので、今のアヤリの耳は常に『垂れ耳』となっておりさながらダックスフントのような状態になっていた。

 快活にアヤリが動く度、耳カバーの先が一拍遅れて揺れる。……それはそれで可愛い光景だった。

 

「えっへへ~!少し経ってお姉ちゃんも着けたら、これでお揃いだ~♪」

 

 アドマイヤベガの方の耳カバーはミシンで調節してもらうため母に預け直しており、着けるのはまだである。

 そして、この家でミシンが使えるのは母親しかおらず、その母は昼頃にご近所さんとのお出かけの約束があるらしい。

 なので、必然的に作業が行われるのは夕方あたりとなる。

 

 

 だが、アヤリはアヤベと『お揃い』になれるのが待ち遠しいようだった。

 さっきから落ち着かなさそうに部屋の中をうろうろと動いている。

 

 しかしそれでも発散しきれなくなったのか、午後二時ぐらいになると、

 

 

「あー!もう、私近くの公園で遊んでくるー!!」

 

 

 と家を飛び出していってしまった。

 

 ……本当に落ち着きのない妹だ。

 金曜日に出た学校の宿題を終わらせながら、アヤベはため息を吐いてしまった。

 

 

 ……まぁ彼女自身も、妹とお揃いになれるのが嬉しくないかと言えば、嘘になるのだけれど───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───そして、三時間後。

 

 事件は、空が曇りかけた頃に起きた。

 

 

 

「……ただいま」

 

「ん。リラ、お帰り」

 

「…………」

 

「ずいぶん遊んだわね?もう五時だけど」

 

「…………」

 

「……リラ?どうしたの?」

 

「…………」

 

「ていうかあなた……よく見たら泥だらけじゃない。目もちょっと赤いし……大丈夫なの!?」

 

「……しちゃった」

 

「え?……ごめん、もう一回言ってくれない?リラ」

 

 

 

 

 

「失くしちゃった……。お姉ちゃんがくれた、あの耳カバー……」

 

 

 

 






更新が遅れてすいませんでした。
あと、本来一話にするところだったのを文字数の都合で急遽二話に分割したので、最後が少し駆け足気味です。申し訳ありません。
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