アドマイヤベガIF ~もしも妹さんが生きていたら~ 作:トマリ
新しい話が難産なため、間を持たせるために軽く概念として思い付いていた話を会話文SSとして射出することにしました。
いつも以上にオチも盛り上がりも弱いですが、楽しんでいただけると幸いです。
『寂しがり屋』
───とある日
「ねぇお姉ちゃん!! なんで昨日一緒にお風呂入ってくれなかったの!?」
「リラ、声が大きい……ここ一応公共の場だから。……なんでって、昨日リラが疲れて部屋で爆睡してて、起こそうとしても起きなかったからじゃないの」
「なんでそこで諦めるのぉ!? そこは叩いてでも起こしてよお姉ちゃん!!」
「知らないわよ……あの後朝風呂は入れたんだからいいじゃないの……」
「相当無理言ったけどね……。はぁーあ。お姉ちゃんと一緒にお風呂入りたかったなぁ……」
「……自分で言うのもなんだけど、あなたってホント私にベッタリよね」
「いいじゃん! お姉ちゃんを独占できるのは妹である私の特権なんだしっ♪」
「そういう話じゃないのだけど。はぁ……将来社会に出たとき、あなたは私無しでもやっていけるのかしら……」
「どういう意味なのそれ……あっ。そうだお姉ちゃん、私明日からちょっと色々予定がブッキングしてるから。ちょっとお姉ちゃんと一緒にいる時間減るかも」
「予定? ……あなたの『予定』って、どうせ追試とかそんなのばっかじゃないの?」
「しっ、失礼な、違うよう! 私にも色々あるの!」
(……まぁ、大方一人でいたずらの準備でもするとか、そんなのでしょうね……)
翌日。放課後
「……リラ。今日は練習お休みだし、帰るわよ」
「あっごめんお姉ちゃん! 私これからフクさんの占いの館を手伝わないといけないから……」
「フクさん……? マチカネフクキタルさんのこと?」
「そ! 訳あってドトウちゃんが入れなくなったみたいだから、今日は臨時の助手を頼まれてるんだー! というわけで行ってくるねっ!」
「…………」
(……『用事』って、本当の用事だったの?)
別の日。お昼
「リラ。今日のお昼は……あら?」
「あれ? アヤリさんなんでまだここに……って、あなたお姉さんの方か」
「……リラがどこに行ったのか、知ってるの?」
「うーん、なんかあの『黄金世代』のグラスワンダーさんにお茶のお誘い受けてたみたいだよ? 『お茶っ葉が余ったからどうでしょうか』みたいに誘われてたらしくて」
「……そうなの」
また別の日。
「あっ、アヤリさーん!」
「……あれ、トップロードさんにお姉ちゃん! どうしたの?」
「……トップロードさんがチーズケーキを買ってきたのよ。この後皆で食べようって話になっているのだけれど」
「あーーごめん二人ともっ! ……実はこれからマヤちゃんの部屋で、マヤちゃんとイクノディクタスさんとTSUTA◯Aで借りてきた『LOVEだっちシーズン2』の一気見上映会をやるつもりだから……」
「あー……それは残念ですね……」
「ほんっとごめん……。私の分のチーズケーキは皆で食べていいからっ!」
「いいんですか?」
「いいですとも! むははっ、私のチーズケーキをめぐって者ども争うが良いわ~!! ではっ!」
「あ、行っちゃいました……。どうしますか? アヤベさん、チーズケーキもう一つ食べますか……って、アヤベさん?」
「…………」
またまた別の日
「はひっ、はひっ、はひっ……!」
「……あ。リラ、ちょうど良いところに。あなた今日の授業中……」
「ちょちょちょ! お姉ちゃん今はパスっ! 邪魔邪魔!!」
「えっ───」
「ひひーーん!! ご勘弁をーー!!」
「そこにいたかぁミラちゃんっ! ほら、プール行くよー!!」
「うへぇぇお情けを~~……! アヤリちゃんだって泳げないじゃないですかぁ……嫌な気持ちわかるでしょぉ……!?」
「でも、嫌なことは早く終わらせた方がいいって! それに、トップロードさんがまたケーキ買ってきてくれたみたいだからさっ!補習終わったら食べに行こうよ!」
「ケーキですか!? ケーキ……ケーキぃ……うぐぐぐ……!」
「はいはい行きますよー。……あ、というわけだからお姉ちゃん。今日は私ミラちゃんとプールの補習があるから……」
「……そう」
「あ、アヤベさん! こんな所にいたんですか!」
「……トップロードさん。なにか用?」
「いえ、そういうわけではないんですけど……。グラウンドや図書室で見当たらなかったのでどこにいるのかなぁって思ってたんですが……教室に残ってたんですね」
「……今日は練習も休みだし、寮に帰っても仕方ないもの。図書室は何かイベントをやってるみたいだし、今は教室の方が集中して課題ができるわ」
「なるほど……。あれ、そういえばアヤリちゃんは一緒じゃないんですか?」
「…………。……リラは」
「?」
「今日はドトウと出掛けたわ。めーめー団がどうとか言っていたけど……私は全然知らない」
「そうなんですか……。なんだか、珍しいですね」
「なにが?」
「いえっ、アヤリちゃんっていつもアヤベさんの傍にいますから……。最近のアヤリちゃんってアヤベさん以外の色んなウマ娘のところに行ってるみたいで……なんだか寂しい気が……」
「……別に。あの娘、意外と交遊関係が広いもの。こういう時もあるわよ。……オペラオーみたいな変なこと教えるウマ娘と関わってないんだったら、別に私は構わないわ」
「……あの、アヤベさん」
「……なに?」
「……さっきから、アヤベさんの課題の回答欄、全部下に一つズレてますよ?」
「…………。……ごめんなさい。教えてくれてありがとう、トップロードさん」
「いえ……」
その日の夜。消灯前
「いやーー! やぁっと用事が諸々一段落ついたよー……。これは近年稀に見る超超大ブッキングだったねぇ……」
「……そう。大変だったわね」
「むっふっふー! お姉ちゃん私がいなくて寂しくなかった?でも心配しなくても、明日からはやっといつも通りに戻れるよー!」
「……もう消灯時間だから。あんなに予定が詰まってたんなら疲れも溜まっているでしょ。早く寝ましょう」
「え? あ、うん」
(……相変わらずクールだなぁお姉ちゃん……。ちぇっ、つまんないしなんか複雑ぅ……)
「んじゃお姉ちゃん、おやすみー……」
「……おやすみ」
「……えっ!? ちょっ、ちょいちょいちょい!? お姉ちゃん何やってんのっ!?」
「……なにが?」
「『なにが?』じゃないけど!? なんでお姉ちゃん私の布団に潜り込んできてんのっ!?」
「…………」
「一人用の布団だからすごい狭いしっ!! それにっ、この動きって私の専売特許だったんじゃ───」
「……こんなのを専売特許にしないで。……別に、嫌なら出ていくけど」
「えぇ!? いや、まぁ……お姉ちゃんならいいけど……む、むしろウェルカムだけど……」
「……じゃあいいじゃない。そういう日もあるわ」
「う、うん……? ……まぁ、いいの、かな? なんか釈然としないけど……」
「……じゃあ、おやすみ」
「お、おやすみぃー……ひひんっ!?」
(な、なんかお姉ちゃんしっぽを凄く絡めて来るんだけどっ!?最近私なんかしたかな!?)
───結局この夜、アドマイヤリラは一睡もできなかった。それに対しアドマイヤベガはぐっすりと、快眠だったという。
『風邪を引いた日』
約十年前のとある日。アドマイヤベガの実家、姉妹の部屋にて。
ピピピピピピピピ
「ん、測れたわね。体温計貸しなさい、アヤリ」
「ん……ごほっ、ごほっ、ごほっ……」
「熱は、37.3℃……。うーん、これは完全に夏風邪ね……。今日は安静にしてなさい」
「えぇー……! やだぁ……今日も遊ぶのぉ……! ごほっごほっ……!」
「そんな状態で外に出たら倒れちゃうでしょ。他の子にうつしても困るし」
「うぅ……! 遊ぶのぉ……遊ぶぅ……! 夏休みもあと一週間しかないのにぃ……!」
「だからこそしっかり休むのよ。二学期早々に体調悪くしてたら色々困るでしょ。駄々こねないの」
「うー……!」
「……おはよう。お母さん、リラ」
「あっ……ごほっ、お姉ちゃん?」
「アヤベ。もう起きたの?」
「……誰かさんがうるさいから。……リラ、風邪引いたの?」
「そうなんだよぉ……! 助けてよお姉ちゃあん……!」
「……さすがに風邪は私もどうしようもないわよ。確かリラ、昨日も外で遊んできて、夕立に降られて帰ってきたじゃない。絶対それで風邪引いたでしょ」
「うっ……」
「……私は何度も『雨が降りそうだから』って忠告してたのにね」
「ひうっ」
「降られた後もちゃんとシャワーで体を温めておきなさいって言ったのに……」
「ごほっごほっ! うえぇぇん……そ、そんな目しないでよ、お姉ちゃあん……」
「はいはいそこまで。……アヤベたちにとっては夏休みでも、お母さんは普通にお仕事あるから。アヤベ、悪いけど今日はアヤリのことをみておいてあげて」
「……わかったわ。いってらっしゃい」
「うえぇぇぇん……」
「……ほらリラ、冷えピタ貼ってあげるから。動かないで」
「ふぁい……。……ひぇ冷たいっ!」
「だから動かないでって。上手く貼れないじゃないの」
「つめたいー……!」
「一瞬だから我慢しなさい。……はい、できた。最初は冷たいけどすぐに気持ちよくなってくるでしょ」
「……あっ、ほんとだ……。お姉ちゃんの手、冷たくてきもちー……」
「冷えピタに冷たさを感じなさいよ……」
「ああーお姉ちゃん、顔から手をはなさないでー……」
「はいはい……。風邪薬は飲んだ?」
「のんだー……」
「ん。じゃあ大人しくしてなさい。ポカリはそこにあるし、氷枕がぬるくなったら取り替えてあげるから。……はい、私は宿題するから、手を離させて」
「……はーい……ごほっごほっ」
「ごほっ、ごほっ……」
「…………」
「……ごほごほっ!」
「…………」
「げほっ! げほっ、げほん!」
「…………」
「……おねーちゃん、ひまー」
「良いことじゃないの。大人しくしてなさい」
「ぶー……」
(……風邪引いてるときは眠るのが一番みたいだけど、こんなに咳が出るんじゃ眠れないし。……というか眠くないし。深刻じゃない体調不良の時って、意外と暇なんだよね……。マンガとか読んで暇潰ししたくても、今は腕動かすのもダルいし……)
「…………」
(……お姉ちゃん、集中してるなぁ。これ以上『ひまだー』って言っても、邪魔になるかなぁ……。大人しくしてるしかないのかなぁ……)
「……はぁ……。……静かね。リラ」
「え?」
「……私、今からスマホで何か動画を流すつもりだけど、良い?」
「えっ……あ、え? わ、私は良いけど……な、なんで?」
「……私、なにかしら周りに音があった方がむしろ集中できるタイプだから」
「な、なるほど……? あれ? でもお姉ちゃんって確か無音の方が集中できるタイプじゃなかったっけ」
「……いいから。うるさかったら言いなさいよ」
「え、あ、うん……」
「……これが良いかしら」
『出たわねっ! ダートの怪人「マダート」!! 私に退治されなさいっ!!』
「あーーー! げほっ、げほっ……!」
「……なによ、急に大声出して」
「これっ、こないだのウマキュアの動画だー……!!」
「……そうなの?私は全然知らないけど」
「見逃し配信やってたんだー! お姉ちゃんお姉ちゃんっ、おねがいっ! それっ、ごほっ、流してよー……!」
「……音があれば私はなんでもいいわ。ただ、あんまり騒ぎすぎないようにしなさいよ。熱が上がるから」
「やったー……! げほっ、げほっ……ウマキュアがんばれー!」
「……これでしばらくは退屈しないでしょ。大人しく見てなさいよ」
「うんっ! ……えへへ」
「……リラ。そろそろお腹空いたでしょ」
「空いた……けど、食欲あんまない……」
「それでも、何かお腹に入れなくちゃいけないわよ。……ほら、お粥あるから」
「……えっ!? お姉ちゃんの手作りお粥……!?」
「そんなわけないでしょ。インスタントのお粥よ。お母さんが用意しておいてくれたの」
「ちぇっ……けほっ、けほっ」
「どこが不満なのよ……。一人で食べれる?」
「だいじょーぶ……あむっ」
「食べれなくなったらいつでも言いなさいよ」
「はむっ……むー……。味うっすいー……」
「そこは仕方ないでしょ。お粥ってそういうものなんだから、贅沢言わないの」
「むー……」
「……はぁ。お塩と梅干し、どっちが良い?」
「しおっ! うめぼしはすっぱいからヤダ!」
「じゃあ取ってくるから待ってなさい……。勝手に使った分は、後でお母さんに謝っておきましょうか……」
「……はい。これぐらいかければ良いかしら?」
「わぁ……美味しそー……! ……あっ」
「? どうしたの?」
「……お姉ちゃん」
「なに?」
「……せっかくだから、食べさせてー……」
「はぁ?」
「だって、もうしんどくなっちゃったんだもん」
「あなた、さっきまで一人で食べてたじゃないの」
「今はむりなんだもん! はい、あー……」
「口開けて待機しないの……。もう……。はい、あーん……」
「あー……むっ。んー……! 全然違う……! さっきより何百倍もおいしい……!」
「……塩かけただけでそんなに変わるわけないでしょ。そこまで変わってたらむしろ問題よ」
「えへへっ♪ あー……」
「はぁ……。はい、あーん……」
「はむっ……んー……! はいっ、次お姉ちゃんの番ね♪」
「はぁ?」
「はいっ♪ あーん……」
「もう……んむっ。……っ!?しょっぱ……!!」
「へ?」
「あなたコレっ……! 塩かけすぎじゃない! ……あ、いや、かけたのは私か……。とっ、とにかく、こんなの食べて大丈夫なの!?」
「あれー? 私は全然おいしいけどなー……?」
「……風邪引くと舌がバカになるのって本当だったのね……」
「まぁいいじゃん……はいはいっ、お姉ちゃん」
「?」
「はい、あーん♪」
「今のリアクションを見てもう一回食べさせるの??」
ピピピピピピピピ
(37.1℃……。リラの熱も、朝と比べれば下がってきたわね。昼の分の薬も飲ませて汗も拭いたし、もう少し寝かせていれば、明日には元気になってるかしら)
「お腹いっぱい……」
「……結局お粥全部食べたわね」
「えへへ……だっておいしかったし……」
「……インスタントのお粥でそこまで喜ぶんなら、安上がりな娘ね」
「ちがうよー……! お姉ちゃんが食べさせてくれたから喜んだんだし……!」
「……もっと安上がりね」
「なにおう……ふわぁ……。あれ……? 今になって眠く……?」
「……お腹いっぱいになったからね。薬の成分の影響もあるかもしれないけど、単純すぎるでしょ、リラ」
「ふわぁ……」
「……ゆっくり寝なさい、リラ。きっとそのまま寝たら、起きた頃には元気になってるわ」
「うん……そうする~……」
(すっかり目がトロンとしてきてるわね……)
「……ねぇお姉ちゃん……」
「……なに?」
「子守唄……うたってぇ……」
「はぁ? なんでよ?」
「眠りたいけど……頭がズキズキして眠れないのぉ……。うたってくれたら……よく眠れる気がする……」
「…………」
「……だめ?」
「……急に言われても、困るわよ」
「ご、ごめん……」
「…………」
「…………」
「……はぁ。目、閉じなさい」
「ふぇ?」
「……歌ってあげるから」
「……えっ? いいの!?」
「私の好みで選んだ歌でも良いならね」
「いいっ! いいっ! 全然いいっ!」
「じゃあ、早く目を閉じなさい」
「う、うんっ」
「……ふぅ」
「きーらーきーらーひーかーるー……。
おーそーらーのーほーしーよー……」
「ただいまー……。アヤリー、大丈夫ー?」
「アヤリー? あら……アヤベー? ……なんで二人とも返事が無いのかしら? ……もしかして部屋で何かあった……!?」
「アヤベー、アヤリー? 大丈夫なの───」
「くぅ……おねえ、ちゃん……」
「すぅ……すぅ……」
「……あらあら」
おまけ
アドマイヤリラの交遊関係、及び相手ウマ娘の呼び方(ほとんどフィーリングで決めている)
アドマイヤベガ → お姉ちゃん
テイエムオペラオー → オペラオーちゃん
メイショウドトウ → ドトウちゃん
ナリタトップロード → トップロードさん(いいんちょー)
ハルウララ → ウララちゃん
マチカネフクキタル → フクさん
マヤノトップガン → マヤちゃん
イクノディクタス → イクノディクタスさん
ダイワスカーレット → スカーレットさん
ウオッカ → ウォッカさん
スペシャルウィーク → スペちゃん
エルコンドルパサー → エルエル
グラスワンダー グラスちゃん
キングヘイロー → ヘイローさん
セイウンスカイ → ウンスンさん
ヒシミラクル → ミラちゃん