<オリ章作成中につき現在更新停止中>Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
紙のめくれる音とカリカリとペンの走る音が聞こえる部屋の中、アントンとサリアはひたすらにたまった書類を片付けていた。
アントンは日々数件やってくる依頼の整理を、サリアは依頼の報酬や事務所の維持費など金銭絡みの部分を。
事務処理が主なサリアと違い、自身でも依頼に取り組むアントンだが一緒になって書類整理をしていたのはただ単にもう依頼を割り振った後だったからだろう。
「ん~?...アントン~」
「なんだ。お前が話すなんて珍しい。」
「私を何だと思ってるの?じゃ〜な〜く〜て~」
やたらと間延びした声で話題を変える。
「先月のシ協会からの要請...多くない~?なにこれ、三か月分の仕事量なんだけど~」
「あぁそれか。間違いなく一か月分だ。あいつらだけだったらこれの2、3倍あるぞ。」
「うっげぇ~過労死しちゃうよ~」
「実際何人も死んでるしな。今となっちゃ数か月前よりも半分以上居なくなってやがる。」
大した感慨も無い様で当たり前のように言い放つ。
「だから今ケルミナが過労死しそうになってんだろ。」
「ん~」
「オレもシ協会に回った方がいいかもな。」
「ん~」
「...蹴り倒すぞ。」
「ん~」
「っし...」
席から立って背伸びをしたあと、サリアの前に立つ。
「起きろやバカが!」と大きく足を振りかぶってサリアの脛部分につま先を突き刺す。
がぢん、硬いものと硬いものが勢いよく衝突する。
「いっ...ぎゃあああ!ひぇぇああイッタアあああ!!?」
椅子から転げ落ちて患部を抱えながら悶絶するサリアをアントンは極寒を感じさせる視線で見守っていた。
「ひーっ!折れた!ぜっっったいに折れたぁぁぁぁ!」
「じゃあ寝んじゃねえ。」
「ひー...ひー...!...ふぅ、仕方ないじゃん?疲れてるんだからさ~?」
「そういや最近ビールたけぇんだよな...」
「え、なに?脅し~?私はそんなものに屈しな「自分で作ってんの知ってるからな。」
「...あー...」
「売ったらさぞ高値が付くだろうなぁ。」
「わかった!わかりましたよ!も~~!!」
ぶつくさと文句を言って不貞腐れながらも作業を再開した。
今の事務所は人が少ない。もとより旧L社支部チーフにプラスで一人、という10人もいない人数で事務所を経営している。
おまけに今は最年長と最年少が二人そろって放浪中。
そうなると、一人へのタスクが多くなるのは当然のことだった。
最初にもあったように、アントンは事務所メンバーへの依頼の割り振りが主だが、アントン自身が出ることも少なくはない。
逆にサリアは、依頼で出る機会こそめったにないものの、事務所の事務仕事を一身に請け負っている。
他のメンバーの担当はまた次の機会に説明しようと思うが、報復・警備・協会の手伝い・依頼・ねじれの対応などを一人一人が複数受け持つことでなんとか回している状況。
「事務員他に雇うか...?」
「いいね~それなら私も楽になるよ~」
「あぁ、楽んなりゃお前も外に出られるからな。」
アントンの一言にサリアが固まる。
そしてゆっくりと振り返ると、それはもういい笑顔をしていた。
「私、みんながいる事務所が好きだな~」
「調子いいなお前。」
目を細めてサリアを眺めていたが、扉がぎぃ、と重い音を発したがためにそちらの方を見た。
「コーヒー、淹れたんだがいるか?」
赤を基調とした身なりをした巨体が湯気を出しているカップを二つ手にしてのぞき込んできた。
「バイロンか、助かるよ。サリアは...」
「...」
ちら、と横目に見たサリアは眉間に皺を寄せて口を固く結んでいた。
何が言いたいのかは明らかだった。
「頼むよ。」
「ファッ!?」
「なんだよ。眠気覚ましになるだろ?」
「それがヤダ〜ニガいし。」
「あ、そういえば二人とも。」
「「おあ?」」
デスクにカップを二つ置いてから声をかけるだけかけて扉から出ていった。
少ししたらまた扉をくぐって顔を出した。
「玄関先に倒れてた。」
見覚えのある青髪を肩に乗せて。
「「えぇ...」」
「っておい!血塗れじゃねぇか、ソイツ洗ってきてくれ。」
「...?」
誰に言っているんだとでも言いたげな顔で担ぎ直したバイロンがアントンとサリア、二人の視線に気づくと声を荒げた。
「...俺っ!?」
「お前以外に誰がいんだよ。」
「そーだよぉ〜」
「いやっ...それは色々不味いだろ!?」
「何言ってんだ?お前なら大丈夫だろ?」
「どういう意味での大丈夫だ!?」
「そらもう色々な意味。」
「色々な意味〜」
「アントンはともかくサリア!お前がやってくれ!俺男、ケルミナ女性!分かるか!?」
「は〜仕方無いね〜...バスローブ持ってきて〜」
「え?あ、あぁ、わかった。」
安らかな顔で眠っているケルミナをソファにそっと置いたあと、要求されたものを取りに行った。
「なんだ、お前が洗うのか。」
「んーん、私はローブ巻いてあげるだけ〜」
「...じゃあ結局洗うのはアイツか。」
「そ・ゆ・こ・と〜」
「...っはあっ!はあっ...!あった、ぞ...!」
「「はっや。」」
「んじゃあ、ちょ〜っとの間だけ目閉じててねえ〜」
バイロンは素直に目を閉じ、アントンはもう少しの書類を片付けにかかっていた。
布が擦れ合う音、それが止んだと思えば次はしゅるしゅると巻き付けるような音がしていた。
時間にすると数十秒の出来事だった。
「いいよ〜」
「...っしゃぁ!終わったァ!!」
なんか叫んでいる奴がいたが、目を開ければケルミナがしっかりと胸元を覆う形でバスローブに巻かれていた。
「何してるんだお前は...というか、これだけやっても起きないのかこいつは。」
「余程お疲れみたいだねぇ〜はい、洗ってきて〜」
「...結局...俺?」
「「うん。」」
「...っはーぁ...」
「ほら、早く受け取って〜?あ、持ち方気をつけてね〜ラッキースケベしちゃうから。」
「ぶふっ!?お前はいきなり何を言うんだ!」
「あんまりからかってやるな。頼んだぞー」
「はあ...」
ケルミナを抱えてバスルームに向かうバイロンの背中は、どこか小さく見えた。
「...なんか、あれみたいだね〜」
「?」
「オークと女騎士。」
「おっ...!?ごほっげほぁっ!!お、お前っ言っていい事と...悪い事が...!」
「いやでもまんまそうじゃな〜い〜?」
「言われてみれば確かに...くくっ!アッハッハッハッハッ!!」
爆笑しているアントンだったが、次の瞬間にはあおざめることになった。
「くくく...くははは...っ!?」
壁から一本の大剣が真っ直ぐ飛んでくる。
大剣はアントンの鼻先をかすめると壁に激突し、大きなクレーターを作った。
油が切れたカラクリを想起させる速度で首を動かし、大剣が飛んできた壁を見つめる。
「あー...?」
穴をのぞき込むと、一つの眼球が現れる。
それはアントンと目が合ったことを確認したあと、一切焦点を動かさずに話した。
「どうした?笑えよ。アントン」
「...全部サリアが悪いから。」
「え?」
しばらく目を合わせてジッとしていたが、やがて向こうから離れていった。
「後で覚えとけよ。」
...何やら不穏な言葉を残して。
「...よし!オレは寝る!疲れた!」
「ゑ?いやちょっと...」
ぎぃ
「オレぁ悪くねえぞ!?」
悪寒が走り、すぐにでも逃げ出せる態勢をとったが...杞憂に終わった。
「ただい...何してんだアンタ。」
「やっと...終わった...なにしてんの...?」
「おかえり〜二人とも〜...タールちゃーん!」
「こっち来んな死ね。」
「ぎゃひん!」
ただの仕事終わりの双子だった。
「なんだお前らか、様子を見た感じしっかり潰してきたんだな?」
「僕たちを誰だと思ってる。」
「あんな中企業、半日もいらない。」
「...半日以上...経ってるよ?」
「お前が変に拘った殺し方するからだろ。」
「見せしめ...!」
「あ、うん。そうか、二人ともお疲れー」
「妹になんだその反応は...?」
「...お前らそろそろ兄弟離れしろよ。」
「キョウダイ...」
「バナレ...?」
「だめだこりゃ。」
二人揃って拗らせているのにはさすがにお手上げだったようで、視線を遠くにやった。
「そうだった、アントン。」
「なんだ?」
「お前そろそろシ協会に出頭じゃなかったか。」
「...」
「その顔...さては忘れてたな?...はあ、しっかりしてくれよ所長代理。ただでさえ人手が無いのに頭が機能しなきゃ組織として...」
「あにぃ、あにぃ...」
「どうしたんだ?」
「もう...行ったよ...」
「...なるほど?」
倒れている会計係の呼吸音と遠くから聞こえる足音。
かなり急いでいるようだ。
外からも、中からも聞こえる。
「中?」
「いいぃぃいやぁあぁ!!」
半開きの扉が体当たりによって嫌な音を出しながら勢いよく開かれる。
「何この格好!?助けてぇぇー!襲われる!」
濡れたバスローブ姿のまま、ケルミナは身を捩って奇声を上げつつも部屋の隅に...いや
「ひっ、こっちにも居る!先手必勝ヤられる前に殺る!」
少しづつアルマに近付いてきていた。
ちなみにだが、付き添っていたバイロンはというと
今は腹に、それも不意打ちで一発良いものを貰ってダウンしていた。
軽くパニックになったケルミナの悲鳴と、その他大勢の怒声が響いた。
「やべぇやべぇ...!あんな遊んでる場合じゃなかった!」
「いいぃぃいやぁあぁ!!」
悲鳴が聞こえて思わず後ろを振り返る。
どんがらがっしゃん、そうオノマトペで表現できるような音が住居から溢れだしている。
仲間たちを心配するもつかの間。
「オイィィィ!何でだァァァ!」
ぱりーん
飛び出してくる黄色いものを見れば、すぐさま心配は消えた。
代わりに、次は防弾ガラスにしよう。そう決意を固めた。
「うわ...じゃねぇ!急げ急げ!」
「...疲れた...なんで俺がこんな...お、所長代理サマか。そんなに急いでどうs...」
「今急いでるから!」
いつもの様に皮肉だか嫌味だか軽口だかよく分からないことを言っているクラインが居たが、一瞬見ただけですぐ横を駆け抜けていった。
「え?あ、そうか。頑張れ...よ...?なんだったんだ。ったく...」
帰ってきた際のことを考えながら扉を開け、中に入っていった。
「FATALITY...!」
「...あっ...パニック...!パニックを、鎮圧して...!もう...抑えきれない...!」
黄色いの(妹)が青いのを羽交い締めにしていた。
「(何だこの状況。)」
「(アタシ...なにしてんだろ...)」
「何してんだお前ら。とりあえず...殴っていいんだな。」
明らかに異常な場面に乗じて嬉々として自らのEGOを構える。
「うん...!」
「FATALITY...!!」
次の日から、サリアは面倒臭がってやらなかった場合のリスクを考慮できるようになり、タルマは自分で主張することの必要性を学びそして、バイロンは邪な感情がなくても誤解は起きるものなのだと学んだ。
ついでに、いつの間にか窓が二箇所だけ防弾ガラスで作られているようになった。