<オリ章作成中につき現在更新停止中>Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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発芽

 

 

 

人の腕と獣の腕でびっちりと繋がっている。

 

そんな本来あったはずの境目を失った、自分の腕を何の感慨もなしに眺めては爪を握りこんだり閉じたりを繰り返す。

 

手持ち無沙汰になっては小銃を回して弄んだり、長銃を地面に叩きつけていた。

 

まるで、そこの床が怨敵のように。

 

「いつになくやる気があるじゃないか。ありすぎて不安なくらいだ。」

 

弾け飛んだ床の欠片を、ひょいと避けたゲブラーが諭すように私の頭へ手を置いてきた。

 

『触れるでない。』

 

多少の優しさすらも感じるそれを振り払って睨み付ける。

 

「なに...?」

 

『無礼だと言っておろうが。一体誰の許可を得...て...」

 

「...?...おい、どうした。」

 

「......っあ...ごめん、なさい。違う、違うの、平気だから。」

 

覚束無い瞳孔を、なんとかゲブラーさんに合わせて弁解をする。

 

弁解と言うには、いささか言葉が足りていないようだったけれど。

 

「...はあ、肩肘張りすぎだ。もっと落ち着け。」

 

「うわっぷ」

 

刺々しい空気を引っ込めていつも通りの目になったからか、もう一度頭に手を乗せてわしわしと髪を乱される。

 

「あー!ずるい!ウチも撫でさせてやぁ!」

 

「やだ。チェーちゃんは自分の頭でも撫でてたら?」

 

「うわーん!酷い!...あっ、意外と触り心地ええな...」

 

自分の頭を両手で触って、わしわし動かし始めるチェーちゃんをフェードアウトさせると、ゲブラーさんも髪を揺らして私の視界から出て行った。

 

「行くぞ。待たせているから。」

 

「...はい。」

 

「お゙〜、ここ効ぐぅ゙〜」

 

「チェーちゃん行くよ。」

 

 

 

 


 

 

 

 

「待たせたな。」

 

「...おや、ようやく来たのか。忘れられているかと思ったよ。」

 

ゲブラーの声に首を鳴らしながらイオリが反応する。

 

あの仮面のせいか上手くピントの合わない黒いのは、ローランだな。

 

二人の会話に興味が無いようで、手すりにもたれ掛かっては向こう側に顔を向けていた。

 

反対に二人は一言二言、嫌味と近況報告を兼ねた言葉を交わしていた。が、イオリの紫色の蛇を思わせるような瞳が私を捉える。

 

「...は。久しぶりだね。元気だったかい?」

 

「...」

 

「だんまり、か。なら気が済むまでそうしているがいい。でもね、そうしていたってお前の過去は消えないさ。」

 

「...っ!」

 

「!...ゲブラーはん、行こか。」

 

あー、やっぱりダメだ。

 

「矢張り貴様はここで死ね。』

 

我慢出来ない。

 

その気取った笑みを宙に切り飛ばそうとした爪とローランの剣が火花を散らす。

 

『邪魔をするな。』

 

空いている手でローランに弾丸を放つが避けられる。

 

避けた勢いのまま、ナイフに切り替えて迫るローランと背後で聞こえる風切り音。

 

振り返ってイオリが振り下ろす刀を弾き飛ばす。

 

背中は無防備になったけど、錫杖がナイフを弾き赤い残像がローランを吹き飛ばす。

 

「てっきりカーリーは私に来ると思ったが...腹黒小僧の方とはね?意外だよ。」

 

少しでも気を抜けば叩き切られそうな私をイオリが笑う。

 

『貴様の然様な絶対強者と自負する意志などその煩い口と共に引き裂いてやろうぞ。』

 

「おぉこわいこわい。」

 

「ウチを無視してイチャついとんちゃうぞボケがッ!」

 

横からチェシャが杖で薙ぎ払い、それを迎撃しようと刀を振ろうとする。

 

『ハ、ハ...牙を失えば貴様も凡夫にまで堕ちる。』

 

しかし、刀を掴み己の腹を串刺しにする。

 

「!」

 

目を見開くイオリへ追い打ちとばかりに白煙を吐き出し、チェシャの支援に徹底する。

 

ごしゃりと音がして煙が舞う。

 

その音を聞いて、次元を開きそこに引き抜いた刀を突き刺す。

 

「おい...!また、またこんなことしおって...!」

 

『元より浪費することしか分からぬ身であろう。これしきのこ...ごぼっ......これ、くらい...安い、でしょ...?チェーちゃんっ...」

 

怒りを露わにするチェーちゃんに笑いかけて、ゲブラーさんの方を指さす。

 

シンプルな武力で敵を押しつぶすゲブラーさんと手数を駆使して制圧するローランの相性は悪いみたいで、互いに決め手に欠けていた。

 

「向こう、手伝ってあげて...大丈夫。私、アイツを殺すまで死なないから。」

 

「...ヤバそうやったらすぐ入るからな。」

 

本当に一瞬だけ逡巡し、即座に決断を下してくれたチェーちゃんに背中を向けて私は私で構える。

 

「ぅん...あり、がと。」

 

もはや音速の勢いに達しているのではと思うような投擲の後、それに続いてチェーちゃんも走って行った。

 

「...げぼっ!...っはあ、はあ...っ!痛いぃぃ...」

 

「作戦会議は終わったかい?」

 

「そりゃ、おかげさまでどうも...!」

 

「なんだい、随分と違うじゃないか。そうだそうだ、小僧はお前が殺さなくてもいいのかね。アイツも目的なんだろう?」

 

「元凶が、何言ってる、のさ。...ふーっ......んじゃ死ね。」

 

銃撃。

 

それをジグザグと避けて肉薄される。

 

冷たい、機械のような無表情のまま振るわれる拳を避けて、刀を拾おうと伸びた手を銃で牽制する。

 

低く、鋭い蹴りを放たれ、それを軽く跳んで避ける。

 

避けてから爪で突き刺そうとするとイオリの姿が一瞬だけブレた。

 

めきゃり

 

そんな音がして、鋭い蹴りが跳んだ姿勢の私を蹴り落とす。

 

身体中に走る激痛と二転三転する世界を、爪を地面に刺して引き止める。

 

「またっ...なんかしやがったな...!」

 

時間を巻き戻されたみたいな、私よりも下を通ったはずの脚が再び、それも今度は跳んだ分を加味した軌道で突き刺さったことに悪態を着いて立ち上がる。

 

立つだけで酷く熱い痛みが来る。

 

ふと見れば片足の側面から脂ぎった白い棒が僅かに飛び出ていたがそんな事は気にせずに構える。

 

イオリが刀を拾い上げ、そしてまた姿がブレる。

 

言いようも無く、全身の毛が栗立ち爪を振る。

 

「ふうん、防ぐか。やるじゃないか。」

 

「そりゃ、どうも...!」

 

四方からやってくる凶刃を必死に弾き落とす。

 

切り上げ、袈裟斬り、薙ぎ払い、刺突...

 

蛇のように執拗に急所を狙ってくるそれを弾いて、弾いて...

 

「よくもまあここまでやるようになったものだ。」

 

イオリがそう一言置くと、刀を頭上に構えて全体重を乗せて振り下ろした。

 

当然、それを受け止める。

 

「ぐ...!」

 

受け止めたが、押し潰すように加えられる力に対抗しようと地面を踏みしめる。

 

全身が軋み、やがて大量の赤色を吹き出して片足が文字通り砕け、私は地面の赤いシミになった。

 

すぐにそのシミは炎を巻き上げ、私を形作る。

 

これだけは私を醜い外の世界から守ってくれる。

 

...けど、いつまでもここに居る訳には行かない。

 

炎からイオリに接近する。

 

刀のリーチを活かせず、反対に私は適正距離の至近距離戦闘。

 

攻防の最中、突如として飛び出す前蹴りに注意して俄然として攻め続ける。

 

「...は、後ろが安全とは限らないよ。」

 

「いきなり何を...っ!」

 

額に汗を浮かべて忠告したかと思えば、直後に背中を貫かれる。

 

後ろの方では、既に硝煙を上げている銃をチェーちゃんに構えて放つローラン。

 

「二人を相手、しながら......!?」

 

「ふん、小僧にしてはよくやるじゃないか。さて...」

 

「しまっ...いぎっ...」

 

腹を潰されながらはるか上空に蹴り上げられる。

 

頂点でちよっとした浮遊感を味わったその後には、すぐに全身への気持ち悪い重力が掛かる。

 

私だけ時間が止まったみたいに何も聞こえない。

 

少しだけ体に、叩き付けられたみたいな衝撃があったけど何も感じない。

 

でも、なんだか...お腹が、暖かい...

 

「...ごぷっ」

 

ようやく気付いた。

 

落下の勢いのまま串刺しにされたと。

 

「おやまあ、なんとも他愛の無い。また蘇るなら勝手にすればいいさ。幾度やろうが変わらないだろうけど。」

 

「...」

 

目の前のコイツは、何を言ってるんだろう。

 

聞こえるはずなのに、頭に入って来ない。

 

その代わりに鳴りを潜めていた声が脳内に反響し始める。

 

大きくなったり、小さくなったり。

 

時にはどこだか分からない、それなのに何処か懐かしさを覚える景色を見せられたり。

 

誰かの記憶を見ているような、そんな感じ。

 

私が、私じゃなくなっていくような...その様子を鏡越しに見ているような。

 

「......ふ...」

 

「へえ、まだ笑う元気があったとは。」

 

べちゃりと床に振り落とされてなお、私は鏡に夢中だった。

 

鏡の私...鏡の中に立っている私は、私とはかけ離れていた。

 

かろうじて人の形を保っている獣。

 

血に塗れた赤い爪に、牙が覗く顔。

 

私より、おかあさんの方が似てるかも。

 

でも、私かもしれない。

 

向こうにいるのが私なら、今ここにいる私は...?

 

私は本物じゃなかったかもしれない。

 

骨が軋む。

 

筋繊維の一本までブチブチと音を出してちぎれている。

 

四肢を地面に着けて、堕ちる。

 

成る。

 

私に成る。

 

向こうにいるのが私で、ここに居るのは私じゃない。

 

それだけの簡単な事象を言い表すことも出来ない蒙昧さを呪い私を待ち望む。

 

皮膚が剥がれ落ち、肉が露出したその上から到底人のものでは無い白い毛が生える。

 

手が引き裂かれ、殺意に満ちた凶爪が生え揃う。

 

ふと前を見れば、大口を開けて何かを待つ獣。

 

遥か奥まで続く深淵に心から惹かれる。

 

ここに入れば私も、本当に私になれる...?

 

『約束。思い出して。』

 

生暖かい口内に手を入れようとして止まった。

 

約束...?

 

うん、私は必ず戻るよおかあさん。

 

本当の私になって今の私は消えて...

 

あれ...消えたら、もうおかあさんに会えないの...?

 

...

 

...いや。

 

そんなのいや。

 

本物だとか、偽物だとか、そんなものどうでもいい。

 

私が本物じゃないとしても、私の今までを譲ってやる道理は無い。

 

獣を殴りつける。

 

巨大で禍々しいそれは、案外脆くて...

 

 

 

 

鏡にひびが入り、砕けた。

 

 

 

「...ついに人の姿も捨てたかい。」

 

ゆっくりと体を起こす私を、イオリが嘲笑する。

 

特別楽しそうに、待ち侘びていたように。

 

『私は人だ。化物と罵るならば好きにするが良い。』

 

僅かに高くなった視界に困惑すること無く、手足を前に動かしてイオリに近寄る。

 

四足歩行は今初めて経験したけど、そんなに悪いものでも無いかな。

 

「まあいいさ。いつまでもグズグズやっている場合じゃなくなったからね。」

 

目線が私の背後に行き、何事かと思って私も釣られて背後を振り返る。

 

そこには二人がいた。

 

チェーちゃんは心配そうに地面に突き刺して錫杖にもたれ掛かり、ゲブラーさんは黒い一組の手袋と本を持って立っていた。

 

「さすがに無理だったか。まあ小僧にしてはよくやったと思うよ。」

 

『他所見している余裕があるのか?アレが貴様の未来そのものだ。』

 

あまりにも無防備だったものだから、つい腕を降って吹き飛ばす。

 

刀で威力を削がれたのを見て追撃に走る。

 

イオリも即座に居合の構えを取り、抜いた。

 

爪と刀がぶつかり合ったと思えば、粗雑な動画のように刀の軌道が変わっていた。

 

それも、爪とぶつからず私の腕だけ切り飛ばすような軌道に。

 

不敵に笑うイオリ。

 

...だったが、何事も無かったかのように軌道は修正され、打ち付け合わせると笑みを引っ込めて即座に防御の姿勢をとる。

 

『遅い。』

 

しかしそれよりも早く腕を切り落とす。

 

「...っ!お前、何をした...!」

 

『灸を据えただけ、そう焦るな。一つの生に置いてやり直しなど許されるはずがなかろう?』

 

そうだ、その顔だ。

 

『貴様...初めて私に恐れを抱いたな?』

 

「化物が...」

 

『たかが腕一本でそう落胆するな。足を砕かれ四肢をもがれようとも食らいつけ。』

 

「は、お前と一緒にする...な!」

 

紫の殺意を纏った刺突を道に入って回避する。

 

「ちっ...」

 

それを見てイオリも次元を開いて逃げようとするが、入る直前に閉じる。

 

『何処へ行くつもりだ?』

イオリを囲むように道を開き、背後から牙を剥き出して飛び掛る。

 

軌道をそらされたと見るやいなや直ぐに離脱して再び潜る。

 

飛び出しては潜り飛び出しては潜り...土竜叩きのような光景を延々と続ける。目の前の人間の首を、死が刈り取るまで。

 

再度突撃し、迎撃なのか突き出された刀を避けて目の前で道へ。

 

そして、真下から顔を出して脚に食らいつく。

 

脚に牙を突き刺して逆さ吊りになっているイオリの顔が見えないのが残念だ。

 

さぞ苦痛と絶望に塗れた顔でもしているのだろうか......いや絶望は違うだろうな。

 

舌に触れる鮮血を味わいながら、やたらめったらに首を動かす。

 

叩き付け、振り回し、抜け出されないようにより深い所へ牙を突き立てる。

 

「こ、のっ...調子に、乗るな...!」

 

血に酔っていた私はふと体内に現れる異物感に対処するのが遅れ、その結果眼孔から刀が飛び出す。

 

『っ!?貴様...』

 

視界の片面が潰れ、視界の端に団子みたいに刀に突き刺さった私の眼球が見える。

 

見えない眼窩から流れ出す怒りをそのままに一際大きく叩きつけるとお返しとばかりに噛みちぎった。

 

跳ね落ちる紫色を追い掛けながら、口内に残る二本の棒を飲み込む。

 

「はあ、はあ...ぐっ...!」

 

息も絶え絶えになっているイオリ、それでも完全には折れていなかったみたいで、顔を近付けたら刀の切っ先を掴んで押し込まれそうになった。

 

眼窩が今よりも広げられては堪ったものでないと残った一本の腕を押さえつける。

 

「...は、どうした。殺したいんじゃ...なかったのかい?」

 

『言われなくとも殺す。一つ聞きたい。...どこまでが貴様の計画だ?』

 

「...素直に答えると、思っているのか?いずれ分かる日が来るさ。」

 

『そうか。』

 

爪を開いて、頭に振り下ろす。その直前にもイオリは笑っていた。

 

「精々気張るが良いさ。『深緑』」

 

その言葉を聞き届けて頭を叩き潰した。

 

気持ちの悪い感触が暖かな光となって立ち昇る。

 

手をどけると一冊の本がそこにあった。

 

拾おうと思ったけど、このままじゃ拾えないと思って戻る。

 

二本の腕と二本の足。

 

腰を曲げて拾おうとしたところで

 

 

 

 

 

 

 

 

横側に傾いた世界で目を閉じた。

 

 

 

 


 

 

パッシブスキル変化

『家族』...感情レベルが4以上になった時、ページ『成る』を追加する。

 

『成る』...このページは捨てられない。光0 防(5〜10) 使用後、次幕開始時『家族』に同化する。

 

 

 

 

家族

体力200斬(免疫)貫(免疫)打(免疫)

混乱抵抗値150斬(脆弱)貫(脆弱)打(脆弱)

 

・パッシブスキル

『ゆらぎ』...毎幕ごとに手元とデッキにある全てのページを消し、ページを手元に追加する。毎幕ごとに光を全て回復する。

 

『保つ自我/壊れた自我』...混乱抵抗値25毎にパワー1、与えるダメージ10%上昇/混乱抵抗値50以下の場合、与えるダメージ100%上昇。

 

『頭に響く声』...『噛み千切る』ページを除き混乱抵抗値を回復できない。1幕の間、5回以上マッチに勝てなかった場合、幕終了時に混乱ダメージ50を受ける。混乱抵抗値が50以下の場合『暴走』状態になる。

※暴走...全てのページのコストを0にし、幕開始時、敵味方識別せず自動でバトルページをセットする。

 

『呑み込まれる前に』...混乱抵抗値が0になった場合、幕終了時同化を解除し死亡する。

 

『確率破壊者』...相手がダイスを振り直した際、振り直した後にダイス威力を最低値に固定し脆弱1、虚弱1を付与する。(一幕の中で3回まで)

 

『足掻かせない』...相手が使用ダイスにて最大値を出した場合、振り直させる。

 

 

 

 

・バトルページ

『八つ裂き』...光2 斬(9〜16) 斬(6〜14) 斬(7〜10) 反斬(12〜14)

 

『突き刺す』...光1 貫(8〜12) 貫(9〜11) 反貫(9〜12)

 

『圧し殺す』...光3 個別広域 『暴走』状態なら敵味方識別不能 打(9〜13) 的中時対象のマイナス効果2つにつき脆弱3、束縛1を付与。

 

『噛み千切る』...光4 斬(15〜20) 的中時、対象が混乱しているなら5回まで振り直す。敵討伐時、混乱抵抗値25回復。味方討伐時、混乱抵抗値50減少。

 

『咆哮』...光5 個別広域『暴走』状態なら敵味方識別不能 打(10〜12) 的中時、次幕にパワー2を得る。

 

 

 

 

 

あ と が き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだこの性能!?

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