<オリ章作成中につき現在更新停止中>Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
「...」
「...」
「ほう...此れは美味なりて。普遍なれば斯様に甘味を強調せし菓子は好まぬが...中々何うして善き物を譲り受けせし。」
「...うん、美味しいね...」
「...」
「苦節の強き茶葉故、斯様に甘味を突きだせしはよもや荒波に攫われし砂城やもしれん。」
き、気まず...てかなんで今こんなことになっているの?
隣の爪なんて表情読めないけど凄い不服そうな顔で紅茶すすってるし。いやカップ可愛いなオイ。
「...彼女も居れば、きっと気に入ったことであろうな。」
ずっとやけに饒舌によく分からないことを話続ける調律者も、たまに気になることを言う。
彼女...?
というか、まずまずコイツらは何しに図書館に来たんだろう。
足爪を連れてるからにはろくでもないことをしでかす気なんだろうけど。
でもろくでもないことをするわりには大人しい...?
「気掛かりであるか。」
「...まあ。」
「我らとて不変の歩みを持つ訳でも無く、ただ岸壁に座して眼前へと垂ゆる銀糸を見詰むる時もあり。」
「...調律者ってみんなこうなの?この人だけ特別話が回り回って三回転ひねり決めてるだけ?」
「俺に聞くな。」
「そう...」
「少しは海を識った様で在るな。蛙拠りは多少なりとも変貌せし。然れども大海は肌に合わんとな。」
「???」
なんかバカにされてる気がする。
「気を害しきや。然れど誠ならむ。」
うんバカにされてるね!殺してやろうか。
「久しく聞きならむ言葉なり。怖気と絶望に流さるる者どもこそ数多慣れど爪牙を剥きしは宝珠に居らんば。」
その言葉を皮切りに沈黙が訪れた。
あぁもう奇妙な状況すぎる...!
......接待の方は上手くいってるのだろうか。(現実逃避)
話を聞く分にはローランの身内だって聞いたんだけど。
...じゃああの人は今、身内を手にかけようとしているのか...顔見知りや恩人の命を奪ったことはあるけど、身内に武器を向けたことは無いな。
......仲間にはあるけど。
どんな感覚なんだろう。
以前は普通に会話を重ねていた人の血が武器から垂れて、だんだんとその顔から生気が失せていくのは。
いつか私にもわかる時が来るのだろうか。
...一生来なくていいな。そんな時は。
「美味であった。矢張り彼女の視繕き葉に贋物ぞ無き。真贋といふ言の葉。真物も贋物も絶えず本質は不変なりて、何ぞ重きを置くや。そにこそ真贋明瞭と成れば有らむな。」
変わらず横のこいつは何言ってんのか分からねぇし。
「......潮刻か。」
ぼそりと呟いたその言葉を聴き逃しはしなかった。
「そろそろ何をしに来たか、教えてくれる気になった?」
「汝とはかくも嘗てよりの朋に近しき。然れど...」
調律者の手のひらに、夜のような漆黒を纏った黄金のエネルギーが迸る。
「嘘でしょ...」
標的は...私...!?
「じゃあてめぇも死ね。」
無駄に広いテーブルを蹴り上げて視界を塞ぐ。
「.........勿体無し。」
心の底から落ち込んだような声が聞こえるが次の瞬間には体中に黒い鎖が巻き付き、締め付ける。
みしみしと音を立てる全身を無視して銃を構える。
「爪。」
そう一言声を掛けただけで、銃を持った腕の、肘から先が一気に軽くなった。
ぼとりと音をたてて床を跳ねる細長い肉塊。
「このクs
悪態を着く間もなく、体が内部から弾けた。
炎の中から再構成される肉体。
もうすっかり慣れ親しんだその感覚に若干の安心感があるけど...今はそんな場合じゃない。
殺し合いの最中に安心感なんて覚えていられないし、覚えたところで何の役にも立たないから。
「何時視る共あやしきかな。」
安心感ごと首を切り飛ばされて終わりだよ。
飛び交う妖精と、真っ直ぐに急所を狙う爪をいなして数発の弾丸で返す。
「同手や通じぬ。慣れど、覗けど覗かるると思わむ事亡かれ。」
再び調律者の手のひらにエネルギーが迸る。
背筋を伝った悪寒の通りに裂け目に潜り込もうとするも、開けない。
「逃れられぬぞ。深き深淵に落ちし身なりてや、是れ以上潜れき所在ぞ在らむ。」
あの調律者が...いや違う、爪だ。アイツが青色の血清を打ってやがる。
調律者の手のひらに、いつの間にか柱が現れていた。
黒い、何かも分からないただ無機質な材質。
それが、放たれる...
「打ち砕け。」
...ことは無く、まさかのそのまま私へと振り抜かれた。
回避は出来ない。はじき返すのはもっとできない。だからと言って、甘んじて受け入れればきっと本になってしまう。
じゃあ......
鈍い打撃音と液体が垂れる、ぽたぽたという音が聞こえる。
「...成程。終ぞ人の姿こそ失いき。」
嘲笑を含んだ感想に口から血を吐き出してから答える。
『好きでこうなった覚えは無い。高慢な人間共が。』
あぁ...頭が痛い。私の中に違う誰かが入り込む感覚だけは慣れないし、慣れたらいけない。
「爪、もう善きかな。手を降ろしたまへ。」
「...どういうつもりだ?」
「鯨を狩るには人魚を飼いしこそ果て無き楽なり。」
『低俗な駄獣どもと同一視するか。』
爪の生えた手を振り抜く。
防ごうとした爪は弾き飛ばすことが出来たが、調律者は自身を錠前のようなもので包むことで無効化していた。
「彼女は斯様な遣い方はしまい。」
ごちゃごちゃと余計なことをしゃべくっている間に、吹き飛ばした爪に肉薄して、防御姿勢ごと食いちぎった。
...不味い。
「おや、彼は十二分に汝と相性悪き。只そうさな、我なら如何や?」
『付き添いが食い殺されたというのに、随分と落ち着いているのだな。』
「嗚呼。如何に死すとも先に立たずは後悔よ。後悔無き生を喜ぶは骸のみにて。」
バチバチと弾ける黒。
引き留めようと飛びかかるが一足遅く、結果として目の前で閃光が弾けることとなった。
明順応のようにじわじわと視界が戻った。
死を覚悟したが、何も起きていないことに拍子抜けする。
「ん?いや...なんか、目線が低い...」
「ほう...矢張りTの特異点こそめぼしきかな。」
逆に調律者は大きくなって...まさか...
「私が...小さくなったの...!?」
「貸与せし時は何処から奪われしものか。完成せし技術ではあらなむとその恩寵は図り知れずと。」
体の時間を戻された...?そんなことが出来るのか?
でも現に体が人の形になっているし、なにより武器が出ない...
「くそ...なにがどうなって...」
ぶち、ぼとり
「いっ...ぎゃあぁぁッ!!?」
再度軽くなった腕を庇って悲鳴をあげる。
「喚くな。苦痛を愛し給へよ。」
抵抗する手段が無い、というのが何よりも恐怖を掻き立てる。
痛みは耳を塞いでやり過ごすことが出来るが、これはどうも...
「ぃぎっ...!!」
ぶちぶちと切り口の中で妖精が暴れている音がする。
「...次は...目玉であろうか。」
突然、嬲るような動きを見せた目の前のこいつが怖い。
精神まで幼くなっているからか、腕が落ちた程度で悲鳴をあげるし、骨が折れただけで動けなくなるし。
顔を掴み上げられて、手のひらで妖精が暴れるさまをまじまじと見せつけられるだけで、自然と目の端に水滴が浮かび出す。
『わかった。わかったから、もうその子に手を出さないで...!』
悲痛な、懇願するような声の後、おかあさんが首だけで姿を見せた。
「思うがまま依りも強情であった。」
『態々こんな所までご苦労様ね。』
「はあ、はあ...お、おかあ、さん...?」
『ごめんなさい。...これさえ終われば、帰るのよね?』
「元よりその気で在った。ただ、汝が頑なに姿を現せねば強恐なる手段を使わるに限りし。」
「待って...どういうこと...?」
『...お別れよ。』
「...え?」
な、なんで?お別れ?
私を無視して話を進めないでよ。
『私が狙いだってわかった時から私が出ればよかった。』
意味が分からない。
待ってよ。
「此方と仕手も幼気なる少女を痛ぶるは味気無し。」
どれだけ拷問されてもいいから。
腕をちぎられても、足を折られても、内臓を引き抜かれても、頭蓋を切り開かれても、耐えるから。
おかあさんが行かなくても...
『...私が耐えられないの。やりなさい。』
「愛でたき親子愛かな。玉樹を折らるるよりも自ら手折られるべしと考へきや。」
調律者の眼前で横たわって目を閉じるおかあさんと、虚空から柱を生成する調律者。
体が...動かない。
ただ、目の前で白い毛と、肉と、骨と、牙が飛び散ったのは見ていることしか出来なかった。
あとがき
安心してください