<オリ章作成中につき現在更新停止中>Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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IF:『くわずぎらい』

 

 

なんか書きたくなったので

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

心地好い惰眠の中、ふと胃の収縮する感覚で目を覚ました。

 

「.........?」

 

おなかが、空いたな...あと、喉も...

 

空腹だけじゃなくて、乾きも感じる。しかもタチの悪いことに、それを自覚した途端にその欲求は強くなって。

 

「......んん〜っ...!」

 

柔らかいベッドの上で身体を起こして、大きく伸びと小さな欠伸を一通りして、立ち上がる。

 

事務所の、私とチェーちゃんの部屋。

 

時計は朝の四時を指していて、まだ裏路地の夜らしい。

 

「んー、むにゃむにゃ...」

 

穏やかな寝息を立てて腑抜けた顔で眠りこけるこの人が、ここの所長だなんて信じられないね。

 

「んーー...ちょおっ、なおちゃ、んなもんくっちゃ、あかん...ぺっ、しなさい...ぺぇっ......」

 

「待って、私何を食べてるの?」

 

思わずツッコミを入れてしまったからか、チェーちゃんの肩がピクりと跳ねた。 

 

「おん...?......んあ、なんやナオちゃん。いつもより起きんの、早いなぁ...どしたん、寝苦しかったか?」

 

「...いや、ちょっと...なんとなく...?」

 

「ははっ、なんやそれ。まあええ、ウチも起きるか。ひっさびさに朝メシ作ったる。」

 

「あはは...勘弁して。マジで。」

 

多少の苛立ちを含んだ声色で、とんでもない猛毒(手料理)を食べさせようとしてくるチェーちゃんを牽制する。

 

「適当に冷蔵庫漁るから。くれぐれもやめてよ?」

 

「またまたぁ〜そんなこと言うて、本当はいっだぁ!!?

 

脳天に一発、振り下ろされた拳で悶絶しているチェーちゃんを放って、下の階に降りた。

 

そうして宣言通り、冷蔵庫から適当な豆のような携帯食と水を引っ掴んでいくらか口に運ぶ。

 

「......うーん...」

 

確かに、胃袋に入っていっている感じはするし、喉も水分を得て乾燥を取り払っている。

 

でもなんだろう。何かが違う。

 

決定的に、何かが...

 

「...くそっ...」

 

今思えば、前々からおかしかった気がする。

 

図書館で、おかあさんを身近に感じられるようになってから、ずっと。

 

忘れられない。

 

しつこい垢のように、脳裏に焼き付いて離れないんだ。

 

「...っ、はー...はあー......!」

 

あの新鮮な赤い塊と液体の味が。

 

「な、なんや苦しそうやけど...やっぱどこか悪いんやないか?」

 

いつの間にか復活したチェーちゃんの手が、ぽんと私の頭に載せられる。

 

頭皮に伝わる、柔らかい肉の感覚。暖かい体温。

 

...新鮮な.........

 

「っ...触るな!!はー、はー......あ...」

 

「...」

 

取り返しが着く今だからこそ、腹の底で燃え上がる感情を押し殺して手を振り払う。

 

でも、事情を知らないチェーちゃんは、

 

「...はは、悪い。」

 

酷く、悲しそうだった。

 

「ウチは...今日一日はT社ん方依頼を片付けに行ってくる。30時間は買ったるから、そこまで遅くはならんと思うけど...ま、出かけるなら戸締りはしっかりな。」

 

「ぇあ、ま、待っ...」

 

違うの。そんなつもりじゃなかったの。

 

「裏路地の夜終わったら、もう出るから。」

 

「ち、ちが...」

 

傷つけるつもりじゃ...

 

「ごめんな。ナオちゃんの分の依頼もやっとくで、今日はよく休みや。」

 

いつもの何を考えているか分からない楽しそうな顔じゃなくて、引き攣った...無理矢理に形作った笑顔。

 

準備をしに再び自室へと上がっていく背中に、小さく手を伸ばす。

 

届くはずも無いのに。

 

じわじわと心臓から溢れ出す悲しみも、全てが端から強くて赤黒い衝動に塗りつぶされて行く。

 

「ふー...!フーッ...!!」

 

強まる衝動。

 

ギリギリと歯がまっ平らになるぐらいに噛み締めて、口の端から涎が垂れる。

 

視界が徐々に赤く染まり、宜しくない考えが悶々と湧き上がる。

 

「...は、ははっ、あははっ」

 

そうして名案を思い付いたように笑うと、爪を取り出しあの部屋への裂け目を...

 

「あ゙ぁ゙あ゙ッッ...!」

 

...開く前に、腕に牙を突き立てた。

 

「フー...!コフー...!」

 

獣のような荒々しい吐息を吐き出しながら、皮が切れ、肉が裂け、僅かに溢れる真っ赤な血を飲む。

 

「んぐ、んくっ......」

 

赤が抜けていく視界。

 

そうして残されたのは、やたらと粘り気のある血が糸を引いている腕と、胸が張り裂けんばかりの後悔のみ。

 

「...まだ、居るよね...?」

 

急いで裂け目を作って、そこに飛び込む。

 

「い゙でえっ...!」

 

「おわあなんや!?」

 

突然ベッドの後頭部を打ち付けながら落ちてきた私に、珍しくチェーちゃんが本気で驚いたような声を出す。

 

「ほ、本当になんや?」

 

「さっきはホンットーにごめん!どうかしてた!」

 

「い、いや、元気そうやしええねんけど...ホンマか?無理しとらんか?」

 

目を白黒させるチェーちゃん。

 

「ちょっと、混乱してた。もう大丈夫。だから依頼の方も私が...」

 

「だーめーや!今は忙しい訳でもあれへんのやから、休める時に休まな、どこぞの過労死協会みたくなるで!」

 

誤解も解けて、元気を取り戻したらしい。

 

軽口の量が、格段に増えているから。

 

「...お、もう夜も明けたみたいやし、行ってくるわ。」

 

「送るよ。T社の検問所でいい?」

 

「マジか!助かるぅ〜!そやな、なんも手続きせんと入ったらシバかれるで、検問所んトコに頼むわ。」

 

一言、簡潔に返事をして裂け目を作る。

 

「んじゃ、行ってくるわ。」

 

「うん、行ってらっしゃい。」

 

短い応答だったけど、私たちの距離感を修復するには十分だった気がした。

 

私以外誰も居ない事務所。嫌な静けさ。

 

これからチェーちゃんが旧L社の生き残りを連れてくるらしいけど、まだ一人も居ない。

 

でも良かったかもしれない。

 

「っ、ふうー......!」

 

今の私じゃ、何をするか分かったものじゃないから。

 

私の体が何を求めているのかはよく分かっている。でも、それだけはやっちゃいけない。

 

裏切るようなことだけはしちゃいけない。

 

分かってる。それは分かってるんだけど...

 

それだけで自分を律することが出来るなら、どれだけ良かっただろう。

 

いずれまた、数時間もしない内にあの飢えと渇きがやって来るのだろう。

 

いつ収まるかも分からない衝動に対して、自身の血肉を啜って耐え凌ぐ...そんなことが出来るのだろうか。

 

「.........探すか...」

 

このどうしようも無い衝動を癒す方法を。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

23区。

 

W社管轄の巣で、食の裏路地とも言われてるとか何とか。

 

裏路地の夜も明けて数十分、ちらほらと明かりがつき始める。

 

もくもく立ち上る煙と、それに混じる食欲を刺激する香り。

 

「...でも、あんまりそそられないな。」

 

加工済みの、血の抜けた赤い塊。

 

違うんだよ。

 

「そんな物じゃ、満たされない。満たされないんだよ...空虚で冷たいままなんだよ...!』

 

じわじわと蝕まれる。

 

『こうなったら、そこら辺のネズミでも......っ!?」

 

今私、何を言いそうになった?

 

思わず口をつぐんで、辺りを見渡す。

 

そこそこの有名人なんだし、発言には気をつけないと。

 

そんなことを考えていると一つ、近くのどこかから、新鮮な鉄の匂いがした。

 

見えない糸に引っ張られるようにその匂いを辿り、やがて辿り着いたのが、木製の一軒家だった。

 

堂々と横開きの戸に貼り付けられた、『営業中』の三文字。

 

...ぐぎゅう〜...

 

「っ...!」

 

空腹を訴える嫌な音と、生唾を飲み込む音。この二つを皮切りに、戸へ手をかけた。

 

どこか懐かしい、これまた木材で出来た内装。いつぞやかに、チェーちゃんと食べに行った『回転しない方の寿司屋』みたいな雰囲気。

 

「......ん?あぁらっしゃい。」

 

そのカウンターの奥から無愛想な、いかにも頑固オヤジと言った風貌の男が出迎える。

 

「...好きな席でいい?」

 

「おう。」

 

遠慮なくカウンター席に腰掛け、再び男に話し掛ける。

 

「この付近でこの時間帯にやってるのってここだけ?珍しいね。」

 

「まあな。」

 

「....」

 

「...」

 

「...えっ終わり?」

 

「...はあ。」

 

あんまりお喋りが好きじゃないみたい。返事の代わりにメニュー表を突き出された。

 

これでも見てろってことなんだろうね。

 

メニューを見る感じ、生の肉を出してるみたい。刺身...って言うんだっけ。

 

魚なら分かるんだけど、肉でも刺身って言うんだ。

 

豚、鳥、牛...色々と書いてある。

 

書いてある...んだけど......

 

......

 

...いや、文句ばかり言っても仕方無いし、私はただ、お腹がすいたから美味しいものが食べたいだけ。うん、きっとそう。

 

「じゃあ...これ、一つ。」

 

ただでさえ早くから来ているのに、あんまり居座るのも良くないかと思って、適当なヤツを指差した。

 

「...あいよ。待ってな。」

 

「え?ちょっと?どこ行くの〜...って...行っちゃった。」

 

...まあいっか。あと少しの辛抱だから。一度満足してくれれば、しばらくは大丈夫...大丈夫だよね?

 

もうチェーちゃんに心配は掛けたくないなぁ。

 

「...」

 

「あ、帰ってき...た...」

 

いかにも新鮮な肉をカウンターのまな板に載せた男。

 

「...」

 

不躾だけど、一人殺ってきた?血塗れなんだけど...

 

そんな私の視線を気にすることなく、その肉塊に包丁を入れる。

 

少量の血が吹き出し、カウンターに赤い斑点を付ける光景に喉を鳴らす。

 

それと同時に、()()を口に運んでしまったら、もうおしまいな気もする。

 

刻々と盛り付けられていく様子を、物憂げに見る。

 

そうして暇を持て余していると味付け用のタレか何かが掛かった、薄切りの生肉がやって来た。

 

「...」

 

終始黙ったまま、再びなにかの作業に戻った男から目を離し、それを備えられた食器でつまみ、口に入れる。

 

「...あはっ。」

 

牛でも鳥でも、ましてや豚でも無い味。

 

よく知っている。私はよく知っている。

 

命乞いと悲鳴が極上の隠し味になる肉だ。

 

「ふ、ふふひっ。ひはははっ...!』

 

あぁやっぱり。

 

『もっと、新鮮な物がいいなぁ。』

 

ダメだったよ。

 

やりたいままに、やるだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

肝臓はエグ味が強いかな。

 

腸はぶにぶにしてて気持ち悪いし。

 

胃は中身が要らない。

 

心臓は凄く筋肉質で硬い。

 

脳みそは落としてダメにしちゃった。まあきっと、美味しくなかったでしょ。

 

ん...指は美味しい。

 

ぱきり、ぱきりと骨をへし折って、肉の部分に喰らいつく。

 

骨付き肉を食べているみたいでちょっと楽しい。

 

飛び散る鮮血。流れ込み、口腔を満たす鮮血。

 

空っぽの器に大量の水を流し込むみたいに見る見るうちに満たされていく感覚に、もはや一種の興奮をも覚える。

 

ふと、肉が大きくて食べられないと思った矢先、思い出したように姿を変える。

 

小さな、普通の愛玩動物みたいなサイズになって、再び新鮮な肉塊に口を突っ込む。

 

体と口元を真っ赤に染めて、一心不乱に食い漁る。

 

 

 

しばらくして.........

 

 

 

「ん......あれ...私、なにやって...っ!?」

 

顔の識別も出来ないほど、ぐちゃぐちゃに引き裂かれた肉塊。散乱する、中途半端に齧られた臓物。

 

「...やっちゃった。」

 

口ではそう言っても、根っこの方では何にも大した罪悪感は持たず、達成感すらあった。

 

今はとにかく、幸福感が...

 

不便だなと思い、体を戻して二本の足で直立する。

 

「......最悪だ...」

 

そして途端に訪れる嫌悪感。

 

別に、私のした事について嫌気がさしている訳じゃなく、私の行動が当たり前だと思っていたことについて嫌になっている。

 

なかなかどうして、此処まで傲慢になれましょう。

 

前々から私は、自分の立場を絶対的な捕食者とでも思っている節がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のことは、もう忘れよう。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「またこの死体か。」

 

青い外套とツヴァイヘンダーを背負った男が、内臓と一部の骨のみを残した死体の前にかがみ込む。

 

「また臓器だけ残されているんですか?」

 

男と同じ格好の女が、男の後ろからその散り散りになった肉塊をのぞき込む。

 

「もう今週で21件だ。ネズミにしては皮膚と肉だけを持っていくのはおかしい。」

 

「どーせ腹の飢えた獣か何かが、一通り食って満足したとかじゃじゃないんですか。」

 

「そこいらの犬っころに殺されるような人間じゃない。仮にも2級フィクサーだ。まあ...『くわずぎらい』の仕業と考えた方が自然だろうな。」

 

「『くわずぎらい』...それって、二日前都市悪夢に指定されたあれですよね。」

 

「あぁ。噂として流れ始め、わずか一週間足らずで都市悪夢へとなった食人鬼。行動から23区が関係しているとは思っているが...」

 

「この前の、ワープ列車の乗客が死んでたってのもそれでしたっけ。ほら一般客と一等室の客が何人か失踪したって言う...」

 

「正確には規則性の見つからない裏路地で臓器だけになって発見された、だな。」

 

「一体どうやってワープ列車に手を出したんでしょうか。」

 

「さあな。...こんなことを話していても進まない。とりあえず現場の情報を纏めて協会に戻るぞ。その間に写真を撮ってくれ。」

 

懐からメモとペン、そして小型のカメラを取り出した男は、カメラを持った手を相方に差し出す。

 

「......おい?クララ?」

 

が、相方から何も応答が無く振り返った男が目にしたのは、胴体に巨大な穴を開けて、ぶち撒けた内臓の海に倒れ伏す女の姿だった。

 

「っ!?」

 

手に持った物を放り落とし、ツヴァイヘンダーに手をかけようとしたが、

 

『ひひはっ無駄っ!』

 

楽しそうな子供の声と共に、急に片手が軽くなった。

 

「て、手が...!?」

 

大量の血を吹き出す手首。

 

目の前の人語を介す獣は、男の手首を咀嚼しながらもその落ちる赤い雫を見て涎を垂らす。

 

そして間もなく

 

「...あぇ?」

 

男の下半身がちぎりとび、上半身と共に宙を舞う。

 

『は、ははっ!あははははっ!』

 

そして男が最後に見たのは、新しい玩具を買ってもらった子供のように無邪気な声ではしゃぎ、その手の平を叩きつけんとする一匹の獣だった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

黙ったまま、泥棒のように静かに扉を開け、中に入る。

 

ここは私の家なんだから、何もやましいことは無い。なんなら、依頼を片付けて帰ってきたところなんだから堂々とすべき。

 

でも...

 

「.........」

 

「おっ!おかえりぃ!」

 

どれだけ静かに入ってもバレるみたい。

 

「いつもよりちょい〜っとばかし遅いから心配したで?最近物騒やしな。ほれ、最近噂の...なんやったっけ...く、くわ...くわばらくわばら...そう!『くわずぎらい』!今度はツヴァイ2課の部長がやられたみたいやしな。」

 

「っ...」

 

「まあ所詮都市悪夢やから、ナオちゃんなら問題あれへん思うけどな。でも気をつけるに越したこたないで?W社に手を出すくらいやからな。」

 

W社。ワープ列車。

 

...私が、好き勝手に蹂躙した煉獄。

 

乗客を食い殺し、整理要員も増援が来るまで殺し尽くしたあの場所。

 

衝動に身を任せて、思い思いに貪り尽くした。

 

自己嫌悪と高揚。

 

超えてしまったラインは、二度と跨ぎ直すことは出来ない。そうして次々に超えては行けない場所を軽々と踏み砕き、蹂躙した結果がこれだ。

 

どれだけやっても、満足は一時的なもの。

 

これから、どうなるんだろう。

 

「......ナオちゃん?泣いてはんの?」

 

「えっ...わ、な、なんで、だろっ......ごめん、なさい...」

 

「どした?そないなるほどキツかったんか?」

 

「違うの...ごめんなさいぃぃ...!」

 

懺悔するように、誰かに許しを乞うように、ひたすら謝罪の言葉を吐き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

食人衝動抑えきれなかったルートのホモちゃんでした。

 

最初は都市の星にまでしてやろうかと思いましたが、似たような都市の星で血染めの夜が居たので、さすがにアレよりは被害少ないよな...ということで都市悪夢です。

 

都市悪夢(不純物レベルの案件)

 

最後なんやかんやで改心しそうな流れも混じってましたけど、全然そんなことありません。

 

これからも適度に道草(隠喩)食って帰ってくるようになります。

 

あ、ちなみに、思いっきりW社に手を出してるのに都市悪夢で済んでいるのは、職員殺されくった、というのをW社が公表していないからって体です。

 

そりゃ一瞬で着くワープ技術を有している翼に、整理要員なんて言う武装集団がいるなんて不自然ですからね!

 

 

 

完全に余談、関係ない話なんですけど、『through patches of violet』のコメント欄で某トリコの嘘最終回みたいなこと書いてる外人ニキが居て笑ってしまった。

向こうにもそんな文化あるんだ...

 

 

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