Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
───どこかの荒野───
〈ッ...〉
「ダンテどうしたの?なんか、渋いツラしてるけど。揺れがしんどい?我慢しろ?」
〈違う...バス...囚人たちが突然、消えて...それから、私も何かに飲み込まれて、ここに...〉
「飛ばされたってこと?W社の特異点...でもあれワープじゃないしな...しかも私たちみたいなのに特異点を使えるほどの余裕も無いだろうし。」
〈...〉
「...」
〈......〉
「......あっ、思い出したの!?」
〈遅いよ...〉
「まあ思い出したなら良かった。そのまま、どうして私たちがこんなことになったのか、心当たりまで思い出してくれると助かるかな。」
心当たり。
そんなもの、至る所で...
〈...〉
至る所で......
〈...ごめん、全く心当たりないんだけど。〉
「まあそうだよねぇ。裏路地のちっちゃい組織ならともかく、結構なことやってくれたみたいだし...そうなるとまあまあ大きい組織になるよね。どこだろ...」
本来の姿と身分なだけあって、ある程度都市の組織については知っているらしい。
...少なくとも私よりは。
「...あ!」
〈な、なに!?〉
「...あっごめん、全く関係ない事なんだけどさ、こうやって走るより、私が戻ってダンテを運んだ方がいいんじゃないかなって。」
〈元にって...〉
「フィクサーの私。」
〈え?だめでしょ。〉
契約がどうとか言ってなかった?
確か以前...ワザリングハイツでそれを破った結果、ヴェルギリウスに...
「バレなきゃいいのさ。それに、私がダメなのはあなた達が枝を見つけるのを手伝うことだからさ。非常事態だってことで許してくれるって〜。てことで、よいしょ。」
〈うわっ!?〉
黒混じりの体が揺れ、いとも簡単に私は投げ出された。
つい反射的にか、それともいくつか修羅場を乗り越えたことで体の使い方が良くなってきたのか、衝撃を逃がすように一回転して、そのまま天を仰いだ。
「...おーい。生きてる?」
〈......おかげさまで。〉
「あはは、何言ってるかわかんないや。そういえばそうだったな...これはこれで不便だ。」
差し出された人間の手を掴むと、半ば持ち上げられるように立たさせられた。
「うわ軽っ...その体何が詰まってるの?ネジ?ボルト?私が誰かわかるよね?分かるならカチコチ言って。」
〈...カチコチ。〉
「うん、大丈夫そうだね。」
目の前にいる独特な服装をした少女は、アリスだ。
アリスというより...ナオ?
特色、深緑の幻爪...シンクレアの時に助けられてからしばらくの間、ドンキホーテがまるで自分の事のようにスラスラと話していたから覚えている。
最年少特色フィクサー。
例の図書館からの生存者。
ねじれ専門。
色々な代名詞を持っている人物が、目の前にいる。
「みんなの匂いとその方向、距離も大体分かってるし、近道しようか。」
そう言ってナオは、何も無い腕を宙に振った。
「...」
〈...〉
何も起きなかったけど。
「...あれ?なんでだろ...いつもならこれで近道できるのに...」
〈...まず第一、なんで無い方の腕振ってるの?〉
「なにー?何言ってるかわから...腕?腕がどうし......無い!?!?」
私の指さしている物に気付いたらしく、何も入っていない袖を見て、その左右で色が違う目が飛び出るんじゃないかと思うほどに驚いた。
「...ダンテ......今のやっぱ、なし...乗って...」
〈あ、うん。〉
「.........」
〈.........〉
互いに無言のまま、荒野を駆ける。
いや、厳密に言うと駆けていたのはアリスだけど。
「まだもう少しあるし、お話しようか?」
思っていたよりも沈黙が得意ではなかったらしく、向こうから会話を切り出した。
「たぶんダンテはもう分かってると思うけど...私がいつも使ってるあの爪とかの武器、E.G.Oなんだよね。」
〈うん。今まで出会った、ドンベク、ドンラン、エイハブなんかと同じ感じがしていた。〉
「まあ〜色々あって?発現したわけなんだけど...その時に腕片っぽ無くしちゃってさ。あの爪とかが腕の代わりになってたんだけど...出なかったや。」
〈E.G.Oが出なかったってこと?〉
「それは違うかな。あの服もE.G.Oで、私ずっとE.G.O出してるようなもんだし...そう考えると私すごくない!?ヴェルギリウスでさえE.G.Oなんてちょっとしか出さなかったのに!」
〈え、あ、うん。それは本人の前では言わないようにね。〉
「あの赤い霧でさえ調子上がってからじゃないと出せないんだよ!?」
〈いや誰?赤い霧。〉
「赤い霧をご存知でない!?ほ、ほら、伝説の...!ヴェルの前任の...!あぁもう、ドンキがいれば五時間は話しただろうに...!」
〈...今アリスだよね?私が乗ってるのってドンキホーテじゃないよね?〉
「...けほん......あ!なんだか匂いが強くなってきたぞ〜?そろそろ着くかもしれないなぁ〜?」
〈誤魔化した...〉
「......あ?なんで...いや、喜ぶべきかな...」
いつの間にか目の前に現れていた岩壁に沿って歩いていたアリスが気になることを呟くと、それからはもう匂いに頼っていないような、自然な足取りで進み始めた。
それからすぐ、不自然に開いた洞窟が現れた。
「行くよダンテ。...ダンテ?」
〈...ここに入ったら、無事に戻って来れない気がする...〉
「はあ?何言ってんの?」
〈分からない...私とどうしてそう思ったのかが分からないんだ。ただ、ふとそう思っただけ...〉
「じゃあ気のせいだから行くよ。」
〈ちょっ...〉
むしろ、なんでアリスはそんなに無警戒で入っていくんだ?
「...こんなに広かったかな?おーい!誰かいますかー!」
「かー!」
「かー!」
「...うんばっちり。」
〈なにが...?〉
「返事...来ないね?聞こえると思うんだけどな...それとも私が間違え「オイ!!離しやがれこのクソ...」わぁお。」
〈ヒースクリフ...わかりやすいね...〉
「ナイスわかりやすさ!」
〈な、ナイ...なんて?〉
気のせいだったらいいんだけど、やけにアリスのテンションが高い。
いつものアリスなら、もっと冷静に...
『り、リス君!!リス君がぁぁ!!!』
『...ドンキホーテ、それちょっとこっちにくれる?』
『う、うぅぅ...!リス君を、救ってくだされぇえぇぇ...!』
『...おっ、意外といけるね。外ザク中ジュワ...』
『リスくうぅぅぅんんん!!!!!??』
『うるさいなぁぶっ殺すよ?』
れ、冷静に...
『わ...私は、いい...パス、パスしとく...!えっちょドンキ!?』
『見たところどうやらそなたもあれの正体を薄々察していそうではないか!フィクサーのファン同士、共に前へゆこうぞ!!』
『い、嫌だ!絶対に嫌だ!!嫌だつってんだろこの第二眷属野郎!!離せバカ!!頭ラマンチャ!!』
『当人はそこまで言われるようなことをしたのか...?』
冷静...
『おチビちゃん...私は悲しいよ...まさかおチビちゃんがこんな不正をするなんて...』
『な、何か測定機器の故障とか、測ってる人が間違えたとか...』
『アリスさんがそこなのは少し納得が行きませんね。ほら、シンクレアさんの前とかスペースがありますよ?』
『酷い言われようでキレそう。キレるわ。』
『くだらん。そいつは不・タじゃないだろ。』
『良秀...』
『あぁ間違えた。不・度だったな。その短い手足でなにしようってんだ。』
『ぶっ飛ばすぞ。』
〈......〉
あれ...?結構...いつも通りだったり...?
「ダンテ?置いてくよ?」
〈あ、ま、待って...!〉
白い毛が上機嫌そうに揺れながら、大湖のあの鯨に飲み込まれる時を思わせる深い暗がりへ溶けて行く。
違和感と根源的な恐怖を気のせいと一蹴して追いかけるしかできなかった。