Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
───黒い森───
囚人たちを捜索しているはずの私たちは今...
ズシン...ズシン...
〈...〉
「「「.........」」」
茂みの影に身を潜めていた。
地の底から響くような重く鈍い足音が、私たちのすぐ側を徘徊していたからだ。
煌々と光り辺りを照らす灯りが黒い森の夜すらも飲み込んでしまいそうな暗闇に浮かび上がった。
それを見た瞬間からの記憶が曖昧だけど、私を茂みに引いてくれたヒースクリフが言うには『車に轢かれたいから道路のド真ん中でボーッと突っ立ってるヤツ』みたいだったらしい。
『...クルル。』
ズシン...ズシン...
〈......行った?〉
「...みてぇだな。」
「...はあ〜...息が詰まって死んじゃうかと思った〜...誰かさんが言った通りに怪物が出てきちゃったね...ね?イシュ?」
「え?私が悪いんですか?私はあくまで、限り無くあるリスクの内一つを提示しただけで...それ以外にも、自分の何倍も大きな生き物を丸呑みにする怪物や、特異点とはまた違った性質で即座に死に至らしめる怪物なんかも候補にはありましたが...」
「誰かイシュの口塞いでくれない?なんか、いよいよ現実になってきそうで怖いんだよね...」
〈それであれは...なんだったの?〉
「黒い森の怪物。」
答えたのはムルソーだった。
「......それ、どこかで聞いたことあるんですよね...あ、もしかして絵本ですか?」
〈絵本?〉
「はい。以前、近くの書店にあったのを見ました。監視、審判、懲罰の役割を持った三羽の鳥の奔走により、森の平穏が乱れ破滅するまでの物語でした。」
〈...ん?もしかして最近の話?読んだの?絵本を?〉
絵本って確か、子供が読むような文字が少ないあれだよね...?
「はい。」
「そんな図体してるくせにマジで言ってんのか?自分の見た目考えてみろよ。んなナリで小せえ絵本なんて開いてたら言い逃れ出来ねぇぐらいに不審者だろ。」
「リンバス・カンパニーの就業規則にも都市の禁忌にも『大人が絵本を読んではならない』という記述はなかった。」
ムルソーの態度はヒースクリフへ、「何か問題があるのか」と無言で尋ねているようだった。
「......なあ、オレが変なこと言ってるわけじゃねぇよな?」
「完全に同意はできないですけど、まあ、ちょっと変わってる人には見えてしまいますね。」
「それで...あのおっきいのはその三羽のうちどれだと思うの?」
今まで黙っていたアリスが口を開き、ムルソーは「うむ」と続けた。
「全てを見通す無数の目、永遠に消えないランプ。監視の鳥と似た特徴を持っている。」
「でもムルソーさん、それはあくまで絵本の話だろ?事実とは限らないんじゃないか。全てを見通すって言っても、俺たちを見失ってたわけだし。」
「確実な事実とは断言できないが、それでも考察材料にはなるだろう。また、我々を見失ったのではなく我々よりも優先して処理すべき事象が発生した、という可能性もある。」
「...ロージャさん?ムルソーさんの口は塞がなくていいんですか?今結構不穏なこと言ってましたけど...なんて言うんでしたっけ...ふ、フラッグ?」
「ムルは大丈夫なの〜!」
〈どういう基準?〉
「現時点で候補として挙げられる事象は二つ。一つはこの森に住む生物への明確な捕食者が現れた。二つ目は我々と別の森への侵入者の存在を検知し、それが我々より危険指数が高いと判断された場合。」
「ロージャさん?今、今すごい色々言ってますよ?ロージャさん?」
自分ばかり不公平だろうとばかりにイシュメールはムルソーを指さすけど、ロージャは今までの実績から鑑みてイシュメールを抑える方を優先したらしい。
「んで?その絵本の話なんかしてどうしようってんだ?読み聞かせでもしようって?」
〈ムルソーは...どうするべきだと思うの?〉
「......私は...あの怪物の後をつけるべきだと考えます。管理人様。」
〈...〉
ムルソーという囚人は、自分から何かを伝えることは滅多にない。
聞けば答えるけど、自分から言う訳じゃない。
そのムルソーがここを黒い森と言い、判断材料になる情報を簡潔にだが説明していた。
それが、よりこの状況の異常性を物語っているようだった。
〈わかった。みんな、あれを追いかけよう。〉
「えっ!?」
「...本気ですか?管理人さん。」
ロージャとイシュメールは困惑しているようだったけど、ヒースクリフとグレゴールとアリスは「まあ、それしか手がかりはないか」と納得していた。
ホンルは...
「...あぁ〜。管理人様がそう仰るならそうしましょうか〜。」
...ホンルも、よく考えるとムルソーに似ている気がする。
たまに自分の考えを押し殺して私の指示に従っている気がする。それが気のせいならいいんだけど...たぶん、違う。
〈...行こう。そこまで足は早くなかったから、きっとすぐそばに居るはずだ。〉
私の考えの通り...
「...あー...いたな?」
「いたね。」
「いちゃいましたね。」
「いましたね〜。」
「のろのろ歩いてやがんな。」
三者三葉の言葉を発する囚人たち(ムルソーを除いて)と一緒に、あの多くの目を持つ鳥の後ろを付けていた。
『...クルル...?』
ただ、早速違和感を感じたのか側面に着いていた目が私たちを捉えた。
隠れる時間も場所もなかった。けど、その鳥はまるで興味が無いかのように低く鳴くとまた歩き始めた。
「...これよ、デカブツが言った事マジなんじゃねぇのか?オレたちよりヤベェのがいるって話。」
「それならそれで、どうしてこんなに呑気に散歩をしているんだって話ではありますけどね。」
...私たち、よく考えたら危なすぎる橋を渡ってないか?
外郭のよくわからない生き物の後ろをついていってるわけだし、これがもし、あの妖精の幻想体みたいに誘い出して狩りをするようなものだったらどうするんだろう。
いや...ここまで考えられるなら、魅了してくるようなものじゃないのかな。
〈...ムルソー、周囲を警戒して、妙なものを感じたらすぐに教えて。〉
「はい。」
まだ怪物の鈍い足音以外に生き物の気配はしない。
時々自分の判断をあとから後悔したり正しかったのか思案することはあったけど、今回はその後悔が早くもやってきた。
「ダンテ!」
もう少し慎重に動くべきかもしれない。
ムルソーがそう言ったから、は理由にならないのはわかっている。でもなにか理由がある。そう思いたかっただけかもしれない。
「ダンテ!」
まだ行方知れずの囚人たちが怪物が向かう先にいるなんてわけ無いのに、どうして...
「時計ヅラ!」
〈えっ?な、なに?〉
強く肩を揺すられて思考から浮き上がる。
それと同時に見えたのは、鈍い足音を何度も響かせながら走るあの怪物の後ろ姿だった。
「アイツ急に走りやがったぞ!」
〈...なんでもっと早く言ってくれなかったの?〉
「言ってたんだけど!?」
「計3回。軽度の身体的接触も含めるならば計5回管理人様をお呼びしました。」
そうこうしている内に怪物の背中と足音は遠ざかっていく。
まるで地震のような低い振動を響かせながら、あの見た目からは想像もできないほどの速度で走り去っていく。
〈お、追いかけるよ!〉
「そのつもりで呼んでたんだろうが!!」
怒られた...