Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
「はあ...はあ...アイツどこ行きやがった...!?」
「見失った...?嘘...あんな巨体、すぐに見つかるものだと思うんですけど...」
あれから数分後、私たちは手がかりを見失った。
〈あんな体で、いつの間にか見失うなんてこと有り得るの?〉
「現に有り得てるでしょ...ダンテがぼーっとしてたせいだよ。」
〈わ、私?私のせい......では、あるか。〉
「全部ダンテのせいなんだけど!?」
アリスが毛を逆立てて威嚇してきた。
「...管理人様。痕跡を発見しました。」
〈それって、さっきの?〉
「いえ、人間のものです。」
〈!〉
「それから何かを引き摺ったような血痕も見つかりました。」
〈!?〉
「せわしないね、ダンテ...」
「小柄な人間のものです。身長は断定できませんが、160もしくは150を下回る人物です。」
小柄。その一言で金髪のフィクサーを愛している囚人が脳裏によぎった。こんなところに都合よくいるわけないとわかっていても、信じずにはいられなかった。
〈まさか...ドンキホーテ!?怪我をしているんじゃ...〉
「いえ、この足跡は裸足です。」
〈じゃあ違うかぁ...〉
「ねえだからせわしないって。」
「引き摺ったような血痕、とも言っていましたよね。うわ...まだ臭いますね...アリスさんこそ、これで大まかに人物像が浮かんだりしませんか?ほら、匂いとかで。」
「私を探知犬かなにかだと思ってる?とりあえずリンバス・カンパニーの人間じゃないことは確かだね。この血はこの森の生き物の匂いがするし、足跡は......小さい女の子のものだ。ちっちゃい子って独特の匂いするんだよね。」
〈すごい詳しくわかるじゃん...〉
「わあ〜。どうしてそんな子供の痕跡がこんな所にあるんでしょうね〜?」
「.........外郭で暮らしてる人か何かでしょ。前のクリスマスの時だって...クレヨンちゃんなんて外郭の住人に会ったわけだし。」
...気のせい?何か、隠しているような...いや、今はそんなことを考えるほどの余裕はないか。
〈...そっか。じゃあ今度はこれを辿ろう。もうこの際、集めれる情報は片っ端から集めないと。〉
「え〜?またぁ〜?もう私へとへとなんだけど...」
「そうですか。じゃあロージャさんはここで待っていますか?迎えに来るのは私たちじゃないかもしれませんけど。」
「わ、わかってるって!やだなイシュ、冗談だよ〜!」
「管理人様、ここより足跡が乱れています。」
「これはオレでもわかるぞ。逃げてるヤツの走り方だ。自分じゃ到底敵わねぇってやつに目をつけられて、必死こいて逃げ出したヤツだな。」
「......そりゃ...こんな場所だと、人間が敵う相手の方が少ないよ。」
アリスの呟きは妙に説得感があった。
それこそまるで、実体験のような...
「んぬ、ぬぬぬぬ!?は、離しては貰えぬだろうか!?」
「...待って。今なにか聞こえなかった?」
後ろを歩いていたロージャが、ふと立ち止まった。
〈...うん?〉
「は、はい?何も聞こえませんでしたけど...ロージャさんのお腹の音じゃないんですか?」
「そ、そこまで緊張感ないわけじゃないよ?でも、なんだか...聞き覚えのあるような声がした気がして...」
「何故そのようなことをするのだ!そなたもフィクサーであるならば分かるはず...」
「ウチお嬢ちゃんが思うとるようなフィクサーちゃうねんなぁごめんなぁ大人しく黙っといてくれへん?」
「...ほら!」
〈本当だ...ロージャのお腹の音じゃなかったみたいだね。〉
「この声...あの喧しいチビと胡散くせぇ女か。なあ時計ヅラ、オレたちがこんな所にぶち込まれた原因、アイツにあるんじゃねぇのか?明らかになにか隠してただろ。」
〈...え?そんな雰囲気はなかった気がするけど...〉
「ヒース、そう思うなら直接聞いてみればいいでしょ。でもきっと、『なにアホなこと言うとんねやこのバカ!』って笑いながらぶん殴られると思うよ。」
「はあ...身内贔屓もいい加減にしろよ。なんでもなんでも、テメェが思ってるほどキレーじゃねぇんだ。これは当てつけじゃねぇ、オレにしちゃ珍しい気遣いだぞ。」
「......あぁそう...その『気遣い』、死ぬほど似合ってないからやめた方がいいよ。今すぐ。」
「テメッ...」
〈こ、声の方に行こう!行くよ!みんな!〉
「チッ...なにもぶん殴ろうってわけじゃねえよ。ただこの世間知らずのガキに教育しようとしただけだ。」
「教育できる教養もないくせに。」
「ア゙ァ!?」
やめてよ...
「おチビちゃん?どうどう...不安なのはわかるけど、ヒースに当たっちゃダメだよ〜。」
「ふふ、そうやって毛を逆立てていると、糸がほぐれたくちゃくちゃの毛糸玉みたいですね。」
「なんだとてめぇこの能天気ボンボン野郎。」
アリスの怒りの矛先は幸運なことに(?)ホンルに向かったらしい。
「まあそうカッカするもんじゃないだろ?あれぐらいいつものじゃれあいと同じじゃないか。」
「そうですよヒースクリフさん。教養がないのは事実じゃないですか。事実陳列罪ですか?」
「...チッ...わーってるよ。こんぐらいいつもの......テメェはフォローしてんのかバカにしてんのかどっちだ!?アァ!?」
向こうも無事に、丸く収まったらしい。
...うん、丸く収まった。
声のする方向へ再び歩みを進めた。
数分間歩き、次第に声がよりはっきりと聞こえてくる。
「ど、ドンキホーテさん...気持ちは分かりますけど...でも...」
「なぜそなたまでそのような薄情な思考へ至ったのだ!当人は...当人は悲しくて涙が出てきそうである...!」
「チェシャ嬢の言へることも最もならむ。我らはこの場所を知らすぐ。ダンテもおらぬ今、迂闊なる行動は避くべからむ。」
「い、イサン君まで...!」
何か揉めているようだった。おそらく...いや確実に、ドンキホーテが何かしようとしているのだろう。
「この期に及んでまだそのふざけた願望を宣う気概だけは認めてやろう。ならば一人で追うが良い。管理人様には私が話をつけておこう。......管理人様!?」
サーベルを持ち周囲の警戒に務めていたウーティスと最初に目が合った。
〈あ...うん。久しぶり、ウーティスに...みんな。〉
見回すと、チェシャと姿のなかった囚人たちの姿があった。
これでなんとか全員は揃ったわけだ。
「管理人様!ご無事で何よりです。おそらく混乱していられるでしょうがこのウーティスめと合流したのであれば安心です。管理人様、ここは───」
〈黒い森。でしょ?〉
「............お...お見逸れしました。管理人様。白痴の役に立たない時計頭であったあの頃を覚えていらっしゃったとは。」
なんか棘があるんだよなぁ...
〈それで...ドンキホーテは今度、なにをやろうとしてたの?〉
「な、なぁにぃ!?管理人殿まで当人が悪と決めつけるのであるか!?当人はただ、この森で彷徨い歩いていた少女を保護しようとしていただけにありまする!それを!このチェシャ殿とシンクレア君とイサン君ウーティス君が!寄って集って!!当人を!!!」
「わかった。分かったからドンキ黙って。」
「...なっ...」
意外にも...ドンキホーテを押さえ込んだのはアリスだった。
いや...そこまで意外かと言われたらそうじゃないかもしれないけど、でもこの二人は何をするにも一緒にしていたから、てっきり同じような思考だと思っていた。
「...その子供って、どんなだった。」
「く...詳しくは、覚えておらぬが...確か...」
「布切れみたいな服きた、ちっこい女の子やったわ。片手にここに住んどる生きもんの死体引き摺っとった。見た目はこんなもん。特に外見的特徴はなかったからな。髪色も...まあ、うちがよく見たことある色やったわ。」
「...そう。」
アリスはチェシャの言葉に気が済んだのか...もしくは二人だけに分かる会話だったのか知らないけど、黙って囚人たちの列に加わった。
「アリス殿はなにやら具合が悪そうではないか?」
「うむ...平時より鬼気迫りき様相なり。」
「そうか?いつも以上にイライラしてる以外いつも通りだろ。」
〈...なんか、戻ってきたって感じだね。〉
バスに戻ってきた訳じゃないけど、少なくともいつもの喧騒が戻ってきた。
不釣り合いな賑やかさの中、一人の囚人がやってきた。
「ダンテ。ファウスト...私から、報告があります。」
〈それって...前みたいに?〉
『前』って言葉がワープ列車の時のことを指していると理解してくれたらしい。
〈みんな、ファウストとこれからについて少し話してくる。勝手にどこか行ったりしないでよ?特にドンキホーテ。〉
「なっ...なにゆえ当人だけ名指しであるのか!?」
「おちびちゃんに関しては日頃の行いでしょ。」
〈......それで、報告って?それって前のワープ列車の時みたいな...?〉
「はい。いえ、正確には違うのですが...」
ファウストが言い淀んでいる時点で既に嫌な予感はしていた。
「ゲゼルシャフトに接続ができません。いえ......存在が確認できない、というのが最も近いでしょうか。」
ただ、完全に予想外の報告ではあった。