Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
〈...存在が確認できない?それって...?〉
いつも思うんだけど、あえて遠回しな表現をするのをやめてくれないかな?
「考えられる要因としては二つ。一つはこのファウストのみがゲゼルシャフトの存在とアクセス権を隠匿されている。もう一つは...」
〈もう一つは?...もったいぶらずに答えてよ。〉
「...時にダンテ、かつての旧L社では時間遡行技術があったと言われています。実態はT社提携のTT2プログラムとW社提携の現状復旧技術を利用した擬似的な遡行でした。」
〈う、うん...?どうして急に、旧L社の話を...?〉
「翼二つ...エンケファリンによるエネルギー提供も含めれば翼三つの特異点を利用したとしても、行えるのは擬似的なものです。旧L社外では関係無く時間が進んでいた訳ですから。」
〈...〉
諦めた。もういちいち口を出さずに話してもらった方がいいと思ったから。
「だからこそ...私は、この現象への技術的好奇心を抑えられない、とお伝えします。ダンテ、現在黒い森にはあらゆる生物が存在していません。小鳥はおろか、虫の一匹すらも。」
〈...?でも...ファウスト達は会ってないかもしれないけど、私たちはこの森の生物を見たよ?大きな黒い...鳥?まあ、鳥だった。〉
「はい、かつては存在していたと言われています。」
ファウストの遠回りな発言の数々とここまでの道筋が、少しずつ細い糸のように線として繋がっていく。
〈.........待って...そんなこと、ありえるの?〉
察しが着いた私を見るとファウストは心做しか、いつもより嬉しそうに頷いた。
「きっとここが都市であれば荒唐無稽な白昼夢。もしくは技術研究に心を病んだ者が語る幻と一蹴されたかもしれません。ダンテ、ここは、私たちのいた時間よりも過去の場所です。」
〈...〉
頭が爆発しそうだった。
頭の後ろにあるって言う自爆ボタンを押した訳じゃないけど、まるで押したようだった。
「原因を特定し、解決しなければなりません。しかし同時に、この現象の再現性と制御可否を調査する価値があるとも考えます。完全な時間遡行は都市でも確立されていない技術です。いえ、設備が整えば可能性はありますが、少なくともメフィストフェレスにそのような機能は搭載しておりませんから。メフィストフェレスに積載されている技術が何らかの影響で今回の事象を起こしたというのであれば...」
〈そ、それを考えるのは後にしよう。今はとにかく、これからどうするべきかって事だよね?〉
「.........はい。しかしこれはゲゼルシャフトにも記述のない情報であり、私が特定すれば他の───」
〈後で!!〉
「..................はい。」
見るからに不服な表情なのは無視することにした。
〈...ファウストは、今回のことを知らないの?〉
「私に問われているのであれば、肯定します。ファウストについては確認も出来ない状態ですが。」
〈ヴェルギリウスは知ってたみたいだけど...〉
私の言葉に初めてファウストが動揺したように見えた。
知らされていない?ならどうして...
「ダンテ、目先の目標としてこの森の脱出を推奨します。それから、それぞれが外郭に落ちてきた場所を訪れてみるべきでしょう。古些細な痕跡でも利用価値はありますから。」
〈あ、う、うん。〉
誤魔化されたような気がするけど、ひとまずの行動方針としては決まったから囚人たちを呼びに戻った。
元いた場所に戻るにつれ...何か、音が聞こえてくる。
ごす、と硬いものがぶつかるような音。
「あ!?んだコイ...ってぇな!」
ヒースクリフの怒声。
「あははは!日頃の行いやろ!多分!知らんけど!」
チェシャの酷く楽しそうな笑い声。
その他囚人たちの困惑と愉悦と動揺がないまぜになった声。
〈...今度はみんな、なにやっ...て...〉
ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ
赤い模様が着いた真っ白な鳥につつかれているヒースクリフと目が合った。
〈...新しいペット?〉
「管理人さんそれ本気で言ってますか?」
「スキンシップにしては随分激しいね?ほら、ヒースの頭から血が出てるよ。」
「頼もしいペットが出来てもうけもんやな!」
「どこをどう見たらそうなんだ?テメェ、目ん玉腐ってんじゃ...あぁ゙クソ!!テメェはテメェでさっきからなんなんだァ!?」
「まあまあ、大人しくどつかれとき。」
〈.........あっ。み、みんな。さっきファウストと状況を整理してきたんだけど...落ち着いて聞いて。私たちは......タイムスリップしたみたい。〉
「...はい?」
「今なんて...?」
「...は?」
重苦しい沈黙。変わらずヒースクリフの頭部にくちばしがぶつかる音だけが静かに響いた。
「だ、ダンテさん...!?な、なな、何言って...!?」
もはやこの取り乱したシンクレアが救いにも感じた。
〈どうしてその結論になったのか...ってことは話せないんだけど、一番考えられることとしては、それしか無かったから。だからとりあえず、最初に放り出された場所を確認してみようと思うんだ。〉
「......ごほん...異論はございません管理人様。この森のすぐ外の花畑に我々は流れ落ちました。管理人様は。」
〈私は...なんか、何も無いところで寝てたのをアリスに起こしてもらったんだ。その後の洞穴の中で他の6人に会って...〉
「アリスさんそっくりの子たちと遊んでました〜。」
〈外に出たらここだったんだ。一本道だったから引き返しただけのはずなのに、入った場所とは明らかに違っていた...っていうのは、気がかりかな。〉
「そうでしたか...であれば一度、その洞穴とやらに向かいましょう。」
「うん、あそこなら森の怪物も入れないだろうし───」
「......いや、外行こか。この森からは早よ出た方がええわ。ちんたらしとるとそこのバットの子が失血死してまうよ。縄張りから出て一旦立て直し〜なんてのも含めてとりま出るべきやと思う。」
「うんそうだね!あんなのがほっつき回ってるところ歩きたくない!チェーちゃんの言う通り!さすが!すごい!」
〈え、えぇ......?〉
「げに早き手のひら返し...燕のごとき...」
ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ
〈う、うん...〉
ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ
「まあおチビちゃんの機嫌も治ったことだしいいんじゃない?もうずっとこんな薄暗い場所にいて気が滅入りそう〜...」
ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ
「......ダンテ〜...?」
〈...〉
うん、わかってるから。そうやって私を見ないで欲しい。私も同じこと思ってるけどどうにもできないから言ってないのに。
「いつまでどつかれとるん?」
「好きでどつかれてるように見えてんのか?見えてんだとしたらとんでもねぇイかれ......あ゙ぁウゼェな!!」
「あ。」
誰の声だったんだろう。
ヒースクリフが小鳥を小突いた。指先で、つんと押しのけるような。
白かった体色は瞬く間に血のように赤くなり...
ぎち...グジャッ
赤い模様のような場所が、巨大なくちばし...くちばしと言っていいのか分からないが、他の形容が見つからなかったそれに、裂けた。
「......あ...?」
囚人たちが反応するよりも早く開き、囚人たちが動き出すよりも速く閉じた。
「やから大人しくどつかれとけ言うたやろ!」
くちばしが閉じた瞬間、チェシャがヒースクリフの首根っこを掴んで助けていた。
〈...え?〉
「うちそんな信用ないか?いやないよな!なんで大人しくしとるべきかも言っとらんかったもんな!ごめん!!」
「ほお...上々なメタモルフォーゼを見てる気分だな。」
「言うとる場合か!」
赤くなった白い鳥が再度くちばしを開くと同時に、森が闇に包まれる。日が暮れた訳じゃない。光が失われたような感覚。
「...退避!総員退避!我々が来た道は覚えているな貴様ら!」
「あは〜、今度は逃げるんですね?」
「えっ!?いきなりなんなのも〜!」
「な、なななんですか!?なんですかあれ!?」
シンクレアが指差す先からは、一つの明かりと無数の黄色い目が少しずつ近付いてきていた。
「この森を守る生物の一匹だ。」
「そんなの聞いてないんですよ!!」
「ダンテ、あれって...私たちが追っていた...」
「くっちゃべってねぇで走れ!」
「誰のせいだと思ってるんですか!!」
「漫才しとらんとはよ行けや。」