Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
あれからしばらく、外郭に放り出されたとは思えないほどに穏やかな時間が流れた。
この樹に興味が湧いている囚人。花見のように見物している囚人。無関心にただ穏やかな休息を取っている囚人。
それぞれがそれぞれの休息だったけど、確かに穏やかだった。都市の喧騒ならきっとこうはいかなかっただろう。
ぱらぱらと舞い散る薄紅色の花弁の下、チェシャと、そのあぐらの上に乗っているアリスはただじっとそれを見ていた。
〈...綺麗だよね。〉
「あ?......まあ、そうやな。」
〈会話が成立することにももう慣れた。〉
「慣れないで?この人が異常なだけだから。」
「酷いなぁほんま。ちょっと見ない間に悪い子んなってまったみたいでお母さん悲しいわぁ。」
「チェーちゃんはおかあさんじゃないでしょ。私、脳まで筋肉じゃないから。」
「言うようんなったなぁ誰が脳筋やコラ。」
「いだだだだだ!!」
〈......今まで、囚人の以前の知り合いがいると不穏というか、悪い空気が流れてただけに...すごく安心する...〉
「なんや、そんなギスギスしとったんか。まあしゃーないか。人生逆転狙って入社しとるんやろ?」
〈え、知ってるの?〉
「知ってるも何も、事務所にファウスト来たからね。午前一時とか二時とかそこくらいだったよね?」
「せやったな...ほんま迷惑。」
〈あはは...〉
こんなに入社前のことを話してくれることなんて、他の囚人の時はあったっけ?
これはこれでやりにくい。どこまで踏み込んでいいのか...これぐらい大丈夫だろうと踏んでのことがとんでもない傷の可能性だってある。
だから、入社理由なんて聞いたらいけないんだ。
「事務所のために、ちょっとね。」
〈え?〉
「だから、契約。事務所の事情でね。」
〈...そっか。〉
それが私の沸いた好奇心を一時的に凌ぐための嘘なのはわかっている。納得しておくしかないんだけど、でもそれが壁を作られているということの証明になっていた。
「む、たった今『事務所』と聞こえたが?」
「うわ来た。」
「何ゆえ当人を蛇蝎の如く扱うのだ!確かに盗み聞きのようになったのは認めるが、しかし不可抗力である!」
〈結構遠かったと思うけど...〉
「なっ!?な、なな...なんという言いがかり!いくら当人が素晴らしく、温厚で、クールで、素ン晴らしいフィクサーであっても看過できぬぞっ。」
「ああうんわかったから。なんで聞き耳立ててたのさ。」
「聞き耳などを立てては───」
「認めるんならうちの自作グッズやるわ。」
「めちゃくちゃに聞いていたのである!何から何まで!!」
〈そ、それはちょっと困らないかな...?何から何まではさすがに...〉
「事務所のため、とは...やはりアリス殿は高潔なフィクサーである!仲間たちの居場所を守るために契約を結ぶとは並大抵の精神では成し遂げられぬ判断であろう!!」
〈うわ本当に全部聞いてる。〉
「しかし、契約の条件を話すのはファウスト君や視線殿から固く禁じられておらなかったか?」
「契約の具体的な内容は話したらダメってことでしょ?別にきっかけとかは話してもいいんだよ。それだったらほら、前にヒースが『オレをバカにしてた奴らを見返すために入社した』みたいなこと、言ったらシメられてたはずでしょ?」
「お、おぉ...!確かに...!なんと、ヒースクリフ君はそこまで考えていたのだな!!」
「いや何にも考えてないと思うけど。」
「ブフッ!はあ...どないしてこんな冷たい子になってまったんや〜...昔はなにをするにもチェーちゃん。うち見たら『チェーちゃん』言うて可愛かったんに...」
「愛想を尽かしただけだよ。」
「何でや!そんな要素ないやろ!」
「ゲテモノ食い。ネーミングセンス皆無。デリカシーなし。」
「あかん泣きそう。泣いてええか?」
「ねえダンテ、この人が提案した事務所の名前聞きたい?『わくわくなんでも屋事務所』だよ?『わくわくなんでも屋事務所』。信じられる???」
「いやほんまごめんて。」
「そこまで責められるような名前には思わぬが...」
「嘘でしょ?それ本気で言ってる?こんな...保育園みたいな名前が?それが嫌だから私は必死に名前考えて......あれ...だから、だっけ...私、なんで必死に...」
「ヤケクソんなったアリスちゃんが『死に場所逃したんだから死に損ないの集まりってことでいいでしょ!』...なんて、半ギレで言うたの覚えとらん?」
「あれ?そうだっけ?......そうだった、かも。」
〈アリスってなんか時折曖昧な口調になるよね。〉
「忘れんぼさんなんよ暖かい目で見守ったって。」
忘れんぼ。可愛らしい言葉だけど、本当に...それだけなのかな?
忘れていると言うには少しだけの違和感がある。
それは今だけじゃなくて時折顔を見せて、私が全貌を掴むよりも前に消えていく小さな違和感。
「さて、と......アリスちゃんどいてや。うちそろそろお仕事せなあかん。あー働きたくないわぁ一生寝てたい...」
「仕事?こんなところでなんの仕事するつもり?」
「なにって...まあまあ...知らんくてもええわ。」
はは、と誤魔化すように乾いた笑いを漏らしたチェシャの指輪が、鈍い光を放った気がする。
直後、その手の中には歯車で構成された無骨な大剣があって...
「ぇ」
「管理人殿!!!!」
ドンキホーテに首を掴まれて後ろに引かれた瞬間、すぐ側で白かったであろう赤い毛が飛び散った。
どこか甘い香りだった花畑に鉄臭い匂いが染み込んで...大剣の下からちりちりと立ち上がろうとしていた炎が、無惨にも踏み潰された。
ありふれた、珍しい命が潰れる音だった。
「外してもうた。ま、ええか。後は消化試合やし。」
〈な、なんで...アリスを...〉
「一番面倒やからやなぁ。他は...おわっ!」
「やっぱり猫被ってやがったか。なんかくせぇと思ってたんだよな。」
「三文芝居。」
「ご無事ですか管理人様!」
三者三様にチェシャを阻むと、それを皮切りに他の囚人たちも集まってきてくれた。
チェシャはただ佇んでいて...囚人が全員集まるのを待っているみたいだった。
「みんなどないしたん。おっそろしい顔しとるで?」
「とんでもねぇイかれ女をバスに乗せちまってたみたいだな?なぁオイ。」
「貴様、やはり最初から管理人様が目的だったのか。有象無象共を相手に図に乗っているようだが、このウーティスの目は誤魔化せない。」
「気・入・な。それだけ。」
「んー...結構反感買っとったみたいやな?上手くやっとったつもりやったんけどなぁ...」
「一つ、答えてくだされ。そなたは一切の躊躇なく...まるで、石の小粒を蹴り飛ばすような軽さでアリス殿を...」
「そんな人の心ないみたいに言わんといてぇな〜。メリハリが着いとる、言うて欲しいわぁ。」
「しかし...何ゆえ...」
「朋を殺すといわば、相応のよしがあべき。軽々とやりきとせば正気になかりこそやも。」
「依頼。フィクサーが動く理由なんてそれで十分やろ?ちゃうか?ん?いやーうちもやりたいわけやないんやけどな?んでも、か弱〜いうちの事務所の子ら守らなあかんやろ。翼の依頼を蹴ったらなにされるかわからへんし。」
〈...翼?〉
「よう知っとるはずやろ?リンバス・カンパニーと仲悪い翼。」
まさか、と呟くよりも前にチェシャの手には一つの制服が握られていて...それを、躊躇なく羽織った。
深い紺色と所々に走る赤色のライン。
「N社の...制服なり。」
「っちゅーわけで...やり合う理由は十分っぽいな?」
突然の事で、裏切られたような感情が湧いた。けど元々、チェシャは私たちの仲間ではなかったじゃないか。ただの同行人で...
〈......戦闘準備。〉
フィクサーとしての切り替え以上のものが見えた気もするけど、すぐ霧の中に溶けて行った。
『アリス LCB囚人』人格使用不能
『チェシャ』 Lv89
体力??? 斬(耐性) 貫通(抵抗) 打(耐性) 防御レベル+4 速度7〜10
混乱区画(60%)
憤怒(0.25)色欲(1.0)怠惰(1.5)暴食(0.5)憂鬱(2.0)傲慢(1.0)嫉妬(2.0)
『引き裂き、捻じる』 斬撃 色欲 コイン2 攻撃レベル+2
基本威力4 コイン威力4
呼吸回数5につきコイン威力+1(最大2)
《マッチ勝利時》破裂回数3増加
《Ⅰ・的中時》振動4、破裂5を付与
《Ⅱ・的中時》振動4、振動回数2付与
『どこ見とんねん阿呆』打撃 憤怒 コイン1 攻撃レベル+1
基本威力8 コイン威力8 破壊不能コイン
呼吸回数5以上なら基本威力+2
《マッチ勝利時》破裂回数2増加、次のターンにクイック3を得る
《Ⅰ・破壊されずに的中時》次のターンに脆弱3を付与
《Ⅰ・的中時》破裂5付与、対象の振動を『振動-炸裂-』*1へ振幅変換
『工房武器-爪-』斬撃 色欲 コイン3 攻撃レベル+2
基本威力4 コイン威力3 破壊不能コイン
呼吸回数3につきコイン威力+1(最大2)
《マッチ勝利時》破裂回数4増加
《Ⅰ・的中時》振動4を付与
《Ⅱ・的中時》振動3を付与
《Ⅲ・的中時》破裂5付与、振動回数3増加、振動爆発
『工房武器-メイス-』打撃 憤怒 コイン1 攻撃レベル+2
基本威力8 コイン威力4
呼吸回数3につきマッチ威力+2
《Ⅰ・的中時》対象の精神力-8、自身の精神力+4、呼吸回数が6以上なら追加で2回までコイン再使用
『工房武器-槍-』 貫通 傲慢 コイン2 攻撃レベル+-0
基本威力6 コイン威力4
呼吸回数6以上ならコイン威力+1
《マッチ時》対象のコイン威力-1
《Ⅰ・的中時》次のターンに麻痺2を付与
《Ⅱ・的中時》次のターンに加算コイン弱化1を付与
『ぶる〜ん、ぶる〜ん...そこんならべ、全員叩き潰したる』打撃 嫉妬 コイン3 攻撃レベル+4 攻撃加重値7
基本威力4 コイン威力6 破壊不能コイン
破壊されたコインのダメージ+50%
《戦闘開始時》精神力を45へ変更
《Ⅰ・的中時》最後のコインのダメージ+10%、脆弱2を付与
《Ⅱ・的中時》最後のコインのダメージ+20%、脆弱3を付与
《Ⅲ・的中時》与えたダメージの30%のダメージを追加で与える、振動爆発3回発生し発生した回数だけ振動回数減少
『あっぶな!?』 回避 傲慢 防御レベル-2
基本威力4 コイン威力12
回避失敗時にも3回まで再使用
コイントスする度に精神力-4
《回避成功時》呼吸回数1を得る
《戦闘開始時》このターンこのスキルを使用していなかったならターン終了時に精神力+10、呼吸回数5増加。
パッシブ
『圧倒的強者』
この戦闘の間、『余裕』*2を得る
『瞬間呼吸法/油断』
ターン開始時、呼吸回数3を得る
戦闘開始時、呼吸回数だけ精神力回復
最も速度の高い敵とのマッチ敗北時、呼吸回数3減少
『幻想狩り』
E.G.Oスキルとマッチする時、マッチしているスキルのコインを全て破壊不能コインに変更し、破壊された時に与えるダメージ+100%
『兎の跳躍』
マッチ勝利時、次のターンにクイック1を得る
マッチ時、相手よりも速度が高いならマッチ威力+3
『素晴らしきなんでもない日』
ターン開始時、マイナス効果をランダムで3種類除去
『衝撃変換装置(時間加速)』
ターン終了時、このターン中に回避に成功していれば次のターンにクイック5を得る
『結構やるやん。ほな、死のか。』
混乱区画を超えた時、一度だけ混乱せず次のターンに特殊なスキルを使ってから混乱する
『■■■発現』
条件を満たした時■■■を発現する
パニックタイプ
『慢心に覆われた殺意』
士気低下効果(精神力-20以下)
・クイック2を得る
・マッチ勝利時、次のターンにクイック1を得る
・マッチ時、自身の速度の方が高いならマッチ力+3
パニック効果
・次のターンから2ターンの間、精神力を30で固定
・次のターンから3ターンの間、脆弱2、束縛1を得る
基本精神力回復条件
・マッチ勝利時、マッチ数+5増加
・敵討伐時、レベルに関係なく10増加
基本精神力減少条件
・マッチ敗北時、5減少
・アリスとのマッチ敗北時、8減少
特殊セリフ
ターン開始時に混乱している囚人がいる
「結構頑丈やん。どこの施術や?お高いんやろ〜?」
『工房武器-爪-』使用
「これの使い方はよぉ見とるでなあ。」
『工房武器-槍-』使用
「プレゼント!返品不可や、黙って受け取れ!」
『ぶる〜ん、ぶる〜ん...そこんならべ、全員叩き潰したる』をセット
「思ったよりやるみたいやな...ええわ、本気で潰したる。」
『ぶる〜ん、ぶる〜ん...そこんならべ、全員叩き潰したる』使用
「ははっ!やっぱええなぁこれぇ!」
アリスとのマッチ勝利時
「軽いし脆いし、不便な体やなぁ?あ、脆いんは元からか!」
アリスとのマッチ敗北時
「チャンスがあれば逃さず首噛み切れってオカンに教わらんかったか?そういや、もうろくに会話もできんかったな!」
アリス蘇生
「とりま一回。またサクっと殺したるでな、はよかかってこいや。」
そこからは...ただ、一方的だった。
最初の一撃で二人が死んだ。
ヒースクリフの首があらぬ方向に曲がった。
イサンが複数に分裂した。
引き裂かれ、すり潰され、爆ぜていく囚人たちの指揮を取ることしか出来ない私は、それでもただ自分のやれることをやった。
「かんりに、さま......もうし、わけ...」
「あ?もう終わりかいな。」
でも結局は変わらなくて、10分も経たないうちに花よりも血の匂いの方が強く、濃くなっていた。
大湖でファウストに言われたことが掘り起こされる。
『自爆ボタン』...頭の後ろのこれさえ押せば、黄金の枝と共に私の頭は吹き飛ぶ。
そうすれば...
メシャッ
〈ぁ......う、うわぁぁあぁ!!!?〉
「変なことせんといてな。あんまいじめんの好きやないねん。」
私の腕がチェシャに掴まれると、関節を無視した方向へ曲がった。
時計を回す時のもので慣れていたはずの苦痛。
囚人たちとの契約を通じて間接的に受けていたものなのに、直接受けるとまた違った。
「まあ殺すなんて野蛮なことせえへんし安心してのたうち回っどりゃええ。はは、芋虫みたいやな?うちにゃまだやらなかんことあるし、大人しくしとれよ。」
数分前と同じ顔をしているチェシャの手には...私たちが集めているものが握られていた。
〈黄金の...枝...?どうして、それを持って...〉
「フィクサーも依頼だけで動くような単細胞ちゃうでな。これを、こう!」
躊躇せず自身に突き刺した。
痛みとは別の、不快感を表す表情をしているとすぐ変化があった。
世界が歪む感覚。バスの中で感じたものと似たようで、でも違う...あの、木の洞から漂ってきていた。
「ほな行こか〜。」
〈ま、待って!何が起きて...〉
もがくことも許されず、その中に落とされた。中はどこまでも暗い闇で、重力が消えたかのようにゆっくりと落ちていく。
「......あの子、ちゃんと管理したってな。」
上から落ちてくる生暖かく鉄臭い塊と一緒に、深い闇に沈んだ。