Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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■-10 予期せぬ出会い 予期せぬ再開

 

 

 

萎縮し、怯えきった目が遠慮がちに前を向く。

 

「お...お初にお目にかかります。私は...」

 

「...『  』。」

 

「あ...わ、わかるんですね?やっぱりすごいな...あはは...」

 

この顔を見るのも何回目だろうか。

 

自分の立場をよく理解している従順な表情。

 

「無駄口は叩かないで。自分のやるべき事だけしていなさい。」

 

きっと何を言っても無駄なんでしょうね。

 

知っている。

 

全部、知っているから。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「───い」

 

「おい───」

 

 

 

 

 

 

 

───どこかの廊下───

 

 

 

「おい!さっさと起きろ!!」

 

〈う、うわぁぁっ!!?〉

 

聞きなれた怒声で飛び起きた。

 

冷たく無機質な床の感触とただ白いだけの通路の照明が眩しかった。

 

ヒースクリフと目が合う。それから、その他の囚人たちも私を見ていたようだった。

 

チェシャによって見るも無惨な姿にされたはずの囚人たち。でも今、私の目の前では何事も無かったかのように立っている。

 

そういえば、私の腕も折られたはず。なのに、元通りだ。

 

〈...みんな、無事?〉

 

「その無事ってのが手足全部くっついてるのを言ってんならそうなんだろうな?」

 

〈と、とりあえずみんな大丈夫なんだね?ここは...?なんだか見覚えがある廊下だけど......ん?〉

 

囚人たちよりも小さな影が私を覗き込んでいた。

 

ドンキホーテやシンクレアよりも小さな...

 

〈...えっと...?〉

 

「ようやくお目覚めになられましたか時計頭の方!その頭を目覚まし時計に変えたられたら如何なのでしょう!ジリリリ、ジリリリ。まだ寝ぼけておられるようならお貸ししましょうか?ちょうど今朝退社した者がいますからね、そこの部屋から取ってきてはどうでしょう!」

 

小柄でぼさぼさの髪をした人物は深いくまのある目を擦りながら時計を見ては見せつけるように足を小刻みに揺らしていた。

 

〈えっと、あなたはいった「あなたには聞いておりません!お喋りに招かれた訳でもないでしょうに!!」

 

〈???〉

 

「ダンテ、今はひとまず合わせてください。」

 

合わせる?なにを?

 

無言で尋ねてもファウストは答えない。かわりに目を閉じて深く息を吐いた。

 

〈......わかった。〉

 

なにもわからないけど、とりあえずわかっておこう。

 

「はい結構結構。素晴らしい言い訳をありがとうございます。ただでさえ孵りたての子猫みたいにあちこち歩き回る新人が来たというのに...」

 

子猫なのに...孵る?

 

「......あっ!!」

 

〈えっなに。〉

 

「この支部を案内しなければなりません。遅刻だ遅刻。日が暮れちまうよ。遅れた言葉はもう二度と元の文にゃ戻らないんだ。迷ってる暇なんてないよ!三歩進む間に一歩ずつ着いてくるんだ。ちょっとずつ後退しながらね!」

 

〈え、ちょ、ちょっと!?いきなり走らない、で......えぇ...?〉

 

廊下に静寂が戻った。

 

どこか気の毒な色が滲んだ12対の視線と...無言で、ただ体に白く太い尾を巻き付けているアリス。

 

〈......ねえ、本当になにこれ。というかここ...なんか覚えがあるような気がするんだけど......自我心道?〉

 

「はい。」

 

補足も何もない、ただの肯定。

 

まだゲゼルシャフトには接続できないようだ。

 

〈つまり、私たちはここでやるべきことがあるんだね?それはさっきの人と関係があることなの?やっぱり追いかけた方が...〉

 

「以前のヴァルプルギスの夜と同様に、私たちにもまた配役が与えられているようです。私たちリンバス・カンパニーは、ここ...旧L社N社支部にて、外部協力者の立場を与えられたようです。」

 

〈ロボトミーの?それって...そんなこと、実際にあるの?〉

 

「現にR社との定期契約によりウサギチームが派遣されることもありました。翼でもない企業が契約することは滅多にないことではありますが、それでも前例が無いという話ではありません。」

 

役割を与えられる自我心道って聞くとイサンの時を思い出す。あの時はいつかの旧九人会の日常を、囚人たちが再現しただけだったけど...確かにこれは、ヴァルプルギスの夜みたいだ。

 

それもつい直近の。

 

「どうやら我々は翼とも契約が結べるほどの素晴らしいフィクサーと扱われているようであるな!いやいや、事実その通りなのだが!しかし認められるというものは実に良いものである!!」

 

「実に成りし訳には無けれど。」

 

「錯覚。ね・ごは寝てから言うんだな。」

 

「そ、そこまではっきり言わなくても良いでは無いか...」

 

「ねえねえ、あなた達、どんな依頼を受けてきたの?」

 

「ほほう!我らの今までの冒険譚に興味がおありか!よかろうよかろ...そなた誰であるか?」

 

あのドンキホーテが真顔になった。

 

囚人たちの視線を一身に浴びているその人物は肩まで伸びている白髪を楽しそうに揺らしながらドンキホーテの言葉の続きを待っていた。

 

「冒険譚?あなた達冒険してきたの!?すごい!」

 

「...お、オホン...ならば聞かせてしんぜよう!そう、あれは荒れ狂う大波の中で「あら?あなた靴が汚れているわ!ほら脱いで脱いで。私が拭いてあげる!」

 

〈えっそれは待って!!〉

 

「あら...?どうしてかちかち言っているの?不思議なお顔...お口は?耳はある?目と鼻は?美味しいお茶もお菓子も食べれないなんて気の毒ね...」

 

〈...ちょ、ちょっと...待って。落ち着いて。あ、いや私が言っても意味ないのか。〉

 

「ねえあなた達、うさぎさんを見なかった?白くて、ぼさぼさで...あぁごめんなさい!うさぎさーん?どこー?もしかしてこの中じゃ...」

 

呆気にとられる私たちからすぐに興味を移したらしい人物は、不安げなしかし勇み足で収容室の中に入っていった。

 

まさに嵐だった。いきなり来て、好き放題に場を荒らして去って行った。

 

「はあ、はあ...!ちょ...どこ行ったんやあの子...!あぁちょっ...あんたら、例の外部提携先やろ?ここを、こう...青い目で白髪の子通らへんかった...!?」

 

〈...〉

 

「あ...?な、なんや全員、そないおっそろしい顔して...」

 

正直、仕方がなかったと思う。

 

だって目の前で息を整えている人物はついさっき私たちに奇襲をしかけてきた人物なんだから。

 

「......あーそっか。まだ自己紹介もしとらんかったな。うちはチェシャ言うねん。気軽にチェーちゃん呼んでくれてええよ?リンバス・カンパニーの...ダンテやな?ほんまに頭時計やん。それ今の時間さしとるん?」

 

〈...いや、私の頭はそういう機能ないよ。〉

 

「あっはっは!何言っとるかわからん!ああもう誰でもええわ。そこ!そこの以下にもできそうな兄ちゃん!」

 

「貴女の述べる特徴に合致した人物はたった今あの収容室へ入室した。」

 

「......はっ...ぇ、嘘!?あホンマや!おーい!アリスちゃん?アリスちゃーん!?出ておいで〜!!それほんま危ないヤツやから!ランクⅠ職員じゃどうにも...管理人!ちゃんと管理せぇや!」

 

『管理人』と言われ一瞬跳ねてしまったがすぐ私とは別の管理人がいるのだと理解した。

 

そしてその直後、扉が開く。

 

「とても素敵な子だったわ!撫でてあげると目をきらきらとさせて頭を擦り寄せてきたの!」

 

「そこはもう死んどけや。前代未聞すぎやろ。」

 

「...ねえ今、あの子のこと...アリスって...」

 

うん。それは私も聞いた。聞き間違えじゃなかった。

 

確かにチェシャはあの好奇心の塊のような女性を、アリスと呼んだ。

 

ロボトミーと関係しているアリス...人違いかもしれないけど、あの白い髪と同じ色の囚人がいた。

 

「まあ丁度ええしリンバス・カンパニーの皆々様も、一旦ここの案内するでついてきや〜。アリスちゃんはうちと手ぇ繋ごな。」

 

「うん!」

 

「あれ意外と素直。まあええことやね。行くでー?」

 

〈...私たち、ついて行っていいのかな?〉

 

「この場より抜けいだすよしの見つからぬ今、このかたにつきて情報を集むべからむと思いし。」

 

「まあ私たちの役割を順当にこなすなら必要なんじゃないですかね?なんとなくですけど、ここでも幻想体の前に駆り出されそうですし。」

 

〈そっか...そうだね。〉

 

なんの目的で私達をここに送り込んだのかは知らないけど...意識を失う前のチェシャからの言葉はまだ残っていた。

 

私たちを始末したいためにやった訳じゃないんだと思う。むしろ...手助けするような声。

 

一寸先は闇でも奈落じゃないなら、進める。

 

 

 

 

 

 

 

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