Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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■-13 真ん中の下層

 

 

 

 

 

───旧L社支部中央本部部門───

 

 

 

「とうちゃーく。真ん中の下層にようこそ〜。」

 

「真ん中の下層?それ...どっちなんですか?」

 

「真ん中にある下層やって。本社は確かもう一個下があるんやけど、支部はこの層で終わりやでな。まあ安心しいや。左右の部門は今動いとらんし動く予定もないで覚える手間はないで!良かったな!」

 

「それはなぜなのだ?これも人手不足が原因であろうか。」

 

「まあ大体そう。ちょい不慮の事故があってな。チーフ共も死んでもたし、もともとうちの支部には優先度低い部門やったし惰性でそのままんなっとる感じやな〜。」

 

「そうか...それは、あまり良くないことを思い出させたな...」

 

「えぇわえぇわ。こんなとこじゃ遅かれ早かれ死ぬんやし...あ、アリスちゃんとリンバス・カンパニーの人らは別な!さすがに!」

 

「生きてましたけどね...」

 

「クソ元気だったよな。」

 

「ん?今なんて?」

 

「な、なにごとぞ無し。ただ...チェシャ嬢の居振る舞いより左様な気配を微塵も感ぜず、皆がただ違和感を覚えたりしのみ...」

 

「そかそか。まあ病気とかやないし、コロっと行く時は行くで?虫みたいに...いやまあ、都市なんてそんなもんか!なはは...あ?...あっ。」

 

「突然変な声をあげてどうしたの?虫さんでも踏んだのかしら。」

 

「ここに虫おったらたぶんそれ普通の虫やないやろ...やなくて、作業入ったわ。全く...他のが空いとるやろ他のが...うわ遠っ。」

 

ずっと抱えていたタブレットを見て悪態を着いたチェシャは何も無かったかのように笑った。

 

僅かに見えてしまった光る液晶画面には「検証:『F-02-S44』の物理的抑圧」と書かれていた。

 

見なかったことにした。

 

「大先輩はちょいやらなかんこと増えてもうたからぱぱっと終わらしてくるわ。一旦休憩!以上!解散!って解散したらあかんやないかーい!」

 

「つ・べ言わずにさっさと行け。」

 

アリスを脇に抱えたままの良秀が蹴り出すように言ったそれにも笑うと、そのまま上層に上がって行った。

 

...良秀はアリスを離すつもりは無いのかな?

 

「ねえ蝶々さん?スノウを返してくれないかしら。」

 

「む・だ。」

 

「...?」

 

「......無理だ。」

 

「なにそれ!全く省略する意味ないじゃない!いいから返しなさいっ!」

 

「断る。」

 

「わ、私の意見は...」

 

図ってか図らずか、好奇心旺盛なアリスの注意は良秀と私たちのアリスが引いてくれた。

 

「ようやく発言に注意しなくてもいいって顔してるな。旦那。」

 

〈あ、うん。まあ私の声は聞こえないけど囚人たちには聞こえるから。〉

 

「配慮してくれて助かります。内容によっては私達も反応する可能性はありましたから。私はどちらかと言うと、ドンキホーテさんの方が不安でした。」

 

「失礼極まりないな!イシュメール君は一体当人をなんだと思っておるのだ!」

 

「それ、本気で聞いてます?」

 

囚人たちの喧騒をよそに、目を閉じているファウストに寄った。

 

〈なにかわかった?〉

 

「...はい。僅かに...情報も僅かですがゲゼルシャフトに接続できました。また、当現象自体によって得た考察もひとつ有ります。」

 

〈...聞かせて。〉

 

「はい。ダンテ、ここは自我心道ではありません。過去の外郭へ転移された現象と同じように、あの場から少し先の旧L社へ...リンバス・カンパニーが設立されるよりも少し前の時間軸へ移動しました。」

 

〈じゃあ...ここは過去の世界ってこと?じゃあなおさらどうすれば...〉

 

「時にダンテ、バタフライエフェクト、という単語をご存知でしょうか。」

 

〈バタ...え?〉

 

「過去のわずかなズレすらも...蝶の羽ばたきすらも未来では一つの竜巻になる、という喩えです。」

 

〈何となくわかったけど...つまり?〉

 

「この場では戻るために何かをするのではなく、ただ流れに沿うことをファウストは推奨します。時間軸や世界軸とされる概念には都市でもまだ研究が進んでいない分野です。元の時間軸に戻れたとしても似て非なる...パラレルワールドと呼ばれる時間軸や竜巻が発生した状態になる可能性があります。」

 

知らない現象の名前で捲し立てるように述べられたせいで何も分からなかったけど、とりあえず下手なことはしないようにするべきというのは分かった。

 

〈これ...囚人たちに伝えた方がいいのかな?〉

 

「ダンテに判断を任せます。ただ、リンバス・カンパニーの存在が受け入れられているという点です。純粋な過去の時間軸ではなく、ある程度の改変がされた時間軸の可能性もあります。」

 

〈...やめとこうか。〉

 

ヒースクリフとかロージャとかドンキホーテとか......具体的に何をするのかは分からないけど、何となく嫌な予感がした。

 

さすがに私が想像する最悪のパターンにはならないと思うけど...

 

〈じゃあ私たちはただ、なるようになれって感じ?〉

 

「まあ...あえて近しい表情をするのであればそうでしょう。」

 

〈いつも通り過ぎて、むしろ───〉

 

『安心した』と言いかけて、ファウストの後方にある二つの人影に視線が固定された。

 

「ダンテ?」

 

ファウストの少し間の抜けた声。

 

まだ完全にゲゼルシャフトと接続しきれていない証明とはうらはらに、二人はまるで人形のように無表情で佇んでいた。

 

ドンキホーテよりは大きく、シンクレアより少しだけ小さい。率直に、不気味だった。

 

〈...誰?〉

 

「ここの職員だろ?なんにも言わねぇってのは気味悪ぃけど。」

 

「ふ、双子...でしょうか?すごくそっくりで...」

 

シンクレアがおずおずお姿勢を低くして、中性的なその二人に声をかけるべきか迷うように覗き込んだ時だった。

 

「人だと思ったなら挨拶するべきだね。」

 

「人形だと思ったなら見世物料を支払うべきだね。」

 

「え...は、はい!?」

 

「「どっちか決まった?」」

 

「えっ、じゃ、じゃあ...こんにちわ...?こ、これでい...うわぁぁあっ!?」

 

軽く頭を下げてこっちに戻ろうとしたシンクレアが...連行されていった。

 

「それだけ?」

 

「それだけじゃだめだめ。」

 

「えっちょ...だ、ダンテさん...!助けてください...!」

 

「まずは握手。」

「握手しよう。」

 

「「さあ握手、握手。」」

 

「きゅ、急になんですか!う、腕が千切れる!」

 

〈...わぁ...〉

 

シンクレアが二人に揉みくちゃにされてる...

 

「それから名前と」

「用件。」

 

「「それが礼儀ってものだろ。」」

 

「な...中々、オリジヌァリティに溢れている礼儀であるな...」

 

「ドンキが引いてる...!?」

 

「先程まで同行していたチェシャという楽観主義の職員の言い振る舞いからして、既にリンバス・カンパニーの名は周知されていると認識していたが?」

 

「知ってる。」

 

「アブノーマリティの鎮圧用。」

 

「ウサギも食べない苦い草。」

 

「ドードーなら喜んで持っていくよ。」

 

「セイウチならもっと喜ぶさ。」

 

「...案の定コイツらもぱあだな。」

 

「ぱあ?」

 

「じゃあチョキだ。」

 

「......オレはもう何も言わねぇ。」

 

じゃんけんを始めた二人にうんざりしたようにがしがしと後頭部を掻いたあと、本当に何も言わなくなった。

 

「ひ、ヒースクリフさん!助けてくださいよ!見捨てるつもり...ゔっ!?」

 

もう用はないとばかりにシンクレアが放り出された。

 

〈...大丈夫?〉

 

「まあ、はい...皆さんが助けてくれなかった割には...」

 

〈...それはごめん。〉

 

二人の興味が今度はアリス...囚人じゃない方に向いたらしく、囚人のアリスを奪い返そうとするアリスとそれを防ぐ良秀を囲んだ。

 

「えっ今度はこっち?」

 

「リンバス・カンパニーは知っている。」

 

「でもこっちは知らない。」

 

「こっち?」

 

「あっち。」

 

「どっち。」

 

「そっち。」

 

交互に良秀に抱えられているアリスとそれを奪おうとするアリスを指さしている。

 

「...私?あぁごめんなさい。そういえば私の資料なんてものは無いですものね。アリスよ。」

 

スーツ姿なのにまるでドレスの裾を摘むような芝居がかったお辞儀。

 

それから順に抱き着いた。

 

二人は困惑するように顔を見合せていた。

 

そしてその視線は囚人のアリスに移る。

 

「同じ名前だ。」

 

「双子?」

 

「でも違うよ。殻と白身ぐらい。」

 

それはそこまで違うものなのかな...?

 

「どっちかと言うなら、お───」

 

気の毒そうな顔で何かを言いかけたところでエレベーターが動いた。

 

そこから、頭頂部に青いバラがささってトサカのようになっているチェシャが出てきた。

 

...ん?

 

「お、なんや戻ってきとったんか。うちが戻るまで相手しといてくれてありがとさん。これで今動いとるとこの案内は終わりやけど、もう一人顔合わせさせなかん人おるし、みんな行こかー。」

 

「ま、待ってください!せめて説明してください!なんですか頭のそれ!?」

 

「まだ行ったらだめだよ。」

 

「まだ全然話してない。」

 

「うるせうるせ!ただでさえ時間かけすぎとんねんはよ終わらせたいんやうちは!」

 

「無関心は良くない。」

 

「注意を怠るのも。」

 

「そのせいで、牡蠣たちはあんな悲惨な末路を...」

 

「『F-02-18』が子供食い散らかされてブチギレた話やろ。何回目やそれしかないんか。しゃーないやろ美味いんやから。」

 

〈...もしかしその悲惨な末路の原因って...〉

 

「同じ話しかできひんなら立派なコメディアンにはなれへんぞ。」

 

「まるで自分が面・コのような言い草だな。」

 

「チェーちゃんの発言にいちいち目くじら立てない方が精神衛生上良いよ...あとその頭に刺さってるやつ、なに?」

 

「これ?なんかさっき作業したら貰えたわ。なんやこれ邪魔くせ。」

 

あっさり引き抜いて放り捨てた直後...

 

ブーッ!ブーッ!

 

けたたましい警報音がタブレットから鳴り響いた。

 

「んぁ?...『F-04-03-04』が脱走してもうとるやん。なんでいきなり...まあええわ。あとは人探しやし...その顔見るに、お前らに鎮圧指示来たやろ。」

 

チェシャがお見通しだぞ、とでもいいたげな顔で見る二人は何も言わずに槍型のE.G.Oを持って走っていった。

 

「え?無視?嘘やんあんな構ってちゃんしとったのに...あぁもうええわ。」

 

〈...なんかあのシリアルナンバー、どこかで聞いたことがあるんだよな...〉

 

「『F-04-02-03』は黒檀女王の林檎です。」

 

〈...あぁ、あの。グレゴールの時の、旧L社支部にいた幻想体だね?〉

 

確かに幻想体を他支部に出しているとは言っていたけど、あれが、ここで生まれたものだったんだ。

 

 

 

 

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