Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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■-14 女王の謁見

 

 

 

 

「...さっきの双子、これまた濃い人でしたね。」

 

〈...うん。〉

 

シンクレアのうんざりとした...いや、疲れきった声に小さく肯定して見せた。

 

「双子?...あぁ、あいつら血の繋がりあらへんよ。」

 

〈え?〉

「はい?」

 

「入社時期こそ同じやったけど、ただのそっくりさんらしいで。意気投合してああなっとるだけで。あ、名前はトゥーディーとトゥーダムな。どっちがどっちかは知らへんけど大体いつも一緒やし変わらん変わらん。」

 

「......もう何も言いません。」

 

「おうそれがええ。とりま...中央本部はこんなもんか?あとは残り二人と顔合わせしてもらいたいもんやけど...お。」

 

視線の先には、私が目を覚まして最初に会話...会話と言うには一方的だったけど...をした職員が走って、私たちのそばを通り過ぎて行った。

 

「あ!うさぎさん!」

 

「おーい。うち、今誰かさんが放棄した仕事やっとるとこなんやけど〜。それも踏まえて言うことあれへんか〜?」

 

「はい?なんです?今私は忙しいんです。『F-01-S02』の作業をしながら『F-01-36』のレポートを作成して来月の幻想体管理表をまとめないといけないんです。一々効率の悪いお喋りはうんざり!卵が転げ出さないかだけ見ていればいいんですよ!」

 

「ありがとうの一言くらい言えんのかぁ〜ん?」

 

「その五文字の空白で私が何歩歩けると思います?いえいえ結構結構。裏路地の野良猫だろうが巣の飼い猫でしょうがいかがわしい組織の品種改良でしょうがどれでもどうでもいいですよ。邪魔だけは!絶っっ対に!しないでください!」

 

足を小刻みに揺らし、首から下げた懐中時計を何度も威嚇するようにカチカチと開閉させて捲し立てたあとは走って行った。

 

相変わらず嵐みたいだ。

 

「あぁうさぎさん待って!」

 

「アリスちゃんはせっかちランディになんで気になっとるん?こっちのアリスちゃんのが可愛ええやろ?」

 

「さ・る。」

 

「......?」

 

「あっ、さ、『触るな』です。」

 

「二文字ぐらい略さずに言わん?はぁ...オカンに嫌われてもたか。」

 

「...誰・オ。」

 

「あ、今のは『誰がオカンだ』やな?」

 

「い、今のは『誰に向かってオカンと言っているテメェを産んだ覚えはないこの能天気野良猫野郎』です。」

 

「トラップすぎやろ!最後の言葉どこ消えとんねん!」

 

「ハッ、万・短の領域に踏み込むことはできないようだな。嬉しいよおりゃあ。」

 

「あの...良秀?そろそろ離してほしいなー...なんて...」

 

「む・り。」

 

良秀の脇で手足を宙でぷらぷら揺らしながらの要求は虚しくも却下されたようだ。

 

「きゅひぃん...」

 

「なんか、今までで一番情けない声が聞こえた気がしますね。」

 

事実、今まで...文字通り、バスでのこの都市めぐりを初めてから初めて聞いたような声だった。

 

いつもは怒っているか笑っているかぐらいだけど...今は悲痛な喉を鳴らす音と共にささやかな抵抗として良秀の脇腹に尻尾をバシバシと叩き付けている。

 

でも楽しそうだった。

 

それなら私たちがとやかく言うことでは無いんじゃないかな。

 

「......ぁ、忘れとった。そういや、これで職員の位置わかるやん。いやー便利便利。」

 

「その便利なのを忘れてたってどういうこと?」

 

「いやぁ普段誰か探すみたいなことあらへんもんで......アリスちゃん近い。画面隠れてもうとる。」

 

チェシャが操作するタブレットを覗き込むアリスを見て呆れたようにため息を着くアリス...

 

「なにこれ!私こんなの貰ってない!」

 

「そりゃまだ入社初日やん...?あっ、反対や。はい回れ右〜。」

 

「......つくづく手際が悪いな。これが支部とは言え翼の職員の姿か?」

 

「そんなに怒らんといてぇや〜。正直な話、説明だけで一日の仕事終わるんなら自分らも本望ちゃうか?」

 

「よく分かってんじゃねぇか。」

 

〈よく分からないで?〉

 

そうして案内されて行った場所は...

 

 

 

 

 

 

───旧L社支部福祉部門───

 

 

深い藍色の空間だった。

 

照明はまばらに点いていて話の通りに今は動いていないらしい。

 

「ほい行くで行くで。ん?突っ立ってなにやっとん。」

 

「いや...」

 

「かかる場所は立入いさめらる区画と懸念せり。」

 

「まあ禁止やな。」

 

〈えっ。〉

 

「自分から誘導しておいて、私たちを口封じとかしないですよね...」

 

「管理人からは『いい感じで!』とかふざけたこと抜かされとるしこれがうちの『いい感じ』や。」

 

「...心中察します。」

 

「疑って悪かったよ。チェシャの姐さん。」

 

リンバス・カンパニー以外にも勤めていた経験があるのか、イシュメールとグレゴールが心の底から気遣うような声で目を伏せた。

 

グレゴールに至ってはもはや尊敬の念までこもってた気がする。

 

「おさらいがてら、教育部門チーフがさっきのランディ。情報部門はハートン。安全部門はトバム。中央本部部門はディーとダムの自認双子。んで、最後の一人は指揮部門やねん。色々あって多忙なお人やけど...」

 

「なんかかしこまった言い方してるけど、偉い人なの?」

 

「偉いっちゅうかなんちゅうか...なんせこの支部が稼働始めてからほんまに最初っからおった人やし。うちも古株やけど言うて五日目ぐらいから入った人間やし...」

 

「...人間...?」

 

「おいなんやその疑問符。うちが人間やない言いたいんか?ほんまこっちのアリスちゃんは生意気やな。親の顔が見て見たいわ。なはは!」

 

「あ...あはは...」

 

慣れたように雑談しながらついていくと不意に、前方の収容室が開いた。

 

私の前にいたウーティスが腰のサーベルに手を伸ばしているとその扉からは白いマントのような物を羽織った女が出てきた。

 

目の下には深いくまがあって物憂げな目をしているけど...私でもわかるくらいの重圧があって息苦しさまで覚えた。

 

「......あ、チェシャ、最終確認は終わり。明日には他支部に搬送できそうだよ。そちらはリンバス・カンパニーの方々だね?なら後ろのその子は...新入りだね?」

 

「その通り!」

 

「案内はランディに任せたはずだけど...あぁ、置いていかれちゃったか。」

 

「おぉ、さすが女王様は話が早いで〜!」

 

〈...女王様?〉

 

私の疑問はもっともだったらしく、他の囚人たちも何人か目を剥いていた。

 

血縁的な意味じゃないと思いたい。

 

「や、やめてよチェシャ...その名前で呼ぶのはおよしって何度言えばわかるの?」

 

「しゃーないやろ。ほんまもんの初期職員でALEPHクラス単独鎮圧した実績と指揮部門のチーフやっとるんやしクィーンの名に恥じん活躍残しとるやん!...役に立たん管理人と変わらへん?」

 

「...女王様!」

 

「新人の子まで...」

 

クィーンって名前なのかな...?それは確かに...女王様って感じだ。

 

でも肝心の女王様は、アリスにハグされて行き場のない手のひらで顔を覆って茹でりんごになっているけど...?

 

「なんか...い、今までの方たちを思うと、すごく落ち着いている方ですね...」

 

「ちょっと恥ずかしがり屋さんなんよな。それにこの人も缶詰なんぞに頼らずバリバリやってきとる人やし。」

 

「あはは...他の子たちは、少しね...」

 

「少しどころじゃなかったけどな。」

 

「あは...まあね...」

 

ヒースクリフの突き刺すような物言いも笑って流され、毒気が抜かれた...というより、少しだけ嬉しそうな感じまでした気がする。

 

ようやくまともに対話できる人が出たからかな?

 

「短い間だけどお願いするよ。そちらが管理人のダンテだね。」

 

〈あっ、う、うん。よろしく。〉

 

「ダンテもまた『よろしく』と答えざり。」

 

「他支部での評判は聞いているよ。対アブノーマリティのエキスパートって噂されてるよ。」

 

これがファウストの言っていた改変?

 

確かに、旧L社支部やその他の場所で幻想体と戦ってきたのは事実ではあるんだけど。

 

ここが自我心道でも過去でもないって可能性が思考の邪魔をしてくるけど...何も言わない方がいいだろうね。

 

「うむ!我々が来たからにはどのようなアブノーマリティであろうといかなる犠牲も出さないことを誓おう!」

 

「それは頼もしい。チェシャ、これでもう案内は終わってるかな?」

 

「ちゃんとチーフ全員と顔合わせしとりまーす!」

 

「皆さん疲れたでしょう。今日の業務は終わりですので、ゆっくりお休み下さい。」

 

「えぇ!?もう終わり!?」

 

「ここはどこの支部よりも暇な自負あるでな。たまに死ぬこと除けば超絶ホワイト。」

 

こうして長い一日が終わった。

 

...いや待って。私たち...この業務が終わったらどうなるんだ?まさか元いた場所に戻るとか...

 

不思議と、段々視界がぼやけてくる。

 

世界が...遠く...

 

 

 

 

 

 

 

───旧L社支部指揮部門───

 

 

「ほいおはよーさん。配置決まったで伝達してくなー。腕章渡してくでその部門で頑張るんやで。」

 

私の心配を見通していたかのように次の瞬間には埃一つ着いていない、まるで洗濯したような身奇麗な格好で立っていた。

 

「待てよ。オレたちバラけんのか?」

 

「えっ?なんか悪いんか?別に離れたら死ぬわけやないやろ?だったら平気や!ダンテも同じ気持ちよな?」

 

〈...え?〉

 

「ほら!」

 

「言ってねぇよ!」

 

「管理人さん?どうかしましたか?」

 

〈いや...私たち...いつ休んだ...?〉

 

「はい?」

 

「なんかダンテはんがカチコチ言うとるけどどした?」

 

「あ、いえ...ただ、昨日の疲れが残っているようです。」

 

囚人たちは何事も無かったかのように集まっていて、時計の針は午前の八時半を指していた。

 

今はとりあえず合わせることにした。確認するのは後でいい。

 

問題は囚人全員が私のそばにいなくなるということの方だった。

 

〈それ...大丈夫なの?〉

 

「好ましい事態ではありませんが、拒絶することの程でもないでしょう。いつか、囚人たちが個別に別れる可能性もありますから。」

 

ファウストが言うなら...問題は無いのかな?

 

〈なら、断らないかな。〉

 

「ほら!」

 

「いや今のは......あ?マジで言ってんな。」

 

「マジ!?」

 

「なんでテメェが驚いてんだよ!」

 

 

 

 

 

 

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