Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
おずおずと小さな二つの目が覗き込んでくる。
「...普段はなにされてるんですか?」
「なにも。ただ待っている。」
「何を?」
「図々しい人間程度に話す道理は無い。黙っていなさい。」
「む...そんな言い方しなくても良くないですか?私は来たくて来ているんです。」
「殊更タチが悪い。求めていないのに押し付けがましい。誰が来いと言った?」
いつからか私の周囲に住み着く人間が現れ、次第に増えて。
最初は気にもとめなかったけど今思えば失敗だったかもしれない。
「...なに馴れ馴れしく話しかけているんだ。身の程を知りなさい。」
「えぇ今更?でも返事してくれるじゃないですか?」
「...はあ。」
...本当に、人間なんて関わるべきじゃなかった。
こんな思いをするなら...
頭が痛い。
金属と黄金の枝と、あと脳みそぐらいしか入っていないはずの頭がズキズキと痛んだような気がした。
二回目。この旧L社支部に来た直後も知らない二人の会話だけが頭の中に響いてきている。
ここは...あそこは...私は、誰を...
───旧L社支部指揮部門───
「ダンテ?聞こえてる?ていうか生きてる?」
〈...えっ?〉
毛深い前足が私の足を叩いていた。
それと同時にさっきの頭痛も耳鳴りと共に遠くなって、もう思い出せなくなった。
「なんかさっきから上の空だけどどうかした?さっきのチェーちゃんの話も挙動不審だったし...」
「こ・しか?」
「ふふ、ダンテ様はきっと、僕の家でも直せる人は少ないと思いますけどね?」
〈こ、故障じゃない。大丈夫。〉
この指揮部門に配置されたのは私と、良秀、ホンル、アリスの四人。
私は指揮と時計を回すことしか出来ないからいいんだけど、残りの三人はここでいいのかな...?
「ロボトミー・コーポレーションの職員と同じことはさせませんのでご安心ください。」
この部門のチーフであるクィーンが先日と同じような憂鬱そうな瞳のまま、表情だけわずかに柔らかくした。
「チェシャから聞いてるとは思いますが...他にも、近頃この支部に出没するようになった奇妙な...アブノーマリティとも試練ともつかない存在の排除があなた方リンバス・カンパニーの業務です。アブノーマリティの鎮圧もですがね。」
そうだ。
そういえばそういう話だった。
「何も無い時はご自由にどうぞ。しかし収容室には近付かないようにお願いいたします。」
それだけ伝えるとクィーンは作業かそれとも別部門の確認か、このメインルームから出ていった。
そこでようやく、疑問を口にできた。
〈...私たちって昨日、業務が終わったらどうしたっけ?〉
「ん?急にどうしたの...?昨日はバスに戻っていつもみたいに...あれ?でもここって───」
「あ〜、ダンテ様が仰ってることがわかった気がします。確かに変ですね?バスに戻った記憶はあるんですけど、思い出そうとするほど霞んで見えなくなるんです。」
「記・消...いや、記・挿か。なんにせよ不快だな。」
〈私が言うまでわからなかったの?〉
「そうみたいですね。どうしてダンテ様だけ覚えていたんでしょうか?」
どうして私だけ覚えているのか。そんなこと...何回もあった。
K社の時も、キャサリンも。
ここまで覚えていられるなら、記憶喪失にもならないで欲しかったと何度思っただろうか。
全てに共通して言えることは...
〈...わからない。全く、なんにも。〉
分からないことだけは分かっていた。
「はあ...ク・役。」
「なあ前々から思っとったんやけど、その略し方はなんなん?」
〈本当に今更......ん?〉
「あ〜、チェシャさんいらしてたんですね。アリスさんも一緒でどうされたんですか?」
「まあ...ちょっとな。」
後ろに青と白のワンピースのようなE.G.Oを着たアリスを待たせているチェシャはおもむろに毛を逆立ててアリスを威嚇するアリスを抱き上げた。
「えっ。な、なに?やめ...離して...???」
「手のひら返すみたいで申し訳ないんやけど、こっちのアリスちゃん借りてくでな〜。」
「えっ!?なんで!?どうして!?」
「会いたかったわスノウ!」
「スノウじゃねぇつってんだろ!!やめろ!離せオイ!」
〈...助けた方がいいかな?〉
「うーん...でもアリスさん、楽しそうですよ?」
〈楽しそう...?〉
楽しそうにはとても...
「私にそいつを近付けないで!絶対!おい抱っこさせんな!」
「ふわふわ...とても丁寧にお手入れされてるのね!誰がしてるの?仲良しの靴屋さん?」
「抱きつくな!尻尾触んな!」
...見えないけど。
「てことで借りるな〜。」
「わかった!わかったからせめて離して!それが無理ならチェーちゃんでいいから!」
「なんや人のこと余り物みたいに言いおって。」
「こいつだけはやだ!なんかよくわかんないけど絶対やだぁぁぁぁ......」
〈...〉
メインルーム内を歩き回る緩やかな喧騒の中...
「さ・わが消えて静かになったな。」
「静かになっちゃって少し寂しいですね〜。」
真逆の感想を並べる二人と私だけが残された。
「...ねぇ、なんで私を拉致したわけ?」
「拉致って...人聞き悪いなぁ。ただこっちのアリスちゃんが『スノウと一緒がいいわ!』ってなぁ。めっちゃ暇やし...あ、チーフには許可とっとるでな?」
「せめて独断であって欲しかった。」
「難しい顔してたら幸せが逃げてっちゃうわよ!」
「逃げたいのは私なんだけど。」
...このアリス、本当に誰なんだろう。
アリスは私の今の名前だけど...そういえばこの名前、チェーちゃんの昔の友達って言ってた気がする。
じゃあこっちがオリジナル?
友達って...他支部だったんだ...それもそうだよね。チェーちゃん、あの支部で仲良い人なんて、私ぐらい...
『なあ...なにかあったらすぐ先輩をオレに押し付けるのやめてくれないか...?これ以上は、オレの胃が...』
『薬なら口からだろうが腹からだろうが直接ぶち込んでやるよ。』
『それなんの手術だよ...』
...私ぐらい?
『...いーねー...それ、とっても楽そう...』
『テメェはここの下行きゃやってくれるだろうな。腹に穴空くだろうが。』
『先輩たちが何言ってるかわかんないけど、怖いこと言ってるのはわかる。■■ちゃん先輩、■■■先輩のこと超嫌ってるし。』
「...?」
「あら?どうしたの?」
まただ。
最近、昔のことを思い出すと胸が苦しくなって頭痛がするようになってる。
確かにいい思い出はあんまりなかったけど...でも思い出すだけでこんなに拒絶反応が出るわけないし。
「...気のせいでしょ。」
ただ、どうしようもなく苦しい。
詰まってるんじゃなくて逆...何かが空いてしまってそのままになっているような...
「なんや体調不良か?万が一にでも死なれたら寝覚め悪いし、無茶はせんといてな。ここブラック職場やないし。まあ鉄臭さと全体的に赤みはあるけどな!なはは!」
「あはは!チェーちゃん面白〜い!ちなみにどういうこと?鉄臭くなんてないわよ?」
「恥ずいから説明させんでくれる?いやあの...ほんま。」
「...ふふっ。」
「......不機嫌なアリスちゃんがわろたで今。」
「えぇ!笑ったわ!」
「は、わ、笑ってないし。ただ呆れただけ...あぁもう尻尾触んな!!」
ビーッビーッ!ビーッビーッ!
「ひゃっ!?な、なに...!?」
「なんか脱走したみたいやね。まあすぐ慣れるわ。そっちのアリスちゃんなんて微動だにしとらんし。」
「え、えぇ!?スノウはやっぱり凄いわ...!」
うんまあ...聞き慣れてるし...
「脱走じゃなさそうだよ。ほらあれ。」
前足で指し示した先...どういうわけか、大罪が闊歩していた。堂々と、ここにいるのが当たり前のように。
「うわ...あれやあれ。最近出るようになったヤツら。最初は試練かなんかやと思ったけど、そんな感じはせぇへんし。」
憤怒、暴食、憂鬱...2型までいて地味に面倒だ。
「ほな...お手並み拝見と行こか?あ、さすがにうちも手伝うでな?アリスちゃんはそこで待機。死にたないやろ。」
「確かに死にたくは無いけど舐めすぎ。」
「やからそっちやな...今のわざとやろ!?」
...なんか、いいかも。
空っぽのところが暖かい気がする。
それより他のところも気になるな。ダンテと別れちゃってるし...いや、今更この程度、いなくても平気か。
「数だけは多いから気を付けてね。」
「誰に向かって言うとるんや...って、うちの力見せとらんかったなそういや。」
『HP弾・MP弾』
ステージ開始時、10保有して開始する
ターン終了時、体力が最大値の50%以下の味方の体力を1消費して最大値の10%回復させる
ターン終了時、精神力が5以下の味方の精神力を1消費して20回復させる