Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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■-22 観測3

 

 

 

 

 

〈...とりあえず参加するのはいいんだけど...具体的に何をやればいいんだろう。〉

 

「それを考えるのがお前の仕事だろう。」

 

〈まあそれはそうなんだけど...〉

 

『何もしなくていい!』

 

『何かしてもらわないと!』

 

「うぅ...第一、何で私を引き止めたのさ...」

 

アリスはテーブルに身を乗り出してカップの中身を舐めていた。

 

〈そりゃこの流れに関連のある人物なんだし、私の...管理人の傍に居てもらわないと。〉

 

「...はあ。で、茶会って何するの。まさかこうしてお茶を飲んでお菓子でもつまみながらおしゃべりすることじゃないでしょ。」

 

『その通り!』

 

『騒いで!』

 

『飲んで!』

 

『食べて!』

 

『『たくさんお喋りするんだよ!』』

 

「興・ざ。」

 

人形が自分の口部分に指を添え、無理やり口角をあげた。

 

『茶会には笑顔が必要!』

 

『あと会話も忘れないで。』

 

『こらこら秘密を忘れるな!』

 

〈秘密?〉

 

『でもまずは自己紹介。』

 

『当然だろ。僕も彼も君も彼女も私も、だぁれも知らないじゃないか。』

 

〈...ダンテ。〉

 

横に視線を向けて続くように視線で懇願した。

 

二つのため息が重なった。

 

「良秀。」

 

「...アリス。」

 

二人の返事を聞いた人形たちは不自然に、ぴたと動きを止めた。

 

『...嘘つき。』

 

『...嘘つき。』

 

〈えっ。〉

 

ボタンの目がやけに冷たかった。

 

『まさか、自分の名前も忘れたの?』

 

『なんだって!?それは大変だ!さあさあこれをお食べ!』

 

二人に差し出された皿には茶会という言葉には似つかわしくないものが多数あった。

 

良秀の方にはおおよそ一般的な家庭で出るような料理があって...

 

アリスには血の滴る何かの生肉、焼いた魚...

 

〈えっなにこれ。〉

 

スープ...なのか?なんか紫色だし、じゃがいもらしきものがそのまま入ってたり、ウィンナーもあるけど...なに、この...甘ったるい匂い...

 

「...悪・趣。」

 

「う、うあぁぁあ...も、もうそれは...それだけやめてぇ...勘弁してぇ...」

 

〈...これが何か知ってるの?〉

 

顔を顰めて放り捨てる良秀と前脚で頭を抑えて悶絶しているアリス...

 

『やっぱりガツンと来るみたいだ!』

 

『素晴らしいチョイス!あ、おかわりいかが?』

 

「い・ら...!」

 

「いらないぃぃ...」

 

肉と魚を食べながら前脚でスープだけ遠く、遠くへと追いやっていた。

 

〈でも食べはするんだ...〉

 

『まだまだあるからどうぞ!』

 

『全部思い出して、かち割れて、吐き戻しちゃいましょ〜!』

 

〈...早く終わらせないと。〉

 

でもどうやって?

 

幻想体本人がただの茶会を望んでいるようにも見える。

 

この二人も...なにかの条件でクィーンとトバムのように消えるのだろうか?

 

...なんか、ねじれの解決にも似ている気がする。

 

他の場所であった幻想体やねじれと違って悪意も害意もないのが余計に混乱しそう。

 

「ずず...黙ってろ。そしたら少しはマシな茶会を演出してやる。」

 

『なんだって!?』

 

『すぐに黙ろう!うん!今すぐ!』

 

二つの人形はお互いの口に皿を詰め込み始めた。

 

「ふう...静かになったな。」

 

「うあぁぅ...疲れた...ほんとに疲れた...あの三人、これ何回もやってたのぉ...?」

 

〈まあ今は幻想体だからこれと同じかは分からないけどね。〉

 

「おい、と・ヅ。早くしろ。根元まで掘り返したそれがいいモンとは限らないんだ。俺も、コイツも。」

 

〈...うん。〉

 

一方的に踏み込んでくるなら、こっちからも踏み込んでみよう。

 

まずは...あの糸だ。

 

どこに繋がって、誰が操ってるんだろう。

 

〈......手だ。〉

 

当然ではあるのかもしれない。

 

人形が糸で吊られているなら、誰かが持っているはずなんだから。

 

〈...二人のその糸は?〉

 

『...?』

 

『...?』

 

「チッ...喋れ。」

 

良秀の許可で二人は皿を噛み砕いた。

 

『糸?』

 

『なんだねそれは。』

 

〈自覚は無い...そうか。〉

 

『糸に吊られるだなんてまるで操り人形じゃないか!』

 

『まるでじゃない!そのものさ!』

 

『でも君たちだって吊られているじゃないか!』

 

『特にその二人は雁字搦め!』

 

良秀とアリスの表情から感情という色が抜け落ちた。

 

「...テメェらには、この糸がどう見えてやがる。」

 

「雁字搦め...私が?」

 

『可哀想に。』

 

『迷子が見つかるように、巻き付けられたみたいだ。』

 

良秀の持っていたカップが粉々に砕け、ぬるい茶が散乱した。

 

「これ以上つ・べ言うようならその口を縫い付ける。」

 

『おっと失礼!』

 

『ゲストになんて無礼!』

 

二人して互いの頭を殴っている。

 

〈...君たちも、縛り付けられているんじゃないのか?その空席に。〉

 

時間が止まったように、二体の動きが止まった。

 

気味の悪い静寂。

 

〈まるで誰かそこに居るように振舞っているけど、本当はいないんでしょ?元々いないのか、居なくなったのかは知らないけど...〉

 

ぴし、とカップの一つがひび割れ、明らかにその二体の纏う空気が変わった。

 

『帰ってくるよ。』

 

『だってそう言ってたんだから。』

 

...たぶん、当たりだ。

 

要領を得ない話し方から変化した。

 

「ふん...中・席の奴は死んだか。」

 

『死んでない。』

 

『帰ってきてないだけさ。』

 

「それでその死人が戻ってくるまでは、永遠とくだらない茶会を繰り返すわけか。はっ、チープだな。そいつも浮かばれんだろうな?」

 

『浮かばれない?』

 

『どうして?』

 

二体の人形が、かくり、と同時に首を傾けた。

 

『だってあの子は、また来るって言った。』

 

『お茶を淹れて待っててって。』

 

『だから待ってるだけ。』

 

『ずっと。ずぅっと。』

 

ぱき、ぱき、と。

 

空席に置かれていたティーカップへ次々と亀裂が走っていく。

 

〈......いつから?〉

 

『昨日!』

 

『一昨日!』

 

『先週!』

 

『去年!』

 

『十年前!』

 

『『さあ、いつだったかな?』』

 

「つまらんな。」

 

「......」

 

『君も待ってるんだろ?』

 

『だからそんなに糸だらけなんだ。』

 

『帰ってこないものを。』

 

『もう居ないものを。』

 

『君は待たせているんだろ?』

 

『大事に大事にしまった箪笥の奥。』

 

『陽の光がないじめじめ空間に!』

 

「黙れ。」

 

中身のあるカップが帽子の人形に投げつけられたけど、二体の人形は怒りもしなかった。

 

ただ、空席だけを見ていた。

 

『ほら。』

 

『また壊れた。』

 

『だから必要なんだよ。』

 

『何度でも繰り返す茶会が。』

 

『忘れないために。』

 

〈どうしてそう、過剰なまで忘れることを恐れているんだ?〉

 

二体のボタンの目が、ゆっくりこちらを向いた。

 

『誰も覚えてないなら。』

 

『最初から居なかったのと同じじゃないか。』

 

「...やめて。」

 

〈アリス?〉

 

『君たちにだって忘れてしまった人がいるんだろう?その人達は今、生きているのかな?』

 

「やめてって!やめてよ!」

 

〈アリス?急にどうし...〉

 

一瞬、アリスにも糸が見えた。

 

複雑にアリスにまとわりついたそれは、何重にも首に巻きついていた。

 

私が席を立とうとするのと同時に、丸机が両断された。

 

「付き合いきれん。く・茶は終わりだ。文句ないな時計ヅラ。」

 

火のついたタバコをティーポットに落とした良秀は再びアリスを抱き上げた。

 

『あーあ。また終わっちゃった。』

 

『準備しないと。』

 

あっさりとしていて、激昂する様子もなければ悲愴に暮れる様子もなかったのは幸いだった。

 

日常のように場を片付け、また新たなテーブルを用意していたから。

 

〈...忘れないようにする...っていうのは、この都市では難しいことだけど、素晴らしいことだとは思う。〉

 

対話だけで、続けてみる。

 

〈でもそれは、ただ過去に引き寄せられてるだけなのかもしれない。同じところに留まっている間も、都市は...世界はずっと動いているから。〉

 

『なら、引き寄せられたまま奈落に落ちてしまおう。』

 

『奈落の底でいつまでも続く何でもない日を祝うんだ!』

 

〈それを、その空席の人は望んでいないんじゃないかな。何も分からないけど、それだけは...きっと。私なら、茶会に招くほど仲のいい人をいつまでも待たせたいとは思わないかな。〉

 

人形たちの目が空席に向いた。

 

〈忘れたくないなら、同じ日を繰り返すんじゃなくて、その人がいたっていう証拠を持って進めばいいんじゃないのかな。物でも、思い出でも。〉

 

『...』

 

『...』

 

何かを考えるように沈黙していると、空席の足がきぃ、と音を立てて軋んだ。

 

それから示し合わせたように二人に繋がっていた糸が切れた。

 

『僕たちは...これを無くしてしまったら、もう二度と会えない気がした。』

 

『でも、しなくても良かったんだね。そんな簡単なことだったんだ。』

 

無機質なボタンの目も今は柔らかい人間の目に見えた。

 

『『何でもない日、バンザイ。』』

 

両手をあげた二人とテーブルにノイズが走った。

 

そして次の瞬間には、元々存在していなかったかのように消えた。

 

〈...なんか...上手くいった...?〉

 

「はあ...ようやくか。不・極だったな。」

 

〈アリスは落ち着いた?〉

 

「見ないで...黙っててよ...私の中で...ごちゃごちゃ...!」

 

「...あぁ。」

 

〈ねえほんとに落ち着いてるの?〉

 

「さっきよりは落ち着いてる。」

 

珍しく...良秀が本気で困ったような顔をしていた。

 

アリスの情緒が次第に不安定になってきている。

 

チェシャという親しい人間に裏切られたからか、それとも...

 

〈...みんなと合流しよう。〉

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『F-06-364』『繰り返した毎日』クラスTETH

 

 

 

 

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