Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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■-23 観測4

 

 

 

 

───旧L社支部教育部門───

 

 

 

メインルームに向かう途中の通路で、囚人たちを発見した。

 

収容室の前に集まっており、ここもやっぱり、収容室内にあるらしい。

 

「貴様!本来好むはずの作業で失敗するとは何を考えている!恥を知れ!」

 

「ご、ごごご、ごめんなさい...!で、でも...」

 

「でももクソもあるか!もう一度作業だ!失敗したら...分かっているな?」

 

「は、はいぃぃ!」

 

あ、シンクレアが入って行っちゃった...

 

〈みんな、大丈夫?〉

 

「ハッ...!ご無事で何よりです管理人様!」

 

「猫被りの速さだけは一級品だな...」

 

〈今...どんな感じ?〉

 

「管理人様が探されている例の裂け目を発見いたしました。しかし収容室の中にあったため、私の指示の元作業を試みました。」

 

〈おぉ...本当にやってくれるなんて...ありがとう。〉

 

「あれ冗談だったの?」

 

アリスも落ち着いたし、良かった。

 

〈どんな感じだった?えーっと...『F-02-12』『ほら穴ウサギ』クラスはTETH。〉

 

収容室の中を覗くと、シンクレアが辺りに散らばった懐中時計を踏まないように気を付けながら掃除をしていた。

 

その奥には二足歩行の小さなウサギが懐中時計の一つの針をずらして、放り捨て、別のものを拾い...

 

その動作をずっと繰り返していた。

 

教育部門だから...えっと...ランディ、だっけ。

 

〈内容は...『作業結果が悪いとクリフォトカウンターが1減少した』『職員の正義ランクがⅣ以上だと作業終了時にクリフォトカウンターが1減少した』『洞察作業の結果が良いとクリフォトカウンターが1増加した』『作業時間が60秒を超過した時、クリフォトカウンターが0になった』...で、残り一個か。〉

 

「今はあのチビが作業してっから...これで全部分かんじゃねぇのか?」

 

〈...疑問なんだけどさ、なんでシンクレアなの?〉

 

「良いご質問です管理人様。いや、しかし単純な消去法になります。あの幻想体は洞察作業を好むのですが...指示を与える私を除外するのはもちろん。イサン、ヒースクリフは見かけからして不可能ではございませんか。」

 

「......あなや...確かに清掃は苦手なれど...」

 

「...あ゙?テメッ...そういう考えだったのか!?あぁ!?」

 

「加えてあの幻想体は周囲に落ちている時計を粗雑に扱うと襲ってきます。この観点よりホンルとイシュメールは不可能です。」

 

「なんなら一回、引っ掛けましたからね...」

 

「ふふっ、髪を結わないからですよ〜。」

 

〈......それでシンクレアしか残らなかったんだね...〉

 

「でも実際、あの幻想体かなり気難しいですよ。ちょっと時計に当たっただけでも...」

 

カシャンッ

 

「あ。」

 

「ぐッ...!」

 

「わ〜。」

 

シンクレアの足に時計が当たったようだった。

 

同じことを繰り返していたウサギは何かを叫びながらシンクレアに飛びつき、噛み付いていた。

 

そして...

 

「う、うわあぁぁっ!」

 

シンクレアが放り出されてきた。

 

「い、いたた......ひっ...!」

 

シンクレアは噛まれた場所をさすっていたけど、鬼気迫るウーティスに喉から悲鳴を絞り出した。

 

「あ、か、管理人さん!」

 

〈...うん。お疲れ様、シンクレア。ウーティスもそう怒らないであげて。情報は開示できてるからさ。〉

 

「...管理人様がそうおっしゃるのであれば。」

 

〈シンクレア、時計回すね。イシュメールも。〉

 

「あ...ありがとう、ございます...」

 

「ありがとうございます。」

 

噛まれるチクチクとした感じはするけどそれだけだな。

 

これなら一緒に管理情報も確認できるぐらい。

 

〈...ねえ、『クリフォトカウンターが0になった時、同部門のランダムなアブノーマリティのクリフォトカウンターを0にした』って書いてあるんだけど...〉

 

「ふむ、この部門にあの『F-02-12』以外の幻想体はおりません。ご安心ください。」

 

〈そ、そっか。〉

 

「...お?時計ヅラが来たっつーことは...もうテメェが作業に入ってもいいってことだな?」

 

「あ...!」

 

シンクレア、露骨に嬉しそうな顔しないで。

 

「...ふむ、そうなるな。管理人様、いかがなされますでしょうか。当幻想体の管理方法と各作業の効率は全て開示済みとなりますが。」

 

〈...一度、お手本を見たいかな?お願い出来る?〉

 

「ハッ!このウーティス、必ずや管理人様のご期待にお応えいたしましょう!くだらないミスを犯す凡夫二名とは違うというところをご覧下さい!」

 

「失敗しろ失敗しろ失敗しろ...!」

 

「ぷっ、同・意。」

 

アリスと良秀はウーティスの背中に呪いにも似た言葉を呟いていた。

 

良秀はもはや慣れたようにアリスを抱き上げて一緒に収容室内を覗いていた。

 

「ダンテ、気を付けてくださいね。あの幻想体、結構凶暴ですから。それに、作業の出来自体よりも時計に干渉しなかったかどうかを気にしているようです。ですが...どれだけなら触れていいのかというのは全く...」

 

室内ではウーティスがそっと時計をどかしてスペースを確保すると作業に入っていた。

 

「...んー...でもダンテ様って、作業してましたかね?最初も二回目も、確かに必要なく道具は持って入られましたけど、何かを話しているような様子が大半でしたよね〜。」

 

〈まあ、それは...うん。作業をするよりも、私が直接幻想体と交流すると...それで上手くいくと、消えるんだ。〉

 

「会話中のダンテ、外から見ると結構マヌケだよ。室内の音聞こえないし、ダンテって口が無いから、喋ってるかとかわかんないし。」

 

〈うっ...わ、私は必死にやってるんだけどな...〉

 

ウーティスは私と囚人たちに見せつけるように、時計まで綺麗に布巾で拭いていた。

 

それを見たヒースクリフが鼻を鳴らした。

 

「へっ、あそこまでやる必要はねぇからな。」

 

〈う、うん。〉

 

「管理人様!いかがでしたでしょうか!」

 

〈おぉ、すごいよウーティス。〉

 

「「チッ。」」

 

「...なんだ貴様らは。管理人様を無事にお守りしたのだろうな?どこぞで拾われた年増野良狐と───」

 

〈あっ、う、ウーティス!なんかさ!作業で気をつけることとかないかな!?〉

 

「注意事項ですか...時計に触れる程度なら許容範囲のようです。そのため動かす、持つなどは可能です。しかし叩く、蹴るなどの行為はどのような軽度な物でも怒りを買うようです。」

 

〈うん、うん...わかった。〉

 

「もう入られるのですか?」

 

〈うん。あまり悠長にしていられなさそうだから。〉

 

だって、アリスの情緒が壊れてきているから。

 

 

 

 

 

 

中に入って、まじまじと見て気付いた。

 

ここの時計、全部針が違う。

 

最初はずれた時計の針を戻しているのかと思ったけど、全部少しだけ変わってきている。

 

『あぁ忙しい忙しい...!』

 

うん、今回もちゃんと聞こえる。

 

元々喋る幻想体ってだけだったのかもしれないけど...まあ、会話ができるなら問題は無いかな?

 

『全部ひっくり返ってしっちゃかめっちゃか!ちゃんと直さないと遅れちまう...!』

 

〈...遅れるって、何に?〉

 

『全部に決まっているじゃないか!』

 

〈ぜっ、全部?全部って...〉

 

『全部は全部!帰ってこないのもこれから行くのも!全部!遅刻したら首が飛ぶんだ!』

 

その間にも時計は山積みになっていく。

 

...ん?もしかしてこれ...一分刻みで全部ずれてる?

 

〈どうして時計を一分ずつずらしていってるんだ?〉

 

『どうしてってあなた!社会人たるもの事前に行動することの必要性が分からないんですかね!一分でも二分でも三分でも!五分十分三十分!早く動かないと!間に合わないんだよ!』

 

〈だ、だからってこんなにやらなくても...〉

 

『やらなけりゃならないに決まってるだろう!お前の頭は飾りか!その針だって合ってるか怪しいのに!これも!これも!』

 

傍にあった時計が叩き付けられ、無惨な部品に解体されていく。

 

〈えっ。えっちょっ...何をしてるんだ!?〉

 

『合わない時計はいらないんだ!』

 

時計が床へ叩きつけられる。

 

『壊れて!』

 

歯車が弾け飛ぶ。

 

『分解されて!』

 

長針が折れ曲がる。

 

『遅れてっちまえばいい!』

 

そうしてそこにあったものは、ただの鉄の部品だけ。

 

〈い、いやそれでもなにやってるの!?〉

 

こんなの管理方法には......いや、違う。これでいいんだ。

 

ここから少しずつ、元のランディの声を引き出していく。

 

今までの四人と同じように...

 

『時間は噛みつくんだ!』

 

〈え?〉

 

『ぼんやりしてる奴から食べる!のろまは飲み込まれて!気付いた頃にはおしまいさ!』

 

耳の付け根を掻きむしりながら時計を踏んで壊していく。

 

『だから走るんだよ!走って走って走って!追いつかれる前に!』

 

〈...でも、いつか全て追い越してしまったら、君はどうするんだ?〉

 

『どうだなんて決まってるだろう!もっともっと......もっと?』

 

〈第一、何から逃げているんだ?どうしてそう急ぐ必要が?〉

 

『...ほんの少し。たったの数分だった。』

 

〈数分...何か、事故が起きたのか?〉

 

『事故?いやいやまさか!必然でしたよ!仕組まれた!運命!』

 

何かが間に合わなかったことで起きた、幻想体の事故?

 

〈運命なんてものは存在していない。全て偶然の積み重ねなんだ。〉

 

『偶然?は、ハハハ!ならあれはただの私のミスだったってことになるんですね!あれもこれも!全部!』

 

〈ち、ちが...そうは言ってないでしょ!?〉

 

『同じだろうが!何が違うんだ!?二分十二秒早く作業を終わらせていれば!一分八秒早くメインルームを出ていれば!誰も死ぬ必要はなかった!』

 

〈違う...たった一人のわずかな遅れで崩壊するようなら、最初から壊れていたんだ。〉

 

時計を破壊する音がぴたりと止んだ。

 

〈遅れても良いように周りもフォローにあたって、それでもって時でもその時の最善を尽くして。それで取りこぼしたものじゃなくて手のひらに収まったものを見るべきだ。〉

 

『...収まったもの。』

 

掴んでいた懐中時計が地面に落ちて、かちゃんと音を立てた。

 

『......そう、ですか。』

 

穏やかな声だった。

 

人間だった頃には聞いたことがない声。

 

それから、末端に重なったノイズが少しずつ全身を覆う。

 

〈納得してもらえたみたいで、良かった。でも、かなり急だね...?〉

 

『...はい。あまり呑気にしていると、遅刻してしまいますから。』

 

瞬きをして目を開けた時には、もう収容室内には裂け目以外の何も残っていなかった。

 

〈......ロボトミーの職員たちは、私たちが思っている以上にずっと、仲間意識が強かったのかな。〉

 

誰にも答えない呟きを零し、裂け目に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「...あ...ん...!」

 

「お...あさん...!」

 

「おかあさん!」

 

まだ聞きなれない甲高い声で目を覚ます。

 

「あ!起きた!」

 

私と目が合うと、これ以上幸せなことはないとまでの笑顔を見せる小さな人間。

 

「ドウ...シタノ...」

 

「お肉焼けたよ!はい!」

 

「...アナタ、ハ...タベタ...?」

 

「ん?いや、まだ。でも、おかあさんのおかげで取れたようなものだしっ!」

 

...この少しつつけば折れそうな体でよくもまあ私の心配をするものだ。

 

「アナタ、ガ...ゼンブ、タベナサイ。」

 

「え?でも...」

 

「ヒツヨウ、ナイ。」

 

「...うん。わかった。」

 

小さな口と脆そうな歯で肉を食いちぎり、左右に揺れている。

 

この程度の小さな子供には多いかと気になったのも少しのこと。

 

少し目を閉じたあとには、骨の傍で幸せそうに指を舐める人間。

 

「おかあさん、本当にいいの?」

 

「...ナンドモ、イワセナイデ。」

 

「う...ご、ごめんなさい......じゃ、じゃあ決めた!今度お腹減ったらすぐ言って!私がすぐ取ってくるから!」

 

「.........ハア...?」

 

「わ、私だって一人で大丈夫ってこと証明したいの!怖い人だって一人でやっつけれたし...ねっ!?」

 

何を言ってるんだコイツは。

 

少し歩いただけで息切れするような脆い生き物が...私に恩を返そうとしているの?

 

「...フフ...エェ......オボエテ、オクワ...」

 

「その声絶対信じてない!絶対の絶対!私、おかあさんの役に立ってみせるよ!」

 

「ハイハイ、モウネナサイ。」

 

「...はーーい......おかあさん、おやすみなさい。」

 

「...オヤスミ......■■。」

 

 

 

 

 

 

〈っ...〉

 

頭が痛い。

 

今まで見たどれよりも、汗で背中に服が張り付く感触が不快だった。

 

あれは...ナオ?

 

私はきっと、あの獣の視線で見ていた。

 

そして、ナオはおかあさんと言っていた。

 

...あれが...?

 

「今回も見事な手腕でした管理人様。」

 

〈あぁうん...ありがとう。〉

 

「時計ヅラオメェ、なんか疲れてねぇか?」

 

「幻想体の作業を終わらせければ理にも思へど...さりとて、少しあやし。」

 

「それで?今度は何が見えたんですか?」

 

〈......今度は...あの獣と、女の子が一緒に過ごしているのが見えた。〉

 

「......そ、そう...ダンテ、早く中央本部に行こう?ドンキがまたなにかやらかしてないか不安で仕方ないんだけど。」

 

アリスは、この話題に触れて欲しくないようだった。

 

〈...うん。それもそうだね。みんな行こう。〉

 

これまで通りの流れなら、きっと次で終わるはず。

 

次はきっと...全てがあるんじゃないかな。

 

 

 

 

 

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