Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
〈うわっ!?〉
固い収容室の床に尻もちを着いていた。
...いや収容室じゃない。廊下だ。
〈あれ...私、収容室にいたんじゃ...〉
「申し訳ございません管理人様。収容室外から観察しているだけでも穏やかでない様子でしたので。」
「そ、その...かなり苦しそうに見えて...引き剥がそうってなったんです。」
「ひっぺがした後も唸ってたけどな。」
〈...何か言ってた?〉
「何も言ってなかったよ〜。なになに?そんなにすごいもの見ちゃってた?」
〈...結構すごいもの見てた、かな。うん......あれ?アリスは?〉
視界の端に、良秀の腕の中で丸まっているアリスが居た。
「アリス殿は...管理人殿があれに触れてしばらくした時、突然暴れだしたのである。命を奪ってまではおらぬが...」
「極度の興奮、あるいはパニック状態に陥ったため一時的に気絶させました。」
「そうやってできたモンがこの静・毛・皮だ。」
良秀がだらんとしているアリスの首を掴んで揺らしていた。
...雑じゃない?
〈暴れたって...どういうこと?〉
「うるさいだとか、もうやめてだとか...訳わかんねぇこと叫びながら、手当たり次第にぶち当たって噛み付こうとしてたな。」
「うむ!ムルソー君が止めなければ今頃シンクレア君の首は繋がっていなかったであろう!」
〈そっか......あぁそれで、さっき見た事なんだけど...アリスが、幻想体に...いや、ねじれ?うーん...ねじれた幻想体...?になった。〉
「......オメェ頭大丈夫か?」
「と・ヅに脳みそが入るスペースはなかったようだな。」
〈本当のことなんだけど!?今度は都市で、アリスもいて...話しかけようとしたら、光の柱が立ち上ったんだ。〉
「...おそらくダンテの見たものはかつて旧L社が折れる直前に発した白夜現象です。あれからねじれやE.G.Oが広く観測されるようになりました。」
ファウストの言う白夜っていうのは、やけにしっくり来る言葉だった。
〈白夜......幻想体がねじれることはあるのか?〉
「一般的には有り得ません。ねじれ現象によって自我を引き出され、ねじれたものが最終的に行き着く先が幻想体であり、ねじれと幻想体は不可逆です。ですが...」
「で、ですが...?なんですか...?」
「ねじれと幻想体が異なる方法によって発生しているならば、可能性はあります。」
〈ねじれ以外から幻想体にってこと?〉
「はい。ねじれ現象以外にも幻想体を発生させる方法は...けほっ...あり......ごほっ、ごほ...」
〈ファウスト?むせてるけど大丈夫?〉
私が心配を無視するように、ファウストが倒れた。
「ファウストさん!?急にどうし...ごほっ...ぇ...?」
シンクレアが咳き込んだ手には...血が、べっとりと張り付いていた。
「僕...どうし...て...」
シンクレアも倒れ、囚人たちも咳き込み、血を吐いて倒れていく。
その中で唯一、アリスだけが穏やかに気を失っていた。
〈...煙...いや、霧?〉
いつからが足元に真っ白な濃い霧が漂っていた。
〈......みんな死んではいない。でも...時計を回さないと。〉
回した。
囚人たちが体を起こし、再び崩れた。
〈...回し続けないといけないのか...!〉
12人が抱えている内臓がやけるような熱と喉から迫り上がる鉄の味を絶え間なく味わい...そうして何とか囚人たちは動くことができた。
「...この霧の発生源を突き止めろ!一刻も早く!」
「んなこと...分かってんだよ...!」
「メインルーム方面から漂っている。」
〈は...やく...ほんとに...おねがい...〉
「貴様は管理人様を運べ!」
指示を受けたムルソーに背負われ、穏やかな会話時間はこの毒霧の根源を絶つ時間にすげ変わった。
確かに安定感はあるんだけど、そんな乗り心地を心配している余裕なんてものは当然なかった。
「管理人様。呼吸を一定に。」
〈そんな余裕...あると思う...?〉
「いいえ。」
絶えず時計を回し続け、何度も気を失いそうになってしばらく...
「...あれか。」
先導していたウーティスの声でようやく顔を上げた。
広い中央本部部門のメインルームにそれはいた。
灰色の体色、蠢く黒い触手、折れた翼。
〈...アリス...〉
「あれが...そうなんですか?いやでも、どうしてここに...」
「つべこべ言わず叩きのめしゃいいんだろうが。おい時計ヅラ、一応聞くけどよ、あれと仲良くお喋りでもするか?」
イシュメールの困惑をヒースクリフの声が断ち切った。
〈...いや......一度、鎮圧しよう。〉
「ハッ、だとよ?」
ヒースクリフがバットを握りしめた直後、良秀の腕からアリスの体が溶けるように落ちていった。
「......ぅ...ここは...?......ぁ。」
赤と青の目がそれを捉えた。
それもアリスに気が付いたように長い首をもたげた。
「...なんで...ここに、あの子が...」
『みつけた。ここにいたんだ。』
「っ...喋った...!」
「この子...知ってる...でも、この人は知らなくて...ここで初めて会ったはずなのに......懐かしくて...」
『あいたかった。ひさしぶり。ずっと、さがしてたんだ。』
「違う...違う違う違う...!そんなはずない!あの子が...そんなこと...」
「おい...何そんなに狼狽えてやが......ぁ?」
ヒースクリフがアリスに触れようとしたのと同時に、白い体がそれの元に何度か跳ねて吹き飛ばされ、骨が砕けるような生々しい音が静かに響いた。
「なっ...テメェなにしてやがんだ!?」
「気の狂った囚人を切り捨てたまで。貴様の腕があの駄狐の胃に収まっても良かったらしいな。管理人様、お手を煩わせますが指揮を。」
時計を回しながら、手早く人格を付けていく。
その間にも、首があらぬ方向に曲がったアリスの体が炎上し、元通りのアリスがいた。
「こいよ...!全員、殺してやる...!この子に触れるな...この人を、傷付けるな...!」
アリス自身にもノイズが走り、一瞬だけ深緑の髪が見えた。
それから...私とアリスで繋がっている鎖が一つ。
それは赤熱し、割れるような嫌な音を立てていた。
「ダンテ...大罪までうちいでしぞ。」
どこからか湧いてきたのは、憤怒大罪。
アリスの絶叫に呼応するよう這い出たのは深紅の罪だった。
「来ないで!私からもう奪わないでよ...!」
アリス自身、あれがなんなのか...もう一人のアリスがなんなのか分かっていないのかもしれない。
ただデジャブのような懐かしさがすり減った精神をへし折っただけなのかもしれない。
〈それでも...あれは、止めないと。〉
『■■』LV56 囚人
体力268 斬(抵抗) 貫(耐性) 打(抵抗) 防御レベル+4 速度5〜8 混乱区画(78%_46%_32%)
憤怒(0.1)色欲(2.0)怠惰(0.5)暴食(0.5)憂鬱(3.0)傲慢(2.0)嫉妬(2.0)
『近付くな』強化防御 憤怒 防御レベル+2
基本威力10 コイン威力2
《戦闘開始時》...『援護防御』を2得る
《マッチ勝利時》...次のターンが終わるまで攻撃威力減少3を付与
『私を見てろよ』回避 憤怒 防御レベル+3
基本威力1 コイン威力10
《戦闘開始時》...『援護防御』を1得る
《回避成功時》...対象の精神力-2
《ターン終了時》...このターンに3回以上回避に成功しているなら全ての敵に次のターン、ダメージ量減少2を付与。
『その子に触るな』 マッチ可能反撃 色欲 コイン2 防御レベル+2
基本威力5 コイン威力4 破壊不能コイン
援護防御専用スキル
《Ⅰ・的中時》...出血2を付与
《Ⅱ・的中時》...出血回数2増加
『引き裂く』斬撃 憤怒 コイン3 攻撃レベル+4
基本威力6 コイン威力9
このスキルは大罪のみをターゲットにする
《敵討伐時》...最も少ない罪悪資源3種類を1つ生成する
『喉を噛み切る』 斬撃 憤怒 コイン1 攻撃レベル+?
基本威力? コイン威力? 破壊不能コイン
対象変更不可
マッチ不可
《Ⅰ・的中時》...即死
パッシブ
『強迫観念』
この戦闘が始まった時、『トラウマ』*1を発症する
『燃え盛る執念』
体力が0になった時、次のターン行動不能。
そのターン終了時、最大体力の80%を回復し次のターンにクイック3を得る
『隙伺い』
自分の守備スキルは相殺されない。
スキルスロットにセットしたスキルが全て囚人へ使用されなかった場合、ターン終了時最も速度の低い囚人へ『喉を噛み切る』を使用する
『幻想狩り』
攻撃スキルは大罪のみをターゲットにし、援護防御専用スキルではない守備スキルは囚人のみに発動する
コインが表面を出す確率は65%になる
『包み隠し全てを受け入れたアリス』LV75 ZAYIN
体力1865 斬(脆弱) 貫(脆弱) 打(脆弱) 速度1〜1
憤怒(1.5)色欲(1.0)怠惰(1.5)暴食(1.0)憂鬱(0.25)傲慢(2.0)嫉妬(0.5)
『霧を吐き出す』打撃 憂鬱 攻撃レベル+-0 攻撃加重値12 敵味方識別不能
基本威力10 コイン威力1
マッチ不可
このスキルは守備スキルを発動させない
このスキルで与えるダメージは0になる
《的中時》...アリスでない囚人の体力が最大体力の30%以上なら最大体力の20%分のダメージを与え、精神力が-30以上なら精神力を10減少させる。大罪なら現在のターン数×8の憂鬱ダメージを与える
パッシブ
『ねじれた幻想体』
大罪からターゲットにされる
『鎮圧完了』
体力が0になった時、戦闘終了
「待ってよ!お願いだから攻撃しないで!ダンテ止めてよ!ダンテ!!」
〈アリス、ごめん。〉
ホンルが走り、アリスを抜き去る。
「その人生に...終止符を!ヒースクリフ、今です!」
「見えてる。」
「やめろよ!!」
ヒースクリフに飛びかかったアリスが弾丸に貫かれ、そのまま霧の源も撃ち抜いた。
『ざんねん...せっかく...あえたのに...』
「なん、で...もう...奪わないで...よ...かえして...かえしてよぉ......おかあ...さ......」
霧の源がノイズの走る卵に変わると同時に、アリスも血の混じった嗚咽を吐いて完全に止まった。
〈...本当にこれでよかったのかな。〉
「被害拡大前に鎮圧の判断をされた管理人様の手腕は見事なものでした。」
「あ、あの...アリスさん...どうしたんでしょうか...?」
〈ここにいる時から、少しずつ様子がおかしくなってたんだ。時折、誰かと話しているような感じだった。〉
「それは、あー...幻聴ってことか?」
〈わからない。ただ、アリスには見えてもいたっぽい。そこにいない誰かを見ていた。〉
「それはなんつーか...───みてえだな。」
〈...ヒースクリフ?今なんて言ったの?〉
「仕方ないといえば───なんじゃないですか?こんな───に───いれば。」
〈イシュメール?〉
二人の声が砂嵐のノイズに掻き消される。
いや、二人だけじゃなかった。
「管───殿?いか───なされ───」
「絶えず───を回────ため───すらむ。」
囚人たちにもノイズが走り...この施設全てがブレていた。
頭の中に直接響くような、キンと高い音。
〈...なに...これ......〉
ぷつりと、全てが暗転した。
そうして次に覚えたのは暖かい太陽の日差しと、鉄臭さだった。