Project Moon RPG気ままに実況プレイ   作:とろねぎ

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■-27 燃え堕ちた楽園

 

 

 

 

「は...ほんま、トンチキ技術すぎるやろ。ただの人間が血鬼になってもうたやん。」

 

〈ムルソーとロージャ、ウーティスでサポート。グレゴールは注意を引いて、残りのドンキホーテ、良秀、ナオで攻撃。〉

 

「ないよりマシやろ。うち優しいねん。」

 

杖の石突きで地面を叩くと私と良秀、ドンキに柔らかい光が注いだ。

 

最前線で自分の身に鞭を打ち、爪と牙をいなすグレゴールの横から、飛び出す。

 

「おかあさん...止まってよ...!」

 

『は、まだそう呼ぶの?』

 

「ゔっぐ...!」

 

競り合うこともできず、体当たりで体が地面を跳ねた。

 

おかあさんが私を潰そうとした瞬間、腕をチェーちゃんが受け止めてくれた。

 

「おっっっも!!」

 

緊張感の無い叫びに呼応するように先端の赤い玉が鋭い鎌に変わり、振り抜く。

 

もう...チェーちゃんが何したいのか、わかんないよ。

 

私をどうしたいの...?

 

おかあさんはその場から飛びのいて姿勢を低くすると弾き出されるように私たちに飛びかかってくる。

 

「させない。」

 

深紅の螺旋を描いている槍が、横からそれを防いだ。

 

「ヒュ〜ッ、ようやるわ。」

 

「無駄口を叩くな。」

 

「ドンキ...ありがと。」

 

「...無理はするな。」

 

「うちと対応違いすぎん?」

 

ロージャが血で作られた花弁を散らし、ウーティスの血を吸って鋭くなった裁ち鋏がおかあさんの爪と競り合う。

 

「ハッ、カットオフ!」

 

「く・ヅ。すぐ食わせてやるから黙ってろ。」

 

良秀が十字架のようなメイスで横から競り合いを弾き落とし、赤い目がついたメイスで殴り付けた。

 

それに便乗してウーティスが切り裂く。

 

赤く染った白い毛が散乱し、甘い匂いの花畑に鉄臭さが濃くなり始める。

 

「たかだか人間に傷を付けられる気分はどう...やっ!」

 

杖のまま二度三度と打ち付けると、おかあさんは...ただ、咆哮した。

 

大気ごと震わすような爆音で弾き飛ばされてきたのを咄嗟に受け止めて、受け止めきれずに一緒に飛ばされた。

 

「あ゙ー...助かったわ...ぅ、ごほっ...」

 

蹲って...蹲った下の花が、びしゃりと赤く染まった。

 

「え。ぁ、む...無理しないで...!」

 

裏切られたはずなのに、捨てきれない。

 

諦めきれない。

 

もう、家族を見捨てたくないから......『また』?

 

「亜流サンチョ硬血6式、引き裂けろ!」

 

「...休んでて。お願いだから...」

 

〈ナオ、E.G.Oを使うよ。〉

 

頷いて駆け出すとダンテと繋がった鎖越しに私じゃないものが流れ込んでくる。

 

激しい乾きと...渇望が喉の奥からせり上がってくる。

 

「全てを吸い付くし...美しい花を咲かせろ...!」

 

私の腕に巻きついて血を吸い込んだ茨をおかあさんにけしかける。

 

『雑草が。』

 

まとわりついた傍から断ち切られていくけど、それでいい。

 

血を吸った茨が溶け、血溜まりに変わっていく。

 

そうして大量に増えた血液が血鬼たちの手の中に集まっていく。

 

「血......血を!」

 

「ハッ、期待するがいい。」

 

「フィナーレ。」

 

「ウヴェルテューレ...!」

 

「充分だ。サンチョ流硬血奥義、ラ・サングレ。」

 

戦闘で集まった血を触媒にして血鬼の人格を被った五人が大技を放つ。

 

「おい。死んでるか?」

 

「いや...生きとるわ...」

 

おかあさんは、原始的な爪と牙という二つの武器でそれらと競り合っている。

 

「さ・体・直。どうせあれぐらいじゃくたばらん。」

 

良秀は十字架のメイスでチェーちゃんをこつこつと叩いていた。

 

痛くないのかな。

 

体勢を立て直している時、ぼとりと目の前に何かが落ちた。

 

それは、腕だった

 

「...え。」

 

それからすぐ、破裂音。

 

パン、パンって、水風船が割れるような音が連続して、据えた匂いが充満する。

 

胴体が抉られるように消滅したウーティス。

 

上半身が風船のように消し飛んだグレゴール。

 

「理髪師...神父..!」

 

残っていた三人の首が、裂け目に飲み込まれて切り落とされた。

 

『遅い。』

 

〈嘘だろ...良秀!〉

 

「騒ぐな、と・ヅ...!」

 

良秀が姿を変え、紫色の服と赤い目が連なった刀を携えた。

 

そうして構えた直後、良秀の右半身が吹き飛んだ。

 

「ぅぐッ...!」

 

『まさか、本当に勝てると思っていたの?』

 

おかあさんの姿が裂け目に消える。

 

「...あー...ほんまクソ。ナオちゃん、これやるわ。」

 

私の手に何かを握らせると、杖の先端を鎌にした。

 

「え...?ぁ、これ...再生アンプル...?」

 

「保険はあるに超したことないやろ?」

 

〈みんな全員前に出て!〉

 

「待って...何言ってるの?ねえ...!保険って......」

 

待機していた囚人たちが前線に出るよりも早く、私の目の前で鮮血が舞った。

 

一人だったものが、上と下に別れて、吹っ飛んだ。

 

少しして、腰から上がない下半身が私へもたれかかって、黒ずんだ血が垂れてくる。

 

「ぇ、なんで...やだ、やだやだやだ...!」

 

耳鳴りがする。

 

視界が縮まって、世界が遠くなる。

 

震える手でそれをどかして、何かが飛んで言った方を見る。

 

「ぁ......あぁぁぁぁ...!」

 

どうしたか覚えてない。

 

ただ、本当の獣みたいに、しっちゃかめっちゃかに手足を動かしてそれに近寄ったのは覚えてる。

 

それは覗き込むと、弱々しく目だけが私を見ていた。

 

腰から下があるはずだった場所から暖かい血を垂れ流していて。

 

「だめ、だめだめだめ!いやだよ、やだ!!待ってす、すぐっ、すぐ治るから...!」

 

かたかたと、凍えるように痙攣する手が渡されたばかりのアンプルを打とうとして、止められた。

 

「......も...うちは、あかん...それはそんな、万能や、ない...」

 

「じゃあ...じゃあ、どうしろって言うのさ!ロボトミーじゃないんだよ!?やだよ...死なないで...やだよぉ...!」

 

「もっと......使うべきやつ...おる、やろ...」

 

目線の先を追うと...ダンテがいた。

 

まだ、足掻いてる。

 

〈...あ。〉

 

突然、ダンテの腹が深く裂けた。

 

〈なんで...ぁ、あぁぁぁ!!??〉

 

内臓が溢れ出し、ダンテが抑えた端から細長いものが垂れてくる。

 

「だ、ダンテさん!」

 

『...もう終わりみたいね。ねぇナオ、そんな物でどうするの?そこの女が助かることに賭けてみる?それか、そこの役に立たない時計を助けるの?』

 

「......」

 

『おかあさんに、選択を見せて?』

 

威圧感は、裂け目に消えた。

 

〈ぁ、あぁ...あっ...こぼれ...〉

 

「ダンテ...!安静にせり...今、手当せむ...!」

 

「ダンテ!ダンテ私を見てください!ダンテッ!!」

 

「...主要な臓器にまで至る深刻な裂傷。傷口を塞ぐだけでは助からないでしょう。」

 

「つべこべ言ってねぇでテメェが得意なアタマで考えろよ!」

 

「っ...あ、ダンテ...なんで...」

 

「......ほら...今、ひつよう、やろ...」

 

ダンテを見る。

 

囚人たちが溢れ出た内臓を戻し、傷口を塞ごうと必死に処置をしていて...でもこの人には...私だけがいて...他には、誰も...

 

「...やだ......やだぁ...やだよぉ...」

 

「......ナオちゃん...」

 

その目で真っ直ぐ見つめられて、首が締め付けられるように呼吸が苦しくなる。

 

視線が上手く定まらなくなって、結局...意味の無い叫びを上げながら、アンプルをダンテの方に投げるように転がした。

 

「これは.........再生アンプルですね。それも...かなりの効果が期待できるでしょう。」

 

「じゃ、じゃあ、これを使えば...!?」

 

「ダンテ!大丈夫です、助かりますから...!」

 

「.........」

 

ダンテは助かるらしい。

 

ダンテ『は』。

 

「うぅ...うぅぅぅぅ゙ぅ...!!」

 

「は...何泣いとん......うち、N社所属んなって...もう、敵やぞ...?」

 

「そんなの...関係ないもん...お願い...置いてかないでよ...私を置いてかないでよぉ...チェシャ先輩ぃ...!」

 

あんなに大きかった先輩が、今はとてつもなく小さな存在になってしまって。

 

目から光が抜け落ちて、少しずつ暗くなっていって。

 

握っていた手は生ぬるくて。

 

「......さい、ご.........これ...」

 

乾いた唇を動かして、震える手で指輪を抜き取ると私の薬指に通した。

 

針の先端が刺さるような感覚がすると同時に、指輪はぴったりと固定された。

 

「なに...こ、れッ...!?」

 

固定されると同時に、頭の中に流し込まれるように、私の知らない、見慣れた日常が流れ込んできた。

 

あの奇妙なロボトミー支部にいる間、ずっと頭の中で騒いでいた声と顔。

 

「......ぜんぶ......おもいだせた...やろか...」

 

「...なんで......なんで、思い出させたの!?なんで...なんで!!これじゃ私...ほんとに一人じゃん...!やめてよ...一人にしないで、お願い...なんでもするから...!一人はやだよぉ...!!」

 

縋り付いても刻一刻と流れ続けて、流れ出たものはもう二度と戻らないんだってわかった。

 

でも、それでも...目が閉ざされても、手が冷たくなっても、体が固くなっても、顔が蒼白になっていっても。

 

この時だけは、都合のいい奇跡に縋った。

 

 

 

 

 

可哀想に。

 

 

 

 

 

「......誰...いや...聞いた事、ある...」

 

悲しいよね。辛いよね。だからこそ、私に教えて欲しいの。

 

「...教える...」

 

あなたは、どうしたい?

 

「私は...もう...一人になりたくない...みんなと一緒に...過ごしたい...誰も、死んで欲しくない...」

 

そっか...あなたはとても、優しいんだね。立派だよ。偉いね。

 

でも、だから耐えられなかったんだ。

 

誰かが壊れていくのも。

 

置いていかれるのも。

 

独りになるのも。

 

ただ...もう、どうでも良かった。

 

この声が誰かなんて、どうでもいい。

 

あのね、みんながずっと一緒にいられる方法があるんだよ。

 

「......本当?そんな方法が...あるの...?」

 

うん。だってあなたは、もう充分頑張ったから。

 

誰も失わなくていいの。

 

誰にも置いていかれなくていいの。

 

全部、ひとつになればいいんだから。

 

「...ひと、つ...」

 

頭の奥で、何かが脈打った。

 

どくん。

 

どくんと。

 

まるで、心臓がもう一つ増えたみたいに。

 

そう。あなたが抱えてる寂しさも。

 

苦しみも。

 

愛したいって願いも。

 

ぜんぶ、形にしてあげる。

 

〈......ナオ?〉

 

遠くで、ダンテの声がした。

 

でも...水の底から響くみたいに曖昧で。

 

聞こえるのは甘い声だけだった。

 

かわいそうな子。

 

独りぼっちになりたくなかっただけなのにね。

 

胸が熱い。

 

苦しい。

 

でもその奥には、どうしようもなく安心する熱があった。

 

だから、もう泣かなくていいよ。

 

あなたの中にいる子達も、それを望んでいるもの。

 

「...あはっ......うん...うんっ...!』

 

 

 

 

 

 

 

 

いい子だね。

 

 

 

 

 

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