Project Moon RPG気ままに実況プレイ 作:とろねぎ
〈時計を...回そう......今ならきっと、大丈夫...〉
囚人たちの蘇生を優先し、時計を回す。
残酷なまでにあっさりと死んでいく感覚を追体験し、全員が起き上がった。
「...申し訳ない、管理人殿...当人が情けないばかりに...」
〈......いや、いいんだ。それより、ナオを...〉
ヒースクリフがずっと視線を向けていた先。
「......誰...いや...聞いた事、ある...」
そこではチェシャの亡骸を抱いたアリスがぽつ、ぽつと呟いていた。
「...教える...」
〈......ナオ?誰と...話してるんだ?〉
「私は...もう...一人になりたくない...みんなと一緒に...過ごしたい...誰も、死んで欲しくない...」
「深緑殿...?」
「...時計ヅラ。アイツ...」
ヒースクリフがバットを握り締て歯を強く噛み合わせると同時に、ナオを中心に謎の圧力が吹いた。
〈まさか.........ねじれ!?〉
「ナオ嬢の身につけしは確かにE.G.Oなりき。既に発現した者がねじれるなど、ありうるや?」
「幻想体のねじれと同じ理屈でしょう。ナオが既に発現していたE.G.Oと今回のねじれはそれを引き起こしたものが異なるのでしょう。」
〈止めれないのか!?〉
「ぐっ...管理人殿...しかし...この妙な圧力...前に、進めぬぞ...!」
「......本当?そんな方法が...あるの...?」
ナオの声色に希望が差し込んだ。
「......あぁやって、あの声はそん時に一番欲しい言葉を寄越すんだ。テメェが悪りぃってこともねじ曲げて、善悪の区別すら歪めちまう。」
〈ファウスト...もしナオがねじれたとして...私たちで止めれるのか?〉
「もし彼女が本来の...深緑の幻爪としての力を取り戻しているのであれば、億に一つもありません。しかし現在の彼女はダンテとの契約に結び付けられている状態のようです。」
「長ったらしく話すな。つまり、オレらでも止めれるってことで間違いねぇんだな?」
ファウストが無言の肯定を示し、ドンキホーテは歯を食いしばって、虚空に耳を傾けるナオを見ていた。
「...ひと、つ...に。」
〈一つに?〉
不穏な単語が聞こえると同時に、少しずつナオの表情が喜悦に歪んでいく。
「管理人様、戦闘の準備を......されているようですね。失礼いたしました。」
「ねじれた場合...戦わねばならないのか?」
「...テメェ、オレの時居たよな?寝てたわけじゃねぇよな?」
「う、そ、それはそうであるが...しかし...深緑殿であれば...!」
「...あはっ......うん...うんっ...!』
ドンキホーテの期待を裏切るように、ナオの体が膨らんだ。
「みんな、私が助けてあげるんだ!』
人間の皮を破るように現れたのは、灰色の獣だった。
薄皮一枚で繋がっている四肢を白い霧が繋ぎ合わせ、背中には赤黒い茨と霧、それから無機質な蛍光灯がもつれ合ってできた籠に小さな火が閉じ込められていた。
その火は弱々しく、時折籠に体当たりするように動き、小さく揺らめいていた。
根拠もなければ、論理的な理由なんてもっと無い。
でも私には...あの火が、ナオのように見えた。
『全部...私と一緒に、溶けよう...?』
『変わることを許されなかった■■』 Lv95 引き留められているねじれ E.G.O過剰共鳴体 遥か昔の血族 幻想体の依代
体力3200 斬(抵抗) 貫(耐性) 打撃(抵抗) 防御レベル+3 速度1〜3
混乱区画(2800_1200)
憤怒(2.0)色欲(0.5)怠惰(1.0)暴食(0.5)憂鬱(0.25)傲慢(1.5)嫉妬(2.0)
『侵蝕E.G.O:低く響く泣き声』打撃 嫉妬 コイン1 攻撃レベル+2 攻撃加重値3
基本威力7 コイン威力5 破壊不能コイン
《使用時》全ての敵の沈潜回数3増加
《マッチ時》対象の精神力-10
《マッチ勝利時》全ての敵の精神力-10
《Ⅰ・的中時》沈潜5を付与
『侵蝕E.G.O:凍て付いた足跡』貫通 憂鬱 コイン3 攻撃レベル+1
基本威力3 コイン威力4
《Ⅰ・的中時》沈潜5付与
《Ⅲ(破壊不能コイン)・的中時》沈潜回数3増加、次のターンに束縛2を付与
『ただ、愛してみたかった』貫通 色欲 コイン3 攻撃レベル+2
基本威力4 コイン威力2
《マッチ時》...対象のコイン枚数がこのスキル以上ならコイン威力+1
《使用時》『空虚で満たす霧』*1を3得る
《マッチ敗北時》『空虚で満たす霧』を3失う
《Ⅲ(破壊不能コイン)・破壊されずに的中時》『空虚で満たす霧』を5得る
《Ⅲ・破壊されて的中時》『空虚で満たす霧』を2得る
『侵蝕E.G.O:歪な愛の封牢』打撃 憂鬱 コイン1 攻撃レベル+3 攻撃加重値7
基本威力8 コイン威力10 破壊不能コイン
《戦闘開始時》このスキルを使用するまで混乱しない
『空虚で満たす霧』の数だけ基本威力+1
《使用後》次のターンから3ターンの間『溢れ出す空虚な愛』*2を得る
『侵蝕E.G.O:誰も知らない雨の音』貫通 怠惰 コイン2 攻撃レベル+-0 攻撃加重値3
基本威力4 コイン威力6
メインターゲットがE.G.O『狐雨』を装備または『ロボトミーE.G.O狐雨』の場合基本威力-3
《Ⅰ・的中時》沈潜回数5増加、沈潜3付与
《Ⅱ(破壊不能コイン)・的中時》沈潜回数2増加、破裂10を付与
『侵蝕E.G.O:沈んだ果ての景色』打撃 傲慢 コイン2 攻撃レベル+2 攻撃加重値7
基本威力4 コイン威力4 破壊不能コイン
《戦闘開始時》(20÷自身の保有するマイナス効果の種類)の数値分、全ての敵の精神力が減少する、自身がマイナス効果を5種類以上保有していない場合、全ての敵に麻痺1を付与
《Ⅰ・破壊されずに的中時》沈潜回数3増加
《Ⅱ・的中時》沈潜6付与
『侵蝕E.G.O:走り続けろ。死んでも、壊れるまで』 斬撃 憂鬱 コイン3
基本威力3 コイン威力3
対象の沈潜8毎にコイン威力+1(最大+2)
《Ⅰ・的中時》沈潜5付与、沈潜回数3増加
《Ⅲ(破壊不能コイン)・的中時》『鏡に映る破綻』*32を付与
『変異侵蝕E.G.O:涙で濡れた茨』マッチ可能反撃 貫通 色欲 コイン4 防御レベル+1 攻撃加重値3
基本威力4 コイン威力1 破壊不能コイン
《戦闘開始時》このターンの間、攻撃的中時に対象の精神力-3
《マッチ敗北時》この攻撃で敵は混乱・死亡しない
『折れた幻爪』 斬撃 暴食 コイン1 攻撃レベル+-0
基本威力10 コイン威力1
このスキルで囚人が死亡した際、囚人の精神力が10より多く下がらない
《戦闘開始時》このスキルを使用するまで混乱しない
《マッチ時》対象のスキルがE.G.Oの場合、そのスキルの攻撃レベルによる上昇も含む最大値分基本威力増加
《マッチ勝利時》与えるダメージが対象E.G.Oのランクが一つ上がる事に+200%、対象の斬撃耐性+1.0(最大+3.0)、暴食耐性+2.0(最大+3.0)
《Ⅰ・的中時》装備している中で最もランクの高いE.G.Oに必要な罪悪資源の種類・数だけ罪悪資源を削除
《敵討伐時》次のターンから脆弱1、脆弱が3以上なら同時に束縛1を得る、この戦闘で囚人を4名討伐しているなら次のターン開始時全ての敵の沈潜威力を5、沈潜回数を1へ変更し『涙華』*4を付与、次のターンからマッチ力増加1を得る(戦闘の間2回まで)
パッシブ
『再びねじれ引き千切られる意志』
戦闘開始時、『自己拒絶』*5を得る
マッチ敗北時、破壊不能コインが与えるダメージ-80%
『苦痛に沈む』
マイナス効果によって受けるダメージ-50%
最も速度の高い敵とのマッチ敗北時、最も威力の高いマイナス効果の回数+2
ターンの中で初めて攻撃的中時、全ての敵に沈潜3、沈潜回数2付与
『引き上げられてもより深く沈むだけ』
ターン最初のマッチ敗北時、全ての敵の沈潜威力、回数を半分にする
このターンに付与する沈潜威力+1
『もう、放っておいてよ』
相手より速度が高ければマッチ力+2
束縛3以上を保有しているなら代わりにマッチ力-2、守備威力減少3を得る
『闘争本能/生存本能』
体力が50%以上の場合、50%以上の体力10%毎にクイック1を得る
体力が50%未満の場合、失った体力20%毎に速度最低値+1、最大値+1、守備スキルの最終威力+2(最大5)
『幻想狩りの爪』
ターン開始時、精神力-45の敵の数だけ威力増加2、クイック1を得る
精神力が-45の敵は出血等のマイナス効果で死亡せず、自身のみをターゲットにし、対象の敵へは『折れた幻爪』でマッチする
『蝕まれていくエゴ』
囚人が死亡する度に『息巻く殺戮の衝動』*6を1得る
囚人が侵蝕する度に『溢れる殺戮の高揚』*7を2得る
『変異侵蝕』
敵はパニックにならず、精神力が-45の場合は装備している中で最もランクの高いE.G.Oを使用する
『連戦』
この戦闘が始まった時、全ての囚人は『祝福』、『恩寵』を得て加算コインを扱う人格は精神力35から始まる(待機人員も含む)
この戦闘が始まった時、全ての罪悪資源を8ずつ得る
『最後に見た暖かな光』
この戦闘開始時、使用できない光の苗木がある場合、それをこの戦闘の間だけ使用可能状態に戻す。
光の苗木の力を使用した時、『息巻く殺戮の衝動』と『溢れる殺戮の高揚』の数値をリセットする。
ナオの体がさらに何度かぼこり、ぼこりと膨張と縮小を繰り返し、口を開いた。
『あの子は...いつもこうやって泣いていた。誰も、慰めやしないのに。』
ぐえん、と低い蛙の鳴き声が響いた。
それが鼓膜を打ち付けると同時に、憂鬱感と不快感が同時に込み上げてくる。
喉の中に石が詰まるような苦しい不快感だった。
〈これは、E.G.O...!?なんで...〉
「チッ、さ・黙。」
良秀の言葉で思い出したように、急いで指揮をとる。
囚人たちの罪を繋ぎ合わせて...ひとまずこれで。
今度こそさっきみたいに、私に攻撃を受けさせまいとする囚人たちの後ろで、七人の囚人に行動を指示していた。
ドンキホーテの槍が突き刺さり血を撒き散らすが、ドンキホーテに鋭い氷柱が降り注ぐ。
それをホンルが弾丸で的確に落とし、切り込む。
「ヒースクリフ、これで撃てますよね?」
「あぁ、支援する。」
『触らないで!』
悲鳴にも似た叫びと共に紺色の湿った茨がナオを囲むように現れて弾丸を受け止めた。
そして、びくりと震えたあとヒースクリフへ殺到する。
「あぁ!?クソ!」
「惜しかったですね〜。援護しますよ。」
ホンルが茨を切り払い、空いた場所にムルソーが入るとグレイブをナオへ叩き付けた。
腕の一つが止めようとするがあっけなく弾かれ、鮮やかな鮮血を散らす。
それがムルソー含む囚人たちに簡易的な甲冑のようにまとわりついていた。
『全部...一緒に溶けてしまえば...』
霧が立ち込める。
これは、まさか...
〈長期戦は不味そうだ。早く終わらせよう。〉
「と・ヅのくせに頭が働くじゃないか。」
〈今言ってる場合じゃないでしょ。〉
隣でタバコを吸っている良秀の足は、せわしなく何度も揺れていた。
〈......大丈夫。ナオは私が連れ戻すよ。彼女本人がどう思っていても、契約が繋がっている以上、今はここがナオの帰る家だ。〉
「いきなり何言いやがる。気・悪。」
「...素直じゃないですよね、良秀さん。」
一連の攻防が終わると、今度はナオが熾烈に攻撃を始めた。
精神ごと溶かすような雨。
深淵のような暗い水飛沫。
冷気と霧が静かに、囚人達の体力と精神を蝕んでいった。
そして、鏡が割れるような音がした。
〈あ。しまった...E.G.O侵蝕...!〉
誰が侵蝕したか確認すると、グレゴールの人格牌に大量の警告表示に覆われていた。
グレゴールは茨の花園...薔薇の表示板から抽出したE.G.Oに侵蝕されたらしい。
あまり囚人を巻き込まないように祈る......はずだった。
『...臭う。欲望を抑えきれない醜悪なお前たちの腐臭が漂ってくる。』
ナオの声が底冷えのするものに変質した。
何よりも早く、弾丸のようにグレゴールに肉薄すると...
『だからこそ私は引き裂き...牙を突き立てる。』
侵蝕され、姿を変えているグレゴールを一口で噛み殺した。
〈本当に言ってる...!?〉
「む・だが死んだか。次は俺だろ?」
〈え、いやシンクレア...〉
「俺。」
「譲ります...」
〈...わかった。〉
私の返事で満足そうに頷くと、良秀は二つのロボトミーE.G.Oを担いだ。
「ヒ・クの時みてぇに呼んでろ。連れ戻すんだろ?」
狭い。
暗い。
静かで、何も見えなくて。
海の底に沈んでしまったみたい。
息苦しさがあって、体が重くて。
自分の体すら見えない。
私は本当に存在してるのかという不安すらも......今は、悪くない。
ねえ。
なに?
まだ我慢、してるよね。
苦しいのに笑って。寂しいのに大丈夫って言って。ずっとそうしてきた。
だからもう、あなたには自分を抑えて欲しくないんだ。
もう離れたくないって言ってたよね。その気持ちを、もっと大事にして。
でも...私のこれが、一方的だったら...どうしよう。
そんなこと望んでないって言われたら、どうしよう。
そんなこと言われないよ。あなたの大切な人は、いい事をしたのに叱ってくるの?
ううん。
じゃあでも。
なにかが、違う気がしてならない。
頭の片隅で鳴り響く時計の音と、無いはずの左目がやたらと熱くて、重苦しい水の中で足掻いているような気がした。
違わないよ。これが一番良いの。傷付いた優しいあなたが、これ以上取りこぼさないために。
...一番いいのが、私だけじゃだめなの。
あなたの最善がみんなの最善になるよ。
ならない。
一方的に離れなくするのは、ただの支配だ。
そばに縛り付けて、私はそれで満足したいんじゃないんだ。
一番いいとか、最善とか言うならさ。
私も生きて、みんなも生きて...それこそが、真の最善でしょ?
もう無理だよ。それを叶えるためには、もうたくさんの物を取りこぼしてるから。
いいや。
私の中に、しっかり収まっている。
それがあなたの救いにはならないよ。何も助からない。何も助けられない。
うるさい。
ねえ、あなたの本当の願いを教え黙ってろ。
もうお前と話すことは無いから。
外側に手を押し当ててみる。
細い格子状の茨や霧なんかがあって、鳥籠のようだった。
「...もう大丈夫だよ。」
誰に伝えるでもなく呟くと、それは簡単にほどけた。
〈ロージャが侵蝕した!みんな離れて!〉
もうこれで四人目だ。
グレゴール、ウーティス、イサン。
それからロージャ。
まだ生きている囚人たちも限界が近い。
『ねじれは...全部、殺さないと...』
囚人たちも、ロージャ本人すら反応できずナオの霧で出来た爪に引き裂かれ、食いちぎられた。
その瞬間、ねじれたナオの顔らしき部分から涙のような雫が溢れ出し、囚人たちをバリアのような薄い膜として包んだ。
私にも同じように包むと、さっきまで体の芯から蝕むような冷気が薄まって行った。
〈これは...〉
私がこれを理解するよりも早く、良秀が二つのE.G.Oを振り被り、飛び上がった。
「仕上げ...!」
『───!!』
肉や骨が砕ける音が響いて、ねじれたナオの巨体が何かを叫び、崩れ落ちた。
〈...終わった...のか?〉
肩で息をしている囚人たちの中で、良秀だけが背中の籠にある小さな火をずっと見ていた。
人格牌を取り外し、囚人たちを蘇生する。
「...管理人殿...深緑殿は...戻るのだな...?」
〈うん。連れ戻すよ。〉
「ハ、オメェのそのカチカチっつー音はやたらとうるせぇからな。」
時計をまわ───
「待て。回すな...必要ない。」
〈え?〉
良秀に止められるまま、待った。
しばらくして籠の格子が歪み...いや、一人でにほどけ、中からナオが這い出て、ずるりと落ちた。
「言ったろ。」
良秀は自慢するでも誇るでもなく、当たり前だと言いたげにナオを受け止めていた。
「......あー......ほんと、ごめん...」
目を覚ましてからの第一声は謝罪だった。