俺とアイの関係性が良くなって約一か月後、社長がアイの妊娠に気づいた
(まあお腹もだいぶ大きくなってきたからな)
そこからは大変だった。急遽アイの活動休止を決めその後は病院。人目に付く病院は勿論アウトなので田舎のバレにくい所を選ばないといけない。そっち方面は社長が丁度いい病院を知っているので頃合いを見て行くらしい
「もう少しバレないと思ったんだけどね~」
「ワン(いや、バレるだろ)」
「これからどうしよう。佐藤社長に連絡するまで家から出るなって言われてるし」
「ワワン(当たり前だろ、あと斎藤社長じゃなかったか?)」
「しばらくはずっと一緒に居られるよ。トパーズ」
あの日以降アイは俺に構ってくるようになり俺が返事をするととてもニコニコするようになった
(飼い犬が返事をしてくれるのが嬉しいのは分かるが、こんなにニコニコするか?)
アイの今までを知らないトパーズからすれば何故アイがこれほどまでに嬉しそうにするのか分からないがアイからすれば暴力を振るう母以降初めて出来た家族だ。たとえ犬で言葉が通じなくもアイは嬉しかった
「何しよっか。散歩は流石に無理だし。そうだ、せっかくだし何か芸でも覚えてみる?」
「ワン(良いけど、直ぐにやること無くなるぞ)」
外見は可愛い子犬でも中身は十分成長した人間だ。基本的な芸は知っているので練習しなくてもできる
「ワフ(まあ練習も何もせずにできたら流石に怪しいからちょっとは練習するけど)」
「じゃあまずはお手からね。私が手を出したらこういう風に足を乗せるの、分かった?」
「・・・(こくり)」
「じゃあ『お手』!」
「ワン」
「おー!一回で覚えちゃったの?天才だね」
「ワン(何か他の犬が芸を覚える理由が分かった気がする)」
芸が出来たらこんなにうれしそうに褒めて撫でてくれたりおやつをくれるのだ。よほどの理由が無い限り喜んで芸を覚えるだろう。
そうして俺がアイと遊んでいるとインターホンが鳴り見てみると斎藤社長だった
「どうしたの佐藤社長、トパーズに会いに来た?」
「斎藤だっていってんだろうが。昨日電話で言ったよな?今日俺が知ってる病院に行くって」
「あー、ごめんうっかりしてたよ。直ぐ準備するね」
「そのままでいいだろ。お腹に負担を与える訳にもいかんし。あとは帽子か何かで顔を隠せれば」
「ワン(これだろ)」
人間ならばそのままアイに帽子をかぶせてやれたりもするのだろうが残念ながら今の俺は犬。椅子に上ってアイがあまりしゃがまない様にすることしか出来ない
「ありがとトパーズ、良い子良い子」
「ワフ~」
「そういえばトパーズはどうしよう。病院て動物OKだっけ?」
「まず中には入れないな、だからと言って置いて行くのも不安だな早くに帰れても夜中だ」
「そっか~、一緒に来る?」
「ワン(勿論)」
「よし、行きたいみたいだし連れて行く」
□
「クゥーン(暇だ・・・)」
田舎の病院に到着した後、社長とアイは俺を車に残して病院の中に入っていった
(動物は病院の中に入れないしちゃんと水も置いて行ってくれたから良いんだけど)
妊娠時の検査などどのくらい時間がかかるか分からない俺は特にやる事も無いので寝て待っているしかなかった
(・・・ん?)
何やら外が騒がしくなり外を見てみるとアイが走ってきていた
「ワン!?(妊娠中に走るなよ!?)」
もちろんアイには俺の言葉が伝わっていないのでそのまま走ってきて車のドアを開けると俺を抱っこして嬉しそうに俺に検査結果を伝えてくる
「双子だって!私のお腹に双子の赤ちゃんがいるんだって。トパーズ」
「ワン(双子だったんだ)」
「はあ、嬉しいなあ。きっと楽しい家族になれるよ、そしたらトパーズもお兄ちゃんだね」
「ワン(お兄ちゃんねえ)」
その後アイは戻ってきた社長に連れていかれた。まだ検査などが残っていたらしい。
その後は検査も終わり帰宅。家に着くころには深夜で少し眠い
(何か帰宅途中担当医が自分のファンだったとかアイが言ってたけど大丈夫かよ)
まあ自分が考えてもどうしようもないと眠い頭で考えながら俺はいつも寝ているケージのまで戻ろうとしたがこの子犬ボディのせいなのかそこまで体力が持たず倒れるように寝てしまった
□
「トパーズ?寝ちゃったの?」
社長も帰り寝る準備を行っているとリビングで寝ているトパーズを見つけたアイ
「いつも自分からケージに入って寝るのに、よっぽど疲れてたのかな」
アイはトパーズを抱えるとケージの前まで来ると止まり少し考えた後ケージを閉める。この時トパーズはまだ抱えたままだ
「せっかくだから一緒に寝ようか」
アイはそう言うとトパーズと一緒に布団の中に入りトパーズの頭を軽く撫でる
「この子たちが生まれたらお兄ちゃんとして守ってあげてね。おやすみ」
ちなみにトパーズの犬種はジャーマン・シェパードである