俺様はゾンゲである   作:花河相

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ガルル

 俺とティナは互いを考慮しつつ、持ちつ持たれつの関係を築いている。

 

 気がつけば俺は実質ティナの護衛兼助手のような立ち位置になり1年近くが経過した。

 

 俺は危険地帯にティナと一緒に行き、そこそこの捕獲レベルの猛獣を狩ることが多い。

 テレビデビューで有名に……なることはなく、無名のままだ。

 美食屋の中ではそこそこ有名にはなっているらしいが、世間的認知度は低い。

 ティナは俺をテレビで映すどころか戦闘部分を俺が映り込んでいるところだけカットしやがる始末。

 一度文句を言ったのだが「文句ある?視聴者は未知の食材を求めるのであって、アンタの悪人面なんて一ミリグラムも求めてないの!それにアンタを有名にしたくない!」と怒鳴られてしまった。

 しつこく聞いても逆に怒られるだけなので、こんなものだと割り切った。

 別に有名になりたいわけじゃない。

 

 物語が始まるまでは目立つのは避けたい気持ちもある。

 だが、研鑽は怠らず、鍛え続けた。

 

 アニメの流れを打ち切らないように。登場人物たちに極力関わらないように。目立たぬように行動した。

 

 節乃食堂に取材しようとか言われた時は流石にお断りした。まぁ、結局取材はできなかったらしいが。

 

 そんなこんなでさらに過ごすこと半年、俺は27歳となった。

 

 そろそろ物語が始まるなと何となく思っていると、ティナからある日。

 

「今からトリ港に行ってガララワニ捕獲して来て!船の準備は終わってるから。なるべく急ぎで!」

 

 事情を聞くとホテルグルメを取材中のティナが俺の許可なしに勝手に引き受けて来やがったのだ。

 まぁ、久々に肉食べたいと思ったのでサクッとこなしてやった。

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 届けたらホテルグルメのオーナーが泣いて喜んでいた。初めは俺が来るなり盗賊が来たと怯えていたが、グルメIDを見せ、ティナも同行していたことから事なきをえた。

 

 なんか、ガララワニの肉はお偉いさんが集まる大規模なパーティで出される食材らしい。

 俺の前に依頼した人は現地で全て食べてしまったとか。

 

 なんか聞いたことあるなぁと思いつつ、ガララワニが全然見つからなくて、捜索に3日程かかったが、その疑問は探すうちに解消された。

 

 あ、全部食べたの多分トリコだなと。

 

 生態系が崩れかけていて、バロン諸島の奥地にいるはずの猛獣までそこら中にいた。

 とりあえず、想定以上の時間はかかったが、バロン諸島の奥まで捜索しやっとの思いで見つけた。

 

 手間と時間はかかったが損になることはなかった。

 ある出会いがあったからだ。

 

「ガル!」

「ほら、暴れんな!」

 

 現在、ホテルの寝室でバロン諸島で会った猛獣の世話をしている。

 捕獲を終え、帰る途中何とも珍しい金色のガララワニの幼体がいたのだ。

 大きさにして1メートルほど。

 IGOに預ければいい金になると思い、捕まえた。

 初めは警戒していたが、誘き寄せるため、捕獲したガララワニの肉で餌付けしたら……懐かれた。

 

 しかも、帰りの船上で犬みたいに遊んでいたら愛着がわいてしまった。

 

 ……だって、肉あげたら尻尾を左右に振って喜ぶし、撫でると嬉しそうに体を擦り付けてくるのだ。

 

 組織に渡したら実験の日々が待っている。

 ……悩んだ挙げ句、ペットにすることにした。

 おそらく亜種だろう。普通のガララワニに比べて知能がとてつもなく高いのだ。

 お手、チ○チ○を試しに教えてみたら芸を覚えた。

 

「……お前デカくなったなぁ」

「ガル!」

 

 捕まえた時は1メートルほど。

 飼い始めて一週間くらい経つのだが、50センチ大きくなったのだ。

 

「……ここで飼うのも限界だな。そろそろ引っ越しするか」

「ガウ!」

 

 ……うん、可愛い。

 人間の言葉完璧に理解しており頭がいい。

 大きくなれば水面移動手段にしてもいいかもしれない。

 

 だが、一週間でこの成長は異常だな。一度IGOに頼んで調べさせた方がいいかもしれない。マンサムっていうIGOのお偉いさんから直々に電話がかかってきて「是非ともお宅のガララワニちゃんを健診させてほしい。……え?今ハンサムってーー」その時は即電話を切ったのだが、どこから調べたのか俺の滞在するホテルに電話がかかってきたのだ。

 この時は無視していたのだが、この成長速度と高い知能だ。一度調べた方がいいだろう。マンサム所長の個人番号も教えられていることだしな。

 病気を持っていても大変だし、どんな物をご飯にあげたらいいのかも知っておいた方がいい。

 

 そう思いつつ、ガララワニの世話をしていたら、急にドン!と部屋のドアが開く音が聞こえた。

 

「ちょっと!聞いてよ。せっかくのてんこ盛りスクープ奪われたわ!ああ!せっかく虹の実映せたのに!しかも独断で行動したから謹慎処分って何よ!ああ!ほんっとにムカつく!」

「……ティナ、勝手に入って来るなと毎回言ってるんだが……虹の実?」

 

 ティナが勝手に俺の部屋に入って来たので注意しようとしたのだが、気になるワードが聞こえた。

 

「何があったんだ。聞かせろ」

「今日は飲むわよ!」

「ガル!」

 

 今日の件は不問にして何があったのか、詳しく聞くことにした。

 ティナの仕事をこなす上で愚痴に付き合うことが多い。

 いつもは面倒くさいので聞き流すのだが、今日は真剣に聞いてあげることにした。

 

 重要なことだからだ。

 

 話を聞くと「虹の実」を映したデータをIGOから取り上げられたと愚痴を言われたり、10年に一度のフグ鯨の産卵があるとティナから聞いた。

 

「……ついに物語が始まったか」

「何言ってんのよ……ちゃんと……ヒク……聞きなさいよ」

 

 俺は酔い潰れたティナを無視してそう呟く。

 とうとう始まるのだ。

 

 これから人間界、グルメ界は荒れるだろう。

 だが、悪いことだらけじゃない。

 美味なものがたくさん食えるのだ。

 

 ああ……想像しただけで。

 

「涎が止まらない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 酔い潰れたティナはというと。

 

「ガル!」

「私の話聞いてくれんのは……ヒク……ガルルちゃんだけよ……ヒク…」

「ガウガル!」

 

 ティナが勝手に部屋に入って来ることはよくある。

 イラついたことがあったら愚痴りに来るのだ。

 

 最初の頃は真剣に聞いていたのだが、途中から面倒くさくなった。

 酒さえ渡せば勝手に酔い潰れるので、寝たらベッドに運んでいる。

 こんな雑な扱いをしても、ティナは懲りずに来るのだ。警戒心がなさすぎる。

 信用してくれているのか、男として見られてないのかわからない。

 朝起きて俺と顔が合うなり「……今回も……はぁ」とショックを受けたようにため息をするのだ。

 ……そんなに俺を見たくないなら来なきゃいいのに。

 

 

 ちなみにティナは初めはガララワニを怖がっていたが、お手とチ○チ○を披露させたら可愛がるようになった。

 ガルルというのは金色のガララワニの名前だ。

 ティナが勝手に名付けた。

 

 

 もっとかっこいい名前をつけようのしたのだが、酔っ払ったティナが「ガルル!」という名前で呼び続けたせいですっかりそれが名前だと思い込んでしまった。

 

「ガルル、そいつ運んでおいてくれ」

「ガル!」

 

 ガルルにお願いすると器用に背中に乗せてティナを寝室へと運んだ。

 ワニというより忠犬だな。

 

「優しく世話をしすぎた……フグ鯨の件終わったら外に連れて行くか」

 

 最近、ガルルは野生を忘れてしまっている。

 まぁ、室内で生活し続けたらこうなるよな。

 でも、外に出たがらないんだよなガルルのやつ。

 

 赤ちゃんだからと甘やかしすぎてしまった。

 そう思いつつ、俺はマンサムに向けて電話をかけた。

 

「マンサム所長、この前の一件で電話した。ガルルのことを頼みたい」

『お!本当か!……あれ今ハンサムって――』

 

 俺は要件だけ伝えて電話を切った。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。

金色のガララワニ。
突然変異のガララワニの亜種。
アニマルパートナーポジション(予定)
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