初対面はしっかりするべきだ。特にトリコたちに関しては。アニメでのゾンゲは全く相手にされなかったのだ。だが俺はアニメのゾンゲ様ではない。
俺は深呼吸し、トリコたちの元は向かう。
「おいこるぁ、何やってんだ」
とりあえず、舐められないように笑顔で声をかけたが、その前にきっかけとなる奴の注意をする。
ティナは一度トリコと小松と会っている。なので、ティナの知り合いというポジションを利用する。
ティナはどうせ迷惑を考えず取材をしているはずだ。
それを注意して常識ある奴だとトリコたちに好印象をもってもらえば儲けもんだ。
悪いな、ティナ。利用させてもらうぜ。
「……あん?」
だが、想定外のことが起きた。
トリコが立ち上がり威圧してきたのだ。
……うわぁ、俺よりでかいじゃん。
「……俺たちに何の用だ?」
トリコは俺を上から見下ろしてきた。
いや、反応してくれたのは嬉しい。だが、別にそこまで反応してくれなくてもいいんだよ。
ただ、ゾンビだとか馬鹿にしない程度でいいのに。
え、もしかして俺トリコに敵認定されたわけ?どうするか。何というべきか。どう話を切り出せば。
「あんた今いいところなんだから邪魔すんじゃないわよ!」
おぉ、ティナに初めて感謝する時が来るとは。
俺とトリコが睨み合っている何とも言えない空気を断ち切ってくれるとは。そのままトリコから視線を離し、ティナに文句を言う。
「人様の迷惑を考えてから言えやごらぁ」
「は?何よ文句あるわけ?!」
「ちょっと待ってください!えっと……ティナさんのお知り合いですか?」
この黒髪の小さい人は……小松か?
困ってるようだ。……は!俺としたことが張り切りすぎて自己紹介してねぇわ。挨拶は常識だってのに。忘れていた。
「こいつはゾンゲ、私の助手、以上!」
「……俺はゾンゲだ。美食屋をしてる。よろしくな……小僧」
ぞんざいに扱うティナを無視して小松に笑顔で自己紹介をする。
今後多く関わることになるしな。ここは丁寧に挨拶する。
「ひぃっ!」
……思っていた反応と違う。そんなに顔を真っ青にしなくても。
やってしまったことは気にしたってしょうがない。小松はもともと怖がりだ。なら、時間をかけて仲良くなればいいだろう。
さて、次にトリコに挨拶をしよう。
俺はトリコに笑顔で自己紹介をしようとしてーー。
「その怖い顔を引っ込めろ」
……あ、あれ?トリコよ、なぜ俺の右肩に手を乗せるんだ?
何故そんなに敵意を向けるんだよトリコ。この敵意のない笑みを浮かべていると言うのに。
な、何か他愛のない会話をしておくか。
共通の話題と言ったら……フグ鯨だな。よし、まずは誤解を解くことから始めるか。
「その手を下ろせ……別に争いに来たわけじゃねぇ。……美食四天王のトリコだな」
「ああ、そうだ」
よし、第一関門は突破。次に目的を確認する。
「フグ鯨が目的か?」
「ああ」
トリコは肩から手を下ろすが、睨まれ続ける。
……あれ?何故かうまくいかない。
「なら、互いに頑張ろうじゃねぇか」
お互い頑張りましょう、と挨拶のつもりの握手を求めてみると。
「……ああ。よろしくな」
少しも警戒を解いていないトリコだったが、握手には応じてくれた。……だが、中々手が離れない。……気のせいじゃなければ互いに力を入れてしまっている。
あ、俺が力を抜けばいいのか。少しずつ力を抜くと……よし手が外れた。だが、この重たい空気どうするべきか。
「てか、あんた何しに来たのよ。まさか喧嘩しに来たわけ?」
ああ、ティナよ。今度高級料理店奢ってやるよ。
ここまで空気を断ち切ってくれるとは。
感謝を内心伝えつつ、ティナに視線を向ける。
だが、手短に答えるとして……要点をまとめると。
「ちげぇよ。車内販売で酒を全て買った迷惑なやつがいるから、貰いにきたんだ」
「なるほど」
「……そりゃ多分俺たちのことだ。酒は好きなだけ持って行ってかまわない。悪かったな」
……すると、返答してきたのはトリコだった。
俺また変な言い回ししてしまったか?
まぁ、別にいい。後は酒をもらって退散しよう。この雰囲気はまずい。
「いや、大丈夫だ。だが、タダで貰うのはごめん被りたい。金は払わせてもらうぜ」
「いや、必要ねぇよ。もともと俺たちが悪いんだからな」
「……そうか、なら、この辺3本ほどもらうぜ」
「ああ、好きにしろ」
挨拶も無事に済んだし、酒ももらえるしな。ただ、タダでもらうのは気が引けるから金だけ置いとこうと思ったんだが、断られた。
あれ?いいのか。
「ティナ、あまり迷惑をかけんな。俺はやることは済んだから戻る」
「え、ちょっと待ちなさいよ!」
立ち去る時はクールにするのが男。
これ以上揉めたくないので席に戻る。
ティナも俺の後をついてきたようだ。
こうして主人公とのファーストコンタクトは失敗に終わったのだった。
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