俺様はゾンゲである   作:花河相

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魔臭

 トリコたちと別れた後、俺はティナに文句を言われている。

 

「アンタはトラブル起こさないと気が済まないの?列車乗る前も少し揉めてたわよね?」

「俺のせいじゃねぇ。相手から絡んできてんだよ」

「はぁ……アンタが不気味な顔をするのが悪いんでしょうが」

「あ?…お前の目は節穴か?この敵意のない笑みを見ろ」

「それよ…その顔が原因でしょ?……はぁ。もういいわ。でもトリコに毒ガス吐かなかっただけ今回はひとさじはマシね」

「毒ガスじゃねぇ、フォールブレスだっての」

「技名なんてどうでもいいの。喧嘩相手を卒倒させる破壊力持つあれは毒ガスで大盛り充分よ。……そのせいで番組取材NGになった美食屋何人いることか」

「トラブル起きる前に少し気を失ってもらってるだけじゃねぇか」

「その発想が特盛り異常なのよ。……もういいわ。とにかく!トリコとは仲良くしてよね!いい?」

「ち…もともと喧嘩する気ないってーー」

「あん?」

「……わぁったよ」

 

 捕獲の現場では美食屋たちと良好な関係を築かなければならない。現地で取り合いになることもあれば協力することもある。

 そのために挨拶をしただけのつもりが相手が武器を握ってくることはよくある。

 今朝も列車乗る前、フグ鯨漁に向かうであろう美食屋が睨んできたから微笑み返しただけなのに……だから少し意識を刈り取った。

 

 揉め事を起こしたくないのと、互いに怪我をしないための配慮で気絶させているだけなのに、それのどこが悪いんだか。

 臭いも抑えている。意識が朦朧とする程度に調整しているのだ。

 

 俺は悪くない。敵意を向けてきた相手が悪いのだ。

 

 それをティナにも伝えているのに、何でこうなる。

 もう細かいことは気にしてもしょうがないのだが。

 

 とりあえずティナから小言を言われるも、もといた席に着いたので酒盛りを始めよう。

 

「お前は酒を飲むなよ」

「わかってるわよ」

 

 ティナは酒が入ると面倒臭くなる。

 わかっているようで何よりだ。

 その後は俺は一人で酒盛りを始め、ティナは優雅に紅茶を飲んで過ごしていた。

 そんな時であった。一人の老人が話しかけてきたのだ。

 

「あの……酒ぇ分けてはくれませんかねぇ……?」

 

 小柄で白いリーゼントのじいさん……もしかしてこのじいさん。

 

「おじいちゃん、体にーー」

「構わねぇよ」

 

 ティナは目の前のじいさんを気遣い言葉をかけようとするが俺はそれを遮るように返答する。

 怒るティナに睨まれるも無視して友好的に接するため、笑顔を作りながら未開封の酒を渡す。

 

「これでいいか?」

「おお……ありがとうごぜぇました。酒の恩はいつかきっと……ヒック」

「大袈裟なんだよ……だが悪いなじいさん、残りはそれしかないんだ。一つ奥の車両に酒を全て買い占めた奴らがいてな。もっと欲しいようならそいつらに交渉するんだな。……まぁ、俺もそいつらにもらったんだ。気前のいい奴らだったから爺さんにもくれると思うぜ」

「ご親切にどうも」

 

 俺はじいさんにトリコたちの元へ向かうように誘導する。

 じいさんは俺が渡した酒だけではまだ足りないようで早速ぐびぐびと飲みながら一つ奥のトリコたちのいる車両へと移動していった。

 

「どういうこと?」

 

 じいさんが車両から移動した後、ティナから質問が来る。

 

「あの人に恩を売っといた方がいいと思ってな」

「あのおじいちゃんに?なんで?」

 

 間違いじゃなければあのじいさんはアニメでも最強格の一人、ノッキングマスター次郎だろう。

 そんな大物に遭遇出来るなんて何という強運、さすがはゾンゲ様だ。

 

 一応、恩を売っておけば何かあった時に助けてくれるかもしれない。

 だが、俺が酒を渡して、トリコと小松と会うイベントを潰すのは避けたい。

 上手く誘導できてよかった。

 ティナに話してもいいのだが、ここで話すと取材に行きそうなので、内緒にする。

 俺は右人差し指を立て、口の前に持ってくる。

 

「いずれわかる時がくる。内緒だ」

「それ二度とやらないで」

 

 お茶目な冗談のつもりだったが、思っていた以上に不評だったらしい。

 ティナに辛辣な言葉をかけられたので二度としないと決めた。

 

「それにしても俺の笑顔が悪いってわけじゃないな。あのじいさんは俺に対して普通に接していたじゃねえか」

「あのおじいちゃんかなりお酒飲んでたようだし、アンタの顔見てなかっただけでしょ?」

 

 ……そうなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「用は済んだ……ね。……厄介な奴と居合わせちまったぜ」

「トリコさん?」

  

 ゾンゲとティナがいなくなった後、トリコと小松の二人はそう発言した。

 

「知ってるんですか?」

「ああ、美食屋の中ではある意味有名な奴だ。……“魔臭”なんて異名もあるくらいだ」

「ましゅう?……ですか?一体どんな意味が?」

「さぁな……だがいい噂は聞かねぇな」

「そ…そうなんですね。ちなみにどんな噂なんですか?」

「触れてはならぬ男。災い招く禁じ手を持つ男……小耳に挟んだ程度だ。詳しくは知らん」

「ええ……そ…そんな人が何で僕たちのところに」

「俺らを牽制しに来たってところだな」

 

 トリコはゾンゲと言う男の警戒レベルを少し上げていた。

 

「で、でもお酒を貰いに来ただけって」

「いや、そりゃ方便さ。この列車にはフグ鯨漁に向かう美食屋だらけ、おそらく品定めでもしに来たんだ。現場では争奪戦もありうる。だから、腹の探り合いは始まってんだ。あいつは脅しをかけに来たってところだな」

「物騒なんですね。……もしかして用が済んだって言ったのも」

「ああ、めぼしい連中がわかったから引き上げたんだろうさ。……ち、厄介なやつに目をつけられたぜ」

 

 トリコは酒を一口飲み、窓から外を眺める。ゾンゲへの扱い、対応について考えているのだ。

 すると、小松が一つ疑問に思ったのか、質問をする。

 

「で、でもティナさんには普通に接してましたし、噂ほど悪い人じゃないんじゃないですか?」

「さぁな」

「えぇ」

「……ま、警戒するに越したことはねぇ。小松、お前も気をつけろ。もしもの場合はさっき渡した特製クラッカーを使えよ」

「……わかりました」

 

 トリコの発言に小松はため息を吐いた。

 また、危ないことになるのかと。

 トリコはそんな小松のため息に鼻でフッと笑うも同時にこう思うのだった。

 

(思わず警戒しちまったが……少なくとも敵意はなさそうだったな。……念のためココにも伝えておくか。あいつなら何か知ってそうだしな)

 

 ちなみにトリコは超嗅覚を持っている。それは常人の1万倍以上の感度を持つ。通常はその抜群の嗅覚にて相手の匂いを嗅いだだけでその体調や精神状態がわかるのだが……ゾンゲからわかる情報は何一つ無かった。

 今朝ゾンゲは絡んできた美食屋を気絶させた時にフォールブレスを使ったのでオーダレスブレスを使い臭いを中和していた。

 そのせいもあり、トリコがゾンゲから嗅ぎとった臭いは無臭に限りなく近く、僅かに妙な臭いが入り混じっているだけという不思議な感覚。

 名前を聞いたとき、悪い噂もあって咄嗟に警戒してしまったトリコ。

  

 悪い噂もフォールブレスを使われた美食屋たちが陰で話したことが広がったのが原因。

 悪臭で意識が朦朧としていたのでほとんどの美食屋たちはゾンゲに絡んだ記憶が曖昧になっており、何があったのかを正しく覚えていない。

 ゾンゲ自身の山賊のような見た目も原因してか、悪評が広がってしまったのだ。

 

 不運なりゾンゲ、彼はこの警戒を解くことができるのだろうか。

 

 

 

 その後、酒に酔っているノッキングマスター次郎に酒を渡すことになったトリコと小松だが、二人はそのじいさんの正体を知らない。

 

 そしてトリコと小松はもう一人の四天王のココと合流を果たした。

 




最後まで読んでくださりありがとうございました。

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