俺様はゾンゲである   作:花河相

16 / 23
不運

 

 電車での初対面で失敗してしまったが、無事に駅に到着した。

 その後ティナと準備を整え、洞窟に入った。

 洞窟の周囲にはフグ鯨を奪うため銃火器を所持して待機している連中が多かった。……食材一つになんて物騒な世界だよ。

 

 そういえばティナってアニメだと一人で洞窟前に来てたよな。

 どんな胆力してるんだよ。度胸だけなら立派な美食屋だな。

 

 そんな感想を抱きつつも、洞窟に入った。

 どうせゾンゲ様の強運で猛獣に遭うことなく、素通りで行けるかなと思っていたのだが。

 

「視聴者の皆さん、今私はピンチに陥ってしまっています!捕獲レベル7、サソリゴキブリに襲われそうになってます!」

「おい!お前こんな時に撮影するな!」

「ちょっと余計な音声入るから黙ってて!」

「そんな場合かよ!」

 

 今、サソリゴキブリに襲われている。……もうあれだな。ティナが原因かもしれない。気のせいじゃなければティナと同行した時は猛獣と遭遇することが多い。もう慣れたので気にしていないが。

 何故それでもティナと行動を共にしているかといえば、俺自身がティナを気に入っていることと、スリルや強敵を求めるときはティナと一緒にいた方が都合がいいからだ。

 強いやつと戦えば俺自身の成長にもつながるしな。

 

 

 サソリゴキブリは繁殖力が高く、常に群れで行動するので厄介だ。ちなみに食材としての価値はゼロ、捕獲したくない食材ランキング一位を獲得するほどの嫌われ者。

 ああ、本当に関わるの嫌だよ。

 

 別にピンチではない。

 捕まらなきゃいいことなんだが無駄な体力を消費したくないのだ。

 今、ティナを両手で抱えながら逃げているので戦闘もできない。

 この日に備えてサソリゴキブリの毒への耐性をつけてはいるが、薄暗いので視界がはっきりしていない状況。

 戦闘は避けたい。

 

 しかもこいつら数が多すぎる。さすがに1匹いたら30匹いると考えた方がいいやつの名前が入っているだけはある。

 やむをえん。

 

「ティナ!鼻を塞げ!」

 

 俺はティナにそう指示し、空気を腹一杯吸い込む。

 悪臭を生成し、地面に吹き込む。

 

「フォールブレス!」

 

 どんな生物にも鼻はある。サソリゴキブリも例外ではない。

 だから、激臭を放つことで、卒倒させた。

 

「動きはなし……か。無駄な殺傷はしたくないからな」

 

 全部のサソリが気絶するのを確認していると……なんだよティナそんなに叩いて。

 

「んー!んー!」

 

 あ、早く中和しろってことか。この空気吸い込んだら常人じゃ気絶するしな。

 

「オーダレスブレス」

 

 中和の空気を生成してフロア全体に吹き出す。

 

「……もう大丈夫だ」

「即死……相変わらず強烈ね。その毒ガス」

「死んでねぇよ。あと、毒ガスじゃねぇっての」

 

 そんな小言をティナから言われるも、ティナは再びカメラを回して気絶したサソリゴキブリの撮影を始める。

 こんなやつ撮る意味ないと思うのだが……ティナは俺と行動を共にするようになってから食材だけじゃなくてそれに辿り着くまでの動画を残すようになっていた。

 どれだけ苦労して食材に辿り着いたかを伝えたいらしい。

 まぁ、結局俺は映してくれないんだけどな。

 別にいいけど。

 

 とにかく今はフグ鯨に集中しよう。サソリゴキブリのせいで時間ロスしたし。

 

「……今のでだいぶ時間をくった。早く行くぞ」

「ええ、そうね」

 

 とりあえず、目的は忘れていないようでよかった。

 ティナはカメラを止め俺より先へと向かう。

 

「……この下だな」

「うわ、深すぎでしょ。底が一ミリも見えない」

「俺から離れるなよ」

「わかってるわ」

 

 一言確認した後、ロープを取り出し、しっかりと固定できる場所に括り付け、下へと向かう。

 

「皆さん、ご覧ください。海蛍がいました。つまり、砂浜の洞窟が近いと言うこと。……綺麗ですねぇ。クルッポーも見てごらん」

「クッポ!」

 

 俺は黙々と下へと降りる。どうせ声をかけたところで文句を言われるだけだ。

 クルッポーはティナの腰にある特別製のケースから出てきて肩に乗る。

 

 

 まぁ、今のところ強い猛獣に遭遇していないし大丈夫だろう。

 騒ぎも起こっていないので、早めにフグ鯨を捕獲して退散したい。

 

 地面に着いた後、洞窟をさらに数分進む。海蛍が多い方向に砂浜があった。

 それにしても本当に静かだ。

 アニメだとデビル大蛇という捕獲レベル20くらいの猛獣がいたはずだ。

 そいつの厄介な点は感知力。暗闇でもピット器官を使い体温で獲物を感知する。

 巨大で力が強い、学習能力が高い、胃から吐き出す溶解液や口からの毒液。

 暗闇ではこっちの分が悪いのだ。

 一応、対策を持ってきてはいるものの、倒し切れるかと聞かれればノーと答える。

 決定打がないのだ。

 だから、なるべく遭遇はしたくない。

 

「海蛍が多くなってきているわね」

「ああ、何も問題が起きなければフグ鯨がいる洞窟の砂浜に到着できる」

「……その何もってのがてんこ盛り物騒に聞こえるんだけど」

「そりゃそうだ。ここにはやつがいるからなぁ」

 

 そんな会話をしつつ洞窟を進むと、高さ5メートルほどの段差があった。

 そのままティナを抱き抱え飛び降りた。

 

「どっこいしょっと」

「その掛け声、私が重いみたいだからやめてよね」

「そりゃ悪かった」

 

 小言を言ってくるティナを下ろし、周囲を警戒する。

 だが、幸いなことにこの場には猛獣がいないようだ。

 

「……海水の匂いがするってことは……砂浜が近いってことよね!ああ、ついにご対面フグ鯨!てんこ盛りスクープよ!」

「あ…おい待てーー」

 

ーーヒシャァァ!

 

 洞窟の砂浜が近いとわかるとティナはカメラ片手に走り出したので危ないと声をかけようとした瞬間であった。

 

「…う、うるさい」

「…チッ」

 

 俺たちが通ってきた道から洞窟内に響きわたるほどの猛獣の鳴き声が。

 反響は酷いようで洞窟内が大きく揺れ、天井が少し崩れ始める。

 

「な…何よこれ」

「多分、デビル大蛇の鳴き声だ……近いな。急いで砂浜に向か……いや、待て」

「どうした……うそ」

 

 ……最悪だ。

 おそらく今の悲鳴に反応したのだろう。

 

「ヒシャァァ」

 

 今この洞窟で最も会いたくない猛獣に遭遇してしまった。

 




最後まで読んでくださりありがとうございました。

ふと気になった本作ティナについて

  • 再現できている。
  • 全く似てない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。