多分ティナの印象ガラッと変わると思います。
「しっかりして!」
ティナは今の状況に焦っていた。
「何か栄養を」
今のゾンゲは痩せ細り、あれ程あった筋肉もなくなり普段見るゾンゲとは程遠い姿をしていた。
ティナは焦りながらも対策で持ってきていた栄養ゼリーを取り出し飲ませる。
これはティナがゾンゲのために用意したものだ。
一本のゼリーに常人の3日分の栄養が凝縮してある。
飲ませるも回復する様子はない。
「なんで効果出ないのよ!……小松くん!……小松くん?」
とにかく栄養を摂らせなければいけない。
栄養ゼリーを追加で2本飲ませるも呼吸は薄くなるばかり。そこで小松に協力を求めようと呼ぶも反応がない。
クラッカーを鳴らしてから小松は全く動いていない。
ティナはゾンゲとデーモンデビル大蛇の戦いに集中してしまい、小松の心配を後回しにしてしまったのだ。
(……落ち着け私、落ち着け私。こういう時こそ冷静に。……ゾンゲには栄養を摂らせた……息もある。……今は小松くんを起こさないと)
小松なら効率よく栄養を摂る方法を知っているかもしれない。
そう判断して小松を起こしにいくも……。
「小松くん!しっかりして!…小松…くん?う…うそ。心臓が止まってる」
ティナは現状にさらに焦る。
(えっと…まずは心肺蘇生を……でも、ゾンゲも……どうしようどうしようどうしよう)
「私は……どうして重要な時に……だめよ。泣いている場合じゃない。一先ず小松くんに」
ティナは心肺蘇生を優先する。両手を小松の胸部に乗せた……その時であった。
「お嬢さん、ヒック…どうかされたか?…ヒク」
「え……あの時の」
現れたのは列車でお酒を渡したおじいさん……ノッキングマスター次郎であった。
ティナは戸惑い動きが止まってしまう。
すると次郎はそんなティナを横目に倒れている小松の様子を窺い始める。
「この子は列車の……ふむ、心臓が止まってしまったのか」
「あ…あの」
「任せなさい」
「…わかった」
ティナは自分にできることがないのはわかっているので、見守ることにした。
次郎はそのままノッキングガンで電気を流して小松の心臓を蘇生。
「鼓膜も破れておるのか」
次に鼓膜も修復した。
流れるような作業にティナは驚いていた。
「これで大丈夫だろう」
「す…すごい……あ!おじいさんお願い。あいつも助けて!」
だが、ティナはすぐにもう一人の重症者の存在を思い出す。
このおじいさんなら助けられるかもしれない。その一縷の望みにかけたのだ。
「ほれほれ、慌てるでない」
「でも!このままだと死んじゃうかもしれないの!……あいつが死んだら私は」
「大切な人なんじゃな。ちょっと待っていなさい」
涙ながらに必死に訴えるティナに次郎は落ち着かせるため、微笑みながらゆっくりと倒れるゾンゲの元へ移動する。
「うぅぅ」
ゾンゲは辛うじて息をしている状態、先ほどに比べて呼吸が浅くなっている。
「ふむ……栄養失調…ヒク…どんな無茶をしたんだか」
「た…助かるの?栄養ゼリーを飲ませても一ミリも良くならないの」
「これは……グルメ細胞が原因だな。この場合、ただ栄養を摂らせれば良いというものじゃない……ヒク……これを飲ませてあげなさい」
次郎は懐から一升徳利を取りだしティナに渡す。
中身は作りたてのフグ鯨のヒレ酒。
ティナは必死であり、次郎から渡された一升徳利を受け取るとそれをゾンゲに飲ませようと蓋を開ける。
「わかった。ゾンゲ、ほらこれ飲んで」
「うぅ…」
……だが、反応が薄い。
少しゾンゲの口の中に酒を流し込んだが、喉が動いていないので飲めないでいる。
「……しょうがない」
「何をする気で」
次郎の言葉を無視し、ティナは意を決したようにお酒を口に含む。
そして、そのまま……。
「……若いのう」
ティナはゾンゲに口移しで飲ませ始めた。
次郎はその光景に感心したのか、若い頃の自分に重ねたのかは定かではないが黙って眺めている。
ティナにとってこれは初めてではない。
過食作用でゾンゲが動けなくなり7日間予定外の野宿をした時に口移しで飲ませたことがある。
なので抵抗感を抱くことなく一口…二口とティナはゾンゲに飲ませていく。それほどティナはゾンゲを救うことに必死なのだ。
その行動が身を結び、飲ませてから数秒後ゾンゲに変化が起こる。
「すぅぅはぁぁ…すぅぅはぁぁ」
ゾンゲは蘇ったように呼吸が大きくなり次第に安定し、顔色も良くなってきた。
「よかった……はぁぁぁぁ」
ティナは脱力するようにゾンゲの胸を借りていた。
小松もゾンゲも助かった。
ティナは体の力が抜けてしまっている。
ちなみに今のティナは自分がどんな行動をしたかは全く気にしていない。助けるのに必死で過程を気にしてないのだ。今彼女は結果だけしか考えていない。
「……あれ?…僕は一体」
その後、小松は時間差で目を覚ました。
今だにゾンゲは気を失っているものの、これならあとは栄養ある物を食べさせれば回復をする。
ティナは目覚めた小松に次郎のことを話した。
「その様子なら大丈夫そうじゃな」
皆の様子を見るなり、次郎は持ってきていた銀色の大鍋を背負い出口に向かい去っていく。
「そんじゃ、気をつけてな。……洞窟の砂浜に何か得体の知れないものが近づいてきてる、フグ鯨を捕まえたらさっさと帰った方が良いぞ」
「ありがとうございました!このご恩はいつか必ず」
「おじいちゃんありがとう!」
最後にアドバイスをした次郎にお礼を言う二人。
こうして無事に死傷者を出さずに乗り切ったのだった。
ちなみにティナがゾンゲにした行動を冷静に考えたのは今日の夜であった。
撮った動画の整理をしている時に、ふと思い出した。
そのことでベッドの上で恥ずかしさのあまりのたうち回ったのはティナだけの秘密。
次の日、ティナは寝不足で出勤したのだった。
「なかなかやる子たちだのぉ」
次郎はフグ鯨の入った巨大な鍋を引きずり洞窟を歩いていた。
「今日のこと……話しておくかのぉ……ヒク」
酒の恩を大切にする次郎は何かの考えに至ったかそう呟きながらフラフラとおぼつかない足取りで帰って行ったのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
残り3話になります。
どうでしたか?
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よかった。
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ティナの印象が変わった。
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いや、誰やねんこのキャラ。