決意を改め5年が経過した。
転生してからは俺は記憶喪失ということにした。
村の人たちには随分と迷惑をかけた。
一からこの世界についてや俺についてどんな人間だったかを聞いたりと。
だが、思っていた通り、ゾンゲが生まれ育った村はド田舎だった。
世界の情報は一切入ってこず、通貨という存在もない自給自足の生活。
文化は日本で言う縄文時代だろうか?
いや、建物ができているから弥生時代か?
でも、豆腐を作る文化があるからもっと先か……まぁ、文化は分からずとも機械一つない世界であった。
こんなど田舎で住んでいたらアニメでのゾンゲも世間知らずになるのも無理もない。
だが、できることがないわけじゃない。
毎日風呂に入って肌の手入れをした。
田舎の冬は0度を下回る。
だから、裸で駆け回ったり、毒耐性をつけたり、筋トレしたり、俺の戦闘の主軸となる技の特訓をしたりと。
これには驚いたことなのだが、俺にはグルメ細胞というものが備わっていた。
物語だと少なくともゾンゲにはグルメ細胞は存在しないはずだ……多分。
グルメ細胞というのは深海のグルメクラゲという生物から採取できる特別な細胞で、人体に結合したら、圧倒的な生命力を持った超人になれる。
旨い食材を食えば食うほどレベルアップするようになる。
例えば砂漠や極寒、低酸素の場所でも無意識に環境適応能力が身についてしまうほど便利なもの。
分かった時、体を鍛え続け、この世界の猛獣を喰らっていけば、強くなれると嬉しかった反面、いくつか疑問に思った。
グルメ細胞が存在する人は生まれつき備わっているか、人工的に人体に結合させるかの二つ。
前者の生まれ待ってグルメ細胞を持っている存在は稀有だ。
もしかしたら、俺もその部類に入ると思い、少し構えた。
アニメだと、トリコを含め三人しかいないほどだ。貴重だからIGOの組織の人間が接触してくると思ったのだが……こなかった。
この世界にはグルメIDという、国民証のようなものがあるから、個人情報が筒抜けのため、もしかしたらと思ったが……分からん。そもそもグルメID持ってること自体も疑問に思ったのが……気にしてもしょうがない。
とにかく、グルメ細胞を持ってることを疑問に思ったのだ。
だが、幾ら考えても分からないのでこのことから転生特典というものなのだろうと結論づけた。
気にしたってしょうがない。
ラッキーみたいな感覚で捉えることにした。些細なことを気にしてもしょうがない。
人間前に進まなきゃな!
色々と試行錯誤をしながら訓練をしたがついに限界が来てしまった。
だから、自分がどの程度通用するかも不明のまま、俺は旅立つことにした。
もちろん一人でだ。
「ゾンゲ様ぁぁ。行かないでくださいぃ」
「泣くな、お前には立派なもんが付いてんだろ」
アニメではゾンゲと共に旅をしていた手下達二人を置いていくことにした。
上を目指すにあたって、残念ながら足手纏いになってしまう。
それに、記憶がなくなったと言った俺を……変態行動を繰り返し続けた俺を慕い、いつもそばにいてくれた。
この世界に来て、親友、家族と呼べる存在だろう。
だからこそ。
「お前たちを危ねぇ目に遭わせたくねぇんだ。わかってくれ」
「……ぞんだぁぁ」
「お……おい、ゾンゲ様困っているぞ」
泣くな……泣くな。
「女じゃあるめぇし、メソメソすんな!」
「そんなゾンゲ様も泣いてますけどね」
冷静に突っ込んでくるんじゃねぇよ!
悲しいのはこっちも同じなんだ馬鹿野郎!
「これはちげぇよ!……そうあれだ!目から汗が吹き出ちまったんだ!」
「そ……そうだ!さっすがゾンゲ様だ!俺たちの想像を超えるなんて!」
「……えぇ」
手下二人はそれぞれ対極の反応をみせる。
……だめだ。これ以上は恥を晒せねぇ!
「じゃぁな!てめら!達者でな!」
「ゾンゲ様、お気をつけて行ってきてください」
「ゾンゲ様!……カムバック!」
そう言って、俺は二人に背を向け、歩き出す。
「今生の別れじゃねぇ!……世界に名が轟くような美食屋になってなるぜぇぇ!」
右腕を高らかにあげ、そう宣言した。
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