東京の雨が降る夜
とあるスラム街で一人の男、宜野座がパトカーから発せられる赤と白のライトに照らされ猟犬の到着を待っている。そこに二人の男女が合流した
「あの!監視官の宜野座さんでしょうか?」
「ああ、お前たち配属早々事件とは災難だったな」
「本日付けでこちらに配属されました、常守朱です」
「同じく、河原崎涼太です」
緊張した面持ちで宜野座に敬礼をする二人は未だにスーツを着慣れていないのか常盛は初々しさを、河原崎の方は別段おかしな点はないが服装に違和感を感じる
「厚生省は人手不足でな、悪いがお前たちを新米扱いはしない」
宜野座はその二人を試すような視線で睨みつけながら腕につけた時計のようなデバイスからデータの確認を行う
「対象は大倉伸夫、街頭のスキャナーに引っかかりセキュリティドローンがセラピーを要求したが拒絶して逃亡した」
二人は宜野座から送信されたデータをみながら話に耳を傾ける
「記録したサイコパスはフォレストグリーン、高い攻撃性と強迫観念が予想される」
「そんなに色相が濁るまでセラピーを拒むなんて、、、」
常守は自分の色相で困ったことなどないため思わず言葉をこぼす
「不適合薬物に手を出している可能性がある。なんにせよシビュラ判定を待つまでもない潜在犯だ。厄介なのはこいつが逃げ込んだこのブロックだ」
そう言うと3人は顔をあげて現場を見渡しはじめる
「廃棄区画で中継機が無いためドローンが侵入できない、それに大倉は逃亡中歩行者を拉致し人質にしているらしい」
「人質ですか、、」
「目撃者の証言では若い女性らしい。身元の確認はまだ取れていない」
この報告を受けた河原崎は嫌な想像をした。その若い女性を攫ったのは人質が欲しいためだけでなく、強姦目的ではないのかと考えてしまった。
「住民の退去は?」
「登録上は無人区域だ、お陰でここは浮浪者の巣窟になっている。退去命令など出せない」
「そうですか、、」
納得できないような声色で返事をする常守。すると車の近づいてくる音が聞こえ、護送車がこちらの近くに止まり車の後部が開き始める
「二人とも覚悟しておけ、これから会う連中を同じ人間だと思うな。奴らは犯罪係数が規定値を超えた人格破綻者だ。本来なら潜在犯として隔離されているはずだが、社会貢献として同じ犯罪者を駆り立てる役割を与えられた」
完全に後部が開き、中に何人かいることがわかるが夜のため薄暗く顔まではよく見えない
「奴らは猟犬、獣を狩る獣。それが執行官、君たちが預かる部下だ」
護送車の中から人が出てくる。全部で四人、一人は女性、あとはオレンジ色の髪の男性、黒髪の男性、そして少し老けた男性。河原崎は老けた男性はいかにも刑事だという格好で少し感動していた
「お、そっちの可愛い子ちゃんとイケメンくんが噂の新入りっすか?ギノさん」
オレンジ髪の男性が二人を見て宜野座に問いかける
「常守朱監視官と河原崎涼太監視官だ。二人が今日からお前たちの新たな飼い主になる」
人に話しかけるというには少し単調で、まるで文でも読んでいるように会話をする宜野座
「「よろしくお願いします!」」
二人とも頭を下げながら挨拶をするが何故かスルーされてしまう
「全員、対象のデータには目を通してあるな?これから袋の鼠をさらに締め潰す。三組に分けて捜索する。縢はおれと来い、六合塚は河原崎監視官と、残りは常盛監視官に同伴しろ」
「えぇぇ!俺は可愛い子ちゃんと一緒がいいっす!」
オレンジ色の髪をした男性、縢は大きな声で我儘を言うが宜野座はそっぽを向いて反応しない
「、、はぁ、ツッコミなしとかまじあり得ねぇ」
「すべってるのよ」
常守と河原崎はこのギスギスした雰囲気になんとも言えない居心地の悪さを感じる
いつまでも油を売っているわけにもいかない、公安局刑事課だけが持てる武器、ドミネーターを護送車両から引き抜く宜野座と縢。そして二人は何も言わずに現場に向かっていった
それに続いて河原崎と六合塚もドミネーターを抜き取る
「それじゃあ、常守さん気をつけてね」
「うん、涼太くんも」
河原崎涼太は転生者である
生前は大学生、普段はゲームばっかりしていてあまり外に出かけようとする人間ではなかったが何故か散歩がしたくなり、家のすぐ近くの交差点で転生トラックにはねられた
そしてこの世界はサイコパスと言うアニメの世界
俺が小さい時に姉が見ていたのを横目で眺める程度だった。内容はほとんど覚えていないが世界観などは覚えていたためすぐにサイコパスだとわかった。
シビュラシステム
この世界での絶対の存在であるシビュラシステムはザックリ言うと、人を観測、測定し適正などを判断してくれる未来のコンピュータなのである。まあ実際にこの世界は元の世界より100年くらい未来なんだけど
そしてとても印象に残ってる物、それはドミネーター
見た目はカッコいい銃なんだけど変形して人を殺せるモードになって人を撃つと、まるで北斗百烈拳を食らったかのように人体が膨れ上がり爆発する。初めてそれを見た時はあまりのグロさに見るのを諦めたレベルである
今回の事件で犯人と鉢合わせドミネーターを向けた時殺人モードに変わらないことを祈るばかりである
そんなことを考えていると通信が入る
『こちらハウンド4KTビル9階で対象を発見、どうします?』
この声は確か縢という執行官だったはず。手首につけたデバイスからKTビルを探すと自分たちが進んでいた方向とは真反対だった
『そのまま目を離すな、俺と二人で対象を挟みこむ』
宜野座監視官は挟み撃ちにするつもりらしい
『ん〜、やっこさんのテンパリ具合だと人質の子が限界っぽいっすよ〜、俺一人でやっちゃいます?』
『よし、しくじるなよ』
『了解』
なんとも緊張のないやり取りであった
「監視官、私たちはどうしますか?」
こちらに判断を仰いでくる六合塚さん。逆に俺が聞きたい。どうすればいいんですかね?でも彼女は執行官で監視官の指示に従わなくてはならないため俺が指示をしなくてはならない
「とりあえず KTビルまで急ぎましょうか」
正直何したらいいのかよくわからないからとりあえず合流するしかないもし犯人が逃げたら大変だし会えるようにしないと
「了解」
二人で目標まで歩きはじめると
『目標が逃亡、犯罪係数が300を超えた』
嫌な報告である
犯罪係数が300を超える。それはドミネーターが殺人モードに入ることを意味するからである。正直その犯人と出会いたくない。何をするかわからんし北斗神拳よろしくヒデブゥさせたいとも思わない
しかし執行官の手前そんなことも言えない
「とりあえず、急ぎましょうか」
「了解」
そうして二人で走りながら逃亡した目標の近くまで来た時
「やめてぇぇぇ!」
常守さんのすごい叫び声と共にドミネーターの銃声が聞こえ、ただ事ではないと思いすぐに向かう
常守さんを見つけた時には人質だったであろう女性を説得している最中であった。常守さんと人質だった女性の間に狡噛さんが倒れている女性はドミネーターを持っていないと言うことは常守さんが狡噛さんを撃ったのだろう
人質だった女性が血まみれでガソリンの上でライターを持っている状況を見て、犯人が目の前で北斗神拳でアボンして気が動転した結果だろうと結論づける
説得の甲斐があって女性はライターを捨て犯罪係数が下がっていった。しかし上から銃声が聞こえ上を見ると宜野座さんが女性に向けて発砲したようである
「常守監視官、君の状況判断は報告書できっちりと説明してもらう」
別に人質の女性が何か悪いことをしたわけではない、ただ歩いていたら訳のわからん男に拉致られ、下着同然の薄着にされて目の前で死なれればおかしくもなる
しかし、この世界ではシビュラシステムが絶対であり、良い悪いなど関係なく犯罪係数が高ければ捕まってしまう
なんでこんなクソみたいな世界に転生させられたんだか、まったく嫌になる。ともあれこれで事件は一件落着、で良いのだろうか?