デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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個人的に鞠亜編は中々難しかったです。
そんな鞠亜編も今回で最終話。
どんな結末になるのか…ご覧下さい。
どうぞ───





第八話:帰還

 

 

 

「先ずは私が先に仕掛けます。」

 

鞠亜(ナビ)〉はそう言って、霊装が展開してコード見たいな触手が鞠奈がいるだろうドス黒い光にへと襲い、拘束する。

 

「〈士道(ルパン)〉! 私が鞠奈を止めます。

その隙に〈士道(ルパン)〉は鞠奈に声を掛けて下さい!

間近のアナタの声なら、間違い無く彼女の意思を呼び起こせる筈です!」

 

「分かった!」

 

士道(ルパン)〉は鞠奈の元へと駆け出し始めた…が。

向かって来る〈士道(ルパン)〉に目掛けてドス黒いものが放出される。

それはやがて人型となり、鞠奈に似た『人形』が襲いかかる。

 

「…やりにくい…けど、やるしかない!」

 

「はい! その通りです〈士道(ルパン)〉!

彼女を救う為にこれは乗り越えなければならない…『試練』です!」

 

「…『試練』ねぇ、何で俺にはこう『試練』が待ち受けてあるんだろうな!」

 

士道(ルパン)〉はヤケになった感じで鏖殺公(サンダルフォン)を振りかざし、『人形』達を倒していく。

倒していく『人形』達は悲痛の声をあげる事なく消えていったのが幸いだろう。

 

「…このまま突破する…!!」

 

士道(ルパン)〉が駆けて行く足を早めるも…

 

「…!?」

 

距離を縮めて行くと、向かって来る『人形』達の手がドリルの様に回転しだしたり、手が伸びて剣になったりと変形し、襲いかかる。

 

「これは…ぐっ!?」

 

士道(ルパン)〉は『鏖殺公』で攻撃を受け取るも、第二第三の刺客の攻撃を躱わす為に一旦距離をとった。

 

「〈鞠亜(ナビ)〉! これは!?」

 

「恐らく…本来の『或守プログラム』の防衛システムの仕組みを利用した近づけば近づく程防衛が働くシステムを作動している様です!」

 

「…っ、そう言う事か…!!」

 

『或守プログラム』は本来、士道を守る為に作られたものだが…今度は士道を追い詰める為に使われてしまうという、何とも皮肉な事だろうか。

 

「とはいえ…このままだとやられる。

こうなったら…っ!!」

 

士道(ルパン)〉は『鏖殺公』の鍔が青色に光始めた。

 

「くらえ… 氷結傀儡(ザドキエル)!!」

 

冷気を纏った『鏖殺公』の斬撃を放つ。

その斬撃は凍える冷気を発しながら『人形』達に着弾し…凍りついた。

 

「…成程、『氷結傀儡』による氷で『人形』達の動きを強制的に停めるのですね。」

 

「これで…お前の所まで行く…!」

 

颶風騎士(ラファエル)による旋風を纏って勢いよく進んで行く。

 

「…!!」

 

ドス黒い光から鞠奈の姿を現す。

彼女は何かに繋がれていた状態で、それはまるで…機械と『悪意(シャドウ)』が融合したと彷彿させる『機械版シャドウ・トークン』だった。

 

「…これが、最終防衛ラインなのか?」

 

「…はい。どうやらDEMインダストリーは随分と悪趣味な趣味をしていますね。」

 

「全くだ…けど、そんなのは今はどうでも良い。

奴等も…コイツの様に倒すだけだ…!!」

 

士道(ルパン)〉が『鏖殺公』を構える。

すると、『機械版シャドウ・トークン』…『機械トークン』は周囲の建物を次々と吸収していき、己がエネルギーとして変換させると、『無数の手』を生やして襲いかかった。

 

「〈士道(ルパン)〉!」

 

「大丈夫だ… 灼爛殲鬼(カマエル)!!」

 

炎を纏った『鏖殺公』で『無数の手』を斬り裂き始めた。

 

「〈鞠亜(ナビ)〉、お前は大丈夫か!? まだ拘束して…」

 

『機械トークン』が無差別に吸収しているのを察知していると、〈士道(ルパン)〉が呼び掛けていると、〈鞠亜(ナビ)〉は特化に鞠奈への拘束を解いており、何かの準備をしていた様子だった。

 

「大丈夫みたいだな。

…所で、それは一体何を…?」

 

「はい。このままだと、あの敵に目掛けて進んでいると、〈士道(ルパン)〉の方が先に力を使い果たすと計算が出たので、私の方で直接サポートする手段を取りました。

士道(ルパン)〉はあくまでその姿になれているだけで、『ペルソナ』を使えている訳ではありませんので、これが最適だと判断しました。」

 

「…助かるよ。」

 

鞠亜(ナビ)〉は自身の姿を小型版『フラクシナス』と十香がかつて『鏖殺公』の鞘の部分である玉座をボードに変形させたものと掛け合わせたと思わせる機体にへと変身していた。

 

「行くぞ、〈鞠亜(ナビ)〉…いや、鞠亜!

鞠奈を助ける為に、ここで一気に攻めるぞ!」

 

『はい。行きましょう、士道!』

 

士道と鞠亜の鞠奈を救いたいという強い思いが…『心』が重なる。

 

向かって来る士道と鞠亜を見て、『機械トークン』から再度『無数の手』が襲いかかった。

 

「鞠亜!」

 

『問題ありません!』

 

鞠亜は襲いかか『無数の手』を回避しながら鞠奈の所へと向かって行く。

 

『士道、鞠奈の元までなら直ぐに辿り着きます。

しかし…どの様にして鞠奈の意識を取り戻すのですか?

『鏖殺公』『氷結傀儡』『灼爛殲鬼』『颶風騎士』

これらは攻撃特化した『天使』です。

向かって来る障害を遇らうくらいしか出来ません。』

 

鞠亜がそう解説していると、『無数の手』や『人形』を差し向ける。

 

『くぅ…っ!』

 

鞠亜が直様突破口を導こうとするも、困難だと判断する。

 

「鞠亜…大丈夫だ。このまま進め!」

 

士道は『鏖殺公』を構え、『無数の手』と『人形』をそれぞれの『天使』と掛け合わせて斬り裂いていく。

 

『流石です、士道。

士道が攻撃をしてくれている間に、一気に鞠奈の所まで突破するエネルギーをチャージしておきました。』

 

「よし、このまま───」

 

ピキンッ!

 

突如として士道の脳裏にビジョンが流れ込む。

 

 

 

 

 

この現象は士道に()()()()()()を…否、士道が取る行動によって未来を替える分岐点である…『()()()』を与えるものだと、彼はまだ知らない。

 

 

 

 

 

『行きます。士道、アナタに全ての一手を託します!』

 

鞠亜はそう言い、エネルギーを解放して加速する。

 

『よし、鞠奈の姿が見え───』

 

士道が『鏖殺公』から『破軍歌姫』…剣からマイクに切り替えた瞬間───『人形』と『無数の手』が全方位から襲撃して、士道と鞠亜を呑み込もうとした。

 

 

 

 

 

「───今のは?」

 

士道は一瞬の出来事に戸惑いを見せるが、この現象は過去に何度もあった。

故に…今のビジョンはこれから起きる事だと確信した。

士道は『鏖殺公』を力強く構えた。

 

『…士道?』

 

「鞠亜…止まるんだっ!」

 

『は、はい! 分かりました!』

 

士道が何かを察知したのだと判断した鞠亜は士道の言う通りに止まる。

士道は『鏖殺公』で全方位からの襲撃を返り討ちにする。

 

『何と…私の感知レーダーを覆しての襲撃…?』

 

「…」

 

『お見事です、士道。アナタの言う通りにしていなければ私達は…』

 

「…鞠亜、褒めてくれるのは嬉しいが、まだだ…!」

 

士道の言葉に鞠亜は正面を見る…そこには───

 

残った『無数の手』や『人形』は襲撃を止めて、全ての力を束ね、『巨大な鞠奈』へ…

そこから更に『シャドウ』の様な狂化を施された最後の難問として立ちはだかる。

 

「…さっさとコイツを片付ける…!」

 

士道は『鏖殺公』による斬撃を放つ。

しかし、その攻撃は簡単に弾かれる。

 

「…マジかよ。」

 

『敵のレベルがこれまでにない位に上がっています。

…今の士道の体力と気力では、もう長くは持ちません。

なので…一撃。

渾身の一撃で倒す方法を…私の残るエネルギーを使って『鏖殺公』の玉座を召喚して、最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)で倒しましょう。

大丈夫です、私が時間稼ぎも私がします。

…それに、士道が早く倒していただければ、私も何とか助かると計算結果が出ています。』

 

「…そんな作戦を俺が許可する訳ないだろ。」

 

士道はキッパリと言う。

 

(…とはいえ、どうやってこの状況を乗り越える…どうすれば…)

 

鞠亜が言った通り、【最後の剣】による一撃が必要だろう。

…しかし、正直な話、己の内に残る霊力は底を尽き始めているのを実感している。

【最後の剣】を発動させるには鞠亜のエネルギーを借りなければならないだろう。

又は、全ての『天使』の力を収束すれば───

 

「そうだ。その手があったか…!」

 

『…士道?』

 

そうしている間にも敵は攻撃を仕掛ける。

巨大な手を振り回す。

それを鞠亜が回避して行く。

 

(だが、この攻撃の中をどうやって隙を作る…?

するのに全霊力を使う必要がある。

何か…何かないか…?)

 

後一手。後一手が何か何のか模索する。

攻撃を流れる手を…考えている間にも手元の『鏖殺公』に全ての『天使』の霊力を込める。

 

(……待てよ? そう言えば、今使える『天使』は俺が封印してきた皆んなの『天使』の力だ。

それを…『試練』をこなした事により、使えるという事だ。

けど…『試練』は全てで6()つ。

『天使』は5つ。けど、マイクについていたライトは全部で6つ。

最後の一つは…!!)

 

士道は一つの可能性を思いついた。

 

『士道、今からアナタに私のエネルギーを…』

 

「…いや、鞠亜。その必要はない。

今から俺の言う事を聞いてくれ…!」

 

士道は脳裏に浮かぶ、自身と同じ髪を持つ…士織(彼女)の笑みに覚悟を決めた。

 

『巨大な鞠亜』が膨れ上がっていく士道に危機を感じたのか、手元に強大なエネルギー弾を膨れ上がせた。

 

それによってなのか、鞠亜が距離をとる。

そして…凄まじい光を放出して勢いよく突っ込んで来るのを視認する『巨大な鞠奈』。

突っ込んでくる士道達が…溜め込んだ霊力による攻撃が迫ると、それを蹴散らす様に先にエネルギー弾で士道達を…葬った。

 

『巨大な鞠奈』が士道達を葬った事に勝利の悪笑みをする。

 

…だがそれは、束の間。

 

下の方から何かが駆け上がって来た…それは葬った筈の士道達だった。

それを見た『巨大な鞠奈』が一変して驚愕する。

先程、葬った士道達は使われてなかった士織との『ペルソナの力(繋がりの力)』である『桃の炎』。

その能力は催眠能力…幻覚を見せる事により、囮を生み出して隙を作ったのだ。

それを鞠亜の光によるカモフラージュによって確実にしたのだ。

 

「…これが、皆んなの力を掛け合わせた…力だ…!!」

 

士道は全ての『天使』の力を重ねた『鏖殺公』を振り上げる。

『氷結傀儡』の氷、『灼爛殲鬼』の炎、『颶風騎士』の風…この三つの力を『破軍歌姫』で出来うる限り、一つに収束させていく。

三つの強大な力を一つの力で抑えるのには強引な所があるが、それでも、一つの強力な一撃を放つのには十分だった。

 

「うおぉぉぉぉぉ…っ!!!

虹光一閃・鏖殺公(エレメント・サンダルフォン)ッッ!!!」

 

『4』つの色光の一閃を『巨大な鞠奈』へと解き放つ。

その一撃を何とか防ごうと防御するが、その攻撃に全く耐えれずに…消滅し、その余波は後方にいる『機械トークン』にまで影響した。

 

「……っ…はぁ、はぁ……はぁ…」

 

士道は全ての力を使い切った事によって、『鏖殺公』は解除され…マイクの状態となって溢れ落ち、役目を終えたマイクは光になって消えた。

 

『…士道、大丈夫ですか?』

 

「はぁ…はぁ……っ、あぁ、大丈夫…っだ!

それよりも……鞠奈の…所へ…っ!

大丈夫……マイクが無くたって、声を……届けてみせる…っ!!」

 

『…はい…っ!』

 

鞠亜はそう答え、半壊しつつある『機械トークン』へ…繋がれている鞠奈へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鞠奈!」

 

鞠奈の元へと辿り着いた士道と鞠奈。

『機械トークン』に繋がれている鞠奈の表情は…心の壊れた人形の様だった。

 

「鞠奈…起きろ、起きてくれ…!」

 

士道は鞠奈へと語りかけるも、鞠奈に反応は無かった…

 

「俺だ、士道だ!

敵はもう倒した。もうコイツらに良いようにされる必要はないんだ…!」

 

「…」

 

士道が呼びかけても、鞠奈に反応は無い。

 

「どうする…どうすれば…!」

 

思考を巡らせる。

…しかし、どれだけ考えても、今の士道はもう戦うだけの力は無い。

つまり、『破軍歌姫』による呼びかけも出来ない。

 

「…士道。」

 

その様子を元の人の姿に戻った鞠亜が近づく。

 

「鞠亜…鞠奈の意識が戻らない。

どういう状況なのか…俺に出来ることは何かないか?」

 

「…はい、あります。鞠奈を呼び戻して、フラクシナスの墜落を阻止し、士道を現実に戻す術が。」

 

「本当か…? それは一体…」

 

士道が疑問を抱く中、鞠亜は…鞠奈に近づき、触れる。

 

「私は鞠奈で、鞠奈は鞠亜。

再び、私と鞠奈の『心』を繋がれば、鞠奈が戻ってくるかと思います。」

 

そう言って鞠亜は鞠奈へカードの様なのを絡ませて、意識を繋げていく。

すると…鞠亜から眩い光が包まれる。

 

「これは…!」

 

士道がその光景を見て、驚いていると───

 

「…!?」

 

鞠奈をまだ離さずに繋がっている『機械トークン』が動き始めた。

 

「くぅ…っ!?」

 

鞠奈に繋げているからか、鞠亜にも影響が及び始める。

 

「鞠亜!」

 

鞠亜にへと何かを仕掛ける『機械トークン』に士道が身を挺して守ろうとする。

 

「ぐぅぅ…!!」

 

士道は苦渋の声を漏らす。

 

「…お前は、お前達はどうして何処までも迷惑をかけるんだ…!

人々の負の感情が具現化した存在だとしても、俺には…お前達が()()()()()()()()()()で悪さをしている存在にしか見えない…!」

 

士道は『機械トークン』の顔の部分を見上げる。

目に映るのは感情の無いものだが…何処か嘲笑っている様なものだった。

 

「俺は…負けない…! お前なんかに負けない…!

お前達が勝つ事が…運命(さだめ)だというのなら…

───俺が変えてやる。」

 

士道の雰囲気が変わっていく。

 

「鞠亜も鞠奈は必ず…救ってみせる!

絶対に…負けてたまるかぁぁぁ!!!」

 

士道が雄叫びを上げると…体から力が込み上げる。

それはやがて青黒い『炎』となり、黒い人影へと変化していき…姿を顕す!

 

「…っ、大怪盗(アルセーヌ)ゥゥゥ!!!」

 

赤いタキシードに大きな黒き翼を羽ばたかせ

 

シルクハットと一体化し炎を燃やす黒く赤い仮面

 

士道の叛逆の化身が高笑いを上げて顕現する。

 

<フハハハハハハ!!!>

 

「…行くぞ!」

 

士道の強い意思に『アルセーヌ』が呼応し、剛拳を放った。

 

「鞠亜、聞こえるか!

コイツは俺が確実に倒す!

だから…そっちは任せたぞ!」

 

「………は、はい! しかし…」

 

「大丈夫、俺がついてるから…自身を持て、鞠亜。

お前はもう俺達の仲間…俺の鞠亜だ。」

 

「…!」

 

その言葉に鞠亜は頬を赤く染める。

…無論、士道はその鞠亜に気がつくはずなく、『機械トークン』へ仕掛ける。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

『アルセーヌ』の攻撃のラッシュを放ち続ける。

それにより倒れる『機械トークン』にトドメの鎌の様な爪で斬り裂こうとするも…最後の足掻きで『機械トークン』の両手で阻止する。

そして、体から発せられる『無数の手』で『アルセーヌ』を拘束し、シメる。

 

「くっ…!」

 

「…士道!」

 

『ペルソナ』は心の化身にしてもう1人の自分。

それはつまり…本体に限らず、化身の方でもダメージが入れば、本体にも影響を及ぼす。

その事を既に知っている鞠亜は士道の苦痛の声に反応してしまう。

 

「私が…今フォローに…」

 

鞠亜が何か出来ないかと思ったが…士道を見て手が止まる。

すると…

 

「…無駄だよ。」

 

「…鞠奈?」

 

鞠亜の言葉に鞠奈が反応する。

 

「いくら…彼とはいえ、ただの人間。

それも…この電脳世界で彼の力を使えたとしても…人の意思には限界がある。」

 

「…そうですね。確かに、士道は既に限界寸前です。

こうして…不安になってしまうくらい、今の士道は危ない状態で…」

 

「…なら、どうしてフォローに回ろうとしないの?

さっき…助けようとしたよね?

私……もう大丈夫なんですけど。」

 

「鞠奈もまだまだですね。」

 

「は?」

 

「アナタの状態は私がいなければ、意識を維持出来ないほど弱体化してるからでしょうか…

いえ、違いますね。

鞠奈は理解している様で、まだ分かっていませんね。」

 

「はぁ…? 鞠亜、アンタはさっきから何を言っているのよ…

相手はお父様が作り出した霊力によって構築されたウイルスなのよ?

…あんなのを相手に勝てるわけ…」

 

「…士道はこう言いました、『俺がついてる』と。

それはつまり…士道は負けません…!」

 

士道の方を見る。

士道を苦しめて、『機械トークン』は勝利を確信していると…

 

「…これで勝ったつもりか?」

 

士道はそう言うと、『アルセーヌ』の力を一気に解放する。

『無数の手』による拘束を解いて、手元に『蒼炎』を灯す。

 

「勝利を…奪え、『アルセーヌ』!」

 

『蒼炎』を纏う拳が『機械トークン』に放った。

 

「…」

 

士道の大打撃を受けた『機械トークン』は士道を睨み…倒れた。

 

「やりました…士道が勝ちました。」

 

「……いいや、そうでもないみたいだよ…」

 

鞠奈がそう言うと…世界が揺れ、崩壊が加速していく。

空がガラスの様にパリパリン!…と割れ、建物が次々と破壊され、粒子の様に消えていく。

 

「これは…一体…っ、まさか!?」

 

士道が『機械トークン』の方を見る、ソイツは士道を嘲笑う様にし…消滅した。

 

「クソッ…本当にコイツは…!!」

 

「…怒っている場合じゃ、ないでしょ?」

 

鞠奈はそう言うと、何かをし始めた。

 

「…鞠奈?」

 

「…キミを元の現実に戻す。」

 

鞠奈はそう言い、士道を現実に戻す為に行動していた。

 

「鞠奈、私も手伝います。」

 

鞠亜も鞠奈の手伝いをする。

 

「…安心しなよ、フラクシナスのシステムも同時に修正してるから。」

 

「…そうか。ありがとう、鞠奈。」

 

「ちょっと…私、一応キミ達に助けて貰った立場なんだけど…」

 

「…? でも、俺を現実に戻してくれる様にしてくれてるだろう?

なら、感謝しないと。」

 

「…ホント、キミってね…もういいや。」

 

「ふふ…」

 

「?」

 

士道が首を傾げていると…フラクシナスの方から連絡が来る。

 

『シン! 大丈夫かい!?』

 

「令音さん…! はい、敵は倒したけど…この『仮想電脳世界』が崩壊し始めてまして…

鞠亜と鞠奈が、俺を現実に戻す為とフラクシナスのシステムを元に戻す為に力を貸してくれる所です。」

 

『……そうか、それは良かった。

フラクシナスのシステムも丁度修復しつつあってね。

その様子なら、キミが戻って来ると同時に直りそうだね。』

 

令音はそう語る。

 

「よし、準備は整ったよ。」

 

「強制帰還プログラム起動…システムオールクリーン。

生命危険率を回避、フラクシナスのメインサーバーの復旧の80%を確認。

…鞠奈、行けます。」

 

「そうだね…なら、始めよう。」

 

鞠奈がそう言うと、鞠亜は頷き、2人は士道を青白い光にへと包み込ませ、頭上にワームホールなのを形成させた。

 

「これは…この世界に来たのと同じ奴か。

よし、鞠亜! 鞠奈! 2人も一緒に───」

 

士道が2人にそう言葉をかけるも…2人は寂しそうな顔をしていた。

それはまるで…一緒には行けないという、別れを告げる様だった。

 

「……すみません、士道。

私と鞠奈はアナタと一緒には行けません。」

 

「……は? どうしてだよ?」

 

「私達もまた、お父様…DEMインダストリーによって作られた『アンチウイルス』。

だから……この世界の消滅と共に私達も消えちゃうんだ。」

 

「…なんだって?」

 

士道は鞠亜達に駆け寄ろうとする…しかし、青白い光が強くなり、ワープホールにへと吸い込まれようとしていた。

 

「お、おい! 鞠亜! 鞠奈!」

 

「…ありがとう、五河士道。

……いや、士道。

鞠亜だけで無く、私も仲間の1人にしてくれて。

キミに出会えて…良かったよ。」

 

「鞠奈…!」

 

「士道、アナタと一緒に『試練』を共に出来て楽しかったです。

沢山の困難を一緒に乗り越えたから、色んな感情を得られました。

…それから、初めてのデートはとても、とても嬉しかったです。

これ以上にない…幸せな気持ちにしてくれて…

本当に、ありがとうございました。」

 

鞠亜は目元に涙を浮かべて…士道に別れを告げた。

 

同時に…士道はワープホールへと引き寄せられる。

 

「鞠亜ぁぁぁぁ、鞠奈ぁぁぁぁ!!!」

 

士道は懸命に手を伸ばし続ける……しかし。

 

「鞠亜ぁぁぁぁ───」

 

士道はワープホールにへと吸い込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ううん?」

 

意識がハッキリとしつつあった。

長時間寝ていた為か、頭がクラクラとしつつあり、体の至る所が怠い感覚に襲われていた。

 

「………ここは……戻って来たのか?」

 

士道が体を起こすと、何かが勢いよく近づいて来た。

 

「シン!」

 

令音だった。

令音は直様…お約束の士道を自身の胸へと抱きしめた。

 

「…むぐっ!」

 

「…シン、何処か痛む所はないかい?

あるのなら遠慮なく言いたまえ。」

 

令音は抱きしめながら、士道の頭を撫でていた。

思考が戸惑っているのだが、彼女の良い香りに服越しからでも感じる柔らかい胸の優しさを感じていた。

 

『士道(シドー)(士道さん)(だーりん)(兄様)!!』

 

「ああ! そのポジションは僕の!」

 

「令音! シドーの独り占めは許さんぞ!」

 

「ゴラァ! 私のおにーちゃん!」

 

皆がやって来る。

一人一人が士道を思い…士道の奪い合いを始めた。

 

「…」

 

その光景を見て…士道は静かに目元に涙を溜め始めた。

 

「…シドー?」

 

「士道くん?」

 

皆が士道の違和感に気づく。

 

「…シン、何があったんだい?

キミの悲しそうな顔は胸が苦しくなるんだ。

良ければ、話を聞かせてくれ。」

 

「……実は───」

 

士道は事の全てを話した。

 

「……そうか。」

 

令音は優しく士道を抱きしめる。

 

「鞠亜に鞠奈という娘は…キミが自分よりも大切になったのだろう。

だからこそ、シンの為に自身を犠牲にしたんだ。

それに…キミは何も出来なかった訳じゃない。

キミはやれる事をこなし、それ以上の事をした。

それは我々全員が保証する。

キミのせいじゃない…悪いのは全て、DEMインダストリーだ。」

 

令音は再度、士道の頭を撫でて皆を連れてこの場を後にしようとする。

 

「シン…元気が戻ったら、いつもの所に来たまえ。」

 

「…はい。」

 

令音の指示に皆は頷き、士道は部屋に1人になった。

 

「…」

 

士道は俯く。

…暫くの間、他に何か出来たのではないかと考えていると…

スマホに一通のメールが届く。

 

「…夢界かな?」

 

何だかんだで、令音の次に士道の気遣いをしてくれている夢界かと思ったが…差出人を見て、目を大きく見開いた。

その差出人は…鞠奈だった。

 

『やぁ、このメールは無事に届いているかな?

…届いていると信じている。

先ずは…ごめん。

私は…アイザック・ウェストコットに作られた存在。

彼の命令に従い、フラクシナスに侵入して情報を奪うのが目的だったんだ。

その目的は…残念だけど、阻止できなかった。

私が暴走したのと同時にDEMの元に情報が送られる様にプログラムを仕込まれていた。

…キミを何とか助けられたけど、彼等の目的を果たしてしまった。

本当に…ごめんね?』

 

「…謝るなよ。お前は何も悪く…ないんだ。」

 

士道はスマホを強く握りしめる。

 

『…少しでも、キミの為に何かをしてあげたい。

そう思って…最後の力を振り絞ってみたよ。

…手のかかる上に、生意気だけどさ。

この子の事…私の妹を頼んだよ。』

 

「……え?」

 

士道が間の抜けた声を上げると…スマホから見覚えのある女の子がヒョコって映し出される。

 

「鞠亜…?」

 

『……はい、お久しぶりです? 士道。』

 

鞠亜は恥ずかしそうに目を逸らしながら言う。

恐らく…あの様な別れの言葉を告げてたからだろう。

 

「鞠亜…これは一体?」

 

「…実は───」

 

 

 

 

 

『行ったね。これで無事に彼は現実に戻れるだろう。』

 

『…はい。』

 

『さて…私の最後の仕事をしておこうか。』

 

『最後の…仕事?』

 

鞠亜が疑問を抱くも…鞠亜は鞠奈に謎のカプセルの様なのに閉じ込めた。

 

『鞠奈…これは一体!?』

 

『何って…アンタは私の片割れみたいなのに、変な所で察しが悪いわね。

それはアンタ専用の脱出ポッドよ。

アンタ1人分なら、彼を脱出させるついでに作れるわよ。』

 

『いえ…そういうことでなくて…!』

 

『あー、大丈夫安心して。

アンタに含まれていた『アンチウイルス』の部分は取り除かれてるから、あっちに行っても大丈夫よ。

…アイツには…士道にはアンタが必要なのよ。

だから…アンタが士道をこれからもサポートしてあげなさい。』

 

『でも…それは鞠奈も…』

 

『…馬鹿ね、姉の私がアンタの気持ちが分からないと思ったの?

私のこの気持ちも、元はアンタのものだった。

それを共有出来ただけでも…私にとっては幸せなの。』

 

『…鞠奈。』

 

『さ、行きなさい。

これからも…士道を宜しくね。』

 

 

 

 

 

『……という訳なのです。』

 

「…そうだったのか。」

 

『全く……最後まで手のかかる姉ですね。』

 

「…」

 

鞠亜に素直じゃないな…と思う士道だった。

 

『…む、失礼な事を考えてませんか?』

 

「…そんな事、ないよ。」

 

『…全く、分かりやすいですね士道は。』

 

「鞠亜もな。」

 

「『……ふふふ。』」

 

士道と鞠亜は笑う。

 

「鞠亜…これからも宜しく。」

 

『はい。よろしくお願いします、士道。

これからも士道をサポートしますので、ご安心下さい。」

 

「…ああ!」

 

『さぁ…先ずはフラクシナスの皆さんに挨拶しないといけません。

エスコートしてくれますか? 士道。』

 

「あぁ、勿論。それじゃ、行こうか。」

 

『はい!』

 

士道は鞠亜を連れて令音達のいる場所へと歩き出す。

失ってしまった事もあったが…失わずに残った事もある。

 

この一件で、士道はまた一歩…前に進んだ。

 

それは、自身に課せられた【破滅の運命(さだめ)】に抗う一歩なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリス

 

「……ふむ、そうか。ご苦労だった。」

 

マリスが日本にいるDEMの者から連絡を受け取っていた。

 

「ウェストコット、残念ながら敵艦は健在の様だ。

例の『人工精霊』も戻って来ない所、今回の作戦は失敗かな?」

 

マリスがそう言うと、扉が開くと…エレンとダイナが入って来た。

 

「これはこれは執行部長殿にダイナ。

勝敗は…どっちが勝ったのかな?」

 

「お父様ぁ…早く私専用のCRユニットを作ってくれよぉ。

どれもこれも、戦いの最中に壊れて腹が立ったぜ。」

 

「…ふむ、これは早急に作業に取り掛かった方が良さそうだね。

ん? 執行部長殿、如何しましたかな?」

 

「…マリス研究部長。この娘は一体どの様な処置をなさっているのです?

壊れたCRユニットは私の『ペンドラゴン』よりかは遥かに劣りますが…それでも、人間の力に耐えきれずに壊れるとは普通ではまりません。」

 

「ハハハ…執行部長殿も、ダイナの強さに理解してくれた様子で良かったですよ。

なぁに、いずれダイナについては資料を渡しますよ。」

 

エレンに対して軽々と対応するマリス。

 

「……クッフフフ、そうか。()()()()()()()()()。」

 

タブレットで何かしていたウェストコットが静かに笑い始める。

 

「アイク…一体どうしたのです?」

 

「見たまえ、エレン。

ラタトスク機関の艦を落とせなかったのは残念だが…目的の情報は得られた。

フフフ…漸く()が、我々に姿を見せた様だ。」

 

そう言うと、ウェストコットはエレンにタブレットに表示されている人物の名を見せる。

 

「…っ!? ()()()()()…!!!」

 

エレンはその名を口にし…拳を握りしめた。

 

「フッハハハ…何となくそんな気はしていが…

やはり、『ラタトスク機関』はキミが設立した組織だったんだね、エリオット。

実に…30年ぶりだな。」

 

ウェストコットは窓の方へと歩む。

 

「そういえば、キミと別れたのも()()()だったね。

……クッフフフ、面白くなったじゃないか…!」

 

「…ウェストコット、我々にも教えてくれないか?

キミが愉快そうにしている理由と、執行部長殿が途轍もない殺気を出している理由に。」

 

「フフフ…あぁ、そうだね。」

 

ウェストコットはマリス達の方へ振り向く。

 

「彼はかつての同志。

───そして30年前、共にこの世界に()()()()()()を生み出したんだよ。」

 

ウェストコットはそう語った。

 

 

 







いやぁ、鞠亜編最終話の構成が中々上手く纏まらずに結構期間が空いちゃいました…これでも内容的に大丈夫なのか少し不安ですが、これにて鞠亜編及び2期分は終了です。
次からは3期…と行きたい所ですが、その前に番外編がありますので、少々お待ちを…!
番外編も少し気合い入れる内容になるつもりなので、お楽しみに!


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