デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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……お盆中に間に合わず、明けてもお仕事忙しくて進まず…
挙句に体調を崩し、投稿が遅れてしまいました…。
それでも、頑張って…投稿を…!!





番外編12:日常6

 

 

 

【八舞姉妹とデート】

 

いつもの日常。

特にあれやこれやとやる事がない休みの日…そんな日に士道は2人の女の子からデートに誘われていた。

 

「士道! 遅いし!」

 

「同意。士道、早くしないと夕弦達は風の如く駆けて行きます。」

 

「ハハ…あぁ、直ぐに行くよ。」

 

八舞姉妹…耶倶矢と夕弦とのデート。

普通ならば、女の子とのデート…それも、2人の美女を相手に出来るものなら幸福で華やかな事だが…

彼女達は『精霊』。

士道によって霊力を封印されているとはいえ、彼女達の不機嫌な感情によっては力が逆流し、その力をもって世界を滅ぼしかねない。

故に…士道の手に人類の存亡が握られている。

だからこそ、完全に華やかで…楽しめるものではないのだ。

 

「あぁー! 結構並んでるしー!」

 

「不安。これだけ並んだいると、夕弦達が食べられるか不安です。」

 

「…まぁ、取り敢えず並ぼうか。」

 

士道がそう言うと、2人は頷いて3人で列に並ぶ。

因みに、彼女達が士道を誘ったの理由は限定スイーツである。

 

暫くの時間が経ち…

 

「次の方、どうぞー。」

 

と、『ラ・ピュセル』の店員が指示をする。

 

「ありがとうございます…って、山吹?」

 

「ん? あー…五河くんか。

何ぃ? 十香ちゃんをほっといてお隣さんの双子ちゃんとイチャコラァ?」

 

「別に十香をほっといたわけじゃないけど…

…2人が誘ってくれたんだ。俺は甘いものが好きだからさ。」

 

「あ、そうだったんだ。

まー、それならそれで…」

 

山吹はバツが悪そうに目を晒す。

 

「ん?」

 

「あ、いや、うん。さ、ささ、お客さん入ってー!」

 

「?」

 

「ねぇ士道、亜衣と何話してたの?」

 

耶倶矢は士道に問いかける。

耶倶矢と夕弦は並んで待っている間、スマホゲームで対戦していたから士道と亜衣との会話を聞いていなかった。

 

「は、はーい。お客様3名でーす。」

 

士道達は亜衣の指示された席に座る。

 

「…山吹は何で急に慌てた態度をとってるんだ?」

 

そう疑問を抱きつつも、注文の為に呼び止める。

 

「すいませーん。注文良いですかー?」

 

「おー、ご注文は何なのだー?」

 

「あぁ、この限定スイー…って、十香!?」

 

「おおー! いらっしゃいなのだシドー!

耶倶矢、夕弦!」

 

なんと、士道の注文を受ける係の店員は十香だった。

 

「な、何でココに…!?」

 

「おお、我が眷属十香よ。

十香の様子を見に、そしてかつ、ここの限定スイーツを食べに来てやったぞ。」

 

「安堵。十香は問題なく助っ人バイトをしていますね。」

 

「助っ人…!?」

 

士道は驚愕し、キッチンにて姿が見える亜衣に視線を送る。

それに気づいた亜衣は分かりやすい知らないフリの態度を取り始めた。

 

「…一体、どう言う事なんだ?」

 

「解説。昨日、夕弦と耶倶矢は亜衣と十香が一緒にいる所を目撃しました。

その時に事情を聞きました。

何でも、今日入っていたスタッフが事情が入って来れないそうで、限定スイーツがある日は忙しい事から、亜衣は十香に助っ人をお願いしていたのです。」

 

「な、成程…」

 

…と、事情を知った士道だったが。

 

「この事を琴里達は知らないんじゃないか…?

だとしたら直ぐ連絡しないと───」

 

『その必要はありません。』

 

「えっ、鞠亜…?」

 

『はい。良妻賢母AIの鞠亜ちゃんです。』

 

「…えっと、何て?」

 

士道が慌てる中、鞠亜がスマホから士道に語りかける。

 

「…士道? 良妻とはどういうことだし。」

 

「疑問。鞠亜がその様に言う理由を教えて下さい。」

 

「…シドー、良妻賢母とは何だ…?」

 

耶倶矢・夕弦・十香の不機嫌オーラに圧せられる士道。

 

「いや……えぇと…」

 

『…ふむ。分かってはいましたが、守るべき精霊(彼女達)を不機嫌にしてはならないので、弁明させていただきます。』

 

鞠亜は謝罪をこめて十香達を説得した。

 

「…ふぅ。鞠亜、言葉を選んで欲しい…」

 

『すいません、必要以上に士道大好き愛が漏れてしまいました。』

 

「…え?」

 

『……この朴念仁。』

 

「え、え?」

 

『…まぁいいです。』

 

「まぁ、いいなら……って、それよりもだ鞠亜。

十香がバイトをしてるって───」

 

『はい。それについては問題ありませんよ。

十香がバイトをする事は事前に知っていましたので。」

 

「え、あ、そうなの?」

 

『はい。万能AI鞠亜ちゃんに抜かりはありません。

私は上空や士道のスマホ端末やメガネを通して、士道や十香達の様子を陰ながらに見守っているのです。

それを通して、昨日の時点から手を打っています。

ほら、奥の席を見て下さい。

見覚えのある人物がいます。』

 

鞠亜にそう言われて、士道は奥の席に目を視線を向けると、そこには琴里の部下の中津川がおり、士道の視線に気づいて合図をする。

 

『1時間毎に交代する様に組んでもありますので、士道は耶倶矢と夕弦の方に集中して下さい。』

 

「…そうか、ありがとう。」

 

『いえ、当然の事です。

それと、士道がヘマをしない様にフォローもしますので、大船に乗った気分になって下さい。』

 

「頼りになるよ、鞠亜。」

 

『いえいえ。私は士道の鞠亜ですので、当然です。』

 

鞠亜はそう言って、話の途中から士道のメガネに移動しており、耶倶矢達の方を優先させるように戻る。

 

「士道? なんか長めに鞠亜と話をしてたけど…大丈夫?」

 

「ん? あぁ、大丈夫だよ。」

 

士道は心配する耶倶矢達を慌てて宥める。

 

「お待たせしましたー。」

 

そうしてる間に限定スイーツがやって来た。

 

「ほら、来たみたいだし、早速食べよう…!」

 

士道は雰囲気を変えるためにスプーンを持って食そうとすると───

 

「…何これ。」

 

士道達が食べようとした限定スイーツは…イナゴにチョコレートをたっぷりとかけられたゲテモノだった。

 

「何って、今月の限定スイーツの『イナゴチョコ』。」

 

「…えぇ。」

 

酷い。ただひたすらに酷すぎる。

この言葉以外に言葉が出ないほど、ゲテモノに士道は顔を青ざめる。

 

「いやー、亜衣達がやたらとオススメするから気になってたんだよねー。」

 

「同調。滅多に聞かないものだと、気になってしまいます。」

 

「…いや、これはない。

てか、外で待ってた人達はこれを食べる為に待ってるの?」

 

「そうじゃないの…?」

 

「同意。それ以外ないと思いますが…」

 

(え…嘘、今ってこういうゲテモノが流行ってるの…?

普通に嫌だわ……後でぺぺさんの所に行って口直ししよ。

うん、絶対そうしよう。)

 

士道は信じられないだろうが……

この世界では可笑しな事に、普通の娯楽では満足出来なくなった者達が増え、普通では無いゲテモノやスイーツに激辛物を合わせたりと、色々と可笑しな風潮になっていた。

 

「……士道? 何処か体調悪い?」

 

士道が固まってるせいか、耶倶矢はさっきよりも心配する様に顔を見つめる。

 

「反省。士道は普段から頑張ってるので、少しでも元気を出してもらおうかと夕弦達は考えたのですが…外で並んで待ったのが体調を悪くしてしまったのでしょうか…」

 

夕弦達はしゅん…っと、元気を無くしてしまう。

 

「…」

 

それを見た士道は………覚悟を決める。

 

『士道! 耶倶矢達の機嫌がドンドン落ちています。

どうにかして───』

 

「耶倶矢、夕弦! どうしたんだ?

急に元気を無くして?

俺はちょっと慣れないもので少しビックリしてただけさ!」

 

士道は2人の機嫌を取り戻す為に、思いっきりゲテモノを口に運ぶ。

 

(ウッ…ウゲェェェ…!!

不味い…物凄く不味い…!!

何コレ…こんなのが流行るだなんて、頭可笑しいんじゃないか…!!)

 

士道は吐き出しそうになる。

 

(けど…2人を悲しませない様にしなきゃ…!!)

 

士道はそれを思いっきり喉に流しこんだ。

 

(うぅ…やっぱり酷い…

こんな虫を口に入れて飲み込んだのは…)

 

士道の脳裏に嫌な記憶がよぎる。

 

(いかんいかん…!

2人の前で嫌な顔をするわけには───)

 

「うぇ…これ、不味い…」

 

「同感。見た目通りにこれはキツイです…」

 

耶倶矢と夕弦の顔は青くなっていた。

よく見れば、この限定ゲテモノスイーツを食べていた客は皆んな、顔を青ざめていた。

 

「ど、どうしよう…こんなの…」

 

「同調。食べられません…」

 

耶倶矢と夕弦は涙目になっており、士道はそれを見て…

 

「……うぉぉぉぉぉ!!」

 

士道は自分のと、耶倶夜と夕弦のゲテモノスイーツを素早く口に運んでいく。

 

「「し、士道!?」」

 

2人は驚き、周りの客も士道を見る。

それは…ゲテモノに抗う、勇姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うっぷ…」

 

「士道…ごめんね…?」

 

「反省。夕弦達は甘く見ていました。」

 

士道が全て平らげ、早々に3人は店を後にしていた。

 

「……んんっ、何を言っているんだ。

デートとは互いに楽しむものだ。

元気を出して次に行こう、次に。

次はカッコいいオシャレなモノを見に行くか?」

 

士道は優しく微笑む。

 

「フッ、呵呵! 次は我が見つけた、漆黒の装飾品を見に行くぞっ!」

 

「指摘。次は夕弦の優雅なモノを見に行くのです!」

 

と、元気を取り戻して、どっちが優先するかを決めるためにゲームセンターで勝負を決める事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【真那とデート】

 

「兄様ー! 見て下さいコレ、カッコよくねーですか!?」

 

「…確かに、これカッコいいな。

紅いの鎧に、片腕の武装とかカッコいいな。」

 

「ですね〜。兄様はこういった片腕に武装をつけているのが好きなんですねぇ?」

 

「…うん。そうだな。」

 

士道と真那は大きめのショッピングモールで、玩具コーナーに並んでいるプラモデルを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、2人でお出かけは楽しいですね! 兄様!」

 

「そうだな。」

 

士道と真那との『お出かけ』は色々あって、今回が()()()だった。

…もしかると、失われている記憶では沢山の『お出かけ』をしていたのかもしれないが…互いに覚えない為に、今回が初めてとしていた。

 

「…皆さんが兄様とデートを行きたがる訳が分かりますね。

これなら…真那も…」

 

「ん、どうした?」

 

「…いえ! 何でもねーです、兄様!

それより、お腹すきませんか?」

 

「そうだな…確かにあれやこれやと見たり買ったりとして少し小腹空いたかな。」

 

士道は両手に持つ、士道と真那の買った物を担いでいた。

 

「それじゃ、兄様。

───あの、マンゴーパフェとか食べませんか?」

 

「食べよう(イケボ)。」

 

士道は好きなパフェに思わず無駄にいい声で反応した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜〜ん、このマンゴーの甘さがたまんねーですね!

兄様が甘いものが好きなのがよく分かるってもんですねー。

ま、兄様の一番の妹なので、当然なんですけどねっ!」

 

「…ハハ、どっちも一番だけどね…」

 

「いえいえ、真那が一番なんです!」

 

と、この兄妹はモグモグと美味しそうに食しながら会話をしていた。

 

「兄様。真面目な話、『どっちも』って安全圏な意見は謹んだ方が良いと真那は思うんです。

女の子ってものは何事も…って訳ではねーですが、きっぱりと言って欲しいと思う時があるんですよ。」

 

「…」

 

「まぁ、今の場合は兄様の判断が正しいとは思いますが。

妹視点からすれば、『一番の妹は真那』だと言って欲しいもんですよ!」

 

真那はプンプン!と可愛らしく語る。

 

「……俺に…」

 

「ん?」

 

「───()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

突如、さっきまで美味しそうにパフェを食べていた顔が、一瞬にして暗くなった士道がそう呟き、真那はスプーンを置く。

 

「…えっと、兄様? それは一体、どういう?」

 

「……真那。俺はな、今がとても幸せなんだ。

琴里や真那に十香、四糸乃、耶倶矢、夕弦、美九、士織、鞠亜、令音さん…皆んなとワイワイとした楽しい日々を過ごせている。

それだけでも、俺は満たさせれているんだ。」

 

士道は瞳を閉じて幸福そうに語る。

 

「誰かを選ぶ事で、誰かが不幸な思いをする。

俺にはそんな事が出来ない。

俺が傷つく分には構わないけど、皆んなが傷つくのは耐えられない。

誰かを失うくらいなら……」

 

士道は語る途中で一度止まる。

 

「……まぁともかく。俺には選べられないんだよ。」

 

「……むー。」

 

真那は不機嫌なオーラで士道を睨む。

 

「それでも真那は兄様に『一番』って言われてーんですよ!」

 

乙女心としては『一番』と言って欲しいのだ。

 

「いずれは琴里さんよりも、真那の方が良いと言わせてやりますよ…!

……ん? にしても、兄様。

真那とのお出かけとはいえ…他の女性の話をするなんて、関心しませんね。」

 

「え!? あ、いや、そうだな。ごめん。

……って、発端は真那じゃなかったか…?」

 

「あー! 真那のせいにしましたね!?」

 

「え、いや、そう言った訳じゃ…なくて…」

 

「こうなったら、今日はとことん真那に付き合ってもらいますよ!

ささ、休憩のスイーツを食べて次にいましょう、次!」

 

「…ははは。」

 

士道は強引な真那に戸惑いをするも、何処か嬉しそうだった。

何だかんだで、士道は今まで一緒にいられなかった分、真那との『お出かけ』…

 

いや、『デート』として楽しんでいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【夢界語り】

 

「ふいぃぃぃ…」

 

士道の仮想電脳世界での一件後、フラクシナスのシステムの強化に尽力を尽くしていた夢界が一日のやる事を終え、背筋を伸ばす。

 

「あーらら…もうこんな時間じゃん。」

 

時刻は夜の0時を超えた頃だった。

 

「ま、明日休みだから別に良いけど…令音ちゃーん、コーヒー淹れてくれな…いねぇや。」

 

メインルームには今現在、夢界1人だけであった。

基本、フラクシナス内では多くのクルー達が精霊がこの世界に顕現しないか、常に警戒体制…とは言い過ぎかもしれないが、常に監視していて、本来1人だけになるはずはないのだが…この9月の間に多くの事が重なって、クルー達の健康をかねて殆どのクルー達が上がっていた。

 

因みに恐らくだが、今回この場に令音がいたとしても、夢界にコーヒーを淹れないだろう。

 

「お疲れ様です、夢界くん。

コーヒーでしたらコチラを。」

 

「おお、神無月さん。あざまーす!」

 

「フフ…キミはいつでもテンションが高いですね。」

 

「これだけが俺の取り敢えだからなぁー。」

 

そんな事をほざいていると───

 

「あら、そんな理由でフラクシナスにいるのだったら、解雇しちゃおうかしら。

無論、記憶処理なら何までセットで。」

 

夢界にそう告げるのは我らが司令官、五河琴里だった。

 

「お疲れ様です、司令。」

 

「おっふ、冗談にしてもキッツイお言葉だぜ。」

 

神無月は琴里を丁重にもてなし、夢界はやれやれとした態度をとる。

 

「別に冗談で言ったつもりはないけどね。」

 

「…あれ? 激務を終えたばかりなのに酷くねー?」

 

「アンタにはこういった態度でいればいいって付き合いで分かってるのよ。」

 

「ハッハー…こいつは手厳しい!」

 

こんな意味の無い会話をしているが、これでも琴里は夢界に仲間意識を向けている。

だからこそ、こんな夢界の言動に反応しているのだ。

 

「…そう言えば、この気にきちんと聞いておきたいのだけど。」

 

「んー? 何々? 俺の何が聞きたいの?」

 

「アナタがこんな危ない事に首を突っ込む理由は何?

最初の頃は確か、「面白そうだから」とかほざいてた気がするけど……

()()()()()()()()()()()()()?」

 

「…」

 

「これでもアナタの身の為にも言っているのよ?

これからはDEMと争う事が多くなる。

それはつまり、普段の日常からアナタの命に危機が及ぶ恐れがあるのよ。」

 

「……わーてるよ。

全く琴里ちゃんも人が悪いねー。

普段は遠慮なく扱き使っているのに、こんな時は気遣ってくれちゃってさ。」

 

夢界はコーヒーを飲む。

 

「……そうねー。

俺が何でこんな危ない世界に首を突っ込んだのか……

強いて言えば、()()()かな?」

 

「…腹いせ?」

 

夢界の言葉に琴里と神無月は意外な物を見る目になる。

 

「そ。あ、誰に対してって訳ではないよ?

俺はただ……()()()()()()()()()()()。」

 

「……?」

 

「あー単純な話、正しい事をしている奴にはそれなりの報いをしてほしいのさ。

だってそうだろう?

誰かの為に一生懸命に頑張ってる姿は誰でも美しい。

それは、黄金に輝く金とまで行かなくても。

綺麗な石でも見れれば、それは心が和むってものさ。」

 

「それは…まぁ、確かにそうですね。」

 

「なのに、現実はそうならない。

誰かの為に一心不乱にその身を費やしても、帰ってくるのはそれ以上の過酷。

……俺はそれをただ見ていた。」

 

夢界は目を細める。

彼の脳裏に……一人の少女が浮かび上がる。

 

「……ある女の子がいた。

その子は……本来、何処にでもいる様な女の子なのに、大人の都合ってやつで幼い頃から大人によって様々な教育を施されていた。

それはもう、寝る事も惜しまれる位…残酷に、な。」

 

その女の子はひたすらに大人達の言う通りにこなした。

…その光景を間近で見ていた兄に当たる者は哀れみ…ではなく、気味悪がっていた。

 

年月が過ぎ、その女の子は大きくなった。

女の子は大人達から下された使命によって、行動をとった。

……いや、とろうとした。

 

「柄にもなく、と言うのかな。

……俺は女の子に問うた、本当に良いのか…と。

……しかし、女の子はそれを自ら選んだかの様に───」

 

 

 

 

 

『これで正しいのです。』

 

 

 

 

 

「……詳細は省かせてもらうが、他者の為に尽力を尽くした彼女に待ち受けていたのは『報われない終わり』だった。

守るべきだった者達は次々と失い、共に肩を並べていた者達もいつの間にかいなくなっていた。

それどころか裏切られる事もあった。」

 

「……どうして?」

 

「……皆んな、彼女を見ているようで全く見ていなかったのさ。

あ、いや……見ていた者もいた。

見ていた者は彼女に寄り添ってはいたが、最終的にはいなくなってしまった。」

 

「…失礼ながら、夢界くんは?」

 

「……自分で言うのも何だが、俺は見ていた側だな。

けど、俺は()()()()()()をした。」

 

「……何でよ。」

 

「……自分ではどうにも出来ないと、匙を投げた。

あの頃の俺は……人の心ってのが無かった。」

 

だから、傷ついていても、苦労しても、最低限の心配をするだけで、それ以外は干渉しなかった。

そして……最後には泣いていた。

 

「……情けない話、あの時初めて後悔をしたんだ。

けど、俺には度胸が無かった。

……そんな事をぼんやりと、空を眺めていた時に

───ある通知が一つ入った。」

 

「……」

 

「そこに記されていた内容は───

『とある青年が過酷な運命を背負っている。

少しでもやり直したいと思うなら、今度は手を差し伸べてみるといい。』

…とな。俺は特にやる事もなかったからなのか、後先なんて考えずに調べまくった。」

 

「……それが、おにーちゃん。」

 

「ああ、そうだよ。

アイツを見た時───彼女と重なっている様に見えたんだ。」

 

…紛れもない、()()

だからこそ、この男は───

 

「……こんな話を聞いて、信用に値しないって思ったと思う。

けど、俺は本気だ。

今度こそ…俺は、正しい奴には報われる人生を送れるようにしてやりたい。

それが……『夢界藍』の本心だ。」

 

「……そう。」

 

今の夢界の顔つきが、琴里にどう見えたかのか…

 

「なら、精一杯に頑張りなさい。」

 

琴里はそう言って、神無月が提示させたチュッパチャプスの一つを夢界の頭に置いて、自宅にへと帰った。

 

「良かったですね、夢界くん。

司令から好物のチュッパチャプスを頂けるのはそれだけ期待されている事ですから。」

 

神無月はそう言って、自身の作業に戻った。

 

「……甘いねぇ。」

 

夢界は嬉しそうに甘い優しさを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【それは夢なのか…】

 

夢。

目の前に広がる光景…世界を凝視してそう思った。

何しろ、青い空が無かったからだ。

雲一つもない空なのに…空の色はまるで終末の様な空。

 

そこに───

 

「なぁ、トネリコー。」

 

一人の小柄の女の子が、もう一人の女性を呼び止める。

 

「はい、どうしましたか? トトロット。」

 

その小柄の女の子はどうやら『トトロット』と言うらしい。

 

「…なんか、良い事でもあったのか?」

 

「え?」

 

もう一人の女性『トネリコ』はとても驚いた顔をしていた。

 

「何故、そう思うのですか?」

 

「だって、なんかよく分からないけど、()()()()()()をしているから。」

 

トトロットに言われて、トネリコは自分の顔を触る。

 

「…確かに、昨日までとは違う顔をしているな。」

 

「だろ? 黒騎士も気づいてるし。」

 

全身を鎧で纏っていた『黒騎士』と呼ばれた者もトネリコの変化に気づいていた。

 

「…ウーサーとなんか面白い事があって、それを思い出したのか?」

 

「だとしたら、今更になって喜ぶというのも変な事だろう。

…ウーサーとは約1週間位会っていないぞ。」

 

「そうだなー。ウーサーという線はないかー。」

 

「…2人共、何を面白がっているのかは分からないけど。

余計な散策するのは───」

 

「もしかしたら、ウーサーとは違う野郎にでも会ったのかもな。」

 

そこにもう一人…四人目の人物である、少年の姿をした人物がいた。

 

「あ、グリム! 話を聞いてたのか?」

 

「ああ。随分と面白ぇ話をしているのを聞こえたんでな。

…んで? どうなんだよ、トネリコ。」

 

『グリム』と呼ばれた少年はトネリコに意地の悪そうな顔で問う。

 

「……別に。そんな事はありませんよ。」

 

トネリコの反応に3人は意外そうな反応を示した。

 

「マジなんだわ!? 等々トネリコにも想い人が!?

……あ、だとしても、ウーサーじゃないのは少し可哀想だな。

アイツ、トネリコに惚れているからな。」

 

「トトロット、私とウーサーくんとは唯の友人ですよ?」

 

「…うわぁ。脈すらないとは。」

 

「…しかし、だとしたら相手はどんな奴だ?

会ったとしたら、我々が眠っている昨夜に会った事になるが…」

 

「あ、そっか。でも、だとしたらどんな奴なんだ?

何処の妖精? それとも、人間?」

 

トトロットと黒騎士はグイグイとトネリコに問い詰める。

 

「ええっと……、別に色恋沙汰の話ではありませんよ?

そもそも私は『楽園の妖精』。

この眼で心の内が見えてしまう以上、恋愛に関して私は興味がありませんから。」

 

「…あー。」

 

「それに……やっと、やっと私の『使()()』が果たせそうなんですよ?

私はこれで……『楽園』に帰れるんです。

そんな私が……今更他の事に意識を向ける事はありません。」

 

「……そうだな。これで()()()()()()()()()()。」

 

「…ボクとしては不満だな。

トネリコの綺麗な…ドレスの姿を見たかったのに。」

 

「…トトロット。綺麗なドレスなら、いずれ『載冠式』で着ますから。」

 

「むぅ…」

 

トネリコがそう言い、トトロットは納得いかなそうな顔をしていた。

 

何のお話なのか分からないが、少なくても()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そう……それが、どれだけ救いたいと、願ってもだ。

 

「……けど、心の底から信じたいと思う相手に出会えたんだろ?」

 

「……まぁ、そう…ですね。」

 

「そいつは結構な話だ。

んで、どんな奴だったんだ?

───『夢』の中で出会えたその人物は。」

 

「!?」

 

トネリコは顔を赤めて、顔を近づけていたグリムから離れる。

 

「グリム! アナタもしかして、全部───」

 

「いいや、知らないぜ?

知っているのは…いや、知ったのはオマエさんの反応を見てだぜ?

それに、『夢』くらいしかないだろ。

お前が信頼出来る者達がここにいたとしても───この『世界』で、心の拠り所となり得る奴は此処にはいないからな。」

 

「……」

 

「そんな暗い顔をするなよ。

んで、どうなんだ?

色恋沙汰には一切関心が無く、人付き合いに疲れたお前が、心を許しちまう相手ってのは。」

 

「……そうですね。

正直、『夢』での出来事だったので、具体的に何があったのか、何をしたのか、どういった人だったのか…

今の私には覚えがありません。

……でも、ただ一つ言える事は───

私以上に辛く、過酷な『運命』に縛られているのに…

自分の心がどれだけ傷ついているのか、自分でも分かってもいないのに…

それなのに…誰かの為に迷いなく手を差し伸べる───

暗闇でも輝き続ける、夜空の星々の様な美しい心を持った人でした。」

 

トネリコは空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うーん?」

 

空はまだ明るく無い。

普段なら琴里に起こされるまで全く起きないのに、不意に起きてしまった士道。

 

「……別に変な悪夢を見た訳で無い。

けど、何処かで聞いた事のある声…

誰だろう…覚え出さなきゃいけない筈なのに…

覚え出せない。」

 

暗い気持ちとなって、落ち込んでいたが……

 

「…綺麗な夜空だな。」

 

士道は窓から夜空の星々を見ていた。

綺麗な星々を…誰かと一緒に見ているような気持ちとなって、少し心が軽くなった気がした士道だった。

 

 

 







・八舞姉妹回の番外編をやってなかったから思いつきでストーリーを進めていたら、こんな話になっちゃった。
これでいいかな?…って、なりましたけど、士道のゲテモノに立ち向かう話をやりたかったので、ここが初になりました。
因みに士道くんは今後もこういったゲテモノを女の子を救う為に頑張る予定です。
それに、2人のいい話を次の話でやるつもりだから、先ずそこで挽回します。


・真那のお話はこんなものでいいかな?
この話を作ったのは真那にも士道の『闇』の一面をチラ見程度というのか、知っといて欲しかったからです。
今後の為にも…次の3期分では、ね?


・夢界のお話は大分端折った流れで最低限でしか語っていないけど、上手く伝わったでしょうか?
…まぁ、夢界くんが何者なのか、大分察している方もいるでしょうから、彼女(女の子)が誰なのか…分かるとは思いますので、詳細は割愛で。


・最後のお話は原作に寄せつつ、オリジナルのお話。
時系列とかは……盾の騎士出会う前辺りです。
彼女と士道の絡みはいずれやるつもりですが、かなり先になります。


・さて、番外編も終わりました。
次は…この物語で大事な変わり目である幕間4になります。
次回をお楽しみに!


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