デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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あけましておめでとうございます。
そしてデアラ大好き皆様、お久しぶりです。
こちらの作品はまだ生きております。
れいにゃん(令音さん)と早イチャコラしないと…!!





【第11章】七罪編『失踪する鏡』
第一話:魔女のお誘い


 

 

 

「………ん……んん、ここ、は?」

 

 

ゆっくりと体を起こす。

 

 

「……あぁ、ベルベットルーム。

随分と、久しぶりな気がする。」

 

 

そう呟きながら檻先の方へ顔を向けると…ジトーと、士道を半眼で睨んでいたラヴァンツァだった。

 

 

「え、ええっと?」

 

 

「……お久しぶりですね。」

 

 

「ど、どうしたんだ?」

 

 

「…いえ、何も。ただ、毎日可愛らしい女の子に囲まれて随分と鼻の下が伸びていて楽しそうだと思いまして。

近い未来、何が起ころうとしているのか分からないというのに。」

 

 

「は、鼻の下が伸びているって…」

 

 

「見ていましたよ。

多くの女の子達に囲まれ、尚且つ体が密着する度にいやらしい笑みを浮かべるアナタ様のお姿を。」

 

 

「いやいや待て待て!

そんな笑みなんて浮かべてない!」

 

 

「…その割には満更でも無いご様子でしたが?」

 

 

「それは男としての本能的な…いや、じゃなくて。

そ、それよりも…え、えぇと……

げ、元気にしていか?」

 

 

「…えぇ、勿論でございます。

お忙しいアナタ様と違い、我々はここからアナタ方を見ている()()ですので。」

 

 

(…だけ?)

 

 

士道は何か含みがある様なものを感じ取ったが───

 

 

「(触れない方が良さそうだな。)

そうか、それなら良いんだ。

あ、そうだ。多分把握しているだろうけど、大きな出来事があったんだ。」

 

 

「ええ、勿論。把握しております。

またも困難な試練を……いえ、大変な思いをしましたね…。」

 

 

困難な試練…旅行先での戦闘に、電脳世界での出来事とあった。

前者の事は兎も角、後者は知らないでは…と、もしかしたらと思っていた士道だったが案の定把握済みであった。

 

 

「思いにもよらない大変な目に遭ったけど、そのお陰で仲間が出来た。」

 

 

「そうですね。それに関しては喜ばしいです。

…しかし、自我を芽生えさせた挙句、良妻賢母とまで言わせるあたり…

アナタというお人は、どれだけ女性を虜にする気なのですか?」

 

 

「え、あ、いやぁ、その、色々と言いたい事はあるだろうけどぉ…。」

 

 

「まぁ、それは一旦置いておくとして、精霊を人工的に作り出す技術を持つとは…

この世界の人間は侮れませんね。

いえ、この場合敵であるDEMの者達と称しておくべきでしょうか。」

 

 

「精霊を作り出すといい、ましてやシャドウを電脳世界にまで取り入れるとは驚いたよ。

てか、可能だったのか? そんな事が。」

 

 

「……いえ。正直な話、我々としても敵の予想外な行動に困惑しておるのです。

何度も仰っておりますが、シャドウとは今を生きる人々の心の歪みから生まれた悪意。

それが現実に出現したという事態が異常事態なのです。

…それを自分達の手足の様に扱う敵の力は改めて侮れない。

アナタの最大にして最悪の敵。

正しく───」

 

 

「───【破滅の運命】をもたらす存在。

それが、アイザック・ウェストコット。」

 

 

士道の脳裏に薄気味悪い邪悪な笑みを浮かべる宿敵の顔が浮かんだ。

 

 

「先をお考え、現状を見つめるのは正しいですが、暗くなのはよろしくありませんな。」

 

 

士道とラヴァンツァとの会話に沈黙して聞いていたイゴールが口を開いた。

 

 

「確かに、相手のとっている手段と行動は我々においても予想外且つ油断ならない事態。

それを乗り越えるアナタですが、暗い感情なままでは絶対に乗り越えられないでしょう。」

 

 

「そうですね。我が主人の言う通りかと。」

 

 

「…そっか。確かに、暗い状態でいても先には進めない、か。」

 

 

「ええ、そうです。切り替えましょう。

そういえば、アナタは自身の力の向上を認知し、更には精霊(彼女達)の力を把握し、一つに集約する術も手にしましたね。」

 

 

「ああ。ペルソナと精霊。

この二つの力を上手く扱える様になれれば、皆んなを守れる。

そして、あわよくば───」

 

 

「己に待ち受ける破滅を乗り越えられる、と。

ええ、その調子で参りましょう。」

 

 

「うん。」

 

 

「……とはいえです。数多くの女の子の誘惑に惑わされない事と、それに乗り込まれ無いようする事と、悦に至らない様お気を付け下さい。」

 

 

ラヴァンツァは再び士道をジト目で睨み始めた。

 

 

「え、ら、ラヴァンツァ、さん?」

 

 

「…(じとー)」

 

 

「……い、イゴール、殿?」

 

 

「青春ですかな?」

 

 

士道の救いの視線にイゴールはニコニコと我関せずと、そう答えてそっぽを向く。

 

 

「いやぁ、あのぉ…ら、ラヴァンツァはずっと此処にしか居られないのか?」

 

 

士道は苦し紛れに流れを変えようと、突拍子だが今まで語った事の無い事を聞いてみた。

 

 

「…? いえ。いざとなれば、短時間ですが現実世界に顕現する事は可能ですが?」

 

 

「!? そ、そうなのか!

いや何…我ながら、今まで碌に余裕が無かったせいか、紳士として恥ずべきな意見だけど、この気に現実って言うのか、外の世界で言うのか…

うん、会って遊んでみないか?」

 

 

士道はこれまで琴里達によってスパルタ訓練ならぬ女性への口説きの成果を此処で披露したのだ。

 

 

「………まぁ、良いでしょう。」

 

 

少しの沈黙の後、ラヴェンツァはいつもの冷静でいて、且つ上品な令嬢の如く大人の女性の雰囲気になった。

 

 

「そうか! じゃあ、楽しみにしている。」

 

 

士道が笑顔で応じると、時間になったのか、士道は夢から醒めるように意識が途切れた。

 

檻の中にいた士道が消失したのを見送り、2人だけとなったベルベットルーム。

 

 

「良かったではありませんか?」

 

 

「……何の事でしょう、我が主人。」

 

 

「今まで一度もこういった事が無かったではありませんか。

この機に、少し彼との友情を深めるのは良いかと思いますよ?」

 

 

「……これはあくまでも、彼が行なっている訓練に私も協力して差し上げるという、親切心です。

仕事、ええ、あくまでも仕事でございます。」

 

 

「とは言いつつ、嬉しそうにして───あいたっ!?」

 

 

この時初めて、ベルベットルームの主人たる人物に手を上げたとなった出来事が起きた……かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「───?」

 

 

隣にいる女の子は不思議そうに指差す。

指しているのは信号機である。

その後、郵便ポストに自動販売機など一般的には誰もが知っている事を彼女は一つも知らなかったのだ。

 

 

「───!」

 

 

一つ一つを優しく教えながら接しているのか、女の子はとても嬉しそうに反応していた。

教えてもらう事が嬉しいのだろうが…何よりも、一緒に何かをする、共にいる事が彼女にとって幸福な事だったのだ。

 

 

「───」

 

 

女の子が何かが気になって再び指差す。

その先にあったのは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「シドー! 今日の晩御飯は何なのだ?」

 

 

「今日はカボチャカレーだ。

カボチャの甘さが良い味を生み出して美味しいんだ。」

 

 

「おお! それは誠か!?」

 

 

「本当だよ。」

 

 

「うむ! なら、今日も令音と一緒に食べられるのだな!」

 

 

「…あぁ、勿論。今日もシンの料理をご馳走になるつもりさ。」

 

 

放課後、士道と十香と令音の3人はそれぞれ買い物袋を手に持って五河邸へ足を運んでいた。

 

 

「…そういえば、ここ最近はシンの家に厄介になっているね。

忙しい中、申し訳ないと思う。」

 

 

「申し訳ない事なんてありませんよ、令音さん。

最近に限らず、毎日来てください。

令音さんは俺達の仲間なんですから。」

 

 

「…そうか。ふむ……キミがそこまで言うのなら。」

 

 

「ていうか、ある意味それ以上って思いますしね。」

 

 

「それ、以上?」

 

 

士道の言葉に令音は驚き、虚をつかれた顔をし…次第に浮かれた雰囲気を出し始めた。

 

 

「令音さん?」

 

 

「…それ以上、それ以上か…ふふっ。」

 

 

「令音、さ───いでてぇ!?」

 

 

士道が令音に気を取られていると、十香がぷくーっと頬を膨らませ怒っていた。

 

 

「とぉかぁ? どうしたんだ?

そんなぁ怒る事でぇも…いだだだだ!」

 

 

「むぅぅぅぅ!!」

 

 

十香が服の上から力強く肉を摘み上げており、士道は涙目となり、そんな中で令音は珍しく気づかないレベルで惚けていた。

 

 

「───女性を困らせるのは、よくない事だね。」

 

 

「「!?」」

 

 

突如、士道達に声を掛ける者が現れる。

その人物は車椅子に座っている紳士的なオーラのある少し老けた様な外国の男性だった。

一言で表すのなら、ジェントルと言えるだろう。

それと、車椅子を押す若い女性だった。

 

 

「ええっと…アナタは?」

 

 

「失礼。私はただの通りすがりのしがない者だよ。

ああ、名はボールドウィン。

そして、彼女はカレンと言うんだ。」

 

 

「どうも。」

 

 

「はぁ、どうも…。」

 

 

「もう一度言ってしまうが、女性を困らせるものではないよ。

特に、男性たる者が女性を虐めるなどは御法度ものだ。」

 

 

「え、えぇと、俺が困らせた訳では無いのですがぁ…。」

 

 

「む? どうしたのだ、シドー?

ん、おいそこの者! シドーを困らせているのか?

シドーに何かしようものなら、容赦はせんぞ。」

 

 

十香は士道の前に立ち、ボールドウィンを睨んだ。

 

 

「これは失礼した。困らせるつもりは一切なかったのだが…

どうやら、私が勘違いさせてしまったせいで逆に困らせてしまった。

許して欲しい。」

 

 

「む? むぅ?」

 

 

「大丈夫だ、十香。

この人はとても親切な人だよ。」

 

 

「おお! そうかそうか!

うむ! 確かに、普段のシドーと似ている様な気がするぞ!」

 

 

「ははは、それは光栄だね。」

 

 

「あ、いや。俺なんかよりも親切な人だよ、十香。」

 

 

「ん? シドーの方が優しいぞ!」

 

 

「あ、あはは…。」

 

 

「うん。仲睦まじいのは素晴らしい事だ。

もしかしてだが、キミ達はカップルなのかな?」

 

 

「ん? かっぷるとはなんだ、シドー?」

 

 

「え!? あ、あぁ、いや、えぇと…

俺達はそう言った関係ではありませんよ?」

 

 

「おや、そうだったのかな?

では、其方の方と…」

 

 

ボールドウィンは十香から、ずっと無言で士道の隣で上の空で惚けている令音の姿を見て言葉を無くした。

 

 

「? どうかしましたか?」

 

 

「…」

 

 

「…エリオット。無言で凝視するのは良くありませんよ。」

 

 

これまで無口だった女性が、ボールドウィンの頬を抓る。

 

 

「あだだだ…すまなかったね。

そちらの方があまりに魅力的なだったのでね、つい…。」

 

 

(……確かに、令音さんは魅力的な人だからな。

見惚れてしまうのは仕方ない。

……けど、それはそれで……気に入らないな。

……あれ、何で、こんなハラハラとした感じになってんだ、俺。)

 

 

士道が険しい顔をしていると、それに気がついた令音が我に戻った。

 

 

「シン、どうかしたのかい?」

 

 

「え、な、何でもないですよ?

令音さん、我に戻ったんですね。」

 

 

「? 私は普段から大丈夫なのだがね。」

 

 

「いや、さっきまで浮かれ…まぁいいや。

それより───」

 

 

士道達は目の前で頬をつねられて涙目になっていたボールドウィン達の方に視線を戻した。

 

 

「あのぉ…大丈夫ですか?」

 

 

「お気になさらず。」

 

 

「そ、そうですか…。

(…今更だが、この人…誰かに似ている様な気がする…。)」

 

 

一瞬、脳裏に士道を痛い目に遭わせた最強の魔術師を連想したが、彼女とは全く違う感覚だっため、否定した。

 

 

「すまないね、見苦しい所をお見せした。」

 

 

「いえ、大丈夫ですよ。」

 

 

「ありがとう。所で、この近くに市民病院は無いかな?」

 

 

「それでしたら───」

 

 

士道が翔の親が勤めてる天宮市民病院の道標を伝えようとした途端に───

 

 

 

 ウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

 

 

空間震警報のサイレンが鳴り響いた。

 

 

「このタイミングで!?」

 

 

「むっ、という事は精霊───」

 

 

「と、十香! この場合は急いで避難をするんだ!」

 

 

「そうだよ、十香。シンの言った通りに動こう。」

 

 

「お、おお! そうだったな!」

 

 

「という訳で、避難シェルターへ誘導します。

着いて来てください!」

 

 

「あぁ、ありがとう。」

 

 

「…」

 

 

士道は一瞬だが疑問を感じた。

事情を知らない一市民からすれば、『空間震』は自然災害な為に恐怖の一つだというのに…

このボールドウィン、それからカレンの2人は()()()()をしていたのだ。

 

その疑問を抱きつつも、速やかに避難シェルターへと誘導して行ったのだ。

 

 

「此処です。俺達は他に逃げ遅れていないか、見てから向かうので先に避難したください!」

 

 

「親切にありがとう。」

 

 

「いえ、当然の事ですので。」

 

 

「そうか。」

 

 

カレンと共にエレベーターに入ると───

 

 

「キミも気をつけたまえ。

()()である彼女や彼女達を救えるのはキミだけだ。

頼むよ、五河士道くん。」

 

 

「───え?」

 

 

士道は名前を告げていないのに名を口にし、且つ精霊についても知っているボールドウィンの言葉に思考が止まってしまい、問い出す事が出来ずに彼等はエレベーターが作動して地下へと降りてしまった。

 

 

「…!? しまった、遂気が緩んで問い出せなかった…!

どうして、俺の事や精霊について知ってるんだ!?」

 

 

「……あの男も、人が悪い事だ。

最初に名乗っておけば良いものを…。」

 

 

「?」

 

 

十香は完全に置いてけぼりなせいか、?マークを浮かべるばかりだった。

 

 

「令音さん、あの人は…もしかして、フラクシナスに関わる人ですか?

…まだ、クルーの人で挨拶した事が無い人がいたのか。」

 

 

「フラクシナス、と言うよりかはラタトスクにおいて重大な責務を背負う者だね。

まぁ、その内シンも知る事になるだろう。」

 

 

「そう、ですか。」

 

 

「あぁ。それよりもだ。

我々はフラクシナスに向かうとしよう。」

 

 

「そう、ですね……あの、令音さん。」

 

 

「ん?」

 

 

「……いえ、すみません。何でもないです。」

 

 

「ふむ……何を悩んでいるのか、後でゆっくりと問いたい所だが…

これだけは伝えておこうか。」

 

 

令音は士道に近づいて、頭を撫でる。

 

 

「私は他の誰かのものになる気はない。

キミが思っている悪い流れにはならないとだけ、断言してあげよう。」

 

 

「…!」

 

 

「だから、心配する事は無いさ。

この状況で口にするのも変な話なのだが…

少なくとも、私は今が楽しい。

琴里や真那、十香達がいて、何より…

キミがいるこの生活を失いたくないのが一番の思いだからね。」

 

 

「そ、そうですか。」

 

 

ある意味愛の告白とも言えなくなくも無い、告白に士道も思わず頬を少し赤らめる。

 

 

「さ、行こう。十香も不安がる必要は無いさ。

シンが迷っている時は私達が、私達が困っている時はシンが支える。

『人』というのはそういう意味だよ。

だから、普段の調子に戻して行くとしようか。

…精霊達を救いに、だろう?」

 

 

「はい!」

 

 

「うむ! その通りなのだ!

令音は良い事を言うな! まるで先生のようだ!」

 

 

「……先生、だよ? 十香。」

 

 

その言葉に士道は少し笑い、普段の余裕のある士道に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでしたか、エリオット。

彼、五河士道本人は。」

 

 

「あぁ。聞いていた以上に、頼りになる人物だ。

自分よりも、他者を思う真っ直ぐな少年だ。

五河司令が、実では無いとはいえ、兄である彼を想うのも仕方あるまいと頷けたよ。

私とは比べ物にならない、魅力的な人間性を持つ者といえるだろうね。」

 

 

「アナタも負けていませんよ、エリオット。

少なくても、私にとってはアナタが一番魅力的です。」

 

 

「ははは。キミにそう言ってもらえるとは、光栄だね。」

 

 

「冗談に思っているかもしれませんが。

本気ですよ? どれくらいと言われれば、先程上げた五河司令と同じほど。」

 

 

エレベーターが下がりながら、2人だけの場で語り合っていた。

…因みに彼等は現在、避難シェルターでは無くラタトスク機関の息がかかった場所へ移動している事は士道は知らない。

 

 

「……所で、先程のアレはどう言うことですか?」

 

 

「ん?」

 

 

「村雨解析官の事です。

彼女の事は直接会った事が無いとはいえ、資料を通して知っている筈です。

……なのに、アナタは彼女を見て、本気で惚けている様に見えましたが?」

 

 

カレンの冷たい言葉がエリオットを襲った。

 

 

「……そう、だな。何というか…確かに彼女とは初めて会った筈なのだが…

何故なのだろう、な……まるで───いいや、それこそあり得ない話だ。」

 

 

そう呟き終えると、目的地に着いてドアが開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「これはまた…いかにも幽霊の出てきそうな雰囲気のある場所だな。」

 

 

士道はフラクシナスによって転送された地…何年も前に廃墟と化した遊園地と思われる場所で立った。

 

 

『……怖い事言わないでよ。』

 

 

「悪い。このまま立っている訳にもいかないし、先に進む。」

 

 

『ええ……本当に気をつけて頂戴…。』

 

 

補足として、琴里は怖いものが苦手である。

だから、モニター越しからでも分かる何か出そうな雰囲気のあるこの場所を見てから、司令モードから妹モードになりかけの状態であった。

 

 

「……肌寒くなってきているとはいえ、まだ風も出てないのに遊具が動いているのもあって…。」

 

 

『…(ガクガク)』

 

 

「本当に出そうだな…フフッ。」

 

 

『しぃぃどぉうぅぅぅ……!!』

 

 

「悪い悪い。」

 

 

通信越しから兄弟だけの空間及び、会話となっていた。

その様子を艦内で一緒にいるクルー達はクスクスと笑っていた。

 

 

『…シン、琴里を弄りすぎだよ。』

 

 

「すみません。ちょっと、揶揄いたくなっちゃって。」

 

 

『…まぁ、兄妹仲睦まじいのは良い事だ。

それに、元気が出て良かったよ。』

 

 

「はは、ありがとうございます。」

 

 

令音とも仲睦まじい2人だけの会話をしながら歩いていた。

因みに士道が更に元気になったのは、令音が行く前に日課となったあった『良い子撫で撫で』による影響があった。

 

 

『年上教師に可愛がられて調子こいている士道はさっさと気持ちを切り替えて下さい。』

 

 

士道のメガネから鞠亜がジト目の姿で登場する。

 

 

「ちょ、調子こいて無いけど…。」

 

 

『いいえ、こいています。

アレから興奮気味な心拍数をしています。

帰ったら、良妻賢母型AI:鞠亜の説教があるので、覚悟しておいて下さい。』

 

 

「…説教はやめて欲しいな。」

 

 

『なら、あの行為はこれから禁止としましょう。』

 

 

「!?」

 

 

『それは良い判断ね。

少しは役に立つこと言うじゃない、鞠亜。

良妻賢母というのは消去してもらいたい所だけど。』

 

 

『…待ってくれ。それだと、私のメンタルが崩壊する。

この話は無かった事を所望する。』

 

 

などと、これから精霊を相手にしようとする雰囲気では無かった。

…が、鞠亜が霊力反応の地に着いたこと事により、真面目となった。

 

 

『士道、どうやら着いたようです。』

 

 

「……みたいだな。」

 

 

士道は思わず警戒心を強める。

その理由は…運営されてない筈の遊具が一斉に稼働し始めたのだ。

 

 

『ひっ!?』

 

 

「これは…当然、霊力によるものか?」

 

 

『はい。それで間違い無いです。

───士道! 前を!』

 

 

周りを見渡している士道に鞠亜が声をかけ、正面を見ると───

 

 

「あらぁん? 珍しいお客さんね。」

 

 

その声と姿を捉えた瞬間、フラクシナス内は慌て始めた。

 

 

『と、とんでもない精霊が現れた…!』

 

 

『いつかは出てきそうな気がしたけど、等々出てきたわね!

対士道くん特化した精霊が…!』

 

 

クルー達の反応からして分かる通り…士道の目の前には動いているメリーゴーランドの建物の上に立っていた者のは───

 

艶やかな緑の長い髪

 

夜空の様な特徴な『魔女』を彷彿させる霊装

 

何より一般のグラビアモデルを遥かに超えるだろう…

グラマラスなおねーさんだったのだ。

 

 

「…!!」

 

 

思わず士道は目の前にいる女性の姿にゴクリと息を呑んだ。

…と、同時に奇妙な感覚も覚えたのだ。

 

 

(な、なんだ? 令音さんに負けないくらいの大人のお姉さん風な人なのに…何故か感じる()()を感じさせるこの───)

 

 

「そこのキミ?」

 

 

「は、はい!?」

 

 

「うふふ。よく見ると可愛い子ね。」

 

 

「え…それは、無い…筈ですけど…。」

 

 

「フッフフフ。」

 

 

魔女は士道を揶揄う様に笑いながら、士道の元まで降り立った。

 

 

「お名前は?」

 

 

「い、五河士道、ですけど…。」

 

 

「そう。士道くんって言うのね。

どうしてこんなの所にいるのかしら?」

 

 

「え、ええっと…。」

 

 

士道がどう返答しよう迷っていると───

 

 

『困っている様子ですね。

胸やら脚やらと見惚れていたのは見逃しませんが…

とりあえず、士道の頼れる真の相棒として助言をしてあげましょう。』

 

 

『え? 俺が相棒の筈ですが?』

 

 

『相棒枠は私に確約されました。

夢界は永久的に友人枠となりますので、ご理解を。』

 

 

『そげな馬鹿な!?』

 

 

などと、目の前の魔女相手に困っている中、鞠亜は次の指示を士道のメガネモニターに表示させた。

 

 

(何!? こ、こんなキャラで行くの!?)

 

 

『早よ行動に移して下さい。相手を待たせすぎですよ?』

 

 

『そうよ。早く行動に移しなさい。

……てか、私のポジションまで奪ってないコレ?』

 

 

半ば強引な指示に士道は一瞬戸惑うも瞬時に切り替えるのだった。

 

 

「ふ…ふぇぇ、えっと、僕、僕もよく分からないです…。

気がついたら、こ、こんなところでぇ…。

(キッッッツ……笑えないレベルで恥ずかし死しそう…。)」

 

 

士道は無理なキャラを演じ、穴があるなら思いっきりダイブしたい気持ちになっていた。

 

 

『可愛いいいいい!! 

僕っ子士道くん、おかわわわわわ!!!』

 

 

『良い…。実にいいモノを見た。

今夜はこの映像を気が済むまで視聴するとしよう。』

 

 

インカムから物凄いテンションの士織と、いつもの調子なのに明るい雰囲気を表す令音が反応していた。

 

 

「あはは! 大人しそうに見えて、結構子供っぽいのね!」

 

 

「うぅ…。」

 

 

「うふふ。そうそう、私の紹介が遅れたわね。

私は『七罪』。まぁ、私にちょっかいかけてくる者達からは〈ウィッチ〉って呼ばれるけど。」

 

 

「(〈ウィッチ〉か、まんま通りだな。)

な、七罪さん…ですね。」

 

 

「七罪で良いわ。敬語も堅苦しいのも好きじゃ無いの。」

 

 

「じゃ、じゃあ…七罪、で。」

 

 

『ふむ。先ずは上手くいきましたね。』

 

 

あんな作戦じゃなくても行けただろ…と、思った士道だった。

 

 

「そうそう。そう言えば、次にまともに話の聞ける人間に聞きたかったの。

ねぇ士道くん───私、綺麗に見える?」

 

 

「へ? あ、あぁ、うん。それは勿論。」

 

 

「! やっぱり? 因みにどの辺り!?」

 

 

「え、えぇっと…背が高くて、スタイルが良くて、モデルみたいで…

髪は艶やかで、綺麗で…。」

 

 

『安直すぎませんか?』

 

 

鞠亜からのコメントに士道も同意見だったが、咄嗟に口に出されたのはこれが限界だった。

…因みに───

 

 

「…!?」

 

 

士道は久しぶりに背筋が凍る様な感覚に襲われていた。

背後には瞳に光が灯ってない士織が、不機嫌オーラの令音に、自分の体を見て絶望気味の琴里の姿があった様な気がした士道だった。

 

 

「うんうん! 士道くんってば分かってるぅ!!」

 

 

「むぐ!?」

 

 

一方で七罪は上機嫌で、士道を胸元へと抱きしめたのだ。

士道はそれによって顔を赤くしつつ堪能し、それを見ていた令音達の機嫌は更に不機嫌と化していた。

鞠亜までも『さっさとキスでもしやがれください。』となっており、夢界やクルー達は恐怖に肩身が狭い思いをしていた。

 

 

「…やっぱり、()()()が…綺麗なのよね…。」

 

 

「…え?」

 

 

突然の暗い声と雰囲気に士道は我に帰った。

しかし───

 

 

『士道! ASTよ!』

 

 

上空から武装集団であるASTが目標である〈ウィッチ〉を捕捉するや否や、武器を構えてスピードを上げて来た。

 

 

「ま、不味い! ASTが…!」

 

 

「あらぁ? 士道くんはアレが何なのか知ってるの?」

 

 

「へ? あ、いや、まぁ…その───」

 

 

「物知りなのは良い事、偉い偉い!」

 

 

「ど、どうも?」

 

 

「お礼に───おねぇさんの凄い所、見せてあげる。」

 

 

〈ウィッチ〉は手元に箒を出現させ、それをASTに向けた。

 

 

「───贋造魔女(ハニエル)!!」

 

 

その箒は彼女の『天使』。

『天使』から緑色の光の粒子を放ち、それが近づいて来るASTに被弾すると───

 

 

「な、何よコレ!?」

「武器が、変なのになってる!?」

 

 

ポンッ!ポンッ!と、コミカルの音と共に武器がぬいぐるみや玩具に、装備が着ぐるみにへと変化し、地上に落ちて行ったのだ。

 

 

「一丁上がりぃ!」

 

 

「何だ…コレ?」

 

 

「ふふ…知・り・た・い?」

 

 

七罪が口元に人差し指を立てて近寄って来る。

すると───

 

 

「!! 危ない!!」

 

 

「えぇ!?」

 

 

上空からやって来る数段のミサイル。

恐らく、『天使』による攻撃を受ける前に放っただろうミサイルが今になってやって来たのだ。

 

それに気がついた士道が一目散に七罪を突き飛ばしたのだ。

 

 

「くぅ…!」

 

 

ミサイルが爆発して、土煙が荒れ狂う。

 

 

「く、くしゅん!」

 

 

どうやら、七罪がくしゃみをした様だ。

 

 

『士道! 大丈夫ですか!?』

 

 

「あ、あぁ…。アレ、怪我がない?」

 

 

『念の為に指示して細工していた顕現装置(リアライザ)を起動させました。

間一髪ですが、良かったです。』

 

 

「いつの間に…。いや、助かったから問題ないか。」

 

 

士道が立ち上がり、七罪がいるであろう方へ駆け寄ろうとする。

しかし…

 

 

(アレ? あの人影って七罪だよな?

けど、なんか…違和感が…、うん? 今光った?)

 

 

士道が疑問を抱いているも、煙が晴れて七罪が姿を現したのだが…

表情がさっきまでと一変していた。

 

 

「…見たわね?」

 

 

「え?」

 

 

『士道! 何をしたの!?

七罪の機嫌数値がどんどん下がっているわよ!?』

 

 

「は?」

 

 

「惚けないで! 見たんでしょ!?」

 

 

「何を!?」

 

 

七罪は箒に乗って勢いよく士道から距離をとった。

 

 

「許さない…許さない許さない!!

見た以上はアンタの人生、滅茶苦茶にしてやるわ!!」

 

 

「はい? な、何で!?」

 

 

七罪は士道の疑問に答える事無く逃げ去った。

 

 

「逃げたわ!! 武装も戻ったし、追うわよ!!」

 

 

地に倒れていたAST達は逃げて行く〈ウィッチ〉を確認し、士道に気付くこと無く追いかけた。

 

 

「……え?」

 

 

士道はただ1人、訳もわからず突っ立っていた。

 

 

 







・次回、『ラブレター』
士道宛に送られた一言の紙と幾つかの写真。
その意味とは───!?


───『デアペル☆オ・マ・ケ』───



琴里「ねぇ、鞠亜の活躍というか、せいっていうか…
私のポジションと出番奪われてない?」


夢界「俺、相棒ポジションを奪われたのですが…?」


令音「…キミはどうでもいいだろう。」


夢界「え?」


おしまい


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