デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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さ、盛り上がってまいりました。
アニメ1期分のラストを飾るに相応しいラスボス。
士道達の一つ一つの行動・演出に賛否が分かれる可能性があるかもしれませんが、自分なりに感情移入した上で描きました。





第七話:解放

 

 

 

[司令!!!???]

 

神無月を中心としたクルー達が悲鳴の様な声をあげる。

全員が驚愕し、顔を青ざめていた。

 

「琴里っ!?」

 

普段クールな令音も予想外の事態に動揺する。

 

「琴里ちゃんを取り込みやがった…!?」

 

夢界もこの事態に焦りを見せる。

 

「士道くん! 今すぐ司令を!」

 

神無月が士道にそう告げるが--

 

「おい待て…何か様子が…」

 

モニター越しからでもわかる。

琴里を取り込んだシャドウが変貌を遂げる。

 

 

 

 

 

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「琴里ぃーー!!??」

 

士道は琴里の名を強く呼びかける。

しかし、琴里の声は聞こえなかった。

 

「琴里を返せぇ!!」

 

士道は冷静さを失い、怒涛の声をあげ突撃する。

折紙から受けた痛みで体が悲鳴をあげていても。

しかし、士道の黒い炎を纏ったナイフの一撃は届かず、変貌を遂げるシャドウ・トークンの風圧に吹き飛ばされる。

 

「ぐぅっ…」

 

「シドー!」

 

「士道さん!」

 

《落ち着いて士道くん!》

 

吹き飛ばされる士道を十香達が後ろに回り受け止める。

 

「…くぅっ!」

 

士道はマスク越しからでも分かる、苦い顔になる。

 

《何あれ!?》

 

兎のよしのんが声から分かる驚きの声をあげる。

なぜなら--

 

 

 

 

 

変貌を遂げたシャドウ・トークンは鬼のような化物に姿を変えていた。

 

禍々しく巨大なシャドウの黒い体に、琴里の赤が組み込まれているような異形な模様。

 

鬼を思わせる様なフォルムに、琴里の持っていた灼爛殲鬼(カマエル)にシャドウの歪で気味の悪いオーラを纏った斧を持ち。

 

お腹にシャドウに侵食されているような琴里が拘束されていた。

 

シャドウは成長した。

 

否、成長してしまった。

 

シャドウは今を生きる者達の負のオーラから生まれ

 

空間震が多発するこの天宮市を起点に多く発生し

 

更に高エネルギーである霊力を持つ精霊達を求め

 

--遂に精霊を取り込む事によって更に進化してしまった。

 

精霊を取り込んだシャドウは--未知なる怪物へと至る

 

 

 

 

 

「何だ…アレは…?」

 

士道は震えた声を出す。

狂三の時よりも更に凶悪化し、恐怖に支配されかけていた。

士道だけでなく十香達も変貌を遂げたシャドウを見て青ざめる。

 

この場にいた士道達は息を呑む。

 

狂三の時に出現したシャドウ・トークンとは更に不気味と恐怖を放出し、見てわかる通り力も上がっている。

 

「ど…どうしましょう、士道さん!?」

 

四糸乃が涙目になって士道に問いかける。

 

「…琴里を助ける。」

 

士道は怯えながらも答える。

 

「…だが、今の私達に勝てるのか…」

 

珍しく弱音を吐いてしまう十香。

しかし、真っ当な意見だろう。

 

《そうだよ。琴里ちゃんを助けたいけど、こんなヤバすぎる相手じゃ…!》

 

四糸乃の頼れるよしのんも今回ばかりは弱音を吐いてしまう。

これもまた真っ当な意見である。

 

「…」

 

十香達の弱音に士道も沈黙してしまう。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

変貌を遂げてしまったシャドウを士道やフラクシナス以外の者達もいた。そう、イゴール達“ベルベットルーム”の者達である。

 

「…主よ。」

 

ラヴェンツァはより険しい顔をしてイゴールを見る。

 

「…えぇ。これは我々をも恐れを感じる非情事態。

--まさか、精霊を吸収し更にに進化を遂げてしまうとは…」

 

この事態は彼らも予想外であった。

彼らはあくまでもペルソナ能力に目覚めた者を正しい道へ導く者達。

この世界に初めて足を踏み出した彼らは改めて今回の事態に、これまでにない緊張感を抱く。

実の話、彼らは精霊については無知なのである。

 

「…彼は、乗り越えられるでしょうか。」

 

彼女は士道を見守る。

 

「…どうでしょう。しかし“希望”はあります。

--彼の未知なる可能性に。」

 

士道に託した3枚のカード。

まだ最後の一枚は反応を示さないが、あのカードはただ持ち主に合わせた武器に変わるモノではない。

 

「アレは、彼によって秘められた“彼自身の力を引き出しやすくしたモノ”。それは我々にとっても未知なる力、可能性。」

 

かのカードは士道の力を引き出せる様に…

実はラヴァンツァ達は士道が寝ている間に、秘密裏に吸収させていた士道の生命エネルギーとペルソナの力を掛け合わせた力をベルベットルームの者達の特別な力で組み込んだカードへと融合させて生み出されたカード。

その未知なる可能性こそが希望。

 

「今は彼を信じて見守るだけですね。」

 

そう言うと、ラヴェンツァは祈るを捧げる。

 

 

 

 

 

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どうすれば良い…

 

士道は目の前の敵を見て戦慄していた。

 

目の前の化け物は、前の狂三の時に現れたシャドウ・トークンよりも遥かに上回る強さだと見て分かる。

いつもの士道であれば、迷わず突っ込み、琴里を救うために死力を尽くすだろう。

しかし--

 

グゥゥガァァァァァーーーー-!!!!!

 

ダンッ!

 

今回は違う。

琴里の力を--精霊の力を得たシャドウは、どんな気高き精神を持つ者や、強い精神緑を持つ者でも心をへし折る。

現に士道と十香は、恐怖で特攻がかけられず、四糸乃はただ怯えていた。

 

グゥゥガァァァァァーーーー-!!!!!

 

ダンッ! ダンッ!

 

化け物は鬼のような咆哮をあげ、地面を揺らす足踏み。

そして--士道達へ襲いかかる。

 

「「「《…っ!!??》」」」

 

4人は襲いかかる化け物に驚き、素早く反応し回避する。

しかし、化け物の猛攻は止まらない。

 

 

 

ブォォォォォンッッ!!!!!

ブォォォォォンッッ!!!!!

ブォォォォォンッッ!!!!!

 

 

 

斧を荒く振り回す。

一撃一撃振り回す音で分かる。

鈍く、重く、この攻撃を受けてしまえば即死し、惨たらしい最後を迎えるだろう。

例え、封印される前の精霊であろうとも…

今の十香と四糸乃は士道に霊力の大半を封印され、今士道を助けるために少しの霊力を用いて戦っている。

そのため、化物の一撃を受けてしまえば、士道と同じく即死する。

 

「シドーどうする…琴里を取り込んだヤツは私達ですら及ばないぞ…」

 

十香は悔しそうに、恐怖しながら敵を睨みつける。

恩人である琴里を助けたいが目の前の化け物は、強い気持ちすら押し殺すほどである。

 

「…、…」

 

四糸乃はひたすら怯えていた。

十香と同じく恩人である琴里を助けたいが目の前の化物は、その優しい心を打ち壊す。

 

《どうすれば良いの…? 士道くん。》

 

「…俺は…」

 

士道は震えながらも、大切な妹の琴里を助けようと前に出ようとするがインカムから令音の声が入る。

 

『…シン、よく聞いてほしい。

十香達もだ。』

 

その声はとても--。

 

『…キミ達をフラクシナスへ帰還させる。

あの化物は、我々の常識を遥かに凌駕している。

琴里の事が心配だが…

今現在、アレに対処する手段が我々にはない。』

 

「…っ!? 何を言っているんですか、令音さん…

琴里をこのまま見捨てて、俺たちだけ逃げると?」

 

士道は聞き返す。

 

『…今はキミ達が優先だ。

しかし、おそらく琴里に関しては…』

 

令音はそれ以上しか言えなかった。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

「それは…本気でしょうか?」

 

神無月がラタトスク本部からの連絡を受け対応していた。

シャドウと呼ばれる未知なる敵が出現したため、今回の琴里の件からラタトスク本部にも状況が伝わるよう指示を受けていたのだ。

そして、通信を終えた神無月はデート中にしていた時と同一人物とは思えない顔つきをしていた。

 

「…どうしたんだよ、神無月さん?」

 

夢界がその場にいた全員の代わりに問う。

すると神無月は苦い顔して答える。

 

「本部からの緊急指示により…

士道くん達を回収し、終え次第

--“ミストルティン”を使用し敵を排除せよと…っ!」

 

[!!??]

 

令音を含めたクルー達全員が驚愕な顔を浮かべる。

そして、知らない夢界は意味を求め令音を見る。

それを察知して答える。

 

「… 攻撃用の収束魔力砲“ミストルティン”。

このフラクシナスに搭載されている兵器だ。」

 

令音の言葉に静かに驚く。

落ち着いていた夢界は嫌な汗をかく。

 

「…そんな物騒なもんを放てって事は…つまり。」

 

ゴクリと息を呑む。

その意味はつまり--

 

「--琴里ごと、あのシャドウを消滅せよという指示だ…っ!」

 

令音もまた苦い顔をしていた。

 

「そんな!? それはあまりにも…!?」

 

「司令を我々の手で…!?」

 

「こんな…指示を…っ!?」

 

クルー達は動揺する、彼等は琴里の事を強く慕っているためこの上からの指示に同意をしめせない。

全員が動揺する。

その間に少しの間が出来、状況が状況なため令音は士道達に下がるように連絡する。

しかし、その最中夢界が口を開く。

 

「…なぁ神無月さん。

上は今の状況を生中継しているのか?」

 

「…いえ、恐らくモニタリングしている装置が司令の状況を感知して自動的に報告されていたのでしょう。」

 

夢界は神無月の言葉を聞き、最善の手を尽くす。

 

「なら、その自動システムを解除だ。」

 

クルー達が夢界を見る。

 

「まだ諦めるには早い。まだ『希望』はある。

--そうだろ、士道。」

 

夢界はモニターに映る、怪盗服を纏う--青少年(ヒーロー)を見る。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

グゥゥガァァァァァーーーー-!!!!!

 

ドカンッ! ドガンッ! ドガンッ!

 

化け物は吠えながら周りの建物を壊し始める。

まるで理性を失い、暴れているかのように。

そんな危険な中、士道はインカムからの令音の声が聞こえなくなり、1人苦悩する。

 

逃げる?

 

琴里を置いて逃げる?

 

…駄目だ。

 

目の前にいるのは今の自分より遥かに強い化物。

あの化物の一撃なんてくらってしまえば俺は確実に死ぬだろう。

けど、逃げてはいけない。

琴里を見捨てて逃げたら絶対後悔する。

俺は--後悔したくない。

 

「俺は逃げない。待ってろ琴里。

今すぐ俺が助けてやる。」

 

士道がそう呟くとインカムから令音の声が聞こえた。

 

『…シン!』

 

士道からの返事が聞こえなくなり、令音は彼の返事を求めていた。

 

「令音さん。」

 

その返事に士道は優しく応じる。

 

「大丈夫だよ。俺が何とかする。

琴里は絶対助ける。

だからさ--俺を信じろ。」

 

士道はインカムを通して語る。

そして、琴里を取り込んだ化物を見て決意する。

 

後悔したくない。

絶対助ける。

 

その決意に呼応するかのように士道の内に宿す“何か”が強く反応する。

それに応じて十香達に異変が生じる。

 

 

 

 

 

「…シン?」

 

令音に向けられたその言葉。

モニターに映る、優しく応える彼を見て、令音はある人物を重ねる。

しかし、令音の瞳に映るその青少年は--

 

 

 

 

 

「し、シドーこれは…!」

 

士道は十香の声に反応する。

すると--十香達の体から光が生じて変化が起きる。

 

「十香、四糸乃。2人ともその姿は--」

 

2人は先程の服と霊装を合わせた格好(半精霊化)から士道と出会った、封印される前の姿に変わっていた。

 

「え? これは一体…

もしかして、十香達の封印が解けたのか!?」

 

士道の疑問にインカムから反応が寄せられる。

 

『おい、士道! お前凄いな!

どうやったんだ?』

 

その声は嬉々としていた。

 

「どうやったって…十香達は一体どうなっているんだ?」

 

『あ? お前の力で十香ちゃん達をパワーアップさせたんだろ?

現にお前のそのペルソナ(力)が十香ちゃん達から反応出ているし。』

 

な、何だって?

十香達から俺のペルソナ(力)の反応が出ている?

 

「…俺どうやったんだ?」

 

士道は十香達を見る。

 

「わ、わからないです。

で、でも今なら不思議と…何とかなりそうな気がします。」

 

《だよねー!

士道くんのおかげで琴里ちゃんを助けられそうだよー!》

 

「うむ! シドー、私にもよくわからないが、これで戦える。

共に琴里を救おう。」

 

「ああ!」

 

士道達は目の前の化物。

シャドウ・オーガへと立ち向かう。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

「…キミは知っていたのかい?」

 

令音は静かに夢界に問う。

 

「いや、知らなかったよ?

だから、こんなにテンションが上がっているんでしょーよ。

ただアイツなら何とかしそうだなって思っただけよ。

相棒だし。」

 

うきうきとしながら答える夢界。

その反応に令音は疑念の視線を送る中、神無月が令音を制止するように問いかける。

 

「お二人とも申し訳ないのですが、十香さん達の封印が解かれていないかちゃんと解析と分析をお願いします。」

 

神無月が真面目に副司令官として指示をする。

 

「…あぁ。シンと十香達の封印は解かれていない。

以前と変わらないままだ。

しかし、限定霊装の状態から封印される前の状態に近い状態になるとはね…

しかし、持続時間は限られているとみる。」

 

令音は解析しながらも分析をする。

 

「更に言うなら、士道の力が影響してあのシャドウに攻撃が通ってる。

思っていた通り、シャドウと呼ばれるあの生命体には士道の力…

『ペルソナ』と呼ばれる力が必要不可欠とみた。」

 

夢界が令音の意見に付け足すように語る。

 

話を聞いていた2人以外の者達は思う。

突然、士道の親友を名乗り、疑いの余地があるが、実力は本物であり。

解析官の令音と上手く連携していけば大きな勢力になると。

しかし、令音は夢界への警戒心が高く、彼の態度などから相性が悪いとみる。

今後のフラクシナスの課題であろう。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

士道は雄叫びをあげてナイフを大きく振り下ろす。

 

ガァァァァァァァ!!!!???

 

化け物は痛かったため悲鳴をあげる。

 

「よし。効いている。」

 

『ペルソナ』

心の力を具現化し、形を作り、強い力を発揮する。

今の士道の心は、怯えていたとは逆に、琴里を救いたいという強い思いで溢れていた。

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

「止まって、下さい…!」

 

精霊2人も、士道の心の影響に力を引き出して化物にダメージを与える。

 

グォォォォ……

 

士道、十香、四糸乃の攻撃を受け続けて化物は弱っていく。

 

「これだけ攻撃すれば後もう少しだ! シドー!」

 

「あぁ!」

 

行ける。

誰もがそう思っただろう。

しかし--

 

 

 

 

 

グゥ…グゥゥガァァァァァーーーー-!!!!!????

 

 

 

 

 

再び強く吠え出しす化物。

すると、全身から見覚えのあるモノが溢れる。

 

--炎。

 

そう、それは琴里の霊力による炎だった。

ただし、シャドウの力であろう不気味なエネルギーを同時に放出して。

 

「な、何だ!? まだ倒れないのか!?」

 

十香が鏖殺公(サンダルフォン)を息を切らしながら構えて嘆く。

 

《確かにしつこいよねー、さっさと琴里ちゃんを解放して倒れてよねー!》

 

よしのんもしつこい化け物を見て嘆く。

詰まる所、十香と四糸乃の限界が迫っていた。

士道のペルソナ(力)が切れ始めていて限定霊装に戻りかけていた。

フラクシナスにいる令音の分析通りの結果である。

 

「十香達も限界が近いみたいだな…かく言う俺も…」

 

士道は1人呟く。

しかし、士道も限界に近かった。

否、この中で一番限界に近いのである。

折紙の砲撃、十香達への力の供給により、体力も気力も限界に近かった。それでも戦うのは琴里のため。

幼なき頃、琴里がいなければ--士道は孤独に押し潰されて今の自分はいなかったと。

 

「…何か無いのか…あの化物に一発。

重い一撃を与える何かを…っ!」

 

あの憎たらしい化物に…

シャドウに思いっきりぶつけられる手段は無いのか…

 

 

<ならば、我が力を汝の力と共に使うと良い。>

 

 

頭にアルセーヌの声が響く。

 

 

<お前も理解しているが、我を顕現させる程の力はもう残っていまい。>

 

 

あぁ

 

 

<今はただ我が力を己が物とし、立ちはだかる敵を打ち破れ。>

 

 

アルセーヌはそれだけ伝え、頭の中から気配を消す。

しかし、アルセーヌの力を使う感覚が何となくわかった。

ならば--

 

「--後は実行するだけだ!」

 

素早く銃を取り出し、化物へと銃口を向け、力を込める。

己の力とペルソナ(アルセーヌ)の力を強力な弾丸に圧縮するようにイメージし。

 

そしてその力を化け物に放つ!

 

 

 

 

 

「無閃(セロ)」

 

 

 

 

 

士道は静かにその技の名を口にし、黒と青の合わさった高密度の光線を放つ。

 

 

 

 

ドォォォンンンッッ!!!!

 

 

 

 

 

攻撃があたり、化物のいたところに大きく煙が発生する。

 

「やったのか?」

 

十香が士道の側まで来る。

煙が晴れると、ボロボロであろう化物…

シャドウの姿が現れる。

もう暴れる気配がないくらいの状態だ。

 

「シドー、早く琴里を。」

 

「あぁ。」

 

士道と十香は化物に近づき、四糸乃とよしのんは俺達の背後辺りまで来る。

 

「琴里を返せ。」

 

士道が囚われている琴里に触れると、シャドウは最後の抵抗で自身を炎で包み込む。

 

「ぐぅっ!? あっつ…っ!?」

 

「シドー!?」

 

手が焼けるように手袋から煙が生じる。

焼ける痛みが士道を襲う。

 

「凍って!」

 

《このぉ!》

 

四糸乃が氷結傀儡(ザドキエル)の冷気で炎を消そうとするも、執念か炎の威力が落ちても消えなかった。

 

「そんな!?」

 

「このぉ!」

 

ナイフを取り出し切り裂いて解こうと考えた途端、士道の頭にあるイメージが湧く。

 

それは学校で、琴里が斧から大砲へと形状が変わった時のことだ。

その現象を思い出す。

すると、ナイフが士道を思いに答え、手助けに応じるように形状を変える。

右腕全体を覆い、黒と青が特徴の鎧腕となる。

 

「ナイフが腕に変わったぞ!?」

 

十香の疑問に答えることなく、鎧を纏った腕で琴里を引き剥がそうとする。

すると青黒い光が広がりその場を包み込む。

士道は鎧腕から放出された凄まじいエネルギーを持って琴里をシャドウから引き離す。

 

オオオォォォアアアアッッッ!!!??

 

奇声をあげてシャドウは空に投げ出されるように浮かび霧散する。

 

解放された琴里を士道は優しく抱える。

琴里の姿は、ボロボロの霊装姿だった。

 

「琴里…」

 

士道は優しく琴里の名を呼ぶ。

その声が聞こえたのか、ゆっくりと囚われたお姫様の瞼が開く。

 

「おにーちゃん…」

 

弱々しい声で目の前に広が兄を見る琴里。

士道はマスクを頭上まであげて、素性を見せる。

 

「大丈夫か、琴里?」

 

とても優しい顔で琴里を見る士道。

そして、琴里から見た士道は、その優しい顔を見て5年前の士道の顔を重ねる。

 

「あぁ…」

 

琴里は頬を赤らめて嬉しそうな顔をする。

その士道の顔こそ琴里の一番好きな士道の顔だった。

 

「すう…」

 

士道は瞳を閉じて覚悟を決めて口にする。

 

「琴里。」

 

「は、はい…」

 

頬を更に赤めて答える。

 

「好きだぞ。」

 

士道のその言葉に瞼を大きく開け、嬉しの涙を流して琴里は答える。

 

「うん。好き。おにーちゃんが大好き。

世界で一番愛してる。」

 

そう言って士道は優しく琴里とキスをする。

その光景を近くで見て十香と四糸乃は顔を赤くする。

十香と四糸乃は今『ずるい』という感情になっていた

 

そして、士道はキスをして5年前の記憶が蘇る。

琴里もパスを通じて記憶が蘇った。

 

「思い出した…あの時、私は何かに…」

 

そう言って琴里は気絶する。

 

気絶して琴里の霊装が泡のように溶けていく。

士道はその光景を見て、十香や四糸乃の時の事を思い出して、瞬時に琴里を着ていたコートで羽織らせて裸体を隠す。

 

「ふぅ…」

 

これで終わったと、士道は安堵するも--

 

カチャッ

 

何か機械を触る音が聞こえ、その方向へ士道達は振り返る。

そこにいたのは--

 

ガチャッ!

 

銃を向ける折紙だった。

 

 

 







ここで軽い補足。

シャドウ(第一段階)FGOのモースのような不気味な生命体。

シャドウ(第二段階)FGOのマクスウェルの悪魔の様な怪物。

シャドウ(第三段階)取り込んだ精霊によって異なる姿に変える化物。(第三段階はモチーフにできるのが正直ないため皆々様のご想像に任せます、大体の特徴は入れるつもりです。)

…実は第二段階は四糸乃の時に初登場させるつもりだったけど、アニメを基準にしてしまい没ちゃいました。

狂三編からオリジナル強めにしたため登場でき、予定通り琴里を吸収させちゃいました。
これは決して琴里が嫌いだからではありません。
むしろ琴里はデアラ内で上のレベルで好きです。
そして、今回のテーマである士道との(これ以上はネタバレになるため伏せる)のため琴里には初の囚われのヒロインポジションになりました。

このまま投稿を続けられたら、被害に遭う精霊がチラホラ。因みに1人は確定、もう1人は最低でもやらないとなっという感じです。
他は未定です。

因みに何度も言っちゃいますが、デアラのそのヒロインが嫌いでは絶対ありません。
囚われのヒロインポジが書きやすいからです。
それにその方が原作より難題ゲーぽくできるからペルソナ要素を取り込んだデアラを初題材にしました。
(正直後付け感があるのは気にしてます。)



【シャドウ・オーガ】
琴里を吸収したシャドウ・トークンの変貌した姿。
鬼を彷彿させる化物。
カマエル(斧)を振り回す攻撃は、封印されていない精霊であろうとも耐えられない。


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