デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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さぁ琴里編もラスト。ここから色々と動きを入れる予定。物語を大きく進展させるつもりです。


第八話:変化

 

「動かないで!」

 

折紙がそう叫ぶ。

 

「鳶一折紙!」

 

鏖殺公(サンダルフォン)を構え、四糸乃も同意して前に立つも、霊装状態が解けて私服姿に更に戻ってしまう。

 

「何だと!?」

 

「…え?」

 

《これはまずい。》

 

この状態での十香達は人間と変わらないため、銃口を向ける折紙の方に分がある。

 

「待ってくれ、折紙!」

 

琴里を地べたに寝かせ、十香達の前に立ち、手を広げる。十香達を守るように。

 

「!?どいて士道!あなたを殺したくない!」

 

折紙が震えながら訴える。

 

「琴里は俺の可愛い妹なんだ!俺の家族なんだ!俺から大切な琴里を奪わないでくれ!!」

 

力一杯息を切らしながら、折紙を説得しようと告げる。今の士道はもう満身創痍でありもう戦う事も出来ない。

 

「…っ!」

 

士道の力一杯の説得に体を震えさせる折紙。今が最大の好機。十香達も霊装を纏えず、天使も発現できない。士道も琴里に着させている怪盗服を維持するのに精一杯だった。

 

「う…うぅ…」

 

両親の仇かもしれないイフリート。先程、自分を殺そうとした精霊。それが今地べたで寝ている。けど、士道がボロボロの状態で必死に訴えている。銃を向けられても、怯えず、真っ直ぐ折紙を見ている。

 

「あああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

折紙を大声をあげて銃に力を入れる--

 

 

 

 

 

ことができなかった。

 

銃をおろして、腰に力が入らなくなり、立ち膝の状態になり無気力になる。彼女には士道を撃てなかった。以前、十香の時のように罪悪感に怯えるのが怖かった。撃ってしまったのに彼は許してくれた。そんな彼をもう折紙は手を下す事が出来ないのである。

 

「ありがとう、折紙。」

 

そんな折紙を見て、士道はフラフラになり地面に倒れ込む。

 

「シドー!?」

 

「士道さん…!」

 

2人の声が遠のくなっていき、意識が切れていく。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

時は少し経ち夕暮れ。ある場所である1人の女の子が立っていた。

時崎狂三である。

 

「ふう…まだまだ足りませんわね…」

 

そう呟くと影に大きく動く。狂三は【時喰みの城】を使い多くの人から時間を吸収していた。

 

「それにしても…士道さん。アナタはどこまで魅力が詰まっていらっしゃいますの?」

 

狂三は遠くから士道達の戦いを見ていた。その際、十香達の霊力が封印されている状態で、一時的に封印される前の霊装を発現させたのを見ていたのである。

 

「その力、わたくしのモノにさせて頂きますわよ、士道さん。」

 

クスクスと笑っていると背後から視線を感じた。

 

「!?」

 

銃口を瞬時に向ける。そこには『何か』がいた。その『何か』は狂三に問う。

 

--キミは何のために彼を狙うの?

 

彼…おそらく士道の事だろう。

 

「… 【十二の弾】(ユッド・ベート)を使い、30年前へ向かいますわ。」

 

狂三は不機嫌そうに語る。

 

--30年前、どうしてそんな時代に?

 

「30年前、この世界に現れた“始まりの精霊”を--この手で殺す事ですわ。」

 

--…

 

『何か』は沈黙する。

 

「“始まりの精霊”を殺すことによって、今この世界にいる精霊をなかった事にする。そうすれば、わたくしが失ってしまったモノを取り戻す。私の悲願。そのためならばわたくしは何でも利用する。--例え、士道さんでも…」

 

狂三はこの世界に出現した“始まりの精霊”を殺す事には躊躇いがなかった。しかし、士道の事を考えた瞬間口を閉ざしてしまった。それに一体どんな意味があるのか。その狂三を見て『何か』は意外なモノを見たと感じた。

 

「…何ですの?」

 

--“キミも”彼に変えられているのかな?

 

『何か』は先程よりも真剣に問う。まるで想定外の事が起きているかのようで、困っているかのようだった。そう告げると『何か』は気配を消す。

 

「…何でしたの?」

 

狂三は疑問に思いながら『何か』がいた場所を眺めていた。

 

 

 

 

 

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「…何処ここ?」

 

意識が戻ると士道は見たこともない場所にいた。そこは美しい場所だった。周りに建物は見当たらず、美しい花、気持ちのいい風に揺られる草原、綺麗な水が流れまさに理想郷。自然に恵まれた世界だった。

 

「やぁ、ごきげんよう。」

 

声のする方へ向けると、そこには謎の人物が岩の上に座っていた。その人物は声が分からなかった。しかし、声からして男性の声だった気がした。

 

「…誰?」

 

「私は花の魔術師だよ。」

 

変な返答に士道は困惑する。

 

「そう、警戒しないでほしい。私はあくまでもキミの味方だよ。」

 

「…どう言う意味だ?」

 

「まぁ、落ち着いてほしい。おほん…まずは、おめでとう。よくキミの妹を救えたね。見ていて、ドキドキしたりハラハラしたものさ。」

 

「!?何でそれを知っているんだ?」

 

士道は警戒心を強くする。しかし、花の魔術師は微動だにしない。

 

「率直に言うと、キミのファンでね。キミの事をよく見ていた。」

 

「男に見られても、全然嬉しくない。」

 

士道は嫌そうな顔をする。

 

「ハハハ、それは違いない。」

 

花の魔術師は笑って返す。しかし、彼は雰囲気を変えて告げる。

 

「今回は何とかなったけど、これからはそう上手くはいかないよ。」

 

「え?」

 

「もっと力をつけなさい。それから--彼女にもっと自分をアピールしなさい。」

 

「は?」

 

士道は花の魔術師と語る男の言っている意図がわからなかった。何を言っているんだ?と思っていたら意識が朦朧としてきた。

 

「…ん?」

 

フラフラとする士道を見て花の魔術師は「ふむ。」と顎に手をやり語る。

 

「時間みたいだね。なぁに、今回は軽い挨拶をしに来ただけさ、【今は私の事を忘れていても構わない】。」

 

魔術師がそう言うと、突然意識がぐにゃっとなり士道は倒れる。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

士道は目を覚ますと、そこは少し前に見た天井だった。

 

「フラクシナスか…」

 

士道はそう呟くと体を起こし、ベットから降りて歩いていく。

 

 

 

 

 

「なー、もー良いでしょー、反省してるってー。」

 

そう嘆いているのは夢界。彼は今正座されて足の上に物を置かれていた。その罪状は

【私、夢界藍は無断でフラクシナスのシステムにハッキングを行いました。その償いとして、これからはフラクシナスの為に働き、フラクシナスの仮職員として指揮下に入り労働させていただきます。バンザーイ!フラクシナスの皆様ありがとうございます!バンザーイ!琴里司令バンザーイ!】

 

「はー…」

 

書かれた内容を見て溜め息を吐く。因みにこれを書いたのがクルーの誰なのかわからない。

 

「反省してください。夢界くん。これでもマシだと思いますよ?」」

 

「本来なら、ラタトスク本部に引き渡され、処罰を受ける所なんですよ?」

 

「けれど夢界くんのお陰で助かっている所がありますからねー。今回は我々が大目に見て庇ったんですから。これからはクルーの一員として期待していますぞ!」

 

そう、本来なら夢界は処罰を受ける所、何とかクルー達が庇って上にかけ合ったのだ。その結果、学生のためかアルバイト形式でクルーの一員にされたのだ。因みに余談だが、彼はこの様な役職になっても普段となーんも変わらない態度と行動を取る。

 

「…溜め息を吐くのはやめたまえ。当然の処遇だろう。」

 

令音がそう告げる。

 

「ヘーイ…それにしても令音ちゃん、俺に対してキツくない?もしかして嫌い?」

 

夢界がそう言うと、令音は普段と変わらない態度をとるも何処か気に入らないオーラを出していた。

 

「……いや、そんな事は無いと思うがね…」

 

「なんか、いつもより間が長かったことね?」

 

船内が明るい所を士道は陰で微笑みながら見ていた。

 

「おや?士道くん。目覚めたのですね。」

 

神無月が士道に気づいて語りかける。

 

「どうも。」

 

神無月と士道の会話に全員が顔を向ける。

 

「あ、どうも。先程目覚めました。」

 

ぺこりと軽く頭を下げると令音が駆け寄ってくる。

 

「シン、良かった。痛みを感じる所はあるかね?」

 

士道の側まで駆け寄り、士道の頬を触る。

 

「あ、いえ、特に無いです。ご心配おかけしました。令音さん。」

 

「ああ。良かったよ。」

 

令音さんは安堵すると士道に深く頭を下げる。

 

「ちょっ!?令音さん?」

 

士道は突然の事で慌てて素っ頓狂な声を上げる。

 

「すまなかった。」

 

「え?」

 

「今回の件に関しては私の責任だ。シンと琴里の距離を縮めようとプランを練ったものの、キミ達を危険に晒してしまった。琴里に至っては…」

 

琴里の事で令音は何も言えなくなる。上からの指示とはいえ琴里を見捨てようとした事を口にしてしまったからである。

 

「…」

 

士道は沈黙する。黙ってしまい令音は彼の機嫌を悪くしてしまったと思い、どのような処遇を受け入れるといった心構えを持ち、顔を上げる。そして、そんな令音の表情を士道は見る。いつもと変わらない顔つきでありながら、暗く、深刻な表情だった。そんな令音を見て、士道は彼女の口元をニコッとするように触る。

 

「?」

 

「ホラ。笑った令音さんは綺麗です。」

 

士道は誰よりも優しい顔をする。

 

「だから謝らないでください。それにそんな深刻な顔もしないでほしい。令音さんは--誰よりも笑顔が似合う人だから。」

 

「…!」

 

士道がそう告げ、令音は瞼を大きく見開く。

 

「それに、そこは「よく頑張ったね。」と褒めてくれるだけで良いんです。令音さんが俺と琴里のためにしてくれた事のほうが大変だったと思うんです。俺達のギスギスとした所を見ていて、それを何とかしようとしてくれたじゃないですか。危険になんて晒してなんかいないですよ。」

 

「…しかし--」

 

「それに、本当は琴里のことが心配で心配でしょうがなかったんじゃないですか?声が震えていました。」

 

そう、士道にはそう聞こえたのである。

 

「令音さんは優しくて素敵な人です。だから暗い顔をしないで。」

 

士道はそう言って微笑む。

 

「--」

 

令音は瞼を大きく見開いたまま、口を少し開けて固まっていた。

 

「なんて、カッコつけすぎですかね?俺…」

 

アハハ。と士道は頭をかきながら苦笑いをする。そんな彼らのイチャつきを見て夢界は箕輪と椎崎の隣にいつの間にか行き、手をオネエのような手をして女っぽく喋る。

 

「あら見てよ。あそこでイチャついてるわよ。」

 

「あら本当。若いわね〜。」

 

「ねぇ知ってる?彼、昨日は可愛い妹ちゃんを口説いて、今日は綺麗なお姉さんを口説いてるわよ。」

 

「そ、それはとんでもない、わね?」

 

夢界のふざけたコントに箕輪と椎崎が乗っかる。他のクルーもヒソヒソとし始める。

 

「え、あ、ちょっと…」

 

周りを見てどうしようかと悩む士道。そんな中、背後からダダダダ!!と何かが接近してくる。

 

 

 

 

 

「何、人の親友口説いているんじゃ、この馬鹿おにぃー!!!!」

 

 

 

 

 

背後から琴里の【五河家流-跳び蹴り】をくらう。

 

「ぐふぅっ!?」

 

あの春の日と同じ反応をする。

 

「ガハッ!」

 

倒れ込む士道。それを見て羨ましそうに見る神無月や驚くクルー達。

 

「こ、琴里…起きてたのか…か、体はだ、大丈夫なのか?」

 

「お陰様でね!人が休みながら、レポートを作成している中、士道が起きたと聞こえてモニターで見ていたら、人の親友口説いてるもんだから、おちおちとしていられないわ!」

 

ぷんぷん!として答える琴里。先日、自分を口説いたから部屋でソワソワとしていたら、今度は親友の令音を口説いているときた、検査治療を受けている琴里ちゃんもダッシュで止めに入る。

 

「く、口説くって…」

 

メガネを直しながら、ヨロヨロと起き上がる士道。

 

「というか、本当に大丈夫なのか?シャドウに取り込まれて、辛かっただろうに…」

 

「ふん!士道に心配されているようじゃ、私も舐められたものね。」

 

偉そうな琴里を見て、士道は安堵する。良かったと。だがしかし、今更ながらある疑問が浮かび上がる。

 

「そいやー、今更だけど、何で琴里の霊力を封印出来たんだ?好感度はどうだったんだ?」

 

士道はクルー達を見る、すると「ハッ。」と令音がタブレットを取りモニターに表示する。

 

「…これを見たまえ、シン。」

 

モニターに表示されていたのは琴里のプロフィールと士道に対してのグラフのようなものだった。そして、中でも好感度の数値が異常であった。

 

「あ、あの何か一つ飛び抜けているのがあるのですが…」

 

「琴里のシンへの好感度さ…そしてこの二日間、数値に全く変化が無かった。“最初からMAX値の状態”でだ。」

 

「…えぇっと…」

 

「つまりだね。--琴里はおにーちゃんが大好きなのさ。」

 

令音の言葉に琴里は顔を真っ赤にしてブンブンと否定する。

 

「ちっがーーう!!」

 

そして再び、士道に蹴りを入れる。

 

「アベシッ!」

 

蹴られた士道は反動で前の方に倒れそうになるが、令音の豊かな大きい胸に飛び込む。

 

バフッ

 

「ん?よしよし。」

 

令音の豊かな胸に一瞬、快楽に堕ちそうになるも、妹や周りの目を気にして慌てて離れる。

 

「す、すみません。」

 

「…いつでも来たまえ。」

 

謝りながらも顔を真っ赤にしていたが、令音の言葉で更に赤くする。

 

「この数値は故障よ!今すぐ直しなさい!」

 

「いや、コレは正確な--」

 

「ラ・ピュセルの限定、苺ミルクシュークリーム10個。」

 

「…すまない、シン。どうやら故障のようだ。」

 

一瞬で前言撤回を告げる。どうやら令音は甘い食べ物に弱い事を知った士道くんであった。

 

「は、はぁ…」

 

困惑する士道。

 

「ねぇ…ところで士道?」

 

琴里がもじもじとしながら、頬を赤らめて士道に問う。

 

「封印する前に言ってた…好きって本当?」

 

琴里は上目遣いをする。そして、その問いに優しく答える。

 

「ああ。」

 

「--っ!?」

 

「--妹としてな。」

 

ブチッ

 

その音が船内にいる者達にも聞こえ--

 

「そっちかぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

今度は先程よりも強力な【五河家流-炎蹴り】を放つ!

 

「ぐぅあぁぁ!!!」

 

士道の頭にモロに受け、今度は令音の胸に顔を強く埋まり、押し倒すように倒れる。

 

「…んん、シン。よしよし。大丈夫かい?」

 

「…う〜…」

 

令音は倒れても、士道を怒らず、寧ろ慰めるように頭を優しく撫でる。士道本人は目をグルグルとしていた。その様子を見て琴里は悔しそうにしながら大声で叫ぶ。

 

「こ、この、ムッツリ変態おにぃ!!!」

 

その光景を見て士道に新しい名前が定着してしまった。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

自分が誰かの手を掴んで引っ張っていく。

 

その--引っ張られている女の子は困っているかのようだった。

 

知らない家のドアを開けて、誰かを家の中へと入れる。

 

俺は、その人物に優しく接していた。誰かもわからないけど、『助けないと』という強い気持ちがあった。

 

その人物はどこか--見覚えのある人物に見えた気がした。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

「うぅ…」

 

士道の意識が戻る。

 

「おや、目覚めたかな?」

 

声のする方へ顔をあげる。令音さんだった。

 

「令音(へいね)、さん(はん)?」

 

上手く喋れない事に気づき、今の自分の状況を理解する。そう、場所は違う場所へといるが、士道は令音の胸の中で眠っていたようだ。

 

「ブハッ…ご、ごめんなさい。」

 

士道は置かれている状況を知ると、申し訳なさそうにしてすぐさま体を起こす。

 

「ん?あぁ…構わないよ。」

 

「で、でも、ご迷惑を…」

 

言いかけた所で令音が士道に言う。

 

「…キミならいつでもしてあげよう。だから、いつでもおいで。」

 

令音の爆弾宣言に、士道の中で衝撃が走った。

 

な、何だって!?そんな事言われたら甘えたくなるんですけども!?

 

「…もっと言うと、私がそうしてあげたい、かな?」

 

「--」

 

令音にそう言われ、ドクン!と心臓が揺れる。年頃の士道は嬉しすぎて頭の中でお祭り状態になる。

 

 

 

 

 

士道は流石に時間を取らせすぎたかなっと思い、令音といた部屋を後にし、家に帰る。すると、琴里が不服そうな顔で出迎える。

 

「…お帰り。」

 

「お、おう。」

 

士道の気絶する前の行動で不機嫌状態の愛しの可愛い妹、琴里ちゃん。そんな彼女に何か機嫌が良くなることがないか模索する。すると、言えてなかった事があると思い出し、琴里を呼ぶ。

 

「琴里。」

 

「ん?」

 

少し不機嫌そうにするも

 

「その黒いリボン、大切にしてくれていたんだな。ありがとう。最高に似合っているぞ。」

 

「--!」

 

琴里は目を見開いて、士道を見る。このリボンの事を思い出してくれてたのだと気づき--

 

「うん!ありがとう、おにーちゃん!」

 

それは久しぶりに見た愛しの可愛い我が妹、琴里の笑顔だった。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

「…」

 

その女は部屋で1人、目を瞑っていた。

 

--予定外の事が起きているね。

 

彼女は『何か』と会話をしていた。

 

「…あぁ。」

 

予定外の事、それは一体どういう事だろうか?

 

--『ペルソナ』、『シャドウ』どれも未知なる物。少し驚いたけど、【私】には関係がない。

 

「…あぁ。その通りだ。」

 

--…ねえ?

 

『何か』は訝しむように女に問う。

 

--少し見ないうちに変わってない?

 

「…?」

 

--彼に異常なほど意識してる。

 

「…」

 

女は瞼を開き反応する。

 

「…当然だろう?彼は--『シン』だ。」

 

--そうだね。彼は『シン』。うん、そういう事なら問題ないかな。

 

そう告げると『何か』はどこかへと向かい、消え去る。

 

女は胸元の年季の入ったクマのぬいぐるみに触れる。

 

「…シン。」

 

女はその名を告げ、1人の少年を思い出す。彼は【私】に名をくれた大切な人。彼は【私】に感情をくれた人。彼のためなら【私】は何でもする。そのためなら何でも切り捨てられる。けれど…

 

1人の青少年の顔を思い出す。彼を捨てると考えた瞬間に心が締め付けられる感情に襲われる。

 

「…士道。」

 

いつもの呼び名ではなく、彼自身の名を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

「どうだい?キミから見て五河士道は。」

 

花の魔術師は問いかける。

 

「おう、【俺】自身は悪くないって思ってる。」

 

「そうか。それは何より…」

 

「なぁ、けどこのままじゃ不味いんじゃない?」

 

来禅高校の学生は明るい表情から真剣な顔つきになる。

 

「…あぁ、だから少し彼に接触し、記憶を見させてもらった。」

 

「で、どうだ?」

 

「--あぁ、有力な候補が1人増えたよ。これからその子に接触するつもりさ。」

 

それを聞いて少しは安堵する。

 

「そうか、これで“2人”か。でも、もうちょい欲しいもんだな。」

 





次は番外編。でも日常編ではなく、過去編。これ、結構重要なのでお楽しみに。
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