凜祢編もラスト。
士道の戦闘はないかと思いましたか?
…実はあるんです。
アレが現れない理由はないんです。
アレはこの作品において、害悪するぎる存在だから…
「どうして…?」
凜祢は今すぐにでも泣きそうな顔になる。
…揺れるな、揺れちゃ駄目だ。
ここで引いたら駄目だ。
凜祢にちゃんと言わないと。
「…ここは、あくまで夢の世界だ。
夢は覚めないといけない。」
士道はそう告げる。
「夢の世界の何が駄目なの?
現実は、士道を苦しめるんだよ?
士道の思い通りにいかない事だらけなんだよ?
もしかすると、みんなと突然別れてしまう事だって、あるかもしれないんだよ!?
士道がそれに耐えきれない事だってもう私は知っているんだよ!?」
凜祢は強く抗議する。
凜祢は士道の事をもう知っている。
--自分という『➖➖』を“創造(生み出した)”者にさえ知らない事を知っている。
それは、凜祢がこの楽園(エデン)を生み出した理由である。
士道がこれから待ち受けるだろう運命を凜祢は分かってしまっている。
「…あぁ。俺がこれからどんな事が襲いかかって苦しむか分からない。
思い通りの事なんてならない事だらけかもしれない。
別れる事は…確かに辛いな。
想像しただけで胸が苦しくなる。
俺はそれに耐えきれないだろうな。」
士道は静かに凜祢の言葉に肯定する。
「じゃあ、どうして?」
「俺は…逃げたくない。
どんな辛い事があろうとも抗ってやる。
別れなんてしないように抗い続けてやる。
--それが俺の答えだ。」
士道は真っ直ぐ凜祢を見つめる。
「…士道は強いね。」
凜祢は諦めたようにそう告げる。
「…私は幼馴染失格だね。
ううん、そもそも幼馴染じゃないから…
私じゃ本当の家族にはなれないんだね。」
「そんな事は--」
士道が言いかけた所で夢から覚めていく。
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「--!?」
士道は意識を取り戻す。
そして目に映る光景は--
「凜祢!?」
凜祢が木の根に拘束され、霊装を纏っておらず--大事な所が木の根で隠れている程度の姿になっていた。
「… 無に帰す者(パラダイス・ロスト)から抜け出せたと言うの?」
凜祢はルーラーの口調で声を震わせながら士道に問う。
「…あぁ。」
「どうして…?」
彼女は夢の世界で語った事と同じ言葉を告げる。
「どうして、アナタは楽園(私)を否定するの?」
ルーラーを見て士道は言う。
「…人から与えられただけの世界に…本当の幸せがある訳がないんだ。
幸せは辛い事を乗り越えた時に手にするんだって…俺は思う。」
士道は思った事をそのまま口にする。
「…凜祢、お前がどうして俺のためにここまでするのか、俺にはわからない。
でも、凜祢が俺のために一生懸命になっていた事はちゃんと伝わっているよ。」
「--」
彼女は士道の言葉を聞き続ける。
「それに、幼馴染失格?
家族になれない?
…そんな事は絶対にない!
この世界でお前は、俺のために毎朝起こしに来てくれたじゃないか!
俺達のために料理を振る舞ってくれたじゃないか!
デートだって楽しかったじゃないか!
…例え、周りが違うといっても
--もう凜祢は俺の幼馴染だ。
俺の家族だよ。」
「--士道。」
「俺は凜祢に一緒にいて欲しい。
だから…帰ろう。
そして、何があって凜祢は俺達の家族として現れたのか教えて欲しい。」
士道は今思っている事の全て彼女に言った。
そして、彼女は--
「…士道。」
凜祢は嬉しい気持ちにいっぱいになる。
そして、全てを告げようとする。
ゴゴゴゴゴゴッッッッッッ!!!!!!!
揺れる。
士道達のいる塔が揺れる。
「な、何だ!?」
士道は突然揺れ始めた事に動揺する。
「… 凶禍楽園(エデン)が私の制御を離れ始めてる。
その際で暴走し始めている。
このままではこの天宮市一帯がどうなってしまうのか…」
凜祢は静かにそう告げる。
「な、どうにかする方法はないのか!?」
士道の問いに凜祢は答える。
「方法ならあるよ。」
「本当か! 俺は何をすれば良い!?」
「私を封印して。」
士道はその意味を--霊力を封印するキスであると悟る。
「--」
士道は意味を理解して、色んな感情でいっぱいになるが頬を赤らめて凜祢に告げる。
「…よし。い、行くぞ。凜祢。」
「うん。」
凜祢は笑顔で応える。
そして、士道は凜祢の唇を奪う(キス)をする
本来なら、霊力が封印された場合、温かなモノが体に流れてくる筈だったが…今回その感覚が”薄かった”
しかし、士道は思い出す。
この楽園(エデン)が現れる前の出来事を…
だが、士道はその事よりも、目の前の凜祢の悲しい表情に士道は気持ちを奪われる。
「凜祢?」
士道の問いに答える前に凜祢の体が淡い光に包まれる。
「ごめんね…私は他の精霊(みんな)とは違うの。」
士道の腕に抱かれる中、凜祢は涙を流しながら弱々しく言う。
「どういう事だよ…凜祢?」
「私は…帰れないの。私はね--」
凜祢は士道に告げようとする、自分の存在の意味を--
だが、凜祢がその事を説明しようにも、“まだ終わっていなかった”。
オオオオォォォォッッッッ!!!!
悪意はこの機を伺っていたかのように塔を這い上り、士道達の前に現れる。
「--な!? コイツは!?」
士道達の前に現れたのは、シャドウ・トークンである。
「何で…っ!? まさか!」
士道は凜祢とのキスで思い出した事を踏まえて、直感でその経緯を推理する。
「“あの時の空間震”で現れていたのか…?
しかも、凜祢の力が弱まるこのタイミングを狙っていたのか…?」
士道の直感は当たっていた。
「どう、して…?
凶禍楽園(エデン)を、起動させた時に消滅したんじゃ…」
そう、シャドウは“十香が起こしてしまった空間震”によって出現したものの、凜祢が凶禍楽園(エデン)を起動させた事により、光に包まれ消滅寸前であったのだが…凜祢の強力なエネルギーを得る為、楽園(エデン)と楽園外の境界に執念深く潜んでいたのである。
オオオオォォォォッッッッ!!!!
シャドウ・トークンは塔からエネルギーを吸収していく、そして吸収したシャドウ・トークンは先程よりも強大になり、今度は凜祢に手を出そうとする。
「--っ!」
守らなきゃ!
凜祢を守らなきゃ!
士道が強く思うと、足元に何かある事に気がついた。
それはいつの間にか…否、凜祢が戦いから士道を避けるために回収していた“士道のメガネ”だった。
「そうか、凜祢が大事に持っていてくれたのか。
ありがとう。」
士道は凜祢にそう告げる。
「士道…」
凜祢は今すぐにでも消えてしまいそうな様子だった。
士道は凜祢の手を強く握りしめる。
すると、士道の思いに応えたのか、凜祢に士道の力が影響したのか淡い光が収まる。
「--っ! これは!」
士道は生まれたての姿の状態の凜祢に、羽織っていた服を着させる。
「何が起きたのか、この力が何なのかは俺にも分からない…けど、今は--」
士道はメガネをかけて言う。
「--俺を信じて待っててくれ。」
士道は凜祢に優しく微笑み、シャドウに立ち向かう。
「ペルソナ!」
士道の叫びに応じて、士道の身が黒い炎に包まれる。
そして、怪盗服を着込んだ、士道のもう一つの姿を見せる。
「絶対にお前の好きにはさせない!」
士道は手にナイフを出現させ、己から発する『黒』の力を解放し、黒い炎を放出しナイフに纏って、シャドウに目掛けて攻撃する。
「はぁぁぁぁっっっっ!!!!」
黒い炎を纏ったナイフの重い一撃をシャドウに与える。
ギィィィィィィッッッッッ!!!!!
士道の重い攻撃を受け、シャドウは奇声を上げる。
そして、シャドウも反撃しようと士道に攻撃しかける。
「フッ!」
その攻撃を士道は華麗に回避してみせる。
「くらえ!」
士道は黒の咆哮(ブラック・ロアー)をシャドウに向けて放つ。
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
士道の技がシャドウに当たる。
ギィィィッッッ!!!
シャドウが再び奇声を上げる中、士道は手を休めずに攻撃をする。
「次はコイツだ!」
士道は両手に力を集中させ、黒い爪の形にする。
「黒の籠爪(ブラック・アームズ)!
はぁ!」
シャドウにクロス状に連続で切り刻む。
ギィィィィッッッッ!!!!
ギシャァァァッッ!!
シャドウは痛みの奇声を上げると、抵抗するように巨大な手を振り回す。
「ぐぅ…!!」
爪をクロス状に盾にしてガードするも士道は耐えれず吹き飛ばされる。
「はぁ…っ。なら、これならどうだ!」
士道は銃を出現させ、渾身の黒いエネルギーを放つ。
「黒の咆哮弾(ブラック・ショット)!」
ドォーンッ!
士道の攻撃が直撃する。
バァァーーンッッ!!!
オォ…オォ…
士道の攻撃を沢山受けたシャドウは、銃撃技を受けてボロボロとなる。
「よし…このまま--」
士道が勝利を確信した瞬間。
オオオオオォォォォォッッッッッ!!!!!
シャドウ・トークンは咆哮を上げる。
「…士道。」
凜祢は離れた所で士道が戦っている姿を見ていた。
「…うん、カッコいいね。士道は。
四糸乃ちゃんがヒーローって思う気持ちがよく分かるよ。」
女の子のために、戦う士道は誰もがその姿に痺れてしまう。
それは、凜祢も理解している
だが、士道は傷つきながらも戦う。
自分よりも遥かに危険な力を持つ精霊、目の前で対峙する謎の生命体シャドウに今も、これからも、士道は誰かのために戦い、傷つく
凜祢は傷つく士道を見たくないと、その思いが彼女を通して自我(バグ)に芽生え、今回の一件を引き起こしたのだ。
オオオオオォォォォォッッッッッ!!!!!
遠くでシャドウが謎の咆哮を上げ、様子が変わる。
士道はその様子に理解出来ていなかったが、凜祢はその意味を理解してしまう。
なぜなら--
「--あぁ。」
微量の霊力を辿って理解する。
塔から…そして、この崩れゆく楽園(エデン)からエネルギーを吸収し始めたのだ。
シャドウはそのエネルギーを酷使して抗おうとする気だろう
しかし、楽園(エデン)は暴走状態の為、そのため吸収してもコントロール出来ず、大爆発を起こす恐れがある。
それにより周りにどのような被害がもたされるのか
--士道はその事に気づいていない。
--駄目。このままじゃ士道が!
凜祢は士道が着させてくれた服を強く握りしめる。
すると、凜祢に士道から流れてきた力が湧いてくる。
「これは…っ!」
凜祢はこの力の正体は掴めないものの、士道に何故この力を宿したのか理解する。
--うん、これなら士道を守れる。
凜祢はそれを確信すると己が全ての力を振り絞り、霊装を纏う。
「な、何だ…? まだ、力が跳ね上がるのか?」
塔が揺れる、今にでも崩れそうなくらい…
いや、この世界が大きく揺れている感覚を得る。
そして、目の前のシャドウに抗うように力を振り絞る。
「なら抗ってやる。行くぞ、アルセ--」
士道がその名を呼ぼうとする間際、背後から何かが飛び出してくる。
それは--霊装を纏った凜祢だった。
「凜祢!?」
士道は彼女の名を呼ぶ。
その声に凜祢は応じる。
「うん。士道を助けに来ました。」
凜祢の優しい表情に士道は一瞬困惑するも、目の前の敵を前にして言う。
「そっか…だが、無茶はするなよ。
コイツ相手に今の俺では、庇いきれないからな…」
「ふふふ。士道ってばこんな状況で、士道よりも強い私を庇うんだ。」
凜祢はいつも通りの微笑みを見せる。
「当たり前だろ、この姿の俺は“ルパン”。
精霊を救う者、怪盗ルパン様さ。」
士道はニヒルに笑って答える。
そんな士道を見て面白おかしいモノを見たような顔をする。
「何それ。らしく無い事しちゃって…士道ってばカッコつけすぎ。
…フフ、可愛いね士道は。」
「な、何だよ、この状況で、俺は真剣だ!」
「うん。--知ってる。」
「え?」
士道は呆気を取られてしまう。
「士道、聞いてね。」
凜祢は真剣な表情になる。
「どうしたんだ?」
「あのシャドウはね、この楽園(エデン)の力を吸収しているの。
その力を使って士道を倒そうとしているけど…
暴走状態の楽園(エデン)の力は強大。
--おそらく、コントロールが出来ずに大爆発が起きる。」
「何だって!?」
凜祢の言葉に士道は驚愕する。
「なら急いでシャドウを
--凜祢? ん!?」
凜祢は士道の顔を両手で触り、凜祢の方へと向けて--今度は凜祢の方から士道へキスをする。
「り、凜祢?」
「士道。私ね、士道のことが好き。
誰にも負けないくらい士道の事が好き。
士道が幼馴染だって言ってくれて、家族だって言ってくれて、一緒に帰ろうって言ってくれてとても嬉しかった。
こんなに幸せな事がないくらい。」
「な、何を言っているんだよ…!?」
突然の告白に、士道が声を振るわせながら問う。
が、凜祢が何をするかでいるのか理解してしまう。
「まさか、凜祢!?」
凜祢は笑顔で士道に想いを告げる。
「士道--大好きだよ。」
凜祢は士道の足元から木の根を出現させ、士道を守る様に覆わせる。
そして、凜祢はシャドウに立ち向かう。
「凜祢ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
士道は精一杯手を伸ばし凜祢の霊装に触れるも、その部分が粒子の様に光になって消える。
凜祢は士道の顔が見えなくなるまで笑顔でいた。
オオオオオォォォォォッッッッッ!!!!!
シャドウが咆哮を上げる。
凜祢の言った通り、今にでも爆発しそうなくらいエネルギーが漏れ始める。
「士道は守る! 絶対に守る!
だって--私は士道の幼馴染だから!」
凜祢は全てを使い…己を燃やし尽くす程のエネルギーを放出し、自身とシャドウをエネルギーで覆う。
そして--
次の瞬間、天宮市を覆う結界内で眩い光が包み込む。
光の中、シャドウは完全に消滅し、凜祢の体は消え始めていた。
--士道。
凜祢は自分が消えゆく中、大好きな人へ告げる。
--夢の様な時間を過ごせて幸せだった。
瞳を閉じて、記憶を振り返る。
士道達と過ごした時間。
士道との思い出が彼女にとって--園神凜祢にとってかけがえのない宝物となったのだ。
--好きだよ、士道。
“ルーラー”園神凜祢は光へと消えてった。
「…っ! 凜祢!」
士道は意識が朦朧とする中、彼女の事をハッキリと思い出して体に纏われた木の根を振り解き立ち上がる
周りを見渡すも、凜祢の姿は無かった。
「…そんな…凜祢…凜祢ぇ…」
士道は理解してしまう。凜祢の消失により、結界が消滅し、士道を守っていた木の根が消えていったのだ。
「ぁ…ぁぁ…俺…凜祢を守れ…」
士道の姿が、元の姿へと戻ってしまう。
両膝をつき、無気力になる…が、空から光を纏った士道の服と“何か”がゆっくりと士道の元へと落ちてくるのに気づき、それを受け取る。
その“何か”の正体は凜祢がデパートで買っていた『ピンク色の花のキーホルダー』だった。
「…これ…凜祢が買ったキーホルダー。」
士道がキーホルダーを手に取った瞬間、士道の頭にイメージが流れる。
『勿忘草--“真実の愛“。
これを士道にプレゼントしよう!
意味が伝わると良いな。』
「…あぁ…凜祢が自分で買ったのって…俺にプレゼントするため…だったのか…ぐす…」
士道はそのキーホルダーを強く握りめる。
すると、メガネを通して連絡が来る。
『--士道くん、士道くん聞こえますか!?』
その声はフラクシナス副司令官、神無月恭平だった。
「……はい、俺です。」
士道は何とか溢れ出そうな感情を抑えて連絡に応じる。
『良かったです。
先程、司令達を保護しました。
時崎狂三もいたみたいなのですが、姿を晦ませました。
これから、士道くんも回収します。』
「…いえ、今はこのままで居させて下さい。
お願いします。」
士道はそう伝え、連絡を切る。
暫くして呆然としている士道の元に誰かが近づく。
その人物は--
「シン。」
士道に『シン』と呼ぶ女性はただ1人。
「…令音さん。」
フラクシナス解析官、及び士道達の副担任の村雨令音であった。
「…副司令から突然、シンとの連絡が切れたと報告を受けてね。
私が出迎えた訳さ。」
「…すみません、ありがとうございます。」
士道は暗い表情でそう告げる。
「…シン。」
令音は士道を見て、近くに寄って自身の胸元へ士道を抱き寄せる。
「…令音さん?」
「何があったんだい?」
令音は優しく士道の頭を撫でながら問いかける。
「…」
士道は--令音の服を強く握りしめて、堪えていた感情を解放する。
「俺はっ…俺はっ!
幼馴染を…凜祢を救えませんでした!!
俺を…俺を庇って!
…う…うぅ…うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
士道は涙を流しながら、ただ事実を述べる。
「……」
令音は驚いていた。
人間だから誰しもが笑ったり泣いたりする。
だから、士道が泣いたって可笑しいところはない。
ただ、今まで士道が大泣きした所を見た事無かったため、驚いたのだ。
「…そうか。」
令音は優しく。優しく士道の頭を撫でる。
泣き続ける子供を宥める。
「シン。キミは頑張った。
結果はどうあれ、彼女は救われたはずさ。」
令音は士道にそう告げる。
「ぅ…ぅぅ…ひぐ…でも、俺は凜祢に…助けられてばかりでした…“あの時”だって…」
泣き続ける士道に令音はこう告げる。
「…そうか。シン、キミはもう知っているんだね。
この結界が何のために現れたのかを…」
「…すん…はい。」
令音の言っている事と、士道の言っている事。
果たしてそれは…
「なら…彼女を責めないでやって欲しい。
園神凜祢という少女が“どこから現れたのか”キミとどのような接点があったのか分からない。
ただ一つ、感謝を…彼女はキミを守りたかった。
キミを救いたかっただけだったんだ。」
「…はい…はい…分かってます…」
士道はもう分かっていた。
だから、凜祢を責める事なんてあり得なかった。
「…そうだね。キミはとても優しい子だ。
--よしよし。“士道”、いい子いい子。」
令音は優しく、“いつも通り”に接する。
そして、士道は令音の優しさに包まれ、泣き疲れて眠りにつく。
キーンコーンカーンコーン
一日の授業が終わりを迎える。
「みなさーん!
テストお疲れ様でしたー!
ゆっくり休んで下さいねー!」
担任のタマちゃんがそう告げる。
そう今日は期末テスト最終日。
俺達は難関であったテストを乗り越えたのである。
「はぁ…終わった…」
士道は期末テストが終わった事に安堵する。
「おう! 士道、お疲れさん!
いやー、テスト終わったからこの後、スイーツでも食いに行かね?」
夢界が士道の肩を叩きながらそう言う。
「む! それに私も行きたいぞ!
シドー! 夢界!」
テストが終わった事により元気になる十香。
俺自身が言えた事ではないが…
十香は初めての期末テストだったためか…赤点を取らないようにするのに本当に苦労した。
…いや、俺もそれに付き合って勉強してなかったらヤバかったのも事実だったわ。
「もちろん! 十香ちゃんも誘おうとしていたんだぜ?
ホントホント。」
「おぉ! それは誠か! では、行くぞー!」
十香が士道の手を取って教室を出る。
「あぁ、待ってくれよ!
夢界さんも忘れないでよーう!?」
「な、なぁ十香?」
「む? どうしたのだ、シドー?」
「…何か、忘れていないか?
…とても大切な…人の事を…」
士道の問いに十香は可愛らしく首を傾げる。
「…むぅ? 何の事なのだ?」
「…いや、何でもない。」
十香の反応を見て士道はそう告げる。
「?」
「……おーい! 俺も置いてかないで〜!」
遠くから夢界が息を切らしながら走ってくる。
「遅いぞー!」
元気よく答える十香。
「…」
ついそれを見て微笑む士道。
…未だ頭に何か違和感を覚える。
実の所、先週あたりの出来事に対して何か違和感を感じる。
だが、それが何か分からない。
士道が難しい顔をしていると声が聞こえる。
--ほら士道、十香ちゃん達が待ってるよ。
行こ?
「!?」
何処からかその声が聞こえた、周りを見渡しても、その声に該当する人物はいなかった。
「俺はその声を知っている…」
一瞬脳裏に浮かぶ
緩いウェーブの掛かった、セミロングの薄い桃色の髪が特徴の--
士道の鞄の中にある、ピンク色の勿忘草のキーホルダーが光っていた。
士道くんの力について、今後大きく関わります。
今回の凜祢の行動は…19巻の彼女を思わせる行動にしました。
書いてて涙腺が…涙が出そうになった…
…いや、涙腺崩壊しました。
自分、こうゆう別れは良くも悪くも駄目です。
ちょっとした次回予告。
次は追憶編…凜祢編冒頭での出来事と、凜祢が士道の事を知った経緯、そして…次回をお楽しみにお待ち下さい。