八舞編…思っていたよりも長引きそう。
そして、いよいよ彼女が表舞台に舞い降りる。
「うおぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」
士道は雄叫びを上げながら炎を撒き散らす大斧をバンダースナッチへとぶつける。
ブォォォンッ!!!
バンダースナッチ達は破壊力のある攻撃を受け、消滅していく。
そして、消滅していくシャドウ達の残滓を取り込んだバンダースナッチはより強力な一体となって士道に立ち塞がる。
そのシャドウを見て、士道はコチラを嘲笑っている様に見えた。
まるで、これでなら士道を打ち倒せると勝ち誇っているかの様に。
「…っ!」
士道はそれ見て呟く。
「そんなので勝ったつもりか?
…なら、力の差を教えてやる!」
士道は精霊の力を使えることに目覚めたと同時にある事に気がつく。
それは、顕現させた天使という『銃』に、士道の技を『弾丸』の様にして込める事によって爆発的な力を発揮する事が出来るんじゃないかと。
士道はそれを実行するため、大斧(カマエル)を鎧腕(ペルソナ)の力と同調させる。
刹那、黒のエネルギーと炎の天使が交わり、凄まじい力を放出させる。
そして、バンダースナッチへ向けて高速で仕掛ける。
「灼爛殲鬼・連撃斬(カマエル・ライブズ)!」
大斧による九連撃がバンダースナッチへと放たれる。
一撃一撃が大地を砕く様な破壊力の大振り。
その攻撃に耐えられる訳がなく、バンダースナッチは無惨にも消滅していく。
「ーーー!!!」
金属音とシャドウの奇声が混ざった断末魔は暗い雲空へと消えていき、この辺りの空気が元に戻る。
「…ふぅ。」
呼吸を整える。
疲労している体を少しでも休ませるように。
敵が残っていないかを確認し、いない事を把握すると顕現した天使は役目を終えたかの様に士道の中に戻るかの様に消える。
その瞬間、全身から強烈な脱力感に襲われるが…士道は立ち止まってはいられない。
そんな士道を見て、令音は咄嗟に声をかける。
「…大丈夫かい、シン?」
それに応えるかのように士道は微笑みながら応じる。
「…大丈夫です。」
嘘である。
声からでも分かる通り、少し枯れており、フラフラともしており、士道は既に疲労し切っている。
「…それに、このまま立ち止まっている場合じゃないですしね。」
士道は二つのぶつかり合う光を見て、そう呟く。
士道は前へ歩もうとすると、転びそうになる。
「…シン!」
令音が駆け寄る。
側で士道は問題ないと告げるかのように、手で合図をする。
「大丈夫…それより、2人を…特に折紙が重傷です。
早く手当を--」
士道がそう言いかけると、コチラに駆け寄る者が現れる。
「悪ぃ、俺がいても邪魔になるだけだから、ホテルから誰も近寄らせない様にしていた。
それに、折紙ちゃんの事もあって救急箱を持って来た。」
夢界だった。どうやら、士道が戦っている間に状況を見ていたらしい。
「助かる…夢界。」
折紙に簡単な応急処置をする夢界に士道は告げる。
「折紙や十香…令音さんを頼む。」
「お前は大丈夫か?」
「あぁ…恐らく男気を試されているんだ。」
士道は空元気で応じる。そんな士道を見て令音は申し訳なさそうな顔をして士道に告げる。
「…シン、キミのお陰で助かった。
ありがとう。」
だが、一変して真剣な表情へと変える。
「…けど、無茶をしている。
そんな状態で空の2人をどうにかしようなんて無茶な話だ。
…心苦しいが、フラクシナスの支援のない中、彼女達の攻略はここではもう不可能だ。
次の機会を待つべきだ。」
解析官としての令音の言葉に士道は首を振る。
「いや、このまま2人を放っておく事なんて出来ません。
2人がああなってしまったのは俺の責任なんです。
それに、次の機会なんてありませんよ。」
士道を決意を持って言う。
「だから、ホテルで俺の帰りを待ってて下さい。
--必ず、2人を止めて、霊力も封印してみせます。」
そんな士道を見て、止める事なんて出来ないかと理解した令音は士道の頭を軽く撫でながら告げる。
「…止めても無駄だね。
…なら、気をつけて行くんだ。
我々はキミが無事に帰還する事を心から願っている。
…けど、無茶をしてはいけないよ。
キミの身が最優先だ。」
令音の優しい言葉に士道は力がみなぎるような感覚になる。
「はい、行ってきます。」
士道は2人の戦っている所へ走って行く。
「…行ってらっしゃい。」
離れて行く士道に向けて令音はそう呟く。
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「はっ…はっ…はっ…」
士道は息を荒くしながら駆けて行く。
ギシンッ! ギシンッ! ギシンッ!
未だに2人は空で戦っているのだろう。
早く向かおうと、先程習得した力を使おうとしたその時--
士道の邪魔をする様に、空気が重くなる。
ドクドク…ドクトク…
ジュクジュ…ジュクトク…
再びシャドウが現れる。
「クソッ!
急いでいる時に…っ!」
士道は怒りを込めた愚痴を吐きながらも、シャドウの群れに攻撃を仕掛ける。
「ハァッ!」
ナイフで素早くシャドウを切り裂いて行く。
「ーーー!」
シャドウは断末魔を上げて消滅する。
「くらえっ!」
今度は黒の咆哮(ブラック・ロアー)でシャドウを蹴散らす。
「ーーー!!」
先程よりも多くのシャドウを消滅させる。
「はぁ…はぁ…これならどうだ!」
士道は懐から銃を取り出し、力を込めて放つ。
「黒の咆哮弾(ブラック・ショット)!」
更に破壊力が高まった攻撃がシャドウを襲い、多くのシャドウが消えていく…だが。
ドクドク…ドクトク…
ジュクジュ…ジュクトク…
蹴散らしても、蹴散らしただけシャドウは増えていく。
「何でだ…っ!
何故、数が減らない!」
減らず、寧ろ増えていくシャドウの群れに士道は焦る。
(おかしい…明らかに増えてってる。
異常だ…一体何がどうなっているんだ!?)
士道達の前に立ち塞がったエレンによるものだろうか…
そう思ったが、直感的なモノがそうではないと告げてくる。
なら、原因は何だろうか…ふと、空を見上げる。
ギシンッ! ギシンッ! ギシンッ!
2人が争っている。
それを見て、士道は根本的な事を思い出す。
「そうか…2人が争っているのが原因か…っ!
余波によってコイツらが出現し続けているんだ…っ!
クソッ!
何でこんな簡単な事に直ぐ気が付かなかった…だが、それを知っててどうなる…っ!」
連戦が続いている故に、冷静さが欠けているため、思考が回らないのだろう。
「2人の事で悩んでいる時もそうだ…何で、俺は気がつかないが多いんだっ!」
士道は自分の不甲斐なさに苛立ちを見せ始める。
「俺は、しっかりしなきゃならないのにっ!」
そんな士道を見て、シャドウは好奇と見てたのか仕掛けて来る。
「ーーー!」
「…っ!」
不意を突かれたため、防御の体制を取ると--
「助けてあげる。」
背後から声が聞こえると、桃色の風のような炎がシャドウを襲い、蹴散らしていく。
「ーーー!!!」
士道を襲おうとしたシャドウは断末魔を上げて消滅する。
「だ、誰だ!?」
士道が振り向くと
スタッ スタッ スタッ
と森の中から優雅に歩み寄って来る。
士道はその姿を見て驚愕する。
士道と似た仮面のような漆黒のドミノマスク
服は無地の黒いベアトップ状レオタードの上に
袖のフリルが特徴的な黒のタキシード風ジャケットを前開きで羽織っており
腰には長細いレイピアを携え
足元はトゥシューズの意匠のあるこれまた黒のニーハイブーツを履いていた女性だった。
そして、その姿はどこか…士道の
「キ、キミは?」
士道の問いに女性はマスク越しからも分かる様に和やかに語りかける。
「キミの味方って言えば信じてくれるかな?」
士道は…その言葉に嘘がないと直感的に理解するが、誰かも知らず、味方と名乗る女性に警戒心を向ける。
「あはは…まぁ、しょうがないよね。
…うん、本当は正体を明かしたい所だけど…
今はまだ口止めをさせられているの、ごめんね?」
可愛らしくウィンクをしながら女性は言う。
「…」
士道は彼女の声を聞いて、
「でもそうだなぁ…
キミは、ルパンを名乗っているんだよね?
なら、私は…『デオン』。
こんな所かな。」
「デオン?」
士道はその名に覚えはなかったが、訳を聞かずに理解する。
「さて、自己紹介も済んだし…キミの味方であると証明するよ。」
「…」
「それに…」
彼女は言いかける。
「--
「え?」
(どういう意味だ? それに今--)
士道が疑問を抱くと同時にデオンがシャドウへと立ち向かう。
「フッ!」
軽やかに攻撃を交わし
「ハァ!」
剣を抜き、シャドウを貫く様に突く。
「ーーー!」
寄生の断末魔を上げるシャドウ。
「今度は…こう!」
レイピアに何かを吹き込むようにすると、“桃色の炎”を纏う様に灯しだし
「桃色の…炎?」
そして、炎を纏ったレイピアを先程の様に突く。
ただし、威力は段違で、炎が風の様に吹き荒れてシャドウ達は吹き飛ぶ。
(強い。)
士道は彼女の力を見て真っ先にそう思った。
「はぁぁ!」
掛け声を上げると、ダンスをするかの様に華麗に、劇場の中を踊るように素早く駆け回りながら、シャドウ達を消滅させていく。
「…凄い。」
思わず感想を言ってしまう。
「フフッ。」
それを聞いて彼女は--
「一気に行くよ。
そう言ってデオンを名乗る女性は手を天へと向けて叫ぶ。
「来て--“シュヴァリエ”!」
デオンが叫ぶと、彼女から『何か』が姿を現す。
大きな花の帽子がついたようなヘルム
赤いマントを羽織った騎士の甲冑
腰に盾と鞘が合わさったモノに剣を通している者を顕現させた。
その正体は--
「ペルソナ!?」
そう、この世界では
「これは、一体…」
士道が呟いていると、シャドウ達がコチラへ仕掛けてくる。
「…なら俺も--」
士道もペルソナ…アルセーヌを顕現させようとすると、デオンが士道の側までやって来て、手で制止させる。
「何の真似だ?」
「キミは体力を温存しておかないと…空の女の子達を救うんでしょ?」
デオンに言われて、士道は「ハッ!」とした表情になり、空で激しくぶつかり合っている2人を見る。
「見てて。」
デオンは前へと踏み込んで、顕現させた力を振る舞う。
「ショータイムだよ。
舞え--シュヴァリエ!」
その掛け声により、彼女のペルソナ--
『花の騎士シュヴァリエ』は剣を抜き取り、シャドウへ強大な桃色の風を巻き起こす。
その風は、風の精霊ベルセルクに負け劣らない程の威力を誇るモノだった。
目の前にいたシャドウの群れを容赦なく一掃し消滅させた。
「…」
士道は彼女の力を目の当たりにして、戦慄していた。
彼女の実力は、自分よりも遥かに上だと判断したからだ。
「デオン…キミに頼みがある。
力を貸して欲しい。
空で争っているのは--」
「精霊でしょ?」
「…っ!?
知っているのか!?」
「うん。ある人物から教えてもらったんだ。」
精霊を知る者は、士道が知っているかぎり少ない。
候補を挙げるならば、士道を援助する『フラクシナス』および『ラタトスク』。
空間震を起こしてしまう原因を排除するために動く『AST』。
そして、先程の士道達の前に現れたASTを小物として見ているエレンが所属している『謎の組織』。
後者の2つの可能性は…おそらく低いだろう。
もしそうならば、士道の味方をせずシャドウを利用して士道を圧倒していただろう。
という事はつまり。
「ラタトスク機関の者か?」
フラクシナスに彼女の様な人物はいない筈。
だとしたら候補はそれしか無いだろう。
しかし彼女は顔を横に張る。
「ううん、違うよ。どの組織にも属していない。
ただ、キミを陰ながら手助けしている者…って言っていたよ。」
(陰ながらサポートをするもの?)
「じゃあ、一体…」
士道が問いかける中、再びシャドウは出現し始める。
「早く彼女達を止めてあげて。
キミにしか出来ない事なんだよね?」
「…あぁ。」
士道がそう言うとデオンは何処か納得いかない表情をしていた。
「その方法がキス…何だよね?」
「…それも知っているのか。」
「…うん。」
(どこまで知っているんだ?
…それについても色々と聞きたい所だが…)
今は時間がない。
「ともかく、キミを信じて良いんだな?」
士道が問いかけるとデオンは暗い感じから明るい感じへと変える。
「うん!
彼女の必死の説得に士道は頷く。
「ありがとう。頼む。」
士道は気合を入れて、離れていく2人を目掛けて、先程目覚めた力を使い、光を思わせるスピードで駆けて行く。
「…
士道がこの場を後にした途端に彼女はそう呟く。
「僕なんて、ずっと想いを馳せているのに…
世界の危機に関わる事だから仕方ないって割り切っているつもりだけど…」
彼に想いを馳せる者として正直な話、羨ましいという事以外考えられなかった。
「…でも、もう少ししたらちゃんとキミと対等にいられる。
そしたら--僕からの想いを受け取ってよね。
そう言うと彼女はレイピアを構え、シュバリエを顕現させてシャドウに矛を向ける。
「彼の邪魔はさせない。」
その想いに応えてなのか、強力な桃色の暴風がシャドウを襲いかかる。
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「これは、どういう事でしょう?
この世界に彼以外のペルソナ使いがいるだなんて。」
その様に呟くのは、士道を通して事の出来事を見ていたベルベットルームの住人であるラヴェンツァだった。
「…」
主たるイゴールはただ険しい顔で現実を見ていた。
「…まさか。」
どこか思い当たる事のあるのか、イゴールはある人物を思い浮かべる。
自分達と
その様子をラヴェンツァはジッと見つめていながらも、考え込む主から試練へ挑む士道へと見つめ直した。
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士道が高速で向かう中、2人の風の精霊は言葉を交わしながら交戦していた。
「はぁ…はぁ…前々からずっと、思ってたのよ!
夕弦は自分一人で抱え込んで…結局、自分が損してばっかじゃない!」
戦いながら耶倶矢は夕弦に対して強く語りかけていた。
「はぁ…はぁ…反論。
その言葉、熨斗とリボンで過剰包装して…耶倶矢に突き返します!」
夕弦も耶倶矢に対して強く反発していた。
「夕弦は…っ!
私なんかよりも優しいから『八舞』に相応しいの!
だから、大人しく受け取りなさいよ!」
「…っ、否定。耶倶矢の方が夕弦よりも優しいに決まってます。
なので、真の『八舞』には耶倶矢が相応しいです!」
…だが内容は最初の頃の罵倒ではなく互いの良いところを言いつけ合っているモノだった。
「ぐぬぬ…私より飛ぶの速いくせにっ!」
「否定。耶倶矢の方が速いです。」
「私よりもスタイル良いくせにっ!」
「否定。耶倶夜の方が夕弦よりも綺麗です。」
「私よりも可愛いくせにっ!」
「っ! 反論。耶倶矢の方が可愛いに決まってます。
そればかりは譲れませんっ!」
耶倶矢は槍の先端がドリルの様に回転させ、竜巻を起こし、夕弦に向けて放ち。
夕弦はペンデュラムで方陣の様に組み、竜巻を難なく防いでいた。
口喧嘩をしながら、2人は争い合う。
耶倶矢の回転する槍、夕弦の剣のように編まれた鎖が打ち合わされる。
威力は全くの互角であった。
「はぁぁぁ!!」
「反撃。せいやー!」
2人が再びぶつかり合おうとした瞬間、横から黒い光線が飛んでくる。
「「!?」」
2人は咄嗟に回避する。
そして、飛んできた方向に目を向けると--
「はぁ…はぁ…」
息を荒くしながら、2人を止めに来た士道だった。
高速で辿り着くも、空で争う2人に声をかけても距離があるのか止まらなかった。
…否、2人は士道の事なぞ気にもかけずにいるだろう。
何せ、話を聞かずに立ち去る事が多かったのだから。
士道はそれを考慮して、銃で2人に当たらないタイミングを狙い、黒の咆哮弾(ブラック・ショット)を放ったのだ。
「2人とも、もうやめろ!」
士道がそう告げるも2人は不機嫌そうな表情で士道に語る。
「今更、何しに来たのよ士道。
アンタの役目はもう終わったのよ!」
「同調。邪魔をしないでください。」
2人は士道を無視して戦おうとする。
「…っ。
この分からず屋の双子めぇっ!」
士道はそんな双子を見て、段々イライラし始める。
それぞれの想い・思惑があっての事だが、士道の話を碌に聞かずに自分達の身勝手な所を思い出し、士道は怒りながら2人に告げる。
「良い加減にしろ!
勝手に俺を勝負の裁定役に選んだり、自分の言いたい事言ったら俺の意見も聞かずにどっか行ったり!
人をいい様に利用しやがって…っ!
幾らウジ虫な俺だってキレるんだよ!!」
士道の葛藤に2人は黙り込む。
「良いか、よく聞けよ!
ここまで付き合ったんだ。
答えをだしてやる!
--どっちが真の『八舞』に相応しいをな!!」
士道の言葉に2人は驚く。
そして、士道の答えは--
「俺が選ぶのは、耶倶矢、夕弦!
お前達2人、両方だ!
--
無論、答えは既に出していた。
「…は? 何それ、ふざけてんの?」
「軽蔑。小学生以下の回答です。」
当然、2人は納得しない。
「ふざけていないし、小学生以下でもない!
俺は2人に生きてほしい!
2人ともそれぞれの魅力があるからだ!」
士道は更に大声で話を続ける。
「耶倶矢は夕弦の事を思う気持ちが夕弦自身よりずっと強くて!
夕弦は、耶具矢の事を耶具矢自身よりもずっと大切にしてる!
そんな互いを俺は知ってるんだ!」
士道の必死に語りかける言葉に2人は問い詰める。
「…知った様な事を言わないでよ!
大体、アンタに何が出来るって言うのよ!」
「…同意。それが分かっていれば…夕弦は耶倶矢に決闘を挑んでいません!」
2人は涙目になりながら否定する。
「なら、教えてやる。
俺には…精霊の力を封印する力がある!」
「「!?」」
士道の衝撃な告白に2人は動揺する。
「何を…言ってるの?
そんな事…可能な筈がないじゃない!」
「疑念。そうです…そんなの…聞いたことがありません!」
「俺を…俺を信じてくれ!
俺にはこの通り、不思議な力がある事は知っているだろ!?
だから一度でいい!
俺に…俺に!
2人を生き残させるチャンスをくれ!
…もし失敗したら、俺のこの力…メガネやら、俺の命でも、何でもくれてやる!!」
2人は士道の言葉に戦慄する。
「俺が…お前達2人の『居場所』になってやる!」
士道は全身全霊をかけて2人に自分の答えを出しきる。
それ故に、息を切らしこみ片膝を地面につける。
「「…」」
2人は互いを見つめ合う。
もし、士道の言った通り精霊の力を封印する事が出来れば…互いに生き残る未来が待っているかもしれない。
だが、本当にそんな力があるのだろうか?
士道に不思議な力がある事は既に目にしている。
…だがそれは、霊力とは…精霊とは全く異なる力だ。
だから…士道の言ってる事が本当なのか…疑わしい。
--でも
「…ねぇ、夕弦。」
「…応答。何でしょう耶倶矢。」
「士道がさ…精霊の力を封印する事が出来るだってさ…どう思う?」
「不信。そんな事が人間に出来るとは思えません。」
「だよねー…」
「「…」」
2人は黙り込む。お互い同じ事を思っていた。
「…全く士道には困ったもんよねー。
私達から吹っ掛けて、巻き込んで…
他人なのに…
なのに、二度も邪魔をしてくれちゃってさー。」
「同意。全くです。
せっかく耶倶矢を倒して生き残させる所だったのに。」
「何言ってんの、私の方こそ今必殺の一撃を放って勝とこだったし。
夕弦は生き残んなきゃいけないの。」
「「…」」
再度2人は黙り込む。お互いに同じ事を感じていた。
「…もし、士道が言った事がさ…
本当だったら…
夕弦はどう思う?」
「…応答。とても…素敵だと思います。」
「ふぅん…ロマンチストな事言うじゃない。」
「不服。耶倶矢は…どうなのですか?」
「…うん、私も同じ事を思ってた。」
「…質問。耶倶矢は互いに生き残れたら…
何がしたいですか?」
「そうねぇー…あ、十香の言ってた『きな粉パン』っていうの食べてみたいかも…凄く美味しいみたい。」
「同意。…夕弦も食べてみたいって思いました。」
「あはは…同じ事を感じてた。」
「「…」」
2人は徐々に…涙目になっていく。
「…夕弦は? …生き残ったら何をしたいの?」
「…回答。夕弦は学校へ行ってみたいです。」
「あぁ…それは良いわね。
夕弦なら…きっと学校中の男たちの憧れの的よ。」
「否定。それはないと思います。」
「…へ、なんで?」
「応答。だって…耶倶矢も一緒だからです。
きっと…耶倶矢の方が人気が出ます。」
「そ…そうかな…」
「肯定。きっと…そうです。」
「「…」」
2人は堪えていた…涙を流し始める。
「夕弦…ごめん。
ごめんね…私嘘ついてた…
私、死にたく無い! 夕弦ともっと一緒にいたい!」
「…応答。夕弦も…死にたくないです。
消えたくない…耶倶矢と、生きていたいです!」
「夕弦…」
「耶倶矢…」
2人が互いを見て、手を伸ばし合う。
それは、大切なもう1人の自分が涙を流していたから、慰めようと、助けを、救いの手を差し伸べそうと…
だが、そんな2人を邪魔しようとする影が現れる。
暗雲から2人の仲を切り裂こうと…否、2人同時に襲いかかろうとする『黒い影』が現れる。
それは、飛行船のような形をしていた悪意(シャドウ)だった。
ナ、ナゾノペルソナツカイ、デオン…イ、イッタイナニモノナノカ!?
シ、シカモ、コスチューム、ド、ドッカデミタコト、キイタコトアリソウナ。
…まぁ、それはさておき顕現したシュヴァリエ、我なりにデザインを見て分かりやすく表現してみたけど、分かる人いますかね?