デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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ようやくここまで来ましたって感じ。





第九話:双翼の風

 

「何だ…アレは?」

 

士道は暗雲から何かが現れようとするのを見上げながらそう呟く。

 

すると--

 

暗雲から現れたのは、シャドウだった。

 

「…!?何で…シャドウが!?それも何だ、あの異形な姿は!?」

 

突如現れたシャドウを凝視していると士道はある事に勘づいた。

 

それは以前、琴里を取り込んだシャドウによる現象だった。

 

「まさか…!?いやでも…だとしたら、何だ…一体何を取り込んでいるんだ!?」

 

あの時、取り込んだのは精霊として暴走した琴里だ。

その事を踏まえると、()()()()()()()()()()()()()()()と思い込んだが…違うと感じた。

加えて、士道の知る精霊とも違うと感じ取っていた。

 

…いや、そもそも精霊じゃ無いと勘が告げていた。

 

「何なんだ…?一体、何を取り込んでいるんだ?」

 

とはいえ、狙いは間違いなくベルセルク(耶倶矢と夕弦)だ。

 

「い、一体何だし!?」

 

「困惑。何故夕弦達を狙っているのでしょう。」

 

シャドウが2人を狙って攻撃し始めた。

2人は素早く動きながら避けていく。そして、士道は2人が様々な動きをするため、銃で相手を狙いにくくなっているため苦闘する。

 

「クッソ…ッ!どうすればいい!?」

 

士道が呟いていると、メガネ(マスク)から通信が入る。

 

「…っ! 神無月さん!」

 

相手は神無月からだった。

 

『良かったです。少し通信に手間取りましたが、士道くん達に通信が入りましたね。』

 

「…?達?」

 

『…シン。我々にも通信が繋がったという訳さ。

…やはり、敵による妨害だったか。』

 

『はい。敵艦はコチラで対処しましたが…問題はその後に、船内部からシャドウが溢れる様に現れたのです。』

 

「…っ!?」

 

士道は空のシャドウを見上げて驚く。

 

『四糸乃さんのお陰で我々は窮地を脱した訳ですが、シャドウが地上の方へと向かったので、何が起きているかと思いきや…どうやら、そちらでも大変だった様ですね。それも--ベルセルクですか。』

 

神無月が説明しながらコチラの方を把握する。

 

「…四糸乃のお陰?四糸乃は無事ですか!?」

 

『はい。それはもう素晴らしいお活躍でした。

…ええ、やはりロリ、ロリなのよ!時代はロリなんです!』

 

ふざけ始めてしまい士道は内心で頭を抱えていた。

 

(はぁ…ま、四糸乃が無事なら良いか。)

 

『まぁ、話は戻すけどよ。士道の目の前にいるシャドウをどう倒す?』

 

声からして夢界がそう発言する。

 

「俺、陸から銃で応戦しようとしても、耶倶矢と夕弦に当たりそうで手詰まりだ。どうにかして、空を自由に戦えないものか。」

 

士道がそう呟くと神無月が語りかける。

 

『それでしたら、コチラの顕現装置(リアライザ)を利用して士道くんの足場を限定的に作る事は出来ます。』

 

「…っ!?本当ですか!?」

 

これなら戦える。士道はフラクシナスの援護をもってシャドウに挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何よ!コイツら!」

 

「憤怒。夕弦達が話合ってる最中、現れないで下さい!」

 

耶倶矢と夕弦は互いのしたい事、一緒にいたいという気持ちを晒しあっている中で、2人を襲いかかるシャドウに対し怒りを露わにしていた。

それも、今襲いかけてくる船型シャドウはこれまで2人を邪魔してきた物体より遥かに強かった。

 

故に、何とか避けるので精一杯だった。

 

そして、船型シャドウは痺れを切らしたのか、体となった部分からシャドウを生み出し、ミサイルの如く放出しはじめた。

それも一体一体が飛行型で、いかに風の精霊であろうとも数の多い相手に困難となった。

 

「やぁ!」

 

「せいやー!」

 

2人は応戦する。強力な霊力を持ってシャドウの群れを風を操り、槍・ペンデュラムを用いて薙ぎ払っていく。

 

しかし、限度はあった。

 

シャドウは一体一体では、精霊相手に簡単にやられてしまう。しかし、沸き続ける事により精霊を疲労させるまで追い込む。

 

故に耶倶矢と夕弦はシャドウに囲まれてしまった。

 

「嘘…こんなところで…」

 

「戦慄。嫌な予感がします。」

 

2人は互いの背を預けた状態で宙に留まっていた。そして、観念したかと判断したのかシャドウが一斉に仕掛ける。

 

「「…!!」」

 

2人はもう駄目かと思った瞬間に--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--怪盗(ヒーロー)は2人を守るために現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人に手を出すな!--アルセーヌ!」

 

士道はフラクシナスの援護により、顕現装置を用いて足場を作り出し、それを利用して耶倶矢と夕弦の元へと瞬時に駆けつけたのだ。

 

そして、士道はアルセーヌを顕現させ、その鎌のような爪と青い炎で囲っていたシャドウを大きく薙ぎ払い、消滅させる。

 

「おぉ!し、士道よ!何だしそれ!」

 

「感激。士道助かりました!」

 

耶倶矢は士道の力(アルセーヌ)を見て目を輝かせて、夕弦は助けてくれた事に礼を言う。

 

「すまない、俺には飛行能力がないからここまで来るのに手間がかかった。けど、安心してくれ--ここからは俺が2人を守る。」

 

「「…っ!!」」

 

士道の言葉に2人は頬を赤く染める。

 

だが、雰囲気を壊す出来事が襲う。

 

ーーーーーーー!!!!!!!

 

船型シャドウ…怪物が奇妙な咆哮を上げる。すると、体全体から更にシャドウを大量に生み出し始めて士道達にミサイルの如く攻撃し始めた。

 

「このっ!」

 

士道はナイフに黒いエネルギーを凝縮させ、向かってくるシャドウへ解き放つ。

 

「黒無の剣(バイシクル・ソード)!」

 

剣の様な黒い光線斬撃を放ちシャドウを消滅させるも、後から来る次のシャドウの群れがやってくる。

 

「ちぃ、ならコレでどうだ!」

 

次は銃を取り出し、士道の地からとアルセーヌの力を合わせ、圧縮し、撃ち放つ。

 

「無閃(セロ)!」

 

黒と青の光線がシャドウの群れを瞬時に消滅させる。そして、怪物本体にも直撃し、怪物から煙が上がる。

 

「どうだ?」

 

士道はそう呟きながら怪物を睨む。すると、回線から神無月の声が聞こえる。

 

『士道くん!まだです!」

 

その言葉に士道は警戒心を高める。

 

怪物は暴走状態になり、攻撃を受けシャドウを生み出そうとするも、先程と何か違った様な動きを見せていた。すると、怪物からシャドウ・トークンを生み出した。

 

オオオオォォォォッッッッ!!!

 

咆哮を上げるシャドウ・トークン。だがそれは一回だけではなかった。

 

オオオオォォォォッッッッ!!!

 

オオオオォォォォッッッッ!!!

 

オオオオォォォォッッッッ!!!

 

怪物は複数体のシャドウ・トークンを生み出したのだ。

 

「…っ!? 何だって…?」

 

士道は目の前の光景を見て驚愕する。後ろにいる耶倶矢と夕弦はただ言葉を失っていた。

 

(…どうする。どうやってアイツらを倒せばいい?)

 

士道の最大攻撃である無閃を使ってもシャドウを追い詰める事までしか出来なかった。それどころか、暴走し数体のトークンまで生み出した。

 

トークンは狂三の一件、そして、琴里の件で嫌というほど理解している。

 

一体だけで、精霊を苦戦させる程の力を持ち、かつ精霊を吸収し更に凶悪な存在にへと至ってしまう。

 

狙いは間違いなく、耶倶矢と夕弦だ。このままだと琴里の時みたいにシャドウの操り人形の様になってしまう。

 

(そんな事はさせない!絶対にさせない!)

 

限界を迎えつつある体に喝を入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラクシナス

 

船内では士道の援護をしている顕現装置を通して状況を見ていた。

 

「か、怪物から、更に怪物を生み出した!?」

 

「一体だけでも精霊を追い詰める程の力を持っているんですよ!?」

 

「ふ、副司令!この状況をどうしますか!?」

 

神無月は目を細めて、状況を把握する。

 

「ミストルティンの準備は?」

 

「ま、魔力充填まで…ダメです!とても間に合いません!」

 

「…っ!」

 

神無月はそれを聞いて顔を苦くする。彼がその様な表情をするのはクルー達は初めて見る。

 

そんな緊張感の中、先程の戦いで力を使い、箕輪に抱き寄せられ眠っている四糸乃が寝言を呟く。

 

「………士道さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「--四糸乃?」

 

いるはずがないのに、近くで四糸乃が士道の名を呼んでいる気がした。そして--

 

ピキンッ!

 

再び、自分と誰かと繋がり、感じた。そして、脳裏に映った人物は手に奇妙なパペットを付けた青髪の少女だった。

 

『頑張って、下さい。』

 

「…」

 

彼女の声と共に、体が冷える様な感覚になる。

 

「力を貸してくれるか、四糸乃?」

 

その問いに答えるかのように力が湧いて来た。士道は透かさず手元の銃に力を込め始める。

 

そして、コチラヘやって来るシャドウに向ける。

 

「し、士道?」

 

「疑問。何をする気ですか?」

 

2人はさっきまで固まっていた士道が再び、銃を向けて何かをしようと気がついたため問いかける。

 

しかし、その問いに答えずに行動で示す。

 

 

 

 

 

「行くぞ、氷結傀儡(ザドキエル)!」

 

 

 

 

 

士道の体から冷たい氷の霊力が溢れ出し、空気が冷たくなる。それを見た2人は驚きを見せる。

 

「へ?し、士道から霊力が溢れ出してる?」

 

「驚嘆。それも何処か冷たく…っ!き、来ます!」

 

トークンが近くまで来始め、2人が武器を構えるも士道は焦らずに力を解放する。

 

士道の黒と四糸乃の氷の力が一つの弾丸(力)へとなる。

 

 

 

 

 

「くらえ--氷結傀儡・衝撃弾(ザドキエル・インパクト)!」

 

 

 

 

 

引き金を引いて、強力な黒い冷気弾を放つ。

 

それは、強力な冷凍砲。

 

近辺を凍てつく絶対零度。

 

放たれた攻撃により、辺り一帯を瞬時に冷たくし、夏だというのに冬を思わせる冷風が吹き荒れる。

 

そして、冷気弾はトークン達を通り、そして奥の怪物に着弾する。

 

パキィィィィンンッッッッ!!!

 

トークン達には直接被弾してなかったが、影響は強く、トークン達は一瞬で凍って、砕け散った。

 

「す、凄い。」

 

「驚嘆。先程から士道には驚かされてばかりです。」

 

2人から歓喜の声が聞こえる。

しかし、士道は息を荒くしており、苦笑いでしか対応出来なかった。

 

正直な話、士道は今限界に近い状態である。

謎の敵エレン、シャドウと融合した機械生命体、シャドウの群れと…連戦が続き更に、これまで霊力を封印した精霊達の力を使い始めたためか、披露が半端なかった。

 

「はぁ……はぁ……ど、どうだ。」

 

士道は怪物の方を見る。すると、怪物は四糸乃の強力な一撃、フラクシナスの破壊砲、そして先程の士道の強力な攻撃により、弱り始めていた。

 

ーーーーーーー!!!

 

「はぁ……っ。まだ、倒れないか。」

 

流石にしぶといと息を荒くしながらも嘆息する。

 

「……っ。だが、後少し--」

 

言いかけた瞬間、体力に限界が来ているのか、怪盗服が解け、元の姿に戻ってしまう。

 

「……!?……な、何!?」

 

自分でも驚いてしまう。そして、足場に膝をついてしまう。

 

「はぁ……はぁ……クソッ。」

 

士道はこれまでかと悔しい顔をすると、耶倶矢と夕弦が士道の肩に優しく触れる。

 

「呵呵々、そう気に病む必要はないぞ士道よ。」

 

「同意。それどころか、よくここまで頑張ってくれたものです。」

 

2人は士道の前の方に立つ。

 

「……な、何をする気だ?」

 

士道の問いに2人はニヤッとした顔をする。

 

「士道よ、我らを甘く見ているのではないか?」

 

「同意。夕弦達は精霊。士道よりも凄いのです。」

 

そして、互いに見つめ合う。

 

「やっちゃお、夕弦。」

 

「肯定。やっちゃいます。」

 

そして2人は力を合わせ始める。

 

それぞれの肩翼が大きく展開し、大きな弓にへと形を変える。

耶倶矢の槍を携え、夕弦のペンデュラムが弓に絡み、矢となった槍を引く弦へと変化した。

 

「……っ!こ、コレが2人の天使。」

 

そう、この弓矢こそが、風の精霊ベルセルクの天使、颶風騎士(ラファエル)の真の力・姿である。

 

そして、それを怪物に向ける。

 

「「颶風騎士(ラファエル)!」」

 

槍に小さく凝縮された台風を纏い、弦を引き更に力を増せる。

 

 

 

 

 

「「--『天を駆ける者(エル・カナフ)』!」」

 

 

 

 

 

天使の一撃を呼び、放つ。

 

放たれた矢は瞬く間に怪物へ当たり、貫通し、夜空の彼方まで飛んでいった。

 

ーーーーーーー!!!!!!!??????

 

その破壊力はとてつもなく、怪物は断末魔の様な奇声を上げる。

 

「くっくっく、我らの実力を思い知ったか?」

 

「同意。夕弦と耶倶矢の力は無敵です。」

 

2人は勝利を確信し、ハイタッチをする。

士道は2人の力を間近で見て、改めて凄さを実感した。

 

「…凄いな。」

 

これで終わったと3人は安堵の顔を浮かべていると--

 

ーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!

 

今までよりもデカい奇声を上げ、コチラの方へ向かってくる。

 

それはまるで、消滅する前に敵を道連れにしようとする自爆特攻だった。

 

「ちょっ、嘘!?まだ倒れてないし!」

 

「驚嘆。それも、コチラヘ急接近して来ます!」

 

2人は焦りの顔になる。先程まで全力で戦って、シャドウに狙われ囲まれるまで戦い、怪物に天使の最大攻撃をしたため、正直な話、空中に浮かんでいるのがギリギリな状態であった。

 

「夕弦…まだ行けそう?」

 

「否定。力を使いすぎました。」

 

さっきまで、元気であったが…それは勝利を確信したためであったからだ。

 

「…」

 

士道はそんな2人を見て、重い体をヨロヨロとしながら立ち上がる。

 

「士道?」

 

「困惑。士道?」

 

そんな士道を見て心配する2人。

 

「大丈夫だ。2人とも…後は任せろ。」

 

士道がそう言うも、2人は驚きながら言う。

 

「任せろって…ボロボロじゃん!」

 

「同感。ここは夕弦達が何とかしますので、士道は逃げて下さい。」

 

耶倶矢と夕弦が士道を案じて守るように立つも、士道は2人の片肩を持つ。

 

「言ったろ…?…俺が、2人を守るってさ。」

 

そう言って2人を引き離し、前に立って、怪物を睨む。

 

「何処までも、現れるなら…精霊を狙うなら…俺が…っ!」

 

士道が言いかけると、再度誰かと繋がりを感じさせる。

 

ピキンッ!

 

己が内から霊力が溢れ出す。

 

それは、士道を支える様な感覚だった。夜髪の少女が士道を案じて力を貸す様に。

 

『シドー、大丈夫なのだ。』

 

その声と共に、体にとてつもない力(パワー)を感じ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道達から離れた場所にいる、士道を見守る令音と夢界がいる部屋にて、布団で眠っている十香が寝言を溢す。

 

「…シドー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「力を借りる--十香。」

 

士道は手を天に上げ、()()()使()の名を呼ぶ。

 

 

 

 

 

「鏖殺公(サンダルフォン)!」

 

 

 

 

 

十香の剣を手にし、矛先を怪物に向ける。

 

「行くぞっ!」

 

力を込める。全身全霊の力を込めて怪物を倒すと。

 

「「…」」

 

耶倶矢と夕弦は士道をただ見つめる。2人の瞳には自分達のために必死になる彼の勇姿が強く映る。

 

「はぁぁぁぁっっ!!」

 

喉を殺す勢いで剣に力を流し込む。精霊(十香)の力とペルソナ(士道)の力が一つに収縮され大気を震動させる。

 

霊力と黒いエネルギーが士道から溢れ出す。

 

 

 

 

 

「黒無一閃・鏖殺公(バイシクルソード・サンダルフォン)!」

 

 

 

 

 

青白と黒の斬撃が怪物に向けて放たれる。

 

天を裂くかの様な一閃。

 

ありとあらゆるモノを切り裂く斬撃は、異形な悪意を一撃で仕留める。

 

ドオオオオオオンンンッッッッッ!!!!!

 

凄まじい爆音が鳴り響き渡る。

 

眩い光が広がり、悪意は完全に消え去る。

 

周囲に爆風が襲う。だが徐々に…徐々に静かになる。

 

暗雲は消え、美しい月が露わになり、海面に月の光が映し出される。

 

2人は静かになって、眩い光を防いでいた手を解きながら語る。

 

「す…凄い。士道ってば凄い事だらけだし!」

 

「共感。夕弦は感服しました。」

 

2人が士道を見ようとするも、そこに士道はいなかった。どこへ行ったのか見渡すと、背後に現れた顕現装置から声が鳴り響く。

 

『耶倶矢、夕弦!シンは下だ!海に落ちて行く、今すぐ助けてくれ!』

 

声の主は令音だった。普段の緩やかで、大人しい声ではなく、切羽詰まる声だった。

 

令音の言葉に2人は下を見下ろすと、急降下して行く士道が目に入る。

 

2人は疾風が如く動き、士道を優しく受け止める。

 

「士道?」

 

「要求。返答してください、士道。」

 

呼びかけても、士道は完全に意識を失っており、手足に力が全く入っておらず…呼吸もしておらず、心拍も止まっていた。

 

『2人とも、急を要する!直ちに陸の方へ戻って欲しい!』

 

令音の声は先程よりも、落ち着いてはいる様にしていたが、深刻な声だった。

 

『…今、シンは心肺停止の重体だ!シンを助けるのに助力して欲しい!』

 

令音の言葉に2人は驚愕な表情へとなり、慌てだす。

 

「た、大変だし!?ど、どうしたらいい!?」

 

「要求。夕弦達はどうしたらいいですか!?」

 

2人が動揺する中、令音は適切な対処をしていく。

 

『…2人とも、落ち着いて私の言う事を聞いてほしい。』

 

令音の指示の元、2人は陸の方へと駆けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルにて士道達の戦いをタブレットで見守る令音と夢界。部屋のベットには十香と折紙が眠っていた。

 

「ヤバいな。士道は既に限界に近い。早急に倒さないと不味い。」

 

「…だが、相手は船艦だ。それも、琴里の時みたいに取り込んで凶悪なモノヘと変貌している。簡単にはいかない。」

 

2人が映像を見ながら意見をしていく。通信が繋がっているフラクシナスからも意見が述べられる。

 

『こちらも、応戦したいところではありますが…既に殆どの魔力を消費しており、手が出せません。

出来る事は顕現装置で士道くんの足場を提供する事くらいです。』

 

神無月が申し訳なさそうにそう告げる。

 

「しょうがねぇさ。それより、そっちが無事でいる事が大事さ。」

 

「…あぁ、その通りだ。」

 

2人が神無月にそう答えると、状況が一変する。

 

士道から霊力反応が起こり始めたのだ。それは、四糸乃の霊力と同じ反応だった。

 

『こ、これは!?』

 

「令音ちゃん。これって…」

 

精霊の情報分析に長けている令音に意見を求める。

 

「…恐らく、シンには封印する力には霊力を自身にも使える様になっているんだろう。四糸乃の天使、氷結傀儡(ザドキエル)の反応が出ているのはそのためだろう。」

 

令音の言葉に全員が驚く。夢界は驚くも瞬時に確信ついた様な顔つきになる。

 

「なるほど…確かに封印している訳だから、士道に四糸乃ちゃん達の力が使()()()()という訳にはならない訳だ。

それも前の時は、士道の力が十香ちゃん達に影響したんだ。逆も当然あるとも言えるか。」

 

夢界の言葉にフラクシナスにいる者達は驚くも納得がいった様子になる。

 

『成程。…っ!?士道くんの放った攻撃が強力な敵兵を瞬時に凍らせた!?な、何という事でしょう。』

 

神無月が納得した途端、士道の放った攻撃により形勢は変わって行く。

 

『あぁ…あの攻撃を受けたらどうなるんでしょう。デュフフフ…』

 

神無月の変態言動に令音を除いた者達が頭を抱える。夢界も苦い顔をしていた。

 

「…っ!?今度は耶倶矢ちゃんと夕弦ちゃんの天使による攻撃か?とんでもない威力だな。」

 

颱風騎士の一撃によって怪物に大ダメージが入る。それ故に暴走し、怪物は士道達に自爆特攻を仕掛ける。

 

「おい…っ!不味いぞ!」

 

四糸乃の力を使った事により、力が解けた状態の士道がヨロヨロしながら立ち上がる。

 

観測している心拍数を見れば士道が危険な状態であると分かる。だが、士道は止まらない。

 

今度は手を天に掲げ始めると--

 

「…シドー。」

 

2人はベットの方は振り向く。十香は眠ったままの状態であり、寝言だと判断すると、士道の手元に十香の鏖殺公が出現する。

 

「今度は十香ちゃんの天使か。」

 

士道は剣にとんでもない質量である力を放出させていくと、近づいてくる怪物へ全力の一撃をかます。

 

すると、眩い光が画面を襲い、窓ガラスからでもその様子が見られる。

 

「うわっ!眩し!」

 

「…」

 

2人は慌てて手で顔を覆う。そして、光が徐々に収まっていくと何が起きたのかタブレットへと目線を向ける。

 

「ようし!良くやったぞ士道!お前は2人を救っただけでなく、この島の人達を守--」

 

夢界が士道に賞賛を贈る中、令音は士道の異変に気がついた。気がついた瞬間、士道が海へと落ちていったのだ。

 

フラクシナスの解析データでは、士道の心拍数が止まっている事から緊急アラームが鳴り響いていた。

 

「シン!」

 

慌てて椅子から立ち上がって士道の事で、冷静さが無くなる。

 

そして、耶倶矢と夕弦に向けて通信を送る。

 

「耶倶矢、夕弦!シンは下だ!海に落ちて行く、今すぐ助けてくれ!」

 

令音が切羽詰まった声でそう告げる。後ろにいた夢界はそれを聞いて、何かをし始めた。

 

「(シンは既に心肺停止状態、このままだと助からない可能性がある…っ!それだけは何としてでも阻止しなくては…っ!)」

 

無言のまま冷や汗をかき始める。

 

嫌な記憶が過ぎる。

 

それは、自分のせいで命を落としてしまった彼を連想してしまった。

 

「(決してさせない。キミをもう失うのは嫌だ…っ!絶対に助けてみせる。待っててくれ--()()。)」

 

令音は強く決意して、双子へ向けて指示を送る。

 

「2人とも、急を要する!直ちに陸の方へ戻って欲しい!」

 

--今…彼を助けられる手段は一つだ。

 

「…今、シンは心肺停止の重体だ!シンを助けるのに助力して欲しい!』

 

令音の言葉に耶倶矢と夕弦は頷く。

 

--士道(彼)に彼女達の力を封印する事だ。

 

「…2人とも、落ち着いて私の言う事を聞いてほしい。」

 

とはいえ、このままホテルまで連れてからば部外者にバレる恐れがある。

 

「…2人とも、ホテル近くの森の中に向かってくれ。そこで--キミ達の霊力を封印させて貰いたい。」

 

令音の言葉に双子は驚きながら問いかける。

 

『そ、それって…本当に出来るの?』

 

『疑問。それで士道は…私達も、助かるのでしょうか?』

 

その問いに令音は返答する。

 

「…あぁ、助かる。だからお願いだ。シンを…彼を助けて欲しい。」

 

耶倶矢と夕弦は頷いた。そして、自分は霊力封印する影響を考え、行動しようとすると--

 

「ほい、これ。」

 

夢界が令音にある物を渡す。それは、2人分の浴衣だった。

 

「何となく状況を察して準備しておいた。これで良いよな?」

 

「…あぁ、助かったよ。ありがとう。」

 

令音は浴衣を持ち、双子に霊力封印の仕方を教える。

 

「…キミ達に霊力封印の方法を教えよう。」

 

『ど、どうすればいいの?』

 

「…それは、“キス”だ。今のキミ達なら条件は整っている筈だ。」

 

『動揺。そ、それで…士道が助かるのですか?』

 

「…あぁ。…時間がない。私も直ぐそちらへ向かう。頼んだよ。」

 

令音はそう告げると、今度は夢界へ向ける。

 

「…キミには、ここで十香と鳶一折紙を見ていてくれ、起きた場合は--」

 

「大丈夫、分かっている。だから早く、士道の所へ行ってあげてくれ。」

 

令音は静かに頷き、外へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…だってさ、どう思う夕弦?」

 

「…返答。正直、半信半疑で疑問で一杯です。けど、耶倶矢…」

 

「…うん。だよね、今は信じてやるだけだよね。」

 

2人は地べたに寝かせている士道を背中を立たせる。

 

そして、再度頬を赤らめている顔を確認するも、笑い合う。

 

「まぁ…元から、そのつもりではいたしね。」

 

「同意。夕弦もそのつもりでした。」

 

耶倶矢と夕弦は同時に--キスをする。

 

すると、2人の体に異変が生じる。それは、霊力を封印された証とも言える。耶倶矢と夕弦は生まれたての姿になってしまい、声を上げる。

 

 

 





顕現装置(リアライザ)ってほぼ何でも出来るようなものですよね?もし出来ないようだったら書き直します。

色々突っ込み所とかあるかもしれませんが、自分が出来る表現はこれが限度でした。

そして、次が八舞編ラストとなります。


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