デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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夏休み編です。
早めに美九編に行けるよう、そんなに長くしないよう頑張ります。





【第6.5章(夏休み編)】
番外編6:士道の一日


 

 

 

夏休み

 

それは、多くの学生が待ちに待ち望んだ長期休暇である。

 

多くの学生は、この休みに様々な事をするであろう。

 

盛大に遊ぶ者。

勉強に育む者。

金銭を得るために働く者。

 

大体この様に分けられるであろう。

 

一方で…

 

今年の4月の春にて、ひょんな事から世界を滅ぼしてしまう存在『精霊』に遭遇し、孤独、絶望、悪意から彼女達を救うために立ち向かう青少年、五河士道はというと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブブー!

 

間違いであると宣言されるサイレンが鳴り響く。

 

『士道、そんなのじゃ女の子をときめかせるなんて無理よ。』

 

インカム…ではなく、ある室内のスピーカーにて妹である琴里からダメ押しされる。

 

「えぇ…」

 

士道は不服がある様な表情を浮かべる。

 

『何よ、文句ありげなその顔は?』

 

「いや…だって…」

 

士道はメガネを曇らせ、頬を少し赤らめる。

 

その理由は--

 

「そうですよ、士道くん。

女の子ばかり意見をさせては良くないです。

いかに相手が女の子だろうと年上であろうとグイグイと行くべきです。」

 

そう意見するのは、フラクシナスのクルーの一人である椎崎だ。

 

今現在、士道は琴里により提示された『五河士道:特別強化訓練』により早速、訓練が始まっていた。

 

今行われているのは、クルーの1人である椎崎によるアプローチ訓練である。

 

士道は、狂三の一件や八舞姉妹の一件から女の子からの攻めに弱い事が発覚していた。

 

これは、狂三の頃から示唆されており、彼女の男慣れしているアプローチから士道はデレッデレだった。

加えて、八舞姉妹による魅力対決においても体を用いたアプローチから顔を赤くし、硬直していたのが判明されていた。

 

更にいうと、士道は年上の女性に弱い。

 

これは、士道の女性好みによる影響である。

率直に言ってしまえば…士道くんは年上の女性が好みである。

もっと言うなら女性の抱擁に弱く、スタイル(体つき)の良い女性が好きだからである。

スタイルについては…年上のお姉さんがそういった印象が強いからであろうか。

 

「そう言われましても…相手に合わせるようにするのが良いでは?」

 

「いえいえ、そうやって遠慮してしまうからこそ司令は怒っているのだと思います。」

 

『そうよ、椎崎の言っていることは正しいわ。

指摘された事をしっかり頭に叩き込んで次に移るわよ!』

 

部下である椎崎の意見にうんうんと頷きながら、琴里は指導に指摘する。

 

「ええ?

つ、次は一体何をするんだよ…」

 

士道は困惑した顔で指示されたことを全力で挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どーお? 士道の特訓の調子は?」

 

夢界がルンルンとやって来る。

 

「駄目ね、士道ったら相手のペースに合わせる方針しすぎて自分から仕掛けなさすぎるのよ。」

 

溜め息吐きながら琴里は語る。

 

「あらまぁ…」

 

夢界はそう述べる。

 

「全く…そう言えば夢界、アンタは女の子にデレさせる側の場合、どう接するのよ?」

 

「んん〜。」

 

琴里からの意見に夢界は少し考えてから口を開く。

 

「やり方としては…

士道と似たようなもんだなぁ…

そう考えると、アイツの方針は良いとは思うけど…」

 

「へぇ…」

 

「けどそれは、俺がグイグイ行ける性格だからな訳であって、士道の性格上では…んー。」

 

夢界は素直な感想を述べ迷う。その末に手をポンと叩く。

 

「あ、そうだ。」

 

夢界は士道に向けて語りかける。

 

「おーい、士道。

ちょっと俺のプラン通りにやってみ?」

 

そう言って夢界は話始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢界からの指示を聞いた士道は行動に移す。

 

「オススメのスポットがある。

そこに行こう。」

 

「え? あ、はい。」

 

突然の士道の変貌っぷりに椎崎は若干気を取られる。

 

「この店のスイーツは格別なんだ、一緒に食べないか?」

 

「はい、わ、分かりました。」

 

椎崎は士道に着いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうよ、この戦法は?」

 

「成程、怪盗姿での気分で挑むって訳ね。」

 

そう、夢界が考えたプランは怪盗(ルパン)になった時の性格を引き出し、攻め攻めの姿勢を保とうというものだった。

 

「ま、悪くないんじゃない?」

 

「だろ?」

 

2人が意見し合う中、ある者は静かに見ていた。

 

「…」

 

そう、解析官の令音である。

 

「どうしたのよ令音?」

 

「…いや、このプランは上手くいかないと思ってね。」

 

「え? 何で?」

 

「…見ていると良い。」

 

映像を見ていくと、段々士道の顔が赤くなっていき、等々素が出てしまい攻め攻めプランは失敗に終わった。

 

「あぁもう、士道ってば本当に世界を救う気あるのかしら…」

 

ハァっと溜め息をまた吐き始める。

 

「にしても、令音よく分かったわね?」

 

「…シンに関しては大分分かるようになってきてね。」

 

「ふーん。」

 

令音と琴里はそんな会話をしている中、夢界はアチャーっとした顔になる。

 

「駄目かー、士道の課題は大変だなぁ。」

 

訓練開始はまだ始まったばかりであるが、士道はどう乗り越えていくのであろうか?

 

…前途多難である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…疲れた。」

 

「今日の所はここまでだけど、次はもっとレベルアップしてもらうわよ、士道?」

 

「…わ、分かった。」

 

士道は静かに頷く。

 

「頼むわよ、精霊を救えるのは士道だけなんだから。」

 

「あぁ、分かっているよ。」

 

士道が琴里の言われるがままでいるのは、精霊を救えるのは世界で士道一人だけである。

 

「あぁ、そうだ。士道のリクエストに応えたわよ。」

 

「! それはつまり。」

 

「ええ、ラタトスクの力と顕現装置(リアライザ)を用いた事により、お望みの身近で派手に動ける場所を提供するわ。」

 

琴里は咥えてたチュッパチャプスを立てて言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精霊マンションのエレベーターから特別な認証を経て、地下へ赴き、広々とされている中で、ある部屋に入る。

 

すると、アニメで見た事のある様なエリアが広がっていた。

 

見えているモノでは、ジムにいる様な設備が整っている場や、モニタリングする部屋と色々とあった。

 

「ここが。」

 

「ええ、ご期待に添えるようにしたから、感謝して頂戴。」

 

琴里の言葉に反応してか、モニタリングの部屋から夢界が顔を出す。

 

「お、来たな。コッチはいつでも準備できるぜ。」

 

夢界は顕現装置の使用方法を完全に把握し、下手なクルー達より扱いに長けていた。

 

「…全く大したものよね。アンタ、ハッカーは伊達じゃ無かったのね。

神無月に次ぐレベルじゃない?」

 

「そう? まぁ、そう言ってくれるとコッチとしても鼻が高いね〜。」

 

と長鼻を揺らすような動作をする。

無論、夢界の鼻は一般の普通サイズなため意図の読めない動作である。

 

「さて、士道。ストレスの発散だ、お望みのフィールドを提供するぜ。」

 

夢界の言葉に士道は頷き、指示された通りに動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇや!」

 

士道は顕現装置にて作られた機体兵を相手に特訓を始めた。

 

今まで身につけてきた技を用いて、手持ちの技のレベルを上げていくために、または、そこから新たな技を生み出すために力を払う。

 

「士道ったら訓練の時よりも精が出てるじゃない…」

 

士道の特訓を見ている琴里がそう呟く。

 

「まぁまぁ。」

 

少しイラッとしている琴里を宥める夢界。

 

「勿論、士道が女の子の交渉術を身につけないといけないのは俺だって理解しているけど…

精霊との出会いでは必ず戦いも起きてしまうからなぁ。」

 

「それを避けるために訓練を受けてもらっているけど…

でも、そうね。

ASTやシャドウといった邪魔者がいるわけだし、仕方ないわよね。」

 

力ある精霊を武力を用いずに救うのがラタトスクとしての方針であるのだが、そうも言っていられない状況になってしまっている現状。

 

精霊が出現する際には必ず『空間震』が発生する。

それを対処するために、陸自の対精霊部隊『AST』が動き出す。

本来なら、ASTの対処は計画の内のため、フラクシナスが裏で対処して士道と精霊に近づかないようにし、その隙に士道が精霊をデレさせて霊力を封印する手筈だったのである。

 

しかし、実際の難易度は遥かに困難である。

ASTの中には、『鳶一折紙』という精霊に対して強く行動する者がいる。

彼女に関しては、精霊だけではなく士道に対しても頭を抱える行動をしているために非常に困った難関の一つである。

 

そして、次に『シャドウ』。

精霊という強大なエネルギーを求めて現れる謎の生命体。ラタトスクとしては一番の予想外の敵である。

今を生きる人間達の心の歪みがシャドウを生み出し、現実世界へと現れる。その素性や発生による根本的な情報は未だに掴めない。

士道から(厳密にはイゴール達(ベルベットルーム))の情報から少しずつ得られるものの、士道達も琴里達も完璧な打開策が浮かばない。

そのため、必然的に戦闘による打開策によって抗うしかないため、こうして力を身につけるため士道は特訓をしているのである。

 

「頭を抱える事が多いわね。」

 

「まぁ、煮詰めすぎないで臨機応変に対処していくしかないでしょ今は。」

 

「…そうね。」

 

そんな話をしていると、室内に誰かが入って来る。令音であった。

 

「…シンはどうだね?」

 

「見ての通りよ、訓練よりも気持ちが入ってるわよ。」

 

モニターに映し出させている士道を指差して伝える。

 

「…そうか。」

 

令音は普段と変わらず、クールでいて、常に眠たそうにし、落ち着いてるいる感じであった。

 

士道が十香と遭遇する前までは、仕事熱心で他の事にはあまり目がないようなものであったが、士道に出会ってからは彼女は大きく変わったと琴里は感じた。

 

しかし、士道と出会ったからは令音は変わった。

まるで、今まで堪えていたものを露わにしている感じでもあり、本人としても自覚がないくらい士道を意識しているのは確かだ。

 

何度も令音に問いかけるも、本人は最初--

 

『…精霊を救えるのは、彼だけなのだろう?

なら、過保護的になってしまうのは仕方のない事じゃないかね?』

 

と最も令音らしい回答で、琴里もそれに関しては「それもそうね。」と返し、特に気にしないでいた。

 

だが、最近は()()と女の勘が告げていると琴里は感じている。

琴里との一件からか、令音は士道に向ける何かが変わっていると、加えて士道が天然の口説きをしているのを目撃したからか、()として見ているのではないかと感じている。

 

実際に修学旅行から帰ってきた令音は、士道の話をすると微笑みながら話すようになっていた。

士道の話を聞いていると、普段の彼と思えないほど喜怒哀楽がはっきりしていた。

話を聞いていた琴里は士道の安否を聞いて一安心をつくも、令音に大好きな兄が取られるんじゃないかと違う心配をしてしまったほどである。

 

琴里が令音の事を考えていると、令音が顔を近づけていた。

 

「…琴里?」

 

「へ? な、何? どうしたの?」

 

「いやどうしたのって、琴里ちゃんが黙り込むからでしょ。」

 

夢界がそう状況を伝える。

 

「あぁ、そういう事ね。

…士道が特訓じゃなくて訓練のほうに精を出して欲しいって思っていた所よ。」

 

何とか誤魔化す琴里。

場を切り替えるために何かないか思考すると、令音が持ってきていたモノを見る。

 

「令音、それ何?」

 

「…ん、これかい?」

 

そう言って令音は持ってきたモノを見せる。

『マカロン』だった。

それも、市販物ではなく手作りもののである。

 

「へぇ、美味しそう。

もしかして、令音が作ったの?」

 

「…あぁ、シンは甘いものが好きみたいじゃないか。

頑張っている彼のために何か出来ないか模索していてね。

…上手く出来ていればいいのだが。」

 

令音は心配そうに言うも、手作りマカロンはとても美味しそうだった。

 

「お、美味そう。一つ頂戴!」

 

夢界が手を伸ばすと、令音は素早くマカロンを蓋を被せる。

 

「…これは頑張っているシンのものだ。

キミの分は無いよ。」

 

夢界には相変わらず冷たく当たる。

新参者で、身勝手に動く時があり、チャラそうなのか、クルー達も警戒する中、夢界は彼の持ち味であるコミュ力を活かしてクルー達と仲良くなったが令音は夢界に冷たいままだった。

 

「おおう…せめて、もうちょっと優しく断って欲しい…」

 

ガクッとする夢界。

そんな彼らのやり取りを見ていた琴里は少し落ちつき始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

息を荒くし、汗を沢山かいた士道が出て来る。

 

「…お疲れ様、シン。」

 

士道に冷たいタオルを差し出す令音。

 

「ありがとうございます、令音さん。」

 

冷たいタオルで汗を拭う士道。その士道に更に例のマカロンを差し出す。

 

「…シンこれを。」

 

「え? わっ! 美味しそうですね。」

 

士道はマカロンを口に入れて食べ始める。

 

「美味い!…ん?あれ、袋に入ってなかったな?」

 

「…あぁ、これは私が作ってみたものだよ。

口に合ったかな?」

 

令音が作ったと聞き、士道を驚く。

 

「本当ですか!? 凄く美味いです!

また、食べたいくらいですよ!」

 

士道がそう言うと、令音は微笑む。

 

「…そうかい?なら、時間が空いている時に作っておくとしよう。」

 

「…!」

 

士道は小さくガッツポーズを取り、次のマカロンを食す。

 

「それにしても、令音さんの作ったマカロン美味いです。

甘々すぎず、かといって薄すぎない感じで美味い。

料理も出来るなんて凄いです。」

 

素直な感想を述べる。

 

「…そうでもないさ。

キミの作る料理の方が美味しいさ。」

 

そう返す令音。

 

食べ終わり、シャワーを浴び、軽く着替えている中で、ふと時間を見ると既に時刻は夜の7時を超えていた。

 

「っ!? しまった、時間をかけすぎた!

急いでご飯を作らないと!」

 

慌てて、隣の家に戻る準備をする。

 

「そうだ、令音さんもどうですか?」

 

「…ん。では、ご馳走になるとしよう。」

 

士道と令音は五河家へと足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっそいぞー! 早くご飯を作るのだー!」

 

妹モードの琴里が士道を急かすように告げる。

 

「あぁ、急いで作るから待っててくれ。」

 

士道はそう言いながら直ぐに料理を開始する。

 

「呵呵々、我が眷属である士道の料理は中々の美味である。

即その手腕で再び我を満足させるが良い。」

 

「解説。耶倶矢は士道の料理が待ち遠しいので早く作って欲しいとの事です。」

 

「ちょっと、夕弦!?」

 

耶倶矢がカッコつけながら語るも、夕弦が本心を暴露するため威厳というか、カッコつけが決まらない。

 

「うむ!  耶倶矢の気持ちは分かるぞ!

シドーの料理は格別だ!」

 

「……は、はい。

とても、美味しいです。」

 

《待ち遠しいくらいだよねー。》

 

十香も耶倶矢と同じ気持ちで、四糸乃は新たに加わった耶倶矢と夕弦にまだ戸惑いながらも、士道の料理が楽しみでいた。

 

「ははは、なら急いで作らないとな。」

 

せっせと手と体を動かしながら、料理をしている。

先程まで、特訓していたとは思えない行動である。

 

「…大丈夫かね。」

 

そんな士道を見ながらリビングにやって来た令音である。

 

「あ、令音も来たんだねー。

いらっしゃーい!」

 

「…あぁ、お邪魔するよ。」

 

「おお、令音ではないか!

シドーの美味しいご飯を食べに来たのだな?」

 

「…ん、その通りだよ。」

 

令音はそう返しながら、琴里の隣に座る。

 

「…」

 

無言で士道を見る。

理由は当然、今日一日フルで動いているのに精霊5人分のご飯を作っているからである。

士道の健康管理を担っている令音からすると心配である。

 

そんな令音の心を読んで、琴里は答える。

 

「大丈夫、大丈夫!

おにーちゃんなら難なくこなせるのだー!」

 

「…そうかい?」

 

「もー心配性だねー、令音ってばー。」

 

とウィンクして合図を送る琴里。

それを読んでか、一旦はコクリと頷いて返す令音だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでよし。」

 

「おおー! 今日は唐揚げなのだなー!

美味しそうだ!」

 

とはしゃぎながら直ぐに手を伸ばす十香。

 

「待った、十香。

大事なことをしていない。」

 

「む? …おぉ、すまないシドー。」

 

「大丈夫。そこまで、気に病むことじゃない。」

 

軽く頭を撫でる士道。

 

「うむ!」

 

直ぐに元気になる十香。

 

「それじゃ。」

 

士道は手を合わせる。

それに合わせて全員が手を合わせて

 

[いただきまーす。]

 

五河家では、合図をしてご飯を食するのである。

 

「むぐむぐ…うむ!

カリカリしてて美味しいぞー!」

 

「はむ…美味しい。」

 

「…ふむ、良い味付けであるぞ、士道よ。」

 

「…美味。士道の料理はとても美味しいです。」

 

「おにーちゃんが作ったんだもん、当然!」

 

「あはは…あ、そうだ。

味付けの調味料もあるから、色々試してみるのもいいかな。」

 

精霊達は食べながら士道の料理の感想を述べて、士道は軽く微笑し、味付けの調味料を用意する。

 

「…」

 

一緒に食べながらも、明るく食べる料理に()を思い出しながら、士道の唐揚げを食す。

その味はどこか懐かしく、時に新しい味を味わいながら、ぽかぽかと温まるのを感じていた。

 

ふと、みんなを見る。

楽しそうにしながら食事をしている。

それを親目線のように見ている令音はふと思ったことを告げ始める。

 

「…そうか、そうだったね。

楽しい食事とはこういうものだったね。」

 

令音はとても優しい表情をしながら、再び食事をし始めた。

 

「令音さん、味はどうですか?」

 

「…あぁ、凄く美味しいよ、シン。

キミの優しさが詰まった料理だと思ってね。」

 

感想を述べる令音を見ながら、士道は優しく応える。

 

「はい。そうでしょう?

なら、これからも一緒に食べましょう。」

 

「…そうだね。なら、お言葉に甘えるとしようかな。」

 

令音は素直にそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、楽しそうにしているじゃないか。」

 

感心感心と頷きながら、五河家での食事を映像越しに見ていた人物、夢界。

中でも凝視しているのは士道と令音である。

 

「…」

 

夢界は先程の出来事を思い出す。

 

『…これは頑張っているシンのものだ。

キミの分は無いよ。』

 

あの反応を見た時、実の話、夢界は心の中で少し喜んでいたのだ。

 

「変わり始めている。良い傾向だ。」

 

天井を見上げ、目を瞑りながらそう呟く。

 

「いつまでも、『過去』に縛られるのは良くないことだ。

例え、それが大切な人で取り戻したいほどであったとしても、帰って来ない者は帰って来ない。

それが、普通で自然界の掟なのさ。」

 

極端な話、死んだ人間は帰って来ない。

 

「…キミがした事は世間からすれば決して許されないモノなのさ。」

 

『彼女』がした事、過ちは一般的に考えて実に()()()である。

 

「まぁ、()が人の事を言える立場ではないのだがね。」

 

その一言は、普段の『夢界藍』とは違うモノだった。

 

「『愛』とは実に美しく、眩いモノではあるが…同時に醜く、汚らわしくもある。」

 

それは、実に重みのあるモノだった。

 

彼は知っている。

何せ、多くをその目で見てきたからだ。

 

「ははは…」

 

この姿ではよりらしくないと思った。

 

笑って一掃する中、ふと脳裏に()()()()()姿()が過ってしまった。

 

その少女は、とある剣を地に突き立てて前を見据える凛々しい存在であった。

 

常に真っ直ぐに輝かしい未来を見つめている強い瞳。

 

その容姿は、誰もが目を惹かれてしまうものであった。

 

彼は特にその少女に対して色恋ものは抱いていないが、特別な感情を抱いていたのは事実だった。

 

故に--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が死した時には、悲しい気持ちになったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あぁ、そうさ。」

 

彼は映像に映る『過酷な命運を背負った青少年』を見つめながら語る。

 

「だからこそ、()()()って思ったんだろうな。」

 

嗚呼、実に、実に人(『彼女』)の事が言えないものであると自覚した。

 

だが、それは『彼女』とは違い、『期待』を向けるものであった。

 

 

 







はい、訓練&特訓編のお話でした。

令音との甘い(?)お話と最後に夢界について語ってもらいました。


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