デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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さぁ、美九編にいよいよ突入です!





【第7章】美九編『暴走する歌』
第一話:不安な幕開け


 

 

 

「…痛ぇ。」

 

ランドセルを背負った服もズボンも汚れている少年が家に帰宅した。

 

「あ、お帰りおに───っ! おかぁさーん!

おにーちゃんがまた怪我してるー!」

 

ボロボロの姿を見るなりドタバタと走り始める。

すると、玄関まで急いで駆け寄って来る。

 

「何ですって!?

しーくん大丈夫!?」

 

心配して駆け寄るのは母親である五河遥子である。

 

「…大丈夫、転んだだけだから。」

 

「転んだだなんて嘘これで何回目なのしーくん?

正直に言っていいのよ?」

 

そんな普段とあまり変わらない生活を送っている。

リビングでランドセルを一旦下ろす中、ふとテレビに視線を送る。

 

そこに映っていたのは可愛らしいコスチュームを着た紫紺の髪が特徴の少女が元気な笑顔で歌いながら踊っていた。

 

その見たものを元気づける彼女を見た少年は、暗かった表情を自然と穏やかな表情へと変えてった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピッ!

 

「…んん?」

 

目覚ましの音に重い瞼を渋々と見開いていく。

 

「…夢か。」

 

体を起こしながらそんな事を呟く。

あまり思い出したくない昔の夢を何故見ていたのかは分からないが、考えたって無駄だろう。

士道は制服に着替えてリビングへと歩んで行く。

 

「遅いぞー!」

 

白いリボンで髪を束ねている琴里が元気よく告げる。

 

「悪い、今からご飯作るから待っててくれ。」

 

そう言って士道は朝ごはんの用意をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ごはんを済ませて十香、耶倶矢、夕弦と合流する。

 

「おはよう、皆。」

 

「うむ! シドー!

おはようなのだ!」

 

「呵呵、目覚めたようだな士道よ!」

 

「返答。おはようございます、士道。」

 

気軽に挨拶を済ませて、学校へ向かう。

その道中に夢界と遭遇する。

 

「よう、おはよう皆ー。」

 

夢界がイケメン顔で士道達に声かける。

その様子を見ていた夢界のファンが「キャー!」と黄色い声を上げていた。

 

「くくく、今日も変わらぬな電脳使い(ハッカー)よ。」

 

「俺はいつでも、変わらないぜ!」

 

厨二ポーズを取る耶倶矢に夢界もどこかで見た事ある奇妙なポーズを取って返す。

その証に「バーンッ!」と空中に表示されている感じがした。

相変わらずノリがいい奴である。

その後、夢界を加えて学校へ向かう。

 

「それにしても士道、お前…背丈伸びたか?」

 

「ん? そうか?」

 

「あぁ、そんな気がする。」

 

高校の春でやった身体測定では士道の身長は173センチ。

あの時から様々な事があり、夏で特訓やトレーニングをこなして成長し、今では175センチへと伸びていたのである。

 

「成長で言うと、お前の力にちゃんとした『能力』があったんだなー。」

 

夢界がいっているのは、この夏で判明した事の一つ『アルセーヌ』の力である。

 

特訓の中で『()()()』の性質は、単体だけでもパワーがあるが、精霊の力(霊力)と掛け合わせる事で更に力を増せる事が出来るのだと認識したのだ。

 

「あぁ、今更だけどちゃんと分かって良かったよ。

ただシャドウに有効なだけではないって分かったから今後に活かせられる。」

 

「だな。後は…お前が言っていた『デオン』って子についてだな。」

 

そう、修学旅行の時に士道を助ける形で現れた謎のペルソナ使いである。

 

彼女がどうやってその力を手にしたのか、何の経緯で士道を助けるために現れたのか疑問は尽きない。

 

因みに琴里に話すの忘れていたと告げると、もれなく五河家流-炎蹴り改め、琴里流-炎回転蹴り(琴里トルネード)をお見舞いされた。

 

「彼女は一体、何者なんだろうか?」

 

彼女のことを思い出す。

いくつか思う所があったが、中でも特に気になったのが───

 

『--今度は僕がキミを助ける番だよ。』

 

あの言葉だった。

彼女が喋っている時も『久しい』とも感じていた。

だから、自分は以前にも彼女に出会ったことがある筈だと考えていた。

 

「ま、お前の味方だって言ってくれたんだろ?

なら、近いうちに顔を出すんじゃね?」

 

「…そうだろうか?」

 

2人が会話をしていると、いつの間にか少し離れた先にいた十香が手を振る。

 

「シドー! 早く来るのだー!」

 

「ん、あぁ。…ていうかいつの間に?」

 

「俺らが駄弁っている最中に耶倶矢ちゃんと夕弦の勝負が始まって十香ちゃんもその勝負に乗ってたけど、俺達…いや、お前が追って来ないから待ってたって所だな。」

 

「よく見てるな、お前。」

 

「まぁな、可愛い女の子は常に見ておくものさ。

───てか、お前は見てなさすぎだから、見るようにしろよな!」

 

「わ、分かってるよ。」

 

バシバシと背中を叩かれて、士道は言い分けをするかのように答える。

 

「シドー!」

 

「あぁ、今行く。」

 

そう言って士道は手をポケットに突っ込みながらも駆け足で十香の元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳶一一曹、本日をもってキミに課せられた謹慎は解除とする。

次はないぞ。」

 

「ハッ!」

 

折紙は上司に向けて敬礼する。

 

折紙は朝からAST本部に呼び出しを受け、二ヶ月の謹慎が解かれた。

これにより、彼女は精霊を対処するために動く事になる。

 

バンッ!

 

「納得がいきませんっ!」

 

日下部が扉を大きく開け、大声を出しながら、自分を止めようとする岡峰美紀恵を引きずりながらドシドシと歩み寄って来る。

 

「ダメですよ〜、隊長〜。

あ、折紙さん! お願いです!

一緒に隊長を止めてくださいっ!」

 

岡峰美紀恵…いや、『ミケ』は折紙の姿を見て一瞬、笑顔になるが、束の間、自分のしている事を思い出して、折紙に助けを乞う。

 

「…何をしているの? ミケ、隊長。」

 

「あぁ、折紙。今日から復帰できたのね。

───って!

これは一体どういうことですか!?

いつからAST(我々)はDEMに買収されたんですか!?」

 

士道達から見ればASTはDEMの下っ端、配下に属する印象だが実際は違う。

ASTはあくまで陸自衛隊。市民の安全を第一に動く部隊である。

DEMのように非道な事はしないのである。

 

「───ここ数年、空間震の最も多い場所デ、精霊を一体も対処できていない役立たずなオママゴトチームの言うことなんテ、聞いても無駄でショ。」

 

折紙達は声のする方へ振り向く。

そこに開いているドアを背にしている20代半ばの赤髪の外人女性がいた。

ついでに、彼女に付き従う部下達と共に。

 

「アンタは?」

 

日下部が問うと女性達は一応、挨拶するために配置につく。

そして、赤髪の外人女性が前に立って告げる。

 

「本日よリ、ASTに所属することになりましタ、ジェシカ・ベイリーでス。以後よろしク。」

 

社交辞令の笑顔で挨拶するジェシカ・ベイリーを名乗る人物に部下達。

彼女らは告げた通り、DEMからASTに配属された者達。

 

ジェシカ・ベイリーは第一印象から見て最悪だが…問題は後ろに並ぶ部下達だった。

彼女達全員が、まるで正気を感じない人形な如く表情を変えずにしていたのだ。

 

そんな彼女達を見て、折紙達は異様なモノを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れて、士道達来禅高校の生徒は体育館へと集まっていた。

その訳はというと───

 

「時は来たり…去年の屈辱を晴らそうぞー!!!」

 

壇上でマイクを持って大声で告げる山吹亜衣。

因みに、彼女が何故仕切っているかというと、ルックス・スタイル共に良いためこの来禅高校では名と顔が効くのである。

 

そして、いつもつるんでいる葉桜麻衣と藤袴美衣も亜衣と共にいる。

 

[おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!]

 

全校生徒達(士道達のような一部を除く)全員が力強く拳を上げて場を盛り上げる。

 

「おぉ、亜衣の気合いが凄いな!

シドー、これは一体何なのだ?

戦争にでも行くのか?」

 

「俺も俺もー、何なのか教えてくれよ士道。」

 

十香と夢界が士道に問いかける。

 

「あぁ…『天央祭』という文化祭…祭だな。

といってもスケールはデカいけど。」

 

士道はメガネをくいっと上げてそう答える。

 

「おお、祭だな?

それなら知っているぞ。

…む? デカいとはどういう意味なのだ?」

 

「それはな───」

 

「来禅(ウチ)を含めた10校による共同文化祭だな。」

 

そう説明するのは、人混みを避けながら寄ってくる天宮翔太だった。

 

「む?」

 

「天宮か。」

 

「あれ? 3組ってこの列じゃなくね?」

 

「あぁ、周りを見ろよ、とっくにクラスなんてバラバラになってる。」

 

天宮は指差しながらそう告げる。

さっきまで綺麗に整列していたが、『天央祭』のことなので、他クラス同士で仲がいい奴らで盛り上がっている。

 

「ホントだ。でも、なんでコッチに?」

 

「周りが暑苦しいから逃げてきた。

見知った顔がいたからな。」

 

「そうか。」

 

(気持ちは分からなくもない。)

 

「シドー。」

 

十香が士道の袖を引っ張りながら天宮を指さす。

 

「この男は誰なのだ?」

 

「顔見知りの天宮だ。」

 

「うっす。」

 

「うむ、そうか。そういえば、この町と同じ名だな。」

 

「まぁ、この町では割と顔が効くからなぁ。」

 

天宮はこの天宮市の総病院の家の者である。

 

「てか、顔見知りは酷くね?

割と愚痴ったりしてるから友達だろ?」

 

「…」

 

士道は謎の感銘を受けた。

士道と天宮は狂三の起こした一件から顔を合わせる機会が多くなり、クラス外で唯一話の出来る仲である。

それに、士道にとって友達は高校2年になるまで『1人』を除いて1人もいなかったためか嬉しかったのである。

 

「そうだな。今更だが士道でいい。」

 

「んじゃ、俺は『翔』な。

その名の方で呼ばれる方が慣れてる。」

 

コツンとし合う。

 

「むぅ…」

 

それを見て十香は嫉妬しだす。

 

「おおう!?」

 

「こらこら、十香。大丈夫。

十香とも友達だし、何ならもう家族なようなものだ。」

 

と頭を撫でながら言う。

 

「!? うむ!」

 

満面な笑顔で返事する十香。

見ていて四糸乃とは違う意味で癒される。

 

「コッチでも熱いなぁ…まぁ、アレよりマシだが。」

 

天宮…いや、翔は自分クラスメイトのイチャイチャとしている双子を見る。

 

「もーゆーづーるー。」

 

「反撃。かーぐーやー。」

 

と百合百合の如くイチャイチャしている耶倶矢と夕弦だった。

 

「あー、まぁ、それだけ仲が良いんだ。

察してあげてくれい。」

 

夢界がそう言う。

 

「はぁ…」

 

翔は溜め息を吐く。

 

「ロリ同士の百合百合なら見ていて大歓迎、いつでも何処でもやってくれって感じだが、年増同士の百合百合とか終わってんだろ。」

 

「お前もな。」

 

士道はそう返す。

普段なら家族同然でもある耶倶矢と夕弦の事を悪く言っている奴らなら容赦しないが、既に彼の事は理解し、把握出来ているためか、あまりキツく当たらない。

それも、彼よりも酷い者を見ているのが原因だろう。

 

「まぁ話は少しされたけど、要は大きな祭、沢山の楽しい事があるんだ。」

 

「おお! それは、うむ。

大変良き事だな!」

 

「ははは。」

 

そんな茶番をしていると、壇上から「静粛に!」と亜衣が告げる。

 

「皆んなに言うことがあるの…去年の実行委員である勇士たちはいない。つまり何かというと…『生贄』がいない。」

 

[…]

 

亜衣の言葉で一瞬にして場が凍りつく。

その意味を知っているからだ。

その理由は、天宮スクエア会場という大舞台を借りての祭り事。

それを無事に事を進めるには誰かがブラック労働をしなければならない。そんな事を当然したくないため、場が静まっていたのである。

 

そんな中、亜衣は宣言する。

 

「安心して欲しい。

この日のために、密かにアンケートを取っていたの。

───誰が委員に相応しいかを!」

 

スクリーンが降りてくる。

そこには、あるサイトによる投票であった。

 

「そして、選ばれた勇士の名は

───五河士道!」

 

「はぁ?」

 

士道にスポットライトが当たる。

それにより、『生贄』が決まった。

 

[おおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!

ざまぁぁぁぁぁ!!!!!]

 

「飯うまぁ!」

 

全校生徒(9割男子)と最後はクラスメイトの一般人…いや殿町による言葉の制裁が降り注ぐ。

ある者はケラケラと笑い、ある者は腫れ物を見るかのように見下していた。

 

完全に虐めである。

 

とはいえ、士道が選ばれたのには理由がある。

去年までは名前すらも覚えられないほど陰の薄い生徒だったが、十香達という絶世の美少女達(美女教師である令音も加え)と仲が睦まじいため、僻んでいる残念な男達や、弱みを握っているんじゃないかと思っている女子達からすればうってつけだった。

 

「因みに、拒否権ないからよろしくー。」

 

ガクッ

 

士道は肩を竦める。

味方はいないのだろうか…

 

いや、今の彼には頼もしい友人がいる。

 

「しゃーねぇ。面倒さそうな事をお前1人に任せられないからな、手伝ってやるよ。」

 

夢界が士道の肩を組んで挙手する。

その様子を見た夢界ファン達からの声が上がる。

 

「え!? 嘘、夢界くんまで生贄になっちゃうの!?」

 

「そんなのダメよ!

夢界くんが汚れるくらいなら私が汚れるわ!」

 

「カッコいい夢界くーん! 素敵!」

 

士道とは真反対な反応だった。

 

「お前。」

 

「まぁまぁ、修学旅行の時は大したしてないからなぁ。」

 

笑いながら士道の味方になる夢界。

そして、1人だけではなかった。

 

「しゃーねぇ。ぶっ倒れても困るしな、俺もやるわ。」

 

なんと、翔も士道の肩を持つ。

 

「…翔。」

 

「乗り掛かった船ってやつだな。

ま、このまま見過ごすほど腐っちゃいないぜ。」

 

と、夢界に真似るが如く、士道の肩に肘を乗せる。

 

「むぅぅ! シドーがすなら私もするぞ!」

 

学校の注目美少女である十香も参戦である。

 

「士道がやるなら、私も。」

 

「え、あ、折紙!? いつの間に?」

 

「士道の愛の叫びが私を召喚した。」

 

折紙が士道の腕に絡みつく。

 

「このー! 鳶一折紙!

シドーに引っ付くなー!」

 

十香も負けずと士道の腕に絡みつく。

 

[チクショー!!! 何で五河ばかりー!!!]

 

「うぅ…学校一の女タラシ野郎五河くんに加担する十香ちゃんに、夢界くん。」

 

「これだけの人達に味方になるなんて、ビックリ!

てか、いつの間に『あの』天宮くんと仲良くなってるの!?」

 

「マジ引くわー。五河、これで十香ちゃん泣かしたらぶっ殺す。」

 

壇上にいる3トリオがそう述べる。

上2人はともかく美衣は士道に対してかなり辛辣である。

 

「…大変だな。五河。」

 

「ま、いい思いもしてるわけだし、側から見れば恨みの対象でしかないわな。」

 

「いや、あんな年増の女共にくっつかれて大変だと感じてな。」

 

「…」

 

ともあれ、こうして士道達は天央祭実行委員に任命されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…随分と災難だったね、シン。」

 

「ホント、何でこんな事になるんでしょうね…」

 

物理準備室にて士道は令音と体育館での出来事について話をしていた。

因みに士道は実行委員として仕事をさせられて疲れ切っていた。

 

「…まぁ、私も手伝うつもりでいるから安心してくれ。」

 

「ありがとうございます、令音さん。」

 

「…ん、構わないよ。」

 

そんな会話をしながら五河家に帰ろうとする。

今日は令音も五河家でご飯を済ませるために共に向かう。

帰る最中、学校近くで見覚えのある人影が士道達の元へ駆け寄る。

その人物は───四糸乃だった。

 

「あ、あの…士道さん。」

 

《ヤッホー、士道くーん。

令音ちゃんもヤッホー。》

 

「四糸乃?こんな時間にどうしてここに?」

 

「は、はい…えっと、士道さんを待ってたんです。

でも…琴里さんが士道さんが帰りが遅くなると聞いてから心配しまして…」

 

《四糸乃が心配しちゃって、気づいてたらここまで来ちゃったん♡》

 

何と、1人でここまで来たようである。

それを聞いた士道は青ざめる。

 

「大丈夫か? 誰か怪しい人達に声かけられてないか?」

 

「は、はい…大丈夫です。」

 

「はぁ…良かった。」

 

「…あぁ、安心したね。」

 

一安心した2人は「ふぅ。」と息を吐く。

 

「それじゃ、一緒に帰ろっか。」

 

「は、はい。」

 

こうして四糸乃、よしのん、令音と共に五河家へと帰宅する。

 

その道中に───事態は起きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空間震警報が鳴り響く。

 

「っ!? 空間震!?」

 

「…このタイミングで現れるか。」

 

「…!」

 

《ということは?》

 

よしのんの言葉に士道は続けて言う。

 

「───精霊。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラクシナス

 

「来たわね、士道。」

 

軍服を着た琴里が士道を見て言う。

 

「あぁ、それと…悪い、突然帰りが遅くなって───」

 

「大丈夫よ。

詳しいことは令音から聞いてるから。」

 

「そうか、悪い。」

 

そんな会話をしていると、いつの間にか軍服姿となった令音が現れた。

 

「令音さんいつの間に───」

 

「…シン、女の子には秘密が多いんだ。」

 

「着替え…言う前に先に言われた。

あれ、これ前にもあったような…」

 

あの頃は確か…そう、四糸乃の時だったな。

 

「?」

 

ふと、四糸乃を見ながら思い出し、四糸乃は疑問を抱く。

士道は紛らわすために四糸乃の頭を撫でる。

 

「あー…いや、何でもない。」

 

「…!」

 

《おんやー? 新しい精霊ちゃんの前に四糸乃に虜になっちゃったん?》

 

「あはは…」

 

士道は頬をかきながら苦笑いをする。

すると、モニターにある場所が映り出す。

 

「場所特定しました。

これは…アリーナ会場ですね。」

 

「え?」

 

そう、そこは天央祭の会場であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───っと。」

 

フラクシナスの天相装置からワープしてアリーナ会場前に立つ。

すると、会場から何やら聞こえてくる。

 

「…歌?」

 

そう呟きながら士道はアリーナ会場の中へ入り、声のするほうへと足を運ぶ。

扉を開けて中に入る。

 

そこには当然、ライブ会場が広がっていた。

誰かが中で準備をしていたであろう具材などが置かれていた。

 

だがそれらよりも目に入る存在が一人いた。

 

「〜〜〜♪」

 

下の方からスポットライトに照らされ、光に溢れている中で煌火びやかな衣を纏った少女が歌っていた。

 

士道は扉の前で少女を見ながらもその声に疑問を抱いた。

 

(…この声、何処かで。)

 

考え事していると、インカムから琴里の声が聞こえる。

 

『まさか、“ディーヴァ”?』

 

「? 何かあるのか?」

 

『えぇ…ディーヴァ、半年前に一度だけ出現が確認された精霊よ。

それ故に、彼女に関する情報は全くないの。

気をつけて頂戴。』

 

「了解。」

 

『訓練のことを思い出して行けよー。』

 

「分かってる。」

 

琴里と夢界の忠告を受けて、気持ちを切り替えながら拍手をする。

 

「あらー?」

 

拍手に気づく。

 

「お客さんがいたんですかー?」

 

のんびりとした声でキョロキョロと視線を動かす。

 

「どこにいるんですかー?

私1人で退屈していた所なんですよぉ。

よろしければ、少しお話ししませんかぁー?」

 

どうやら今回の精霊は比較的話しやすいのかもしれない。

 

『士道、レディからお誘いよ。

紳士に相手してあげなさい。』

 

「あぁ。」

 

士道は頷いて、ディーヴァと思わしき人物の元へと歩み寄る。

 

「綺麗な声だった。」

 

士道が感想を述べると───ディーヴァは士道に目掛けて威嚇するように声を放つ。

 

【わっ!】

 

「!?」

 

士道は吹き飛ばされ、受け身を取る。

疑問を抱きながら体を起こすとインカムから琴里の焦る声が聞こえてくる。

 

『ちょっと、士道!?

アナタ何をしたのよ!?』

 

「いや、俺は何もしていないただ『綺麗な声だった。』て言いながら歩み寄っただけだぞ!?」

 

『本当に!? 彼女からの好感度がみるみる急激に下がってるわよ!?』

 

「へ?」

 

メガネに力を流すようにする。

すると、フラクシナスでモニタリングされている好感度のゲージが表示される。

 

そこに表示されていた内容は───

 

「え、これは一体?」

 

100%中、20…15…10へとみるみる下がっていく。

まさかの開幕赤ゲージである。

 

『好感度、急降下。

士道くん、嫌悪感を向けてる領域です!』

 

『こ、こんな数値見たことありません…ご、ゴキブリ並みです!』

 

(ゴキブリ並って何だよ!?

え? ゴキブリと同じ扱いってこと?)

 

士道はショックを受け始める。

 

『すんげぇな…こんな事あるんだぁ…』

 

『し、士道…さん。』

 

(…どうしよう。)

 

迷う中、前に進むと目の前の床が抜けていた。

 

(音による攻撃…これはどういう───)

 

士道が考察する途中、インカムから告げられた通り嫌悪感を向ける視線で士道に言い放つ。

 

「何でまだ生きているんですかぁ?

さっさと、落ちて死んでくださいよぉ。

私の視界から消えてください、不愉快ですぅ。」

 

「…え?」

 

「何喋りかけてくるんですかぁ?

やめてくださいよぉ。

息をしないで下さい。

アナタのせいで空気が悪くなるんですよぉ。」

 

「…」

 

優しい声で差別してくる。

彼女の心の底からの言葉に士道は傷つき、少し涙目になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラクシナス

 

「これは…一体どいう事なの?」

 

琴里は状況を見ながら目を細めて言う。

 

『何でまだ生きているんですかぁ?

さっさと、落ちて死んでくださいよぉ。

私の視界から消えてください、不愉快ですぅ。』

 

精霊の好感度がとうとう1%まで落ちてしまった。

 

「こ、好感度1!?」

 

「こんな事ってあるんですか!?」

 

クルー達が慌てる。

当然だ、何せ初対面でここまで下がってしまったのは初めて事態であるからだ。

 

「何で? 見ていたかぎり、士道は何もしていないはず…っ!」

 

「あぁ、確かにこれは異常だな。」

 

琴里の意見に夢界も同意する。

険しい表情になる中、令音は士道の精神状態を見ていて異様な数値へと至っている事に気づく。

 

「…っ!」

 

「どうしたの令音!?」

 

「…シンの精神数値を見てくれ!」

 

令音は手元の操作をする。

すると、モニターに士道の精神状態が顕になる。そこに表示されていた内容は平常・安定してる状態が50%に対し、今の士道は30…25…20とディーヴァと似た現象が起きていた。

 

「っ!? 士道! どうしたの!?」

 

『うっ…俺…別に嫌われるような事…してないのに…

ただ、綺麗だなって思っただけなのに…うぅ…』

 

士道のメンタルにダメージが入ってしまったようだ。

 

「落ち着いて士道! きっと何かの誤解よ!」

 

琴里が士道を奮起させようと必死になる。

そんな中、夢界は冷静に語る。

 

「そりゃ、女の子にあんなに言われたら傷つくよな。」

 

「し、士道さん。」

 

《にしても酷くない?

あそこまでキツくする筋合いなくない?》

 

と、四糸乃とよしのんと会話をしていた。

そうしている間にも事態は動いていく。

 

「! ASTの反応を確認!

アリーナ会場上空です!」

 

「くっ…もう来たのねっ!」

 

モニターにAST部隊が映し出される。

そこにいたASTの数は以前よりも増えており、中には折紙達とは異なっていた格好をしていた。

 

それを見てた夢界は目を細める。

 

「(DEMの魔術師までも来ている。

ふむ…何とかして士道を復帰させないとまずいな。)」

 

夢界は士道に向けて言葉をかけ始める。

 

 

 





…そういえば言うの忘れてましたが…選択肢というシステムはお亡くなりになりました。(チーン)



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